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深夜のコンビニバイト四十八日目 泉の女神来店
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深夜のコンビニバイト四十八日目。
ピロリロピロリロ。
「いらっしゃいま...」
「大変だ!!助けてくれ!」
突然コンビニに駆け込んできたのは、吸血姫だった。
というか今日もかよ。
昨日は死神さんが駆け込んできたけど、今日も誰かコンビニに駆け込んでくるのかよ。
今日のお客様は吸血姫だった。
「大変なんだ...ウッ...金太郎が、金太郎の奴が」
「はぁ、金太郎さんが何かあったんですか」
昨日のような大事件が起こった後だと、もう俺は何が起きても別に驚かない謎の自信ができていた。
ピロリロピロリロ。
「奴が....ウッ...も、文字通り金太郎になってしまったのだ」
泣きそうな声で入り口を指差す吸血姫。
何言ってんだか、と入り口を見ると。
「こんばんは、夜分遅くにお邪魔します」
神々しく金色の後光が差し、髪は女神のようなふわふわの金髪ショートヘアー、誰しもが振り返るような美形、抜群のスタイルの目が覚めるような美女が白いワンピースを着て入り口に立ち、天使のように微笑んでいた。
脇毛もない!ゴツゴツの筋肉もない!オカ...オネエ要素ゼロ!髭もなくツルツルだ!
「な、何ですか。誰なんですかあれは」
くっと唇をかみしめて、吸血姫は目をきつく閉じた。
「金太郎だ...」
「冗談はよしてくださいよ。はっはっは、はっはっ、おもしろーい」
「笑い事ではないのだ。あいつは金太郎だ。あ、いや、金太郎であって金太郎でない存在なのかもしれない」
「いやどこをどう見たらガチムチオネエの金太郎さんがこんなスリム美女になるんですか。彼女に失礼ですよ」
んん!っと何を言ってもママがわかってくれないという子供の表情を浮かべ、吸血姫は美女の元へズカズカ向かっていき、ワンピースの豊かな胸元をひっ掴み叫んだ。
「一応金太郎っぽいけど金太郎じゃないかもしれない金太郎なのだなぁ!金太郎!」
「は、はい!!な、何でしょう」
「ほら見ろそういうことだ」
いや、今完全に強制だっただろ、それに意味がわからないぞ。
「一からこの茶番の説明をしてくれますか」
「だから~だっかっらっ!茶番ではないと申しておるだろうが!!」
吸血姫はアー!!と頭をかきむしる。
「時は昨日に遡る。妾と金太郎は店長に振り向いてもらうべくこの世界で密かに大人気の最近できた美しくなれる女神の泉というびゅうていスポットを発見し、いってみる事にしたのだ」
「いやめっちゃ仲良しやん」
「というのは表向きで、実はその泉には、密かな噂があってムカつく相手を泉に突き落とすと、性格が良くなって帰って来るなどとも聞いてな、最近あやつ妾に対して容赦がなくなってきたからな。ちょっと奴に試してみようと思ったのだ」
さっきのなし。怖い、女怖い。
「入場料は一万円。ライバル同士で向かった泉に行ったら、立て札に「泉の水を直接飲むとお肌ぷるぷる」とかいてあってな。金太郎がそれに過剰に反応したのだ」
「なんとなく予想がついた」
「金太郎は一万円の元を取ろうと水を手にすくい飲む飲み方から丸まって泉から直接飲み始めたのだ。そしたら不幸なことにバランスを崩して泉に転がり落ちたのだ」
「いや馬鹿でしょ...」
ちょっと笑いそうになったよ何やってんの金太郎さん。
「馬鹿とかいうではない!奴も一生懸命だったのだ。美しくなろうと...くっ...奴は泉から戻ってこなかった。代わりに泉から女神と名乗る女が出てきて」
「あなたが落としたのはこの金の金太郎さんですか」
「あなたが落としたのはこの銀の金太郎さんですか」
うん、なんか聞いた事あるぞ。
