4 / 56
人を食わぬ人狼
Ⅲ
しおりを挟む
村の裏側に広がる森の中で、ジェイスは依頼の手掛かりをつかもうと歩きまわった。
森の中は異様に薄暗く不気味で、動物の気配すらしなかった。
そして…
「見てよ…またグールの死骸だよ…くっさいな…」
「あっちにはシカやウサギもたくさん死んでいた…死骸だらけだなこの森は…」
森の中はとにかくたくさんの死骸があった。
シカ、ウサギ、熊…。
そしてそれら死骸を漁りにやってくる怪物…
『死体食らい(グール)』の死骸。
「この死骸にも噛み傷と爪痕はあるけど、どこも食べられてはいないね…殺してから放置か…悪趣味極まりないなぁ」
「噛み跡と爪痕から見ても『人狼』は確定したな…人間しか食べることができない『人狼』は、食料にならない死骸をそのまま放置する…」
「…でもそのせいでグールが集まってきてるんだね…凄い悪循環」
「あぁ…」
ジェイスには…
もうひとつ気になることがあった。
「それにしても数が多すぎる…」
そう…。
まだジェイス達がこの森に入ってから数分たらずだった。
『人狼』は空腹の呪いである。
それゆえ『人狼』の行動は、そのほとんどが空腹を満たすために費やされる。
つまりは人間を襲うことに。
食料にならない動物やグールを殺すのは、自分が襲われたときだけだ。
それなのにも関わらず、この森には『人狼』が襲ったであろう動物やグールの死骸に溢れている。
「村人の言った通り…たしかに村を守っているようにも見えるな…『死体漁り』と呼ばれ死骸を食らうグールだが、時には生きた人も襲う」
「でもそんなことある…?『人狼』が元人間だったって言っても…人間を食べたいっていう欲求に耐えられる『人狼』なんてほとんどいないって聞いたよ?」
「…」
ディページの言うとおりだった。
空腹に耐えられる『人狼』など滅多にいない。
それほど『人狼』が感じる空腹は辛いのだ。
それなのにも関わらず、なぜこの『人狼』は村へも行かず…
食料にもならない動物やグールばかりを殺しているのか。
ジェイスもまだ答えを見つけられずにいた。
「ねぇ帰ろうよ…こういう臭いところは俺ちょっと…」
「お前…悪魔だろ?…こう言うところ好きなんじゃないのか?」
「偏見だよそれ…悪魔バカにしてるでしょ…俺は綺麗好きな悪魔なの!」
「へぇ…」
「全然信じてねーでしょ?」
「お前2カ月もあの村にいたんだろ?この事に全然気づいていなかったのか?」
「ぜーんぜん気づかなかった…ずっと娼館にいたしねぇ…生贄の儀式があるなんてさっきまで知らなかったもん」
相変わらずのいい加減さにジェイスは呆れる。
しかしまぁ、それに突っ込むのも悪魔には無駄だと理解していた。
「村人もなぜこんな数の死体を放置してるんだ…村はすぐ近くだぞ…死骸を放置すればグールが集まってくるなんて子供でも知ってるもんだが…」
「村人もこの森には全然入らないみたいよ?」
「…」
「何考えてるの?」
「奇妙だと思わないか?…村を守る『人狼』…そして毎年行われる生贄の儀式…ずいぶん上手いことできてる」
「…そーいうもんなんじゃないの?」
「…『人狼』が人と共存してるなんて話…聞いたこともないがな…」
…
ジェイス達は一旦村へ戻ることにした。
娼館に戻る頃には日が暮れていて、店は赤いランプの光で妖しげに照らされている。
娼館の中には女を買いにきた村の男達がたくさんいた。
ジェシカは仕事中だったため、仕方なくジェイスは客としてジェシカを指名し、部屋に入った。
「悪いが、あんたの指名料は報酬に上乗せさせてもらうぞ」
「かまいません…それで、何かわかりましたか?」
下着姿のジェシカに興奮して…
ディページは彼女に膝枕をねだった。
