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人を食わぬ人狼
Ⅲ
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村の裏側に広がる森の中で、ジェイスは依頼の手掛かりをつかもうと歩きまわった。
森の中は異様に薄暗く不気味で、動物の気配すらしなかった。
そして…
「見てよ…またグールの死骸だよ…くっさいな…」
「あっちにはシカやウサギもたくさん死んでいた…死骸だらけだなこの森は…」
森の中はとにかくたくさんの死骸があった。
シカ、ウサギ、熊…。
そしてそれら死骸を漁りにやってくる怪物…
『死体食らい(グール)』の死骸。
「この死骸にも噛み傷と爪痕はあるけど、どこも食べられてはいないね…殺してから放置か…悪趣味極まりないなぁ」
「噛み跡と爪痕から見ても『人狼』は確定したな…人間しか食べることができない『人狼』は、食料にならない死骸をそのまま放置する…」
「…でもそのせいでグールが集まってきてるんだね…凄い悪循環」
「あぁ…」
ジェイスには…
もうひとつ気になることがあった。
「それにしても数が多すぎる…」
そう…。
まだジェイス達がこの森に入ってから数分たらずだった。
『人狼』は空腹の呪いである。
それゆえ『人狼』の行動は、そのほとんどが空腹を満たすために費やされる。
つまりは人間を襲うことに。
食料にならない動物やグールを殺すのは、自分が襲われたときだけだ。
それなのにも関わらず、この森には『人狼』が襲ったであろう動物やグールの死骸に溢れている。
「村人の言った通り…たしかに村を守っているようにも見えるな…『死体漁り』と呼ばれ死骸を食らうグールだが、時には生きた人も襲う」
「でもそんなことある…?『人狼』が元人間だったって言っても…人間を食べたいっていう欲求に耐えられる『人狼』なんてほとんどいないって聞いたよ?」
「…」
ディページの言うとおりだった。
空腹に耐えられる『人狼』など滅多にいない。
それほど『人狼』が感じる空腹は辛いのだ。
それなのにも関わらず、なぜこの『人狼』は村へも行かず…
食料にもならない動物やグールばかりを殺しているのか。
ジェイスもまだ答えを見つけられずにいた。
「ねぇ帰ろうよ…こういう臭いところは俺ちょっと…」
「お前…悪魔だろ?…こう言うところ好きなんじゃないのか?」
「偏見だよそれ…悪魔バカにしてるでしょ…俺は綺麗好きな悪魔なの!」
「へぇ…」
「全然信じてねーでしょ?」
「お前2カ月もあの村にいたんだろ?この事に全然気づいていなかったのか?」
「ぜーんぜん気づかなかった…ずっと娼館にいたしねぇ…生贄の儀式があるなんてさっきまで知らなかったもん」
相変わらずのいい加減さにジェイスは呆れる。
しかしまぁ、それに突っ込むのも悪魔には無駄だと理解していた。
「村人もなぜこんな数の死体を放置してるんだ…村はすぐ近くだぞ…死骸を放置すればグールが集まってくるなんて子供でも知ってるもんだが…」
「村人もこの森には全然入らないみたいよ?」
「…」
「何考えてるの?」
「奇妙だと思わないか?…村を守る『人狼』…そして毎年行われる生贄の儀式…ずいぶん上手いことできてる」
「…そーいうもんなんじゃないの?」
「…『人狼』が人と共存してるなんて話…聞いたこともないがな…」
…
ジェイス達は一旦村へ戻ることにした。
娼館に戻る頃には日が暮れていて、店は赤いランプの光で妖しげに照らされている。
娼館の中には女を買いにきた村の男達がたくさんいた。
ジェシカは仕事中だったため、仕方なくジェイスは客としてジェシカを指名し、部屋に入った。
「悪いが、あんたの指名料は報酬に上乗せさせてもらうぞ」