「金太郎は銀じゃないだろ。金の太郎だろう」
「わかりました。では、金の金太郎さんですね」
「この金色の金太郎が出てきたのだ。文字通り奴は本当の金太郎になってしまったのだ」
ちょっと何うまい事言ってんの。
金太郎さんは、後光が輝き、全体的にキラキラと輝いている。
「それから本物のあやつがもどってこないのだぁ...妾はどうすれば...こんな事なら一緒に行かねばよかった...性格が良くなる、なんて言って...全くの別人ではないか」
泣きそうな声で俯く吸血姫。
重く責任を感じているのだろう。
「大丈夫ですか?吸血姫さん、どこが具合でも悪いのですか?」
「やかましい!金太郎はそんな事言わん!」
偽物の金太郎さんの心配を鬱陶しそうに吸血姫は振りほどいた。
「...もう一回泉に行ってみる必要がありますね」
俺は、至極当たり前の事を口にしたつもりだが、吸血姫は酷く渋い顔をした。
「どうしたんですか」
「.....そうだな。それが一番なのだが、もし、もし本当に奴が戻らないかもしれないと思うと泉に行くのが怖いのだ。こんな綺麗な金太郎は金太郎ではない!脇毛生えてて、ゴリラみたいな力で、声をわざと高くしてて筋肉で体が固い奴なんだ!」
いや神妙な顔でボロクソ言うなよ。
でも、吸血姫と金太郎はライバルであり友達なのだと俺は感じた。
ピロリロピロリロ。
「ハァー、コンビニ涼しいー今日もかなりお金集まったなー。ストロングゼロ買って飲も」
白い布を巻きつけたような格好で、白髪のサラリとした長い髪をなびかせながら頭に花の冠をつけた美しい女性がふらふらとやってきた。
「あー!!お主!泉の女神ではないか!!」
吸血姫が指差して叫んだ。
「んぁ?」
ハァンという顔でこっちを見た女神、らしい女性は頭をボリボリかきながら目をそらした。
「人違いっすよ、勘弁してくだせぇ」
「いやお主だろ!!妾は見たぞ!金の金太郎か銀の金太郎かどっちにするか聞いていただろう!?」
「ん?あぁー、泉に来た人か。いろんな人来すぎてい、いちいち覚えてないけど」
目をぐりんぐりん泳がせ、何かを隠すように足早にコンビニを歩き回る女神らしき女性は、ストロングゼロとあたりめを手に取りレジにやって来た。
「ん、レジ頼むわ」
「何か、俺の中の美しい女神のイメージが崩れて消えそうなんですけど」
「それ女神童貞なだけだから。まー、他の女神もこんなもんでしょ」
「お主...泉にいたときとはまるで別人のようなのだが」
「き、気のせいじゃない?」
焦ったように早口になる女神らしき女性。
「泉に落ちた本物の金太郎を返してくれ!!こんな綺麗な金太郎はいらん!」
女神らしき人の腕にすがりつく吸血姫に、
「あ、もしかしてあの、泉に顔を突っ込んでそのまま落水した人?あれはちょい笑ったわ。んん、でもさ。あの泉って本人より確実にいいものを金と銀で提示してるんだよね。金と銀って言っても、正直銀より金の方がいいってわけでもなくあたしの泉では金にも、銀にも銀なりのいいところがあるようにしてるよ」
「そんな事はどうでもいいのだ!」
「どうして?本人より確実にいいものが泉から出てくるのにどうして本物じゃないとダメなの?テレビに出てくるアイドルを泉に入れたら自分の事を好いてくれる自分だけの金のアイドルが出てくるし、ブサイクな犬でも可愛くなって懐いた銀の犬が出てくるんだよ。ボロい斧だって金の斧になる。本物よりよっぽど需要のある、素晴らしい偽物が出てくる泉だよ。どうして劣化した本物を欲しがるの?」
理解できないと言うような目でさらっと言う女神に、吸血姫が胸ぐらに掴みかかった。
「完璧な偽物より、不完全な本物の方がいいに決まっているだろう!全く別のものになっておるではないか!あいつは確かに綺麗とは言えなかったかもしれないぞ。脇毛も生えてたし、髭もちょっとたまに剃り残してたりしてたけど、こんなつまらん奴よりよっぽど面白い奴だったぞ!」
