吸血鬼だって殺せるくせに、調査と謎解きばっかりじゃん

大野原幸雄

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淫魔より淫らなモノ

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村長は村人に集会の手紙をだした。
小さい村なので、夜には全ての村人が集まってくれるだろうと村長は言っていた。

そしてそれまでの時間。
ジェイスとディページ…そして村長はサラから話を聞くことにした。

アンナの父親について。
この物語のはじまりについて。


「彼と関係を持ったのは…2か月前です…」

「…」

「森で怪我をしてしまった私を…彼が助けてくれたのです…」









私は…森にベリーを摘みにいっていたんです。
1日中歩き回って、カゴいっぱいのベリーを摘み終えて帰ろうとしたとき…

私は何か固いものにつまづいて…
森で足をくじいてしまったんです。

「…ッ!」

とても痛かった。
立ち上がれなくなってしうほど。

転んだ拍子に落ちてしまったベリーを膝をついて拾い集めながら、私は痛みが引くまで休むことにしました。
しかし足の痛みはなかなか引かず…むしろ腫れが広がって、ついには歩けなくなってしまったんです。

私は森の中で途方にくれていました。


「…」


森の中は…とても怖かった。
だって、夜になれば獣やグールもでる。

この怪我では逃げることもできない。
もう駄目かもとも思いました。

その時…


ガサガサ…


森の茂みの中に…
動物が歩き回るような音が聞こえたんです。


「誰!?」


私は茂みに向かって大きな声をだしました。
獣かもしれないので怖かったけれど…人間だったら助けてくれるかもと思いました。

しかし森の中から出て来たのは…
人間でも獣でもなかったんです。


「…ッ」


その姿は…
一見、どこにでもいる青年でした。

くしゃくしゃの髪にあどけない表情。
とても幼い少年のようでもありました。

彼は服を着ていなくて…
細身だけどとてもたくましい身体つきをしていたんです。

獣やグールだったたらどうしようと言う不安が、人に会えたという安心感に変わりました。

でも…


「…!」


森から完全に姿を現した彼が…
人間ではないことに気がつきます。

頭についた2つの大きな巻き角。
そしてヒザから下は羊の足のように毛むくじゃらで…
ヒヅメで茂みを踏みしめているんです。

彼が異形の存在…
悪魔や魔人の類だとはすぐにわかりました。

逃げ出そうとしましたがうまく立ち上がることもできなかった。

その時…


「!」


彼は私の前にひざまづいて…
何も言わず怪我をした私の足に…



ちゅ…



と…口づけをしたんです。


「…!」

「…」


すると不思議なことに…
少しづつ痛みが引いていきました。
足に力は入らないままでしたけど、あれほど辛かった痛みが少しも感じなくなったんです。





ジェイスはこの話を聞いて…
少しづつ情報を集めていた。


「(触癒形質(しょくいけいしつ)…やはりインキュバスで間違いない)」


魔物や悪魔の中には…
触れただけで生物を癒すことができる能力を持つものがいる。

モンスタースレイヤーは、これらの悪魔や魔物の特性を『触癒形質』と呼んでいた。

本来は上級悪魔ですらこの力を持ったものは少ない。
しかし淫魔は低級悪魔の中でも、遺伝的に『触癒形質』を使うことができる数少ない悪魔だった。

間違えてはいけないのは、淫魔は他者を癒すためにこの能力を使うわけではない。
性交渉の際に『惚れ魔法』と同時に使うことで、余計な痛みを軽減し快楽におぼれさせるために使うのだ。


「それで…?」

「…」


サラは再び話し始める。





驚く私に気付いた彼は…
一言も発さず…私の目をただじっと見つめたのです。


「…」

「…」


その瞳が…
あまりにも澄んでいました。

果実のようにまんまるで…
宝石のようにキラキラとしていました。

彼は…
邪悪なものではない

私はそう感じたんです。


「…」


ずっと見つめあっていたことに気づき…
私は恥ずかしくなって目をそらしました。

すると彼は、今度は私の首筋に顔を近づけて…


「すんすん」

「!」


私の匂いをかぎ始めました。
私は襲われると思って…


「いや!」


そう言って彼を突き放しました。
すると彼は、驚いた顔で私をまたじっと見つめたあと…


「…」


私の横に座って…
空を見上げたんです。


「…ご、ごめんなさい…助けてくれたのに…」


彼は膝を丸めて…
何も言いませんでした。


「あなた…悪魔…?」

「…」


彼はすっと…
また私の顔を見ました。

けれど言葉を持たないのか、耳が聞こえないのか、ただ私をじっと見つめるだけで…
返答はありませんでした。


「助けてくれて…ありがとう…」

「…」

「私…サラ…この先の村に住んでいるの…あなたはここに住んでいるの?」

「…」


すると彼は…
森の奥を指さしました。

「僕は近くに住んでいるよ」と言っているのだと…
私にはすぐにわかりました。


「あなた…名前はあるの…?」

「…」

「教えてくれる?」

「…け…るむ」

「ケルム…?…ケルムくんって言うの?」


すると彼は…
コクリと一回うなづきました。


「そっか…」


彼は何も言わずに…
ただただ私の近くにいました。

暗くなりつつあった森の中はとても怖かったけれど…
彼がいるだけで、だんだん落ち着いてきたんです。


「…」

「…」


気づけば…
わたし達は身を寄せ合っていました。

言葉を持たない彼との時間はずっと沈黙だったけれど…
それが本当に心地よかった。

彼はそのまま一晩一緒にいてくれました。
そして、森に朝焼けが差し込むころ…


「…」

「…」



私たちは別れるのがとても不安になって…

最後に…
愛し合ったんです。







ジェイスは…
その話を聞くのが辛かった。

この物語の結末を彼女に伝えるのが辛かったからだ。

ジェイスは話し終わったサラを見た。
そして、そこからは何も言わず…

村人が集まる夜を待った。

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