「かまいません…それで、何かわかりましたか?」
下着姿のジェシカに興奮して…
ディページは彼女に膝枕をねだった。
「遊んでるわけじゃねーんだぞ!」と叱ろうと思ったジェイスだったが…
話をしている最中は静かになるので、とりあえずその状態で話を進める。
ジェシカも最初は困った様子だったが、そこは男を相手にする娼婦…
手慣れた手つきでディページをあやすように膝枕を受け入れていた。
「やはり『人狼』に間違いないようだ…森中に色んな動物の死骸が放置されていた…痕跡は『人狼』のものとみて間違いないだろう」
「そうですか…」
「だが…やはり疑問は残る…あの森にいる『人狼』はなぜ人を襲わないのか…そしてなぜ毎年この村は『人狼』に生贄を捧げることになったのかもな」
「…」
「アンタは何も知らないのか?」
「ごめんなさい…ただ村をお守りくださる『神狼様』に、一年間の感謝を込めて生贄を捧げるとしか…そう教えられてきましたし…娘にもそう教えてきました」
ジェイスにとっては想像通りの返答だった。
村人は長い間続く風習と言うだけで受け入れている。
当たり前になってしまったものに疑問を持つのは子供くらいなものだ。
いや…
それとジェシカのように当事者になった者か。
「この風習に詳しいものは?」
「生贄のことに関しては、代々村長が仕切っておられます…」
「…そう言えば…生贄と一緒に森に入るのも村長と言っていたな?」
「はい…」
「仕方ない…話を聞きにいくか…」
ジェイスがそう言うと、ディページがぴーんと手を伸ばした。
「なんだ?」
「ジェイス様!僕はお邪魔になると思うので、ここでお留守番しています!」
「…」
ディページが目をキラキラさせてジェイスに言う。
ジェイスから返答がなかったので、ディページはさらに大きい声で付け加えた。
「いい子にしてます!」
「…」
ボコッ!
ジェイスはとりあえずディページを一発殴り…
無理矢理引っ張る。
「…お前に拒否権はない」
「チィッ!!!!!」
森の中は異様に薄暗く不気味で、動物の気配すらしなかった。
そして…
「見てよ…またグールの死骸だよ…くっさいな…」
「あっちにはシカやウサギもたくさん死んでいた…死骸だらけだなこの森は…」
森の中はとにかくたくさんの死骸があった。
シカ、ウサギ、熊…。
そしてそれら死骸を漁りにやってくる怪物…
『死体食らい(グール)』の死骸。
「この死骸にも噛み傷と爪痕はあるけど、どこも食べられてはいないね…殺してから放置か…悪趣味極まりないなぁ」
「噛み跡と爪痕から見ても『人狼』は確定したな…人間しか食べることができない『人狼』は、食料にならない死骸をそのまま放置する…」
「…でもそのせいでグールが集まってきてるんだね…凄い悪循環」
「あぁ…」
ジェイスには…
もうひとつ気になることがあった。
「それにしても数が多すぎる…」
そう…。
まだジェイス達がこの森に入ってから数分たらずだった。
『人狼』は空腹の呪いである。
それゆえ『人狼』の行動は、そのほとんどが空腹を満たすために費やされる。
つまりは人間を襲うことに。
食料にならない動物やグールを殺すのは、自分が襲われたときだけだ。
それなのにも関わらず、この森には『人狼』が襲ったであろう動物やグールの死骸に溢れている。
「村人の言った通り…たしかに村を守っているようにも見えるな…『死体漁り』と呼ばれ死骸を食らうグールだが、時には生きた人も襲う」
「でもそんなことある…?『人狼』が元人間だったって言っても…人間を食べたいっていう欲求に耐えられる『人狼』なんてほとんどいないって聞いたよ?」
「…」
ディページの言うとおりだった。
空腹に耐えられる『人狼』など滅多にいない。
それほど『人狼』が感じる空腹は辛いのだ。