金の金太郎を指差して訴える吸血姫に、
「あそこには色んなお客が来たよ。彼氏をイケメンにしたい、友達の性格を変えたい、気に入らない奴の性格を変えたい」
指を折るようにして話す女神に、吸血姫は辛そうな顔をして目を閉じた。
「あたしは女神だから普通の人間とは違うよ。貴方こそ人間じゃないでしょう、その牙。あたしは本物だからさ。わかるんだよね」
あたしは本物だから...なんか引っかかる言い方だな。ん、待てよ....。
「偽物、本物....あなたが本物。もしかして泉の女神をやっている女神は貴方の偽物なんじゃないですか?」
「確かに、あの女神には後光が差していた。お世辞にも貴様と同一人物には見えなかった。貴様偽物を表に出して女神さぼってたな!!」
吸血姫にビシッと指を刺されてゲッという顔をする女神は、
「...さ、さて帰るかなー」
くるりと俺たちに背を向けて入り口に早歩きを始めた。
「おい待て貴様」
ピロリロピロリロ。
「ハァイ♡」
俺はこんなに恐ろしいハァイを聞いたことがなかった。
「ヒッ!」
コンビニの入り口にびしょ濡れの汚い方の金太郎さんが立って女神をにっこり見下ろしていた。
まるで太平洋を泳いで横断してきたかのような風貌だった。
「なっ!お主どうやって」
驚きながらも物凄く嬉しそうな吸血姫に、
「泉に落ちた後、泉パークっていう天国みたいな所に辿り着いたけど、そこには店長がいなかったわ。だから出なくちゃってそこから泳いで上に這い上がったのよ。ちょい時間かかっちゃったけど♡」
「嘘でしょ...どんだけ深いと思ってんのよ化け物なの?」
「化け物じゃねえよ。あたしはここのコンビニ店長も認めるクソ可愛いオネエだっつーの。それより何よこの子、あんたの友達?趣味悪いわねぇ」
格好いい。
綺麗な金太郎を見ながら吸血姫に目配せする金太郎さんに、
「ハッ笑わせる。友達などではない、ただのハリボテの偽物だ」
吸血姫と金太郎さんはじりじりと入り口へと追い詰める。
「泉の水を飲んでも肌がプルプルにならないんだけどぉ?」
ぼきぼきと両手を鳴らす金太郎さんと、
「乙女を怒らせると怖いということを教えてやろうではないか」
牙を見せるようににっこり笑う吸血姫に、女神は泣きべそをかいて叫んだ。
「に、逃げるよ!!金の金太郎!!」
「はい、女神様」
金の金太郎が女神をお姫様抱っこしたかと思えば脱兎のごとくコンビニを飛び出した。
「あたしが逃すわけないでしょ~?」
「金太郎、後で貴様に謝らなくてはならないことがある」
「話は後で聞くわ。行きましょう!」
「あ、あぁ!」
店長に恋する乙女コンビもコンビニを飛び出して走り出した。
明日の朝には泉も営業も壊滅してそうだな。
ピロリロピロリロ。
「いらっしゃいま...」
「大変だ!!助けてくれ!」
突然コンビニに駆け込んできたのは、吸血姫だった。
というか今日もかよ。
昨日は死神さんが駆け込んできたけど、今日も誰かコンビニに駆け込んでくるのかよ。
今日のお客様は吸血姫だった。
「大変なんだ...ウッ...金太郎が、金太郎の奴が」
「はぁ、金太郎さんが何かあったんですか」
昨日のような大事件が起こった後だと、もう俺は何が起きても別に驚かない謎の自信ができていた。
ピロリロピロリロ。
「奴が....ウッ...も、文字通り金太郎になってしまったのだ」
泣きそうな声で入り口を指差す吸血姫。
何言ってんだか、と入り口を見ると。
「こんばんは、夜分遅くにお邪魔します」
神々しく金色の後光が差し、髪は女神のようなふわふわの金髪ショートヘアー、誰しもが振り返るような美形、抜群のスタイルの目が覚めるような美女が白いワンピースを着て入り口に立ち、天使のように微笑んでいた。
脇毛もない!ゴツゴツの筋肉もない!オカ...オネエ要素ゼロ!髭もなくツルツルだ!
