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6話 ナナオは、俺の天使だよ
「幸彦くん、気持ちよくなかったですか?」
「いや、気持ちよすぎてやばかった、あと敬語これからいいから」
きょとんとしているナナオの頭を撫でると、ナナオは無表情のまま首を傾げた。
「これから、俺たち一緒に暮らすんだから」
「幸彦くん……よろしい……の?」
よろしいのですか?と聞こうとして、俺の敬語はいいから、というのを律義に守ろうとするナナオに、俺はくすりと笑ってしまった。
「よろしいの!ナナオ、これからよろしく」
手を差し出すと、ナナオは無表情のまま手をゆっくりと動かした。
「……」
「どうした?ナナオ」
「……いえ、一度拾われた命、飽きるまでは、俺を幸彦くんのところで使ってく……使って。人の役に立つことが、僕たちロボットの一番の望みだから」
ナナオは、無表情のまま自分の手を握りしめた。ナナオは、確かに無表情だけど、その時のナナオはまるで人間が自分からロボットだと名乗っているように見えた。無表情だけど、苦しそうだった。
全裸で俺たちは握手をした。朝会って俺たちは昼過ぎまでセックスしていたようだった。ナナオの体液を拭いて、2人でシャワーを浴びた。俺は、ナナオを狭い風呂場の椅子に座らせ、身体を洗ってあげることにした。
「僕はいいから、幸彦くんを……」
「いいから、座って」
「僕は、そんな、お世話をする側なのに」
「そんなことない、気持ちよくしてくれたから、返したいだけだよ」
ナナオは、無表情だが困っているようにそわそわし出した。いいから座ってと優しく座らせ、身体を隅々まで洗ってやる。
「触るよ?」
「……っうん」
足から、膝、太腿、お腹、背中、胸、首、すべすべのナナオの肌にボディタオルを滑らせていく。そのたびにナナオはぴくっと身体を反応させて、可愛い声をあげる。
「本当に感じやすいんだな、ナナオは」
「んっ……わかんないっ……なんか、ほんとは僕がご奉仕しないといけないのに」
「いいんだよ、じっとしていて」
「どうして」
ナナオは、小さな声を漏らした。
「んー?」
「どうして、僕を人間みたいに扱ってくれるの、僕は無表情で役立たずで、勃起もできない童貞で、クズで、ゴミで、鉄くずで」
「……ナナオは、なんでそんなに自分を卑下するんだ?さっき不良品だって言ってたけど」
「……僕みたいなのは、存在する価値すらなくて、お金のムダで、返品したくても販売終了していて、バグも多くて、表情もないから可愛げもなくて、縛られても、叩かれても、「痛い」って感覚が搭載されていないから面白い反応ができなくて」
「ナナオ……?」
ナナオは、PTSDを発症しているようだった。無表情のまま自分の顔を両手で押さえて俯いている。泡が顔についても、目に入りそうになっているとしても、一切気にしていないようで、早口で記憶をなぞるようにまくしたてている。
「僕は、捨てられて当然なんだ」
捨てられて当然なんだ。俺は、自分の心臓を鷲掴みされたような気持ちになった。
「ゲイ」「気持ち悪い」「そういう目で見てたの?怖い」「掘られるぞ」学校で、好きな子に告白した次の日、俺はゲイだということを言いふらされ、学校でいじめられた。女の子から告白されても断っていたから、“そういう理由”で断ってきたのだと言われ、事実そうだが、女の子からの恨みも買った。自分がそういう人間であることを、ずっと隠してきていた。
でも、好きな人には、彼だったら受け入れてくれると思って打ち明けたのに。抱きしめたら、彼に刃物で刺されて、周りの人間からは銃を向けられて俺は何度も何度も殺された。心はもうボロボロで、親からも見捨てられて。
「俺も……」
捨てられて当然なんだ、って。自分みたいな人間は、誰にも好かれることなんてなく、愛し合うこともなく、一生一人で死んでいくんだと思っていた。俺なんか消えてしまえばいいって思って何度も自殺をしようとしたけれど、死ねなかった。
自分なんて消えてしまえばいいって思っているくせに、いざこの世界から自分の存在が消えると思うと、たまらなく怖くなるんだ。
「優しくされると、不安になるんです。また捨てられるんじゃないかって。だからせめて僕が有効だって、まだ使いようがあるって“道具”として使ってもらえば、まだ少しでも、幸彦くんの近くにいられるかもって」
「なんで、俺なんかに」
「僕なんかに優しくしてくれたからだよ、使い道のないゴミであるオナドールの僕に興奮してくれた。僕、幸彦くんが勃起してくれたあの時、たまらなく嬉しかったんだ」
「……」
ナナオは、そう言って俺を真っすぐ見た。本当に、綺麗な顔をしている。俺みたいな屈折して捻くれた目をしていない。
「ゴミなんかじゃない」
ゴミは、俺だ。
「ナナオは、俺の天使だよ」
大事にする。俺は、ナナオを抱きしめた。ナナオは、ぴくりと身体を反応させて、俺の背中に優しく手をまわした。抱き合っているだけで気持ちいい。人のぬくもりは、こんなに温かいものだったのかと、あの日からまともに人と触れ合っていない俺は、感動さえ覚えていた。
「じゃあ、次は幸彦くんの身体を洗ってあげるね」
「ああ、ありがとう」
ナナオは、そう言ってボディタオルで丁寧に、丁寧に、俺の身体を洗ってくれる。たまに上目遣いでこっちを見てくるのがたまらなく可愛らしい。愛おしくで抱きしめたくなる。本当に、オナドールなのか?本当は人間なんじゃないかと思う程、細部まで精巧に作られている。
