58 / 96
深夜のコンビニバイト五十八日目 おやゆび姫来店
しおりを挟む
コンビニの前には、店長が手塩にかけて育てている花壇がある。
店長はいつもお気に入りのぞうさんのじょうろを片手に、朝方コンビニの前の花壇にお水をあげている。
その時の店長の顔といったらまるで仏様のような安らかな顔をしている。
よほど花が好きなんだろうなと、感じながら俺はコンビニの窓から店長が花壇に水をあげている様子を見ていた。
だが、今日の店長は少し様子が違った。
「店長....?」
花に向かって、何かを話しかけている。
孤独な人は、植物や物に話しかけるというが店長はもしかして何か孤独を感じているのだろうか。
29歳にもなって彼女がいない事を気にしているのだろうか。
凄くにこやかに、天使のような顔で花に語りかける店長に俺は胸が痛くなった。
ピロリロピロリロ。
「店長!!!!」
「どうしたんだぃ...村松君」
びくりと体を震わせた店長はバッとこちらを振り向く。
「店長には、俺がいますよ!!」
「.....うん、ありがとう。村松君突然どうしたんだぃ?」
「店長、悩みがあるなら俺に話してください!!」
「特にないよ」
「だって今花に向かって話しかけていたじゃないですか!!」
「あぁ、村松君にはそう見えてたのか...おいで、怖くないよ」
どういう事だ?また話しかけてるぞ。
店長は、花達の中に手を入れゆっくりと手を引き抜いた。
「ほら」
店長の大きな手には、ちょこんと耳がエルフのようにツンと耳がとんがった、ピンク色のドレスを着た可愛らしいお姫様が乗っかっていた。
「わたくしは花の妖精です」
「え?」
「私は彼の丁寧に花を育てる心が私を生みました。私はこのお方の育てたお花から生まれた花の妖精なのです。花を愛する人しか見えない、彼は私だけの王子様なのです」
「え?」
「村松君、彼女は花の妖精だよ」
満遍の笑みで俺に小さい女の子を紹介する店長を見て俺は目をバシャバシャ泳がせた。
え?て、店長?何いってんの頭がファンタジーに染まっちゃってるよ。
深夜のコンビニバイト五十八日目。
「お花に水をあげると、彼女も喜ぶんだ」
「はい、お水をもらえると私の体の芯から潤って気持ちいいんです。ぞうさんのじょうろもとっても可愛くて大好きです」
「そうですか.....」
「日光浴が大好きなんだって。たまにこうして見にいくと、花の上でお昼寝しててね」
「うふふ、ポカポカの太陽があったかくて気持ちいいんです~でも逆に雨の日や風の日は飛ばされそうになって怖いんです」
ツンとお花のつつきながらふふふと微笑む店長。
「花の上でお昼寝とはまた可愛らしいですね」
「そうなんだ、今日は昼から天気予報で嵐が来るらしいから店の中にこの子を避難させてあげないと」
「えぇ!?この花壇どうするんですか!?」
「大丈夫だよ。花の妖精がいるお花を植木鉢の方に植え替えて休憩室に持ってくるだけだから」
店長が全然大丈夫じゃないよ.....。
昼から来るバイトの子とかが休憩室に植木鉢があって
「どうしたんですか?この植木鉢」
「花の妖精がいるんだ」
なんて言ってたらビジュアルも相まって絶対頭おかしいと思われるよ店長。
「花の妖精は雷が怖いんだって、俺が休憩室で守ってあげないと...」
「うふふ、頼もしいわ。王子様」
いや店長雷怖いのにどうしちゃったの!?
めちゃくちゃ頼もしいんだけど!?本当、自分より弱い人がいると頼もしくなるなぁ店長は。
店長の花の妖精との対話(?)を眉をピクピクさせながら聞いていた俺。
入れ替わりで退勤前に出勤してきた張山さんが、休憩室で植木鉢の花の妖精に体育座りで話しかけている店長を見て、両手で顔を覆った。
「あれは何だ」
「花の妖精に話しかけているみたいなんです」
そんな事言えるか!!店長が完全にやばい奴認定されてしまう。
「えっと、お、俺もよくわからなくて」
こういうしかないよ俺は。俺だって何が起きてるのかよくわからないんだもの!!
