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第二章 『厄介な日常』
大きな家には何がある!?
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駐車場から少し歩くと、遊園地のように華やかで広々とした景色が飛び込んできた。
「学校より広くない? すっげぇ!」
「敷地だけでもこんなにあるのか。桁違いすぎるな」
決して大々的なアトラクションが設置されているのではない。
きらびやかな装飾が施されたビッグサイズの建造物が、愉快なテーマパークを思わせるのだ。
「3つ建物がありますね。1番左のは何ですか?」
それが一際目を引くのには理由があった。
そう、群を抜いて派手な外見をしているのである。外壁はオールピンク。それですら目立つのだが、加えてクリスマスツリーにするかのような光る飾りが細かに付けられている。
(インスタ映えしそうな感じだな)
運転手さんは顔を赤らめて軽く頭を掻きながら、「そこは我々、使用人用ハウスでございます」と照れくさそうに話す。
「へぇ。でも、真ん中にある大きいのは明らかに愛ちゃん達の暮らす所ですよね。どうして皆さんの家の方が派手なんですか?」
そもそも、使用人用に家がある時点で驚愕である。
「ええと、大旦那様──つまりは愛様のお祖父様にあたる方ですね──が、それはそれは使用人想いで。初めはシンプルな白だったこの家をピンク色に塗られ、さらにはインパクトをつけようとライトまで……」
「なるほど。良い方ですね」
「ええ。中の方も大規模な模様替えを行って下さって、感謝の念に堪えません」
心からの笑みを浮かべた運転手さん。俺にもその幸せが移ってきそうだ。
「きっと過ごしやすいんでしょうね。それにしても、右にある物は何ですか?」
愛ちゃん達の生活空間、使用人達の暮らす家。他に何か必要な建物ってあるだろうか?
「あぁ、動物小屋ですよ。旦那様は生き物がお好きですから」
「とても綺麗にされてるんですね。どんな動物がいるんですか?」
「一般的に飼われる犬や猫は勿論として、あとは虎とかですかね。初めこそ警戒心しかなかったんですけど、今では人に慣れすぎて」
「そうなんですか。流石という言葉しか出ませんね」
ペットの格が違うのは当然だと思うが、だからといって猛獣にいくのは何故なのだろう。
カッコ良さというものを無論感じるし、憧れもするのは確かなんだけれど。それでも、疑問とはまた別だ。
「……えっと、そろそろ中に入りません? 紫外線がちょっと強くて」
目を糸のように細くして、遠慮なく香山は言い放つ。家の方に夢中になっていたけれど改めて指摘されると確かに、これは中々の暑さだ。
それに、気が付いていなかっただけで俺めっちゃ汗かいてるし。
俺達よりも厚着の運転手さんなんて、ドロドロじゃないか。普通見たら分かるだろ。
なんて香山みたいなツッコミを(心の中で)入れつつ、「言われてみれば、すごい暑いですよね」と奴に同調する。
「そうですね。では、中の方に」
「「はいっ」」
元気な返事を返して、そこら辺の道路を大きめの公園に敷き詰めた感じの地面をトントン音を立てて直進する。
進んでいる間も殺風景じゃないというのは、ポイントが高い。上から目線で失礼か。
しかしヒマワリやマリーゴールド,ポーチュラカ等の花々が、壁のように立ち並ぶ爽やかな巨木に彩りをプラスして心が洗われる。
動物を多く飼っていて、植物も大切にする。──人間として、素晴らしい一家なのだろうな。
今までは家自体を期待してばかりいたが、神田家の家族についても気になり始めてきたぞ。
(でも、今の時間っていらっしゃるのかな? 折角のパーティーなら出席するとは思うけど……)
そういえば兄弟に関して何も聞いたことないし、これを機に色々知りたいな。
「ハイ、こちらが正面玄関になります。どうぞお入りくださいませ」
「お、お邪魔します」
「お邪魔しま~す」
腰を低くしてキョロキョロしながら入る俺と、ポケットに手を突っ込んで堂々と歩く香山。
「おい香山! 他人、ましてやお金持ちの家だぞ? 物怖じくらいしろっ」
勢いはありつつもできる限りの小声で訴える。けれども香山は相変わらずで、俺の言葉に「キョトン顔」が隠せていない。
「そうは言っても、今は涼しいことの喜びしかないからな」
「どんな点であれ、満足いただけたなら我々としても嬉しゅうございます。ですから多田様、あまりご立腹なさらず」
人の家でしっかりとくつろげるというのも、才能ですから。そう後に続けて、運転手さんが笑顔を見せる。
「な。運転手さんの仰る通りだ。僕のことなんかより、会場はどこなんですか?」
今自分がいる場所なぞどうでもいい、そんな立ち振る舞い。
玄関といえど、素通りなんてご法度。なんてったってここは、愛ちゃんの家だぞ?