「遊んでるわけじゃねーんだぞ!」と叱ろうと思ったジェイスだったが…
話をしている最中は静かになるので、とりあえずその状態で話を進める。
ジェシカも最初は困った様子だったが、そこは男を相手にする娼婦…
手慣れた手つきでディページをあやすように膝枕を受け入れていた。
「やはり『人狼』に間違いないようだ…森中に色んな動物の死骸が放置されていた…痕跡は『人狼』のものとみて間違いないだろう」
「そうですか…」
「だが…やはり疑問は残る…あの森にいる『人狼』はなぜ人を襲わないのか…そしてなぜ毎年この村は『人狼』に生贄を捧げることになったのかもな」
「…」
「アンタは何も知らないのか?」
「ごめんなさい…ただ村をお守りくださる『神狼様』に、一年間の感謝を込めて生贄を捧げるとしか…そう教えられてきましたし…娘にもそう教えてきました」
ジェイスにとっては想像通りの返答だった。
村人は長い間続く風習と言うだけで受け入れている。
当たり前になってしまったものに疑問を持つのは子供くらいなものだ。
いや…
それとジェシカのように当事者になった者か。
「この風習に詳しいものは?」
「生贄のことに関しては、代々村長が仕切っておられます…」
「…そう言えば…生贄と一緒に森に入るのも村長と言っていたな?」
「はい…」
「仕方ない…話を聞きにいくか…」
ジェイスがそう言うと、ディページがぴーんと手を伸ばした。
「なんだ?」
「ジェイス様!僕はお邪魔になると思うので、ここでお留守番しています!」
「…」
ディページが目をキラキラさせてジェイスに言う。
ジェイスから返答がなかったので、ディページはさらに大きい声で付け加えた。
「いい子にしてます!」
「…」
ボコッ!
ジェイスはとりあえずディページを一発殴り…
無理矢理引っ張る。
「…お前に拒否権はない」
「チィッ!!!!!」
森の中は異様に薄暗く不気味で、動物の気配すらしなかった。
そして…
「見てよ…またグールの死骸だよ…くっさいな…」
「あっちにはシカやウサギもたくさん死んでいた…死骸だらけだなこの森は…」
森の中はとにかくたくさんの死骸があった。
シカ、ウサギ、熊…。
そしてそれら死骸を漁りにやってくる怪物…
『死体食らい(グール)』の死骸。
「この死骸にも噛み傷と爪痕はあるけど、どこも食べられてはいないね…殺してから放置か…悪趣味極まりないなぁ」
「噛み跡と爪痕から見ても『人狼』は確定したな…人間しか食べることができない『人狼』は、食料にならない死骸をそのまま放置する…」
「…でもそのせいでグールが集まってきてるんだね…凄い悪循環」
「あぁ…」
ジェイスには…
もうひとつ気になることがあった。
「それにしても数が多すぎる…」
そう…。
まだジェイス達がこの森に入ってから数分たらずだった。
『人狼』は空腹の呪いである。
それゆえ『人狼』の行動は、そのほとんどが空腹を満たすために費やされる。
つまりは人間を襲うことに。
食料にならない動物やグールを殺すのは、自分が襲われたときだけだ。
それなのにも関わらず、この森には『人狼』が襲ったであろう動物やグールの死骸に溢れている。
「村人の言った通り…たしかに村を守っているようにも見えるな…『死体漁り』と呼ばれ死骸を食らうグールだが、時には生きた人も襲う」
「でもそんなことある…?『人狼』が元人間だったって言っても…人間を食べたいっていう欲求に耐えられる『人狼』なんてほとんどいないって聞いたよ?」
「…」
ディページの言うとおりだった。
空腹に耐えられる『人狼』など滅多にいない。
それほど『人狼』が感じる空腹は辛いのだ。
それなのにも関わらず、なぜこの『人狼』は村へも行かず…