「店長、何してるの」
あぁ!俺が止めるより先に聞きに行っちゃったよ!!
「あぁ、張山君。俺が愛情を込めて育てた花から花の妖精が生まれたんだ。ほら、見て」
「.....」
何も言わずに立ち尽くす張山さんの前に俺は立ちふさがる。
「見えますよね!!?花の妖精!!うわぁ!かわいいなぁ!!ね?ね?張山さん?」
張山さんは、何も言わない。
そりゃそうだ。
最初から花の妖精なんて"いない"のだから。
店長が俺に花の妖精なるものを紹介したあの瞬間から、店長はただの花にずっと話しかけていた。にこやかに、和やかなその雰囲気を壊したくなくて、困惑しながら話を合わせていたけれど、まともな第三者が指摘したら現実に戻されてしまうに違いない。
店長は店長の激務で疲れているのだろう。だから、花の妖精なんて幻覚を見てしまっているんだ。
だが、目を覚ましたら最後店長はどれだけショックを受けるだろう。あんなに楽しそうに花に話しかけていた店長が、植木鉢に心配そうに話しかけながら花をうつす店長が、花の妖精なんていない事を知ったらどれだけ悲しい顔をするだろう。
だから俺は店長に合わせることにしたんだ。張山さんも、俺に乗っかってくれ。合わせてください。いやわかってるよ困惑するのはいないものをいるものとして接するのは難しいけど、店長の為なんですよ頼みますよ。
「本当だ。すごく可愛い花の妖精だね。店長が心を込めて育てた証だ」
張山さんはいつものイケメンスマイルで店長に答えた。
張山さんには"視"えているのか!?ニッコリイケメンスマイルのまま、俺とすれ違う時俺は張山さんに小声で、
「ありがとうございます。張山さん」
「いいんだよ俺も店長が可愛...店長が嬉しそうだからね。このまま行こう。夢を見させてあげよう」
パンと二人でハイタッチをすると、俺は店長だけに"視"えている花の妖精がいるらしい植木鉢の花と店長に背を向け、退勤した。
「お疲れ様です、店長...いつも、お疲れ様です」
店長はいつもお気に入りのぞうさんのじょうろを片手に、朝方コンビニの前の花壇にお水をあげている。
その時の店長の顔といったらまるで仏様のような安らかな顔をしている。
よほど花が好きなんだろうなと、感じながら俺はコンビニの窓から店長が花壇に水をあげている様子を見ていた。
だが、今日の店長は少し様子が違った。
「店長....?」
花に向かって、何かを話しかけている。
孤独な人は、植物や物に話しかけるというが店長はもしかして何か孤独を感じているのだろうか。
29歳にもなって彼女がいない事を気にしているのだろうか。
凄くにこやかに、天使のような顔で花に語りかける店長に俺は胸が痛くなった。
ピロリロピロリロ。
「店長!!!!」
「どうしたんだぃ...村松君」
びくりと体を震わせた店長はバッとこちらを振り向く。
「店長には、俺がいますよ!!」
「.....うん、ありがとう。村松君突然どうしたんだぃ?」
「店長、悩みがあるなら俺に話してください!!」
「特にないよ」
「だって今花に向かって話しかけていたじゃないですか!!」
「あぁ、村松君にはそう見えてたのか...おいで、怖くないよ」
どういう事だ?また話しかけてるぞ。
店長は、花達の中に手を入れゆっくりと手を引き抜いた。
「ほら」
店長の大きな手には、ちょこんと耳がエルフのようにツンと耳がとんがった、ピンク色のドレスを着た可愛らしいお姫様が乗っかっていた。
「わたくしは花の妖精です」
「え?」
「私は彼の丁寧に花を育てる心が私を生みました。私はこのお方の育てたお花から生まれた花の妖精なのです。花を愛する人しか見えない、彼は私だけの王子様なのです」
「え?」
「村松君、彼女は花の妖精だよ」
満遍の笑みで俺に小さい女の子を紹介する店長を見て俺は目をバシャバシャ泳がせた。
え?て、店長?何いってんの頭がファンタジーに染まっちゃってるよ。
深夜のコンビニバイト五十八日目。
「お花に水をあげると、彼女も喜ぶんだ」
