吸血鬼だって殺せるくせに、調査と謎解きばっかりじゃん

大野原幸雄

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人を食わぬ人狼

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ジェイス達は娼館に戻っていた。

ディページは館の娼婦達に挨拶をしていた。
それは名残惜しそうに…本当に名残惜しそうに挨拶をしていた。

ジェイスはジェシカと館の外で村を眺めながら話していた。


「まさか…そんなことになっていたなんて…」


ジェイスはジェシカに真実を全て話した。

昨年の生贄が『渡り人狼』になっていたこと…
そしてこの村の風習と呪い。

さすがにショックを隠せないようだった。


「近く村長が村人に全て打ち明けるだろう…」

「…」

「あんたはどうするんだ?」

「私は…子供と違う村にいこうと思っています…」

「…そうか」

「真実がわかったとしても…娘が生贄を免れたということで冷ややかな目で見られるのはわかっています…私も未練はありません」

「…」


2人はもう一度村を見る。
これからこの村は、誰も守ってくれない。

これからが一番つらいのだ。
そして、これからこの村は始まるのだ。


「これ、今回の報酬です」

「あぁ…いや、いらないよ」

「え?」

「子供を連れて旅をするなら、なにかと金は必要になるだろ」

「…ありがとうございます」


ジェシカは心の底から頭を下げた。

自分の子供のためだけではない…

この村のため、そして死んでいった村人のために。
唯一真実を知った村人として、彼女はジェイスに頭を下げた。





次の日。
ジェイスとディページはダルケルノを去った。

森を抜け、彼らは南に向かう。
広い平原を超えながら、ディページは背中にまたがるジェイスに聞いた。


「よかったの?あれで」

「…なにがだ?」

「いや、生贄をささげてたとはいえ、一応平和だったわけじゃん?あの村」

「そうだな…」

「それをアンタがめちゃくちゃにした…」

「…」

「…失敗したんじゃない?」


ディページは淡々と話している。
意地の悪い言い方をするのは実に悪魔らしい。


「そんなことはないさ」

「まさか、呪いに頼るのは道徳に反しているとか…そんなこと言っちゃうわけ?」

「…」

「怪物の力を使うなんて間違っているとか災いがくるとか…そんなわかりきったつまんない言葉なら聞きたくないね」

「変わらないな…おまえは」

「ジェイスもじゃん」

「まぁ、結局おれは英雄や勇者にはなれない…皆を幸せにする結末なんて、しがないモンスタースレイヤーには荷が重すぎる」


これはジェイスの口癖だった。


「…?」

「だが人間ではある…」

「…」

「いくら不合理であっても、理不尽であっても…俺は人間らしい答えにいきつこうとしているんだ…ただそれだけなんだよ」

「…」


ディページは少し黙って…


「人間って…面白いよね」


と言って、平原をかけていくのだった。






ー今回対応したモンスターの記録ー

■神狼様

怪物:渡り人狼
種別:呪縛生物 ー 人狼

多くの狼を殺した人間にかけられる呪い。
『人狼』と同じく、狼のような姿に変えられて終わることのない空腹に苦しむ。
人間しか食することができず、人間以外のものを口に入れると灰となって消える。

『人狼』と違う点は、人間を食べずに噛みつくことで呪いを他者に移すことができるという点。
しかし呪いが解かれた『渡り人狼』は人間に戻るわけではなく、魂のない『死体漁り(グール)』となる。


■ディページ

怪物:馬の悪魔オロバス
種別:悪魔

馬の姿をした悪魔であり、人間に化けることができる。
言葉巧みに人間を陥れることを得意とする悪魔であり、多くの知識を使って人間を精神的に追い詰める。

悪魔学では数千の軍隊を率いることができる教養とカリスマ性を持つとされ、使役した人間に忠誠を誓い、真理や世界創造の知識を与えると言われている。
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