ゲイドールを拾った

ガイア

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1話 宝丸幸彦という男

20XX年、ラブドール技術が進歩した。

 ラブドールとは、主に男性がセックスを疑似的に楽しむための実物の女性に近い形状の人形である。今では、ラブドールなのか人間なのか、肌質や、勝手に自分で膣内を愛液のようなものでいっぱいにする技術も導入され、一緒にデートをしたり、コミュニケーションをとれるものも現れた。ラブドールの技術が進歩しすぎて、人間と見分けがつかなくなってきた今日。

 そして、更に最新技術で出た新しい商品。ゲイドール。第一弾は可愛い弟系。名前は早川優(はやかわゆう)見た目は犬のようなふわりとした金髪に、可愛げのある顔立ち、身長は170センチで、童顔かつ優しそうな声と、家事が完璧にできる機能つき。ラブドールとは別用途で男性器がついており、男性が男性同士のセックス同士を楽しむために作られたドールだった。

 しかし、そのゲイドール。童顔系イケメンだからなのか、女性の購入者が多く、自分なりにメイクをしたり、着せ替え人形のようにして自分好みに作り替えたり、それによって少子高齢化が進み、ゲイドールは販売停止になった。

「販売停止になったのか、ゲイドール」

 俺、宝丸幸彦(たからまるゆきひこ)は、冴えないフリーターであり、ゲイだ。
身長も無駄に180センチあり、高校まで黒髪をセットし本屋でバイトをし、ちゃんとした店の服を着て、コンタクトをしていた。顔だけはいいらしく、今まで女性に言い寄られたことはあったが、女性には興味を示すことができなかった。

中学の時、4回目の告白で、ああ、自分はゲイなんだと自覚した。
そんな俺は、高校の時恋をする。ふわりとしたゴールデンレトリバーのような髪の、童顔の可愛い彼は、橋田翔太(はしだしょうた)子犬のように俺にいつもついてきて、スキンシップも激しかった。平然と抱き着くし、平然と俺の膝の上に座る。

彼のことが好きになるのに時間はかからなかった。優しい彼なら俺のことも受け入れてくれるだろう。そう思って、勇気を出して告白をした。

しかし、次の日。

クラス中に、ゲイであることを言いふらされ、全クラスに俺がゲイであることがバレた。いじめられ、「掘られるぞ」などと逃げられ、ありとあらゆるいじめを受け、不登校になった。

不登校になった俺は、そのまま高校を卒業することも叶わず、そのままコンビニのバイト、つまりフリーターになったというわけだった。両親からも見捨てられ、俺は天涯孤独の底辺人生を歩んでいる。

 そんな馬鹿な俺は、まだ馬鹿なままだった。

俺をゲイだと言いふらした彼にそっくりなゲイドールを、心の底から欲しいと思ったのだ。

今まで生きてきて、恋をしたのは彼だけだった。当然今も童貞で、27歳でまだフリーターをやっていて、彼女もなし、髪も伸びっぱなしを悔造作に後ろ縛りにして、できるだけ安いチェックのシャツを着て、100均で飼った老眼鏡をかけている。そんな俺が、550万円のゲイドールを買うなんて天地がひっくり返っても無理な話だったのだ。

「凄く気になっていた商品だったのに、まさか販売停止になってしまったとはなあ」

 リサイクルショップで700円で買った座椅子に座りながら、腕を組みなおした。

「まあ、550万円で疑似夫ができると思えば安いのか」

 コンビニバイトで、毎月15万円の給料で慎ましい生活をしている俺が550万円のゲイドールを買いたいなんて、馬鹿な夢だったんだ。でも、俺は毎回テレビでゲイドールのCMが出るたびにごくりと喉をならすくらい、欲しいと思った。

 手に入れてどうする?めちゃくちゃに犯す?彼にそっくりなゲイドールを、高校の時の彼の恰好をさせて、「よくもあの時は!」なんて、めちゃくちゃに精子をぶちまけて、天使のようだった彼を、汚すか?

「ああ、馬鹿だな俺は」

 まだ、彼のことを優しいだの、天使だの。あんなことをされたというのに、人生をめちゃくちゃにされたのに、でもどうしようもなく俺はまだ彼のことを忘れることができないのだ。

「さて……ゴミ捨てに行くか」

 今日は夜勤の日だ。朝のニュースを見ながら質素な朝ごはんを牛乳で流し込み、俺は今の俺の気分のようにずっしりと重いゴミ袋を持った。ボロアパートの下のゴミ捨て場は、アパートから少し離れているのでゴミ回収の時間より少し前に行かないといけない。たまに時間より早く回収してしまう時があるので、いつも7時のゴミ回収の一時間前に起きて、ゴミを捨てに行く。

 6月の澄んだ空気が俺の肌を通り抜ける。昨日は疲れてそのまま寝てしまった。今日はこれから風呂に入って、髭を剃ろう。家では何もやる気が起きず、常に寝ているのだが、夜勤の日なんかはそういう生活をしてしまうと、本当に仕事に行きたくなくなってしまうので、買い物をしたり、外になるべく出るようにして夜の出勤まで時間を潰すのだ。

 ゴミ捨て場まで歩いて10分程、ここは都内と違って田舎だからアパートを出て少し歩いたところにゴミ捨て場があるのだ。いつも通りの火曜日の朝、いつも通り俺はゴミ捨て場が見えるところまで来ていた。

「……なんだあれ」

 だが、そこで異常な光景を目にする。ゴミ捨て場に、人の足が投げ出されている。

「というか、あれ……ゴミ捨て場に、人が寝てる……?しかも、全裸?」
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