俺の左側の壁にかけてある、西洋の男性のお食事中の絵とか、隣に鎮座する謎の女性の彫刻とか。それら全てに相当な価値と物語がある。そのはずだ。
「奥でございます。あの、緑の扉の先ですね。……香山様、その──パーティー関連の発言をする際はなるべく、声量の方控えめにしていただけると」
「あぁ、すみません。気を付けます」
プッ。
注意されてやんの。
「学校より広くない? すっげぇ!」
「敷地だけでもこんなにあるのか。桁違いすぎるな」
決して大々的なアトラクションが設置されているのではない。
きらびやかな装飾が施されたビッグサイズの建造物が、愉快なテーマパークを思わせるのだ。
「3つ建物がありますね。1番左のは何ですか?」
それが一際目を引くのには理由があった。
そう、群を抜いて派手な外見をしているのである。外壁はオールピンク。それですら目立つのだが、加えてクリスマスツリーにするかのような光る飾りが細かに付けられている。
(インスタ映えしそうな感じだな)
運転手さんは顔を赤らめて軽く頭を掻きながら、「そこは我々、使用人用ハウスでございます」と照れくさそうに話す。
「へぇ。でも、真ん中にある大きいのは明らかに愛ちゃん達の暮らす所ですよね。どうして皆さんの家の方が派手なんですか?」
そもそも、使用人用に家がある時点で驚愕である。
「ええと、大旦那様──つまりは愛様のお祖父様にあたる方ですね──が、それはそれは使用人想いで。初めはシンプルな白だったこの家をピンク色に塗られ、さらにはインパクトをつけようとライトまで……」
「なるほど。良い方ですね」
「ええ。中の方も大規模な模様替えを行って下さって、感謝の念に堪えません」
心からの笑みを浮かべた運転手さん。俺にもその幸せが移ってきそうだ。
「きっと過ごしやすいんでしょうね。それにしても、右にある物は何ですか?」
愛ちゃん達の生活空間、使用人達の暮らす家。他に何か必要な建物ってあるだろうか?
「あぁ、動物小屋ですよ。旦那様は生き物がお好きですから」
「とても綺麗にされてるんですね。どんな動物がいるんですか?」
「一般的に飼われる犬や猫は勿論として、あとは虎とかですかね。初めこそ警戒心しかなかったんですけど、今では人に慣れすぎて」
「そうなんですか。流石という言葉しか出ませんね」
ペットの格が違うのは当然だと思うが、だからといって猛獣にいくのは何故なのだろう。
カッコ良さというものを無論感じるし、憧れもするのは確かなんだけれど。それでも、疑問とはまた別だ。
「……えっと、そろそろ中に入りません? 紫外線がちょっと強くて」
目を糸のように細くして、遠慮なく香山は言い放つ。家の方に夢中になっていたけれど改めて指摘されると確かに、これは中々の暑さだ。
それに、気が付いていなかっただけで俺めっちゃ汗かいてるし。
俺達よりも厚着の運転手さんなんて、ドロドロじゃないか。普通見たら分かるだろ。
なんて香山みたいなツッコミを(心の中で)入れつつ、「言われてみれば、すごい暑いですよね」と奴に同調する。
「そうですね。では、中の方に」
「「はいっ」」
元気な返事を返して、そこら辺の道路を大きめの公園に敷き詰めた感じの地面をトントン音を立てて直進する。
進んでいる間も殺風景じゃないというのは、ポイントが高い。上から目線で失礼か。
しかしヒマワリやマリーゴールド,ポーチュラカ等の花々が、壁のように立ち並ぶ爽やかな巨木に彩りをプラスして心が洗われる。
動物を多く飼っていて、植物も大切にする。──人間として、素晴らしい一家なのだろうな。
今までは家自体を期待してばかりいたが、神田家の家族についても気になり始めてきたぞ。
(でも、今の時間っていらっしゃるのかな? 折角のパーティーなら出席するとは思うけど……)
そういえば兄弟に関して何も聞いたことないし、これを機に色々知りたいな。
「ハイ、こちらが正面玄関になります。どうぞお入りくださいませ」
「お、お邪魔します」
「お邪魔しま~す」
腰を低くしてキョロキョロしながら入る俺と、ポケットに手を突っ込んで堂々と歩く香山。
「おい香山! 他人、ましてやお金持ちの家だぞ? 物怖じくらいしろっ」
勢いはありつつもできる限りの小声で訴える。けれども香山は相変わらずで、俺の言葉に「キョトン顔」が隠せていない。
「そうは言っても、今は涼しいことの喜びしかないからな」
「どんな点であれ、満足いただけたなら我々としても嬉しゅうございます。ですから多田様、あまりご立腹なさらず」
人の家でしっかりとくつろげるというのも、才能ですから。そう後に続けて、運転手さんが笑顔を見せる。
「な。運転手さんの仰る通りだ。僕のことなんかより、会場はどこなんですか?」
今自分がいる場所なぞどうでもいい、そんな立ち振る舞い。
玄関といえど、素通りなんてご法度。なんてったってここは、愛ちゃんの家だぞ?
俺の左側の壁にかけてある、西洋の男性のお食事中の絵とか、隣に鎮座する謎の女性の彫刻とか。それら全てに相当な価値と物語がある。そのはずだ。
「奥でございます。あの、緑の扉の先ですね。……香山様、その──パーティー関連の発言をする際はなるべく、声量の方控えめにしていただけると」
「あぁ、すみません。気を付けます」
プッ。
注意されてやんの。
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