「な、何ですか。誰なんですかあれは」
くっと唇をかみしめて、吸血姫は目をきつく閉じた。
「金太郎だ...」
「冗談はよしてくださいよ。はっはっは、はっはっ、おもしろーい」
「笑い事ではないのだ。あいつは金太郎だ。あ、いや、金太郎であって金太郎でない存在なのかもしれない」
「いやどこをどう見たらガチムチオネエの金太郎さんがこんなスリム美女になるんですか。彼女に失礼ですよ」
んん!っと何を言ってもママがわかってくれないという子供の表情を浮かべ、吸血姫は美女の元へズカズカ向かっていき、ワンピースの豊かな胸元をひっ掴み叫んだ。
「一応金太郎っぽいけど金太郎じゃないかもしれない金太郎なのだなぁ!金太郎!」
「は、はい!!な、何でしょう」
「ほら見ろそういうことだ」
いや、今完全に強制だっただろ、それに意味がわからないぞ。
「一からこの茶番の説明をしてくれますか」
「だから~だっかっらっ!茶番ではないと申しておるだろうが!!」
吸血姫はアー!!と頭をかきむしる。
「時は昨日に遡る。妾と金太郎は店長に振り向いてもらうべくこの世界で密かに大人気の最近できた美しくなれる女神の泉というびゅうていスポットを発見し、いってみる事にしたのだ」
「いやめっちゃ仲良しやん」
「というのは表向きで、実はその泉には、密かな噂があってムカつく相手を泉に突き落とすと、性格が良くなって帰って来るなどとも聞いてな、最近あやつ妾に対して容赦がなくなってきたからな。ちょっと奴に試してみようと思ったのだ」
さっきのなし。怖い、女怖い。
「入場料は一万円。ライバル同士で向かった泉に行ったら、立て札に「泉の水を直接飲むとお肌ぷるぷる」とかいてあってな。金太郎がそれに過剰に反応したのだ」
「なんとなく予想がついた」
「金太郎は一万円の元を取ろうと水を手にすくい飲む飲み方から丸まって泉から直接飲み始めたのだ。そしたら不幸なことにバランスを崩して泉に転がり落ちたのだ」
「いや馬鹿でしょ...」
ちょっと笑いそうになったよ何やってんの金太郎さん。
「馬鹿とかいうではない!奴も一生懸命だったのだ。美しくなろうと...くっ...奴は泉から戻ってこなかった。代わりに泉から女神と名乗る女が出てきて」
「あなたが落としたのはこの金の金太郎さんですか」
「あなたが落としたのはこの銀の金太郎さんですか」
うん、なんか聞いた事あるぞ。
「金太郎は銀じゃないだろ。金の太郎だろう」
「わかりました。では、金の金太郎さんですね」
「この金色の金太郎が出てきたのだ。文字通り奴は本当の金太郎になってしまったのだ」
ちょっと何うまい事言ってんの。
金太郎さんは、後光が輝き、全体的にキラキラと輝いている。
「それから本物のあやつがもどってこないのだぁ...妾はどうすれば...こんな事なら一緒に行かねばよかった...性格が良くなる、なんて言って...全くの別人ではないか」
泣きそうな声で俯く吸血姫。
重く責任を感じているのだろう。
「大丈夫ですか?吸血姫さん、どこが具合でも悪いのですか?」
「やかましい!金太郎はそんな事言わん!」
偽物の金太郎さんの心配を鬱陶しそうに吸血姫は振りほどいた。
「...もう一回泉に行ってみる必要がありますね」
俺は、至極当たり前の事を口にしたつもりだが、吸血姫は酷く渋い顔をした。
「どうしたんですか」
「.....そうだな。それが一番なのだが、もし、もし本当に奴が戻らないかもしれないと思うと泉に行くのが怖いのだ。こんな綺麗な金太郎は金太郎ではない!脇毛生えてて、ゴリラみたいな力で、声をわざと高くしてて筋肉で体が固い奴なんだ!」
いや神妙な顔でボロクソ言うなよ。
でも、吸血姫と金太郎はライバルであり友達なのだと俺は感じた。
ピロリロピロリロ。
「ハァー、コンビニ涼しいー今日もかなりお金集まったなー。ストロングゼロ買って飲も」
白い布を巻きつけたような格好で、白髪のサラリとした長い髪をなびかせながら頭に花の冠をつけた美しい女性がふらふらとやってきた。
「あー!!お主!泉の女神ではないか!!」
吸血姫が指差して叫んだ。
「んぁ?」
ハァンという顔でこっちを見た女神、らしい女性は頭をボリボリかきながら目をそらした。
「人違いっすよ、勘弁してくだせぇ」
「いやお主だろ!!妾は見たぞ!金の金太郎か銀の金太郎かどっちにするか聞いていただろう!?」
「ん?あぁー、泉に来た人か。いろんな人来すぎてい、いちいち覚えてないけど」
目をぐりんぐりん泳がせ、何かを隠すように足早にコンビニを歩き回る女神らしき女性は、ストロングゼロとあたりめを手に取りレジにやって来た。