食料にもならない動物やグールばかりを殺しているのか。
ジェイスもまだ答えを見つけられずにいた。
「ねぇ帰ろうよ…こういう臭いところは俺ちょっと…」
「お前…悪魔だろ?…こう言うところ好きなんじゃないのか?」
「偏見だよそれ…悪魔バカにしてるでしょ…俺は綺麗好きな悪魔なの!」
「へぇ…」
「全然信じてねーでしょ?」
「お前2カ月もあの村にいたんだろ?この事に全然気づいていなかったのか?」
「ぜーんぜん気づかなかった…ずっと娼館にいたしねぇ…生贄の儀式があるなんてさっきまで知らなかったもん」
相変わらずのいい加減さにジェイスは呆れる。
しかしまぁ、それに突っ込むのも悪魔には無駄だと理解していた。
「村人もなぜこんな数の死体を放置してるんだ…村はすぐ近くだぞ…死骸を放置すればグールが集まってくるなんて子供でも知ってるもんだが…」
「村人もこの森には全然入らないみたいよ?」
「…」
「何考えてるの?」
「奇妙だと思わないか?…村を守る『人狼』…そして毎年行われる生贄の儀式…ずいぶん上手いことできてる」
「…そーいうもんなんじゃないの?」
「…『人狼』が人と共存してるなんて話…聞いたこともないがな…」
…
ジェイス達は一旦村へ戻ることにした。
娼館に戻る頃には日が暮れていて、店は赤いランプの光で妖しげに照らされている。
娼館の中には女を買いにきた村の男達がたくさんいた。
ジェシカは仕事中だったため、仕方なくジェイスは客としてジェシカを指名し、部屋に入った。
「悪いが、あんたの指名料は報酬に上乗せさせてもらうぞ」
「かまいません…それで、何かわかりましたか?」
下着姿のジェシカに興奮して…
ディページは彼女に膝枕をねだった。
「遊んでるわけじゃねーんだぞ!」と叱ろうと思ったジェイスだったが…
話をしている最中は静かになるので、とりあえずその状態で話を進める。
ジェシカも最初は困った様子だったが、そこは男を相手にする娼婦…
手慣れた手つきでディページをあやすように膝枕を受け入れていた。
「やはり『人狼』に間違いないようだ…森中に色んな動物の死骸が放置されていた…痕跡は『人狼』のものとみて間違いないだろう」
「そうですか…」
「だが…やはり疑問は残る…あの森にいる『人狼』はなぜ人を襲わないのか…そしてなぜ毎年この村は『人狼』に生贄を捧げることになったのかもな」
「…」
「アンタは何も知らないのか?」
「ごめんなさい…ただ村をお守りくださる『神狼様』に、一年間の感謝を込めて生贄を捧げるとしか…そう教えられてきましたし…娘にもそう教えてきました」
ジェイスにとっては想像通りの返答だった。
村人は長い間続く風習と言うだけで受け入れている。
当たり前になってしまったものに疑問を持つのは子供くらいなものだ。
いや…
それとジェシカのように当事者になった者か。
「この風習に詳しいものは?」
「生贄のことに関しては、代々村長が仕切っておられます…」
「…そう言えば…生贄と一緒に森に入るのも村長と言っていたな?」
「はい…」
「仕方ない…話を聞きにいくか…」
ジェイスがそう言うと、ディページがぴーんと手を伸ばした。
「なんだ?」
「ジェイス様!僕はお邪魔になると思うので、ここでお留守番しています!」
「…」
ディページが目をキラキラさせてジェイスに言う。
ジェイスから返答がなかったので、ディページはさらに大きい声で付け加えた。
「いい子にしてます!」
「…」
ボコッ!
ジェイスはとりあえずディページを一発殴り…
無理矢理引っ張る。
「…お前に拒否権はない」
「チィッ!!!!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる