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レーバンと皇太子の出会い(番外編)
レーバンとアルジオ5
しおりを挟むレーバンとすれ違った瞬間にアルジオが見えたのは、婚約者の浮気場面と一年半後に第一王子の子を身ごもってしまい、焦ったレーバンの婚約者の姿だった。
そして、彼女は婚約者であるレーバンを内密で相談したいことがあると言って、親にも内緒で両親も兄もいない時を狙って屋敷に呼び寄せ自分の部屋に誘い込むと、予め睡眠薬を入れた飲み物を飲ませて眠ったのを確認したのち、裸にしてベットに寝かせ一晩たった翌朝に旅行から帰ってきた彼女の両親が二人の姿を見つけて、喜ぶ彼女の両親と真っ青なレーバンの姿。
更には生まれたばかりの子供の姿が見え、彼女に嵌められたと理解しているレーバンは自分の子ではないと分かっていても今更遅く、子供には罪はないと母親以上に可愛がっていた建機なレーバンの姿が最後に見えたという。
あまりのお人好しで黙っていることが出来なかったらしい。
レーバンからすれば、そう思って赤の他人である自分にわざわざ教えてくれるアルジオこそお人好しだと思うのだが。
「それで、その第一王子の子を妊娠した他の女性達はどうなったの?」
「妊娠させた女性は今のところ私の婚約者を含めると5人みたいです。第一王子が婿入りしたのは伯爵令嬢のところなので、あとは子爵令嬢と男爵令嬢、商人の娘、私の婚約者で残りの四人ですね」
「平民は一人だけだったんだね」
「ええ、一応学園を中心に女遊びをしていたようですから、学園に通えるのは平民でも裕福な商人くらいですし」
「ある意味不幸中の幸いか」
「そうですね。どの家もそこそこお金は持っているようなので、子供を養うのには問題なさそうです」
「それはつまり、生まれた子供はそれぞれの家で育てる事になったのかい?」
「はい、そう決まったみたいです。どうやら第一王子は一応合意の上で楽しんでたようで、それぞれの家も令嬢もいろいろ打算があったり思惑があったりして、自ら進んで閨を共にしたようですから」
「無理矢理な関係がないことはまだ良かったけれど……帝国の令嬢も大概だなと思っていたが、王国も似たり寄ったりなんだね」
と、しみじみとアルジオが言った。
自分の置かれている現状を思い返したのかもしれない。
「私は一部の令嬢だけだと思いたいのですが」
「それは僕も同感だね」
皇太子だからこそ、アルジオにはまともな令嬢と結ばれてほしいと思うけれど、現状を考えると難しそうで。
レーバンはアルジオが良いご令嬢に巡り合えることを心から願がわずにはいられない。
「取り敢えずそれで王家は解決にするの?王族の血が入った子なのに、野放しは危険じゃないか?」
王族の血は利用価値がある。
万が一謀反を起こす者がいれば旗印にされかねないし、王族がなんらかの形で全員命を落とすような事があれば、庶子だろうと末端であろうと血筋として祭り上げられる可能性がないわけじゃない。
王族の血を受け継いでいるだけで本人の意思に関係なく危険は付きまとうだろう。
だから……。
「その通りです。だから子供達が未成年のうちは、それぞれの家に王家側から監視役として乳母や侍女を送るそうです。成人後は城勤めが義務付けらています。男女共に王家で監視するために。また女性の場合は王城で侍女等しながら監視のいっかんで王家に忠誠を誓っている家に政略結婚等も斡旋するようですけど」
「まぁ、そこら辺が妥当か。因みに養育費みたいなものは王家からは出ないのか?第一王子の監督不行き届き責任は王家にもあるだろう?」
「一応それぞれの家に慰謝料という形で支払いはされるそうです。これ以上妊娠の報告がなければ王家側の保証はここまでのようです。また、子供を生んだ後のご令嬢の身柄はそれぞれの家に委ねられるそうなので、修道院行きの令嬢もいれば再婚や家にそのまま残る場合もあるようですね」
「なるほど、一応の終結はしているのか。となると残るはレーバンの婚約者のみか」
「はい。彼女はまだ誰にも知らせていないようですから。家族に内緒で堕胎するのも貴族令嬢では難しいだろうし」
「使用人を金で黙らせたとしても、雇用主は当主である父親だからね。漏れる可能性は大きいだろう。それに、多分もう手遅れなんじゃないかな」
と、意味深にアルジオが言う。
予知した時に見えたのだろうか。
「彼女は帝国まで来ると思いますか?」
「今のところドルテア王国からそのような話は来ていないし、これから申請したとしてもだいぶ時間はかかると思うよ。それに、まだ学園を卒業していないんだから難しいんじゃないかな」
「確かにそうですね」
「レーバンはどうするつもりなんだい?」
「私は……」
次の日、レーバンは自分の婚約者に返事を書いた。
一時帰国は難しいこと、どんな悩みかはわからないけれど、やはり先に自身のご両親に相談した方が良いのでは?と、手紙に書いた。
婚約者の立場では手を貸せる範囲が限られているから、ご両親の助けを借りた方が良いと。
優しいご両親なのだから、信じてみてはどうかな?と。
君が何をそんなに抱え込んで悩んでいるかは分からないけれど、解決できることを祈っていると最後に締めくくった。
この手紙を読んで彼女がどういう行動に出るかはわからないけれど、素直にご両親に相談してくれたらとレーバンは思う。
たぶん、彼女のご両親が知れば、きちんとそれなりの手順で手続きしてくれると思うから。
そして、彼女のご両親から謝罪があったのなら、レーバン自身は許す気でいた。
婚約継続は無理でも婚約解消にして穏便に済ませたいと思っていた。
慰謝料も請求せず、事業提携もそのままにするつもりだ。
彼女に対しては心底幻滅していても、彼女の家族とその兄が大切な友人であることには変わりないから。
手紙通りの行動をとってくれることを、願わずにはいられなかった。
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