深夜のコンビニバイト始めたけど魔王とか河童とか変な人来すぎて正直続けていける自信がない

ガイア

文字の大きさ
3 / 96

深夜のコンビニバイト三日目 口裂け女さん来店

しおりを挟む

深夜のコンビニバイト三日目にして、俺は死んだ魚のような目でレジに立っていた。
頭おかしいだろこのコンビニ。
魔王やら河童やら人外しか来ないんですけど。

昨日河童からもらったキュウリは神棚に飾ってある。
食べようと思ったけど、もしきゅうりを食べて全身の皮膚が緑色になっていって俺も河童になったらって思ったら鳥肌が止まらなかったのでやめた。
神棚にそっとお供えして手を合わせておいた。

それと俺はこの深夜のコンビニバイト一つわかったことがある。

俺は、目をそっと閉じて微笑んだ。

「人外はお金を払わない」

それだけだ。

ピロリロピロリロ

「いらっしゃいま...」

目を見開いた。

「いらっしゃいませぇ!!」

思わずもう一回爽やかに高らかに挨拶してしまったよ。

白い帽子に、サングラス、顔を半分くらい覆ってしまうくらい大きなマスクに、目がさめるくらいの長袖の真っ赤なワンピース。
黒い大きなトートバックをぎゅっと掴みながらキョロキョロと来店されたお客様。

見るからに怪しい外見だ。

だが俺はそんな事はどうでもよかった。

人間が、このコンビニに来たことが俺はたまらなく嬉しいのだ。
口を両手で押さえてちょっと今感動を覚えている。
深夜のコンビニバイトを始めて三日間。
普通の人が来ることがなかった。
俺は、嬉しい。

赤いワンピースのお客様は、キョロキョロと辺りを見回して、カゴを手に取りお菓子コーナーに向かった。
どうぞごゆっくり見てください!!

だが俺は、この時は全く予想ができなかった。
今までで一番、この人がやばい事に。


赤いワンピースのお客様のカゴには、べっこう飴が大量に入れられていた。

へぇ、飴が好きな人なんだな。

ピッピッと打っていく。かなりの量だ。

「2150円になります」

「.......い」

お客様が何かを口にした。
俺は、レジに夢中になっていて何を言っているのかよく聞いていなくてお客様の方に耳を近づけた。

「申し訳ございません、よく聞こえなかった為もう一度お願いし」

「ワタシ、キレイ?」

「え?」

ゆっくりと彼女の口元から耳を離す。
そうして、じっくりと彼女を見る。
どうしてそんな事聞くんだ?でもお客様の言った事には答えないといけないよな。

「申し訳ございませんが、お客様、お帽子とマスクとサングラスでお顔が隠れていますので判断しかねます」

我ながら完璧な接客だ。
いや待て、こういう時ってもしかしてお世辞でもキレイですよって言うべきだった!?
わからん!コンビニバイトバイブルにお客様に唐突に自分がキレイか聞かれた時の対処法は書いてなかったよ!助けて店長!

お客様は、黙って白い帽子を外し、レジ台に置くとまさにキューティクルって感じの美しい黒髪がサラサラと流れた。

「おぉ」

髪から美人が伝わってくる。
俺は思わず声を漏らした。おぉ。

お客様は、ゆっくりとサングラスも外した。
くりくりとした大きな赤い瞳に、長い睫毛。控えめな右目下にある泣きぼくろがまさに美人を象徴しているようだ。

「おぉ」

目から美人が伝わってくる。
思わず声を漏らしてしまった。おぉ。

「ワタシ、キレイ?」

もう一度聞かれる。

「いやそれだけでも十分綺麗なんですけど、やっぱり顔半分をマスクが覆っているんでちょっと顔半分だけじゃ総合的に見る事はできないので判断しかねます」

お客様の目がピクリと動いた。
何か気に触る事言っただろうか。

お客様は、俯いてゆっくりと、マスクに手をかける。
マスクを外した彼女は、目を大きく見開いてこちらを向いてニィッと笑った。
驚いたのは、その口元だ。
口が耳まで裂けて真っ赤な口紅のついた唇が怪しく歪んでいた。

「ワタシ、キレイ?」

「おぉ.....」

ここに来て俺は理解した。
この人、普通のお客じゃない!!

「ワタシ、キレイ?ねぇ、どうなの?黙ってないで教えてよ。ねぇ?こんな私でもあなたはキレイだって言えるの?ねぇ」

俺の頬を撫でながら耳元で囁く熱い息が耳にかかり体がビクンと跳ね上がる。

「何で黙っているの?もしかして私のこと醜いって思ってる?こんな顔で醜い?ねぇ、答えなさいよ。ねぇ」

ごそごそと肩に下げていたトートバックからお客様が取り出したのは一本の鋭く光る鎌だった。

「キレイって言わないと、殺すわよ」

俺は、落ち着いて深呼吸した。
レジ下にある非常ボタンを押して警察に通報だ。
銃刀法違反とかあれやろ。
逮捕案件だろこれ!俺の命が危ない!

気がつかれないように手をレジ下の非常ボタンに伸ばそうとするが、口裂け女はレジ台に膝を乗せ、身を乗り出しそれを阻止した。
すごい力だ。男の俺よりも遥かに強い。

「ダメ。私の質問に答えるまでは押させないわ」

「んぁあ!もう勘弁してくれ!顔は可愛いけどそういう所はダメ!はい以上!いいだろ!もう警察に通報していい!?」

「嘘つき...私のどこが可愛いっていうのよ」

「そのサラサラのいい匂いする髪の毛とか、見つめられたらドキドキするような大きな瞳とか、耳元で囁かれると変な気分になりそうになるその声とかもう一周回ってその口も可愛いわ!はい!もうこれでいいか!?通報させろ」

「んなっ...やっ...な、何よそれ、は、はぁ」

俺の顔を間近で見つめる口裂け女は、恥ずかしそうに目をそらした。
鎌をカランとレジ台に置いたかと思えば、俺の両腕を掴んでじっと至近距離で俺の事を見つめる。

「な...何ですか」

「あなた、こうして見たら可愛い顔しているわね」

まっすぐな瞳でそう言われると困る。
穴が空くほど俺の顔を見つめる口裂け女の視線は俺のネームプレートに移動した。

「松村、マツムラ。下の名前は何て言うの」

答えないと今にも殺されそうなので、俺は渋々答えるしかない。

「ハルです」

「どういう字を書くの?」

「天気が晴れるの晴と書いてハルと読みますけど、その何で俺の名前なんて」

「へぇ...素敵な名前ね。気に入ったわ。ふふ、ハル、ハル。ふふ、ふふふ」

「何が面白いんですか」

全く今ので笑える所なかったと思うけど何この人怖い。

俺の両腕を解放しマスクを装着すると、トートバックから高級そうなお財布を取り出して、5000円払った。
5000円を手に持ち確認する。
ちゃんとした、人間のお金だ!きゅうりじゃない!

「あっ...ありがとうございます」

俺が驚きながらもお釣りを準備している間に、口裂け女は鎌をトートバックに直にしまい込み、俺から受け取ったお釣りもお財布にしまいこんでトートバックに入れた。

サングラスと帽子をキュッと深くまで被ると、

「また来るわ、ハル」

「あ、ありがとうございます」

頼むから次は鎌を置いてきてね。

「私が次に来るまでに私以外の女に接客なんかしたら殺すわよ」

無茶言うな。

コンビニバイト三日目にして命の危険を感じる事になったんですけど誰か助けて切実に。



しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

白苑後宮の薬膳女官

絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。 ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。 薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。 静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...