それなのにも関わらず、なぜこの『人狼』は村へも行かず…
食料にもならない動物やグールばかりを殺しているのか。
ジェイスもまだ答えを見つけられずにいた。
「ねぇ帰ろうよ…こういう臭いところは俺ちょっと…」
「お前…悪魔だろ?…こう言うところ好きなんじゃないのか?」
「偏見だよそれ…悪魔バカにしてるでしょ…俺は綺麗好きな悪魔なの!」
「へぇ…」
「全然信じてねーでしょ?」
「お前2カ月もあの村にいたんだろ?この事に全然気づいていなかったのか?」
「ぜーんぜん気づかなかった…ずっと娼館にいたしねぇ…生贄の儀式があるなんてさっきまで知らなかったもん」
相変わらずのいい加減さにジェイスは呆れる。
しかしまぁ、それに突っ込むのも悪魔には無駄だと理解していた。
「村人もなぜこんな数の死体を放置してるんだ…村はすぐ近くだぞ…死骸を放置すればグールが集まってくるなんて子供でも知ってるもんだが…」
「村人もこの森には全然入らないみたいよ?」
「…」
「何考えてるの?」
「奇妙だと思わないか?…村を守る『人狼』…そして毎年行われる生贄の儀式…ずいぶん上手いことできてる」
「…そーいうもんなんじゃないの?」
「…『人狼』が人と共存してるなんて話…聞いたこともないがな…」
…
ジェイス達は一旦村へ戻ることにした。
娼館に戻る頃には日が暮れていて、店は赤いランプの光で妖しげに照らされている。
娼館の中には女を買いにきた村の男達がたくさんいた。
ジェシカは仕事中だったため、仕方なくジェイスは客としてジェシカを指名し、部屋に入った。
「悪いが、あんたの指名料は報酬に上乗せさせてもらうぞ」
「かまいません…それで、何かわかりましたか?」
下着姿のジェシカに興奮して…
ディページは彼女に膝枕をねだった。
「遊んでるわけじゃねーんだぞ!」と叱ろうと思ったジェイスだったが…
話をしている最中は静かになるので、とりあえずその状態で話を進める。
ジェシカも最初は困った様子だったが、そこは男を相手にする娼婦…
手慣れた手つきでディページをあやすように膝枕を受け入れていた。
「やはり『人狼』に間違いないようだ…森中に色んな動物の死骸が放置されていた…痕跡は『人狼』のものとみて間違いないだろう」
「そうですか…」
「だが…やはり疑問は残る…あの森にいる『人狼』はなぜ人を襲わないのか…そしてなぜ毎年この村は『人狼』に生贄を捧げることになったのかもな」
「…」
「アンタは何も知らないのか?」
「ごめんなさい…ただ村をお守りくださる『神狼様』に、一年間の感謝を込めて生贄を捧げるとしか…そう教えられてきましたし…娘にもそう教えてきました」
ジェイスにとっては想像通りの返答だった。
村人は長い間続く風習と言うだけで受け入れている。
当たり前になってしまったものに疑問を持つのは子供くらいなものだ。
いや…
それとジェシカのように当事者になった者か。
「この風習に詳しいものは?」
「生贄のことに関しては、代々村長が仕切っておられます…」
「…そう言えば…生贄と一緒に森に入るのも村長と言っていたな?」
「はい…」
「仕方ない…話を聞きにいくか…」
ジェイスがそう言うと、ディページがぴーんと手を伸ばした。
「なんだ?」
「ジェイス様!僕はお邪魔になると思うので、ここでお留守番しています!」
「…」
ディページが目をキラキラさせてジェイスに言う。
ジェイスから返答がなかったので、ディページはさらに大きい声で付け加えた。
「いい子にしてます!」
「…」
ボコッ!
ジェイスはとりあえずディページを一発殴り…
無理矢理引っ張る。
「…お前に拒否権はない」
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