「もう1回する?」
「いや、気持ちよすぎてやばかった、あと敬語これからいいから」
きょとんとしているナナオの頭を撫でると、ナナオは無表情のまま首を傾げた。
「これから、俺たち一緒に暮らすんだから」
「幸彦くん……よろしい……の?」
よろしいのですか?と聞こうとして、俺の敬語はいいから、というのを律義に守ろうとするナナオに、俺はくすりと笑ってしまった。
「よろしいの!ナナオ、これからよろしく」
手を差し出すと、ナナオは無表情のまま手をゆっくりと動かした。
「……」
「どうした?ナナオ」
「……いえ、一度拾われた命、飽きるまでは、俺を幸彦くんのところで使ってく……使って。人の役に立つことが、僕たちロボットの一番の望みだから」
ナナオは、無表情のまま自分の手を握りしめた。ナナオは、確かに無表情だけど、その時のナナオはまるで人間が自分からロボットだと名乗っているように見えた。無表情だけど、苦しそうだった。
全裸で俺たちは握手をした。朝会って俺たちは昼過ぎまでセックスしていたようだった。ナナオの体液を拭いて、2人でシャワーを浴びた。俺は、ナナオを狭い風呂場の椅子に座らせ、身体を洗ってあげることにした。
「僕はいいから、幸彦くんを……」
「いいから、座って」
「僕は、そんな、お世話をする側なのに」
「そんなことない、気持ちよくしてくれたから、返したいだけだよ」
ナナオは、無表情だが困っているようにそわそわし出した。いいから座ってと優しく座らせ、身体を隅々まで洗ってやる。
「触るよ?」
「……っうん」
足から、膝、太腿、お腹、背中、胸、首、すべすべのナナオの肌にボディタオルを滑らせていく。そのたびにナナオはぴくっと身体を反応させて、可愛い声をあげる。
「本当に感じやすいんだな、ナナオは」
「んっ……わかんないっ……なんか、ほんとは僕がご奉仕しないといけないのに」
「いいんだよ、じっとしていて」
「どうして」
ナナオは、小さな声を漏らした。
「んー?」
「どうして、僕を人間みたいに扱ってくれるの、僕は無表情で役立たずで、勃起もできない童貞で、クズで、ゴミで、鉄くずで」
「……ナナオは、なんでそんなに自分を卑下するんだ?さっき不良品だって言ってたけど」
「……僕みたいなのは、存在する価値すらなくて、お金のムダで、返品したくても販売終了していて、バグも多くて、表情もないから可愛げもなくて、縛られても、叩かれても、「痛い」って感覚が搭載されていないから面白い反応ができなくて」
「ナナオ……?」
ナナオは、PTSDを発症しているようだった。無表情のまま自分の顔を両手で押さえて俯いている。泡が顔についても、目に入りそうになっているとしても、一切気にしていないようで、早口で記憶をなぞるようにまくしたてている。
「僕は、捨てられて当然なんだ」
捨てられて当然なんだ。俺は、自分の心臓を鷲掴みされたような気持ちになった。
「ゲイ」「気持ち悪い」「そういう目で見てたの?怖い」「掘られるぞ」学校で、好きな子に告白した次の日、俺はゲイだということを言いふらされ、学校でいじめられた。女の子から告白されても断っていたから、“そういう理由”で断ってきたのだと言われ、事実そうだが、女の子からの恨みも買った。自分がそういう人間であることを、ずっと隠してきていた。
でも、好きな人には、彼だったら受け入れてくれると思って打ち明けたのに。抱きしめたら、彼に刃物で刺されて、周りの人間からは銃を向けられて俺は何度も何度も殺された。心はもうボロボロで、親からも見捨てられて。
「俺も……」
捨てられて当然なんだ、って。自分みたいな人間は、誰にも好かれることなんてなく、愛し合うこともなく、一生一人で死んでいくんだと思っていた。俺なんか消えてしまえばいいって思って何度も自殺をしようとしたけれど、死ねなかった。
自分なんて消えてしまえばいいって思っているくせに、いざこの世界から自分の存在が消えると思うと、たまらなく怖くなるんだ。
「優しくされると、不安になるんです。また捨てられるんじゃないかって。だからせめて僕が有効だって、まだ使いようがあるって“道具”として使ってもらえば、まだ少しでも、幸彦くんの近くにいられるかもって」
「なんで、俺なんかに」
「僕なんかに優しくしてくれたからだよ、使い道のないゴミであるオナドールの僕に興奮してくれた。僕、幸彦くんが勃起してくれたあの時、たまらなく嬉しかったんだ」
「……」
ナナオは、そう言って俺を真っすぐ見た。本当に、綺麗な顔をしている。俺みたいな屈折して捻くれた目をしていない。
「ゴミなんかじゃない」
ゴミは、俺だ。
「ナナオは、俺の天使だよ」
大事にする。俺は、ナナオを抱きしめた。ナナオは、ぴくりと身体を反応させて、俺の背中に優しく手をまわした。抱き合っているだけで気持ちいい。人のぬくもりは、こんなに温かいものだったのかと、あの日からまともに人と触れ合っていない俺は、感動さえ覚えていた。
「じゃあ、次は幸彦くんの身体を洗ってあげるね」
「ああ、ありがとう」
ナナオは、そう言ってボディタオルで丁寧に、丁寧に、俺の身体を洗ってくれる。たまに上目遣いでこっちを見てくるのがたまらなく可愛らしい。愛おしくで抱きしめたくなる。本当に、オナドールなのか?本当は人間なんじゃないかと思う程、細部まで精巧に作られている。
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