「ん、レジ頼むわ」
「何か、俺の中の美しい女神のイメージが崩れて消えそうなんですけど」
「それ女神童貞なだけだから。まー、他の女神もこんなもんでしょ」
「お主...泉にいたときとはまるで別人のようなのだが」
「き、気のせいじゃない?」
焦ったように早口になる女神らしき女性。
「泉に落ちた本物の金太郎を返してくれ!!こんな綺麗な金太郎はいらん!」
女神らしき人の腕にすがりつく吸血姫に、
「あ、もしかしてあの、泉に顔を突っ込んでそのまま落水した人?あれはちょい笑ったわ。んん、でもさ。あの泉って本人より確実にいいものを金と銀で提示してるんだよね。金と銀って言っても、正直銀より金の方がいいってわけでもなくあたしの泉では金にも、銀にも銀なりのいいところがあるようにしてるよ」
「そんな事はどうでもいいのだ!」
「どうして?本人より確実にいいものが泉から出てくるのにどうして本物じゃないとダメなの?テレビに出てくるアイドルを泉に入れたら自分の事を好いてくれる自分だけの金のアイドルが出てくるし、ブサイクな犬でも可愛くなって懐いた銀の犬が出てくるんだよ。ボロい斧だって金の斧になる。本物よりよっぽど需要のある、素晴らしい偽物が出てくる泉だよ。どうして劣化した本物を欲しがるの?」
理解できないと言うような目でさらっと言う女神に、吸血姫が胸ぐらに掴みかかった。
「完璧な偽物より、不完全な本物の方がいいに決まっているだろう!全く別のものになっておるではないか!あいつは確かに綺麗とは言えなかったかもしれないぞ。脇毛も生えてたし、髭もちょっとたまに剃り残してたりしてたけど、こんなつまらん奴よりよっぽど面白い奴だったぞ!」
金の金太郎を指差して訴える吸血姫に、
「あそこには色んなお客が来たよ。彼氏をイケメンにしたい、友達の性格を変えたい、気に入らない奴の性格を変えたい」
指を折るようにして話す女神に、吸血姫は辛そうな顔をして目を閉じた。
「あたしは女神だから普通の人間とは違うよ。貴方こそ人間じゃないでしょう、その牙。あたしは本物だからさ。わかるんだよね」
あたしは本物だから...なんか引っかかる言い方だな。ん、待てよ....。
「偽物、本物....あなたが本物。もしかして泉の女神をやっている女神は貴方の偽物なんじゃないですか?」
「確かに、あの女神には後光が差していた。お世辞にも貴様と同一人物には見えなかった。貴様偽物を表に出して女神さぼってたな!!」
吸血姫にビシッと指を刺されてゲッという顔をする女神は、
「...さ、さて帰るかなー」
くるりと俺たちに背を向けて入り口に早歩きを始めた。
「おい待て貴様」
ピロリロピロリロ。
「ハァイ♡」
俺はこんなに恐ろしいハァイを聞いたことがなかった。
「ヒッ!」
コンビニの入り口にびしょ濡れの汚い方の金太郎さんが立って女神をにっこり見下ろしていた。
まるで太平洋を泳いで横断してきたかのような風貌だった。
「なっ!お主どうやって」
驚きながらも物凄く嬉しそうな吸血姫に、
「泉に落ちた後、泉パークっていう天国みたいな所に辿り着いたけど、そこには店長がいなかったわ。だから出なくちゃってそこから泳いで上に這い上がったのよ。ちょい時間かかっちゃったけど♡」
「嘘でしょ...どんだけ深いと思ってんのよ化け物なの?」
「化け物じゃねえよ。あたしはここのコンビニ店長も認めるクソ可愛いオネエだっつーの。それより何よこの子、あんたの友達?趣味悪いわねぇ」
格好いい。
綺麗な金太郎を見ながら吸血姫に目配せする金太郎さんに、
「ハッ笑わせる。友達などではない、ただのハリボテの偽物だ」
吸血姫と金太郎さんはじりじりと入り口へと追い詰める。
「泉の水を飲んでも肌がプルプルにならないんだけどぉ?」
ぼきぼきと両手を鳴らす金太郎さんと、
「乙女を怒らせると怖いということを教えてやろうではないか」
牙を見せるようににっこり笑う吸血姫に、女神は泣きべそをかいて叫んだ。
「に、逃げるよ!!金の金太郎!!」
「はい、女神様」
金の金太郎が女神をお姫様抱っこしたかと思えば脱兎のごとくコンビニを飛び出した。
「あたしが逃すわけないでしょ~?」
「金太郎、後で貴様に謝らなくてはならないことがある」
「話は後で聞くわ。行きましょう!」
「あ、あぁ!」
店長に恋する乙女コンビもコンビニを飛び出して走り出した。
明日の朝には泉も営業も壊滅してそうだな。
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