「はい、お水をもらえると私の体の芯から潤って気持ちいいんです。ぞうさんのじょうろもとっても可愛くて大好きです」
「そうですか.....」
「日光浴が大好きなんだって。たまにこうして見にいくと、花の上でお昼寝しててね」
「うふふ、ポカポカの太陽があったかくて気持ちいいんです~でも逆に雨の日や風の日は飛ばされそうになって怖いんです」
ツンとお花のつつきながらふふふと微笑む店長。
「花の上でお昼寝とはまた可愛らしいですね」
「そうなんだ、今日は昼から天気予報で嵐が来るらしいから店の中にこの子を避難させてあげないと」
「えぇ!?この花壇どうするんですか!?」
「大丈夫だよ。花の妖精がいるお花を植木鉢の方に植え替えて休憩室に持ってくるだけだから」
店長が全然大丈夫じゃないよ.....。
昼から来るバイトの子とかが休憩室に植木鉢があって
「どうしたんですか?この植木鉢」
「花の妖精がいるんだ」
なんて言ってたらビジュアルも相まって絶対頭おかしいと思われるよ店長。
「花の妖精は雷が怖いんだって、俺が休憩室で守ってあげないと...」
「うふふ、頼もしいわ。王子様」
いや店長雷怖いのにどうしちゃったの!?
めちゃくちゃ頼もしいんだけど!?本当、自分より弱い人がいると頼もしくなるなぁ店長は。
店長の花の妖精との対話(?)を眉をピクピクさせながら聞いていた俺。
入れ替わりで退勤前に出勤してきた張山さんが、休憩室で植木鉢の花の妖精に体育座りで話しかけている店長を見て、両手で顔を覆った。
「あれは何だ」
「花の妖精に話しかけているみたいなんです」
そんな事言えるか!!店長が完全にやばい奴認定されてしまう。
「えっと、お、俺もよくわからなくて」
こういうしかないよ俺は。俺だって何が起きてるのかよくわからないんだもの!!
「店長、何してるの」
あぁ!俺が止めるより先に聞きに行っちゃったよ!!
「あぁ、張山君。俺が愛情を込めて育てた花から花の妖精が生まれたんだ。ほら、見て」
「.....」
何も言わずに立ち尽くす張山さんの前に俺は立ちふさがる。
「見えますよね!!?花の妖精!!うわぁ!かわいいなぁ!!ね?ね?張山さん?」
張山さんは、何も言わない。
そりゃそうだ。
最初から花の妖精なんて"いない"のだから。
店長が俺に花の妖精なるものを紹介したあの瞬間から、店長はただの花にずっと話しかけていた。にこやかに、和やかなその雰囲気を壊したくなくて、困惑しながら話を合わせていたけれど、まともな第三者が指摘したら現実に戻されてしまうに違いない。
店長は店長の激務で疲れているのだろう。だから、花の妖精なんて幻覚を見てしまっているんだ。
だが、目を覚ましたら最後店長はどれだけショックを受けるだろう。あんなに楽しそうに花に話しかけていた店長が、植木鉢に心配そうに話しかけながら花をうつす店長が、花の妖精なんていない事を知ったらどれだけ悲しい顔をするだろう。
だから俺は店長に合わせることにしたんだ。張山さんも、俺に乗っかってくれ。合わせてください。いやわかってるよ困惑するのはいないものをいるものとして接するのは難しいけど、店長の為なんですよ頼みますよ。
「本当だ。すごく可愛い花の妖精だね。店長が心を込めて育てた証だ」
張山さんはいつものイケメンスマイルで店長に答えた。
張山さんには"視"えているのか!?ニッコリイケメンスマイルのまま、俺とすれ違う時俺は張山さんに小声で、
「ありがとうございます。張山さん」
「いいんだよ俺も店長が可愛...店長が嬉しそうだからね。このまま行こう。夢を見させてあげよう」
パンと二人でハイタッチをすると、俺は店長だけに"視"えている花の妖精がいるらしい植木鉢の花と店長に背を向け、退勤した。
「お疲れ様です、店長...いつも、お疲れ様です」
0
あなたにおすすめの小説
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる