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第1部 メアリー・グレヴィル
第16話
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家を続ける。
古臭い考えと言えば、古臭い考えだが、ここは中世、近世社会だ。
だから、愛さえあれば、子どもなんて要らない。
という訳には行かない。
妻の最大の務めは、子どもを産んで、家を続けることだ。
子どもが産めないのなら、それこそ、夫が愛人を持つのを勧めるのが、良き妻とされる社会なのだ。
女性差別にも程がある、と私とて思わない訳ではない。
しかし、日本でさえ第二次世界大戦が終わる頃までは、そんな考えが遺っており、いわゆる家制度があった。
そして、いわゆる婚外子は、父の戸籍に入り、父が死んだら、父の正妻の親権に服する等のいわゆる嫡母庶子関係等があったのだ。
だから、原作のメアリは徐々に精神的に病んでいった。
自分は妊娠はするのに、流産を繰り返してしまう。
夫のチャールズの子を妊娠して、抱き上げるのを楽しみにしては、流産してしまうのだ。
そして、チャールズには(原作のメアリは知らないが、本当はアンの子の)実子、キャロラインが実家にいた。
本来なら、メアリが育てるべきなのだが、メアリが他人の産んだ子を育てるのを嫌がったので、チャールズが実家に預けたのだ。
これは、この世界では嫌われることだ。
正妻なら、夫の愛人の子も、自分が産んだ子と同様に育てるべき、という世界、社会なのだ。
(なお、あくまでも、べき、である。
実際には、メアリと同様に、夫の愛人の子を育てない正妻もいる。
しかし、あの人は、正妻としてどうなの、と陰口を叩かれても仕方ないのだ)
更に言うなら、メアリには実子が居ないから、尚更、嫌われる要素が増える。
子どもが産めないのでしょう。
夫には、実子がいるのよ。
それなら、夫に愛人を勧め、子どもができたら、あなたが引き取って育てればいいのに。
年2回の園遊会の席等で、こんなことを陰に陽に言われては、堪ったものではない。
しかも、この社会、世界では、それが正論なのだから、尚更、性質が悪い。
私は、自分がメアリの立場になって、げっそりする想いをしていた。
私は原作者だから、自分の身体を熟知しており、自分が子どもを産めないと覚悟を固めている。
それでも、こんなことを周囲に言われるのは、精神的にきついのだ。
原作のメアリが、精神的に追い詰められていって当然だ。
自分で考えたことだが、ここまで実際にやられるときついものだとは。
そして、私の目の前のチャールズは。
「結婚したばかりなので、暫く新妻との生活を楽しませてください」
等、如才ない返答をしている。
私は、チャールズの会話を聞きながら、それとなくワインをたしなんで、気持ちを落ち着けることにした。
この身体になって、私はアルコール関係に強い身体になってしまった。
少々、ワインを飲む程度では全く酔いが回らないので、つい、私は多めに飲んでしまう。
そういえば、原作のメアリは、最後はアルコール依存症にもなっていたな。
私は、自分がそうしたことながら、更に嫌なことを思い出した。
少しの酒で酔って忘れられるのなら、まだしも、大量の酒を飲まないと酔えないからだ。
注意しないと、原作のメアリの二の舞になる。
気を付けないといけない、私は自戒した。
そして、そんな想いを私にさせた後、園遊会は無事に終わった。
私は、楽器の演奏や詩歌等、園遊会での課題を無難にこなし、将来の大公妃に相応しい片鱗を無事に示せた。
そのことで、貴族社会の間で、一定の評価を私は得ることはできたが。
私は改めて思った。
園遊会への出席は、私の精神的に本当につらい。
更に陰で噂が流れていくのでは、と心配にもなってくる。
とは言え、私の立場上、年2回の園遊会への欠席等はできない。
自分が原作を描いたとはいえ、自分が恨めしくてならなかった。
古臭い考えと言えば、古臭い考えだが、ここは中世、近世社会だ。
だから、愛さえあれば、子どもなんて要らない。
という訳には行かない。
妻の最大の務めは、子どもを産んで、家を続けることだ。
子どもが産めないのなら、それこそ、夫が愛人を持つのを勧めるのが、良き妻とされる社会なのだ。
女性差別にも程がある、と私とて思わない訳ではない。
しかし、日本でさえ第二次世界大戦が終わる頃までは、そんな考えが遺っており、いわゆる家制度があった。
そして、いわゆる婚外子は、父の戸籍に入り、父が死んだら、父の正妻の親権に服する等のいわゆる嫡母庶子関係等があったのだ。
だから、原作のメアリは徐々に精神的に病んでいった。
自分は妊娠はするのに、流産を繰り返してしまう。
夫のチャールズの子を妊娠して、抱き上げるのを楽しみにしては、流産してしまうのだ。
そして、チャールズには(原作のメアリは知らないが、本当はアンの子の)実子、キャロラインが実家にいた。
本来なら、メアリが育てるべきなのだが、メアリが他人の産んだ子を育てるのを嫌がったので、チャールズが実家に預けたのだ。
これは、この世界では嫌われることだ。
正妻なら、夫の愛人の子も、自分が産んだ子と同様に育てるべき、という世界、社会なのだ。
(なお、あくまでも、べき、である。
実際には、メアリと同様に、夫の愛人の子を育てない正妻もいる。
しかし、あの人は、正妻としてどうなの、と陰口を叩かれても仕方ないのだ)
更に言うなら、メアリには実子が居ないから、尚更、嫌われる要素が増える。
子どもが産めないのでしょう。
夫には、実子がいるのよ。
それなら、夫に愛人を勧め、子どもができたら、あなたが引き取って育てればいいのに。
年2回の園遊会の席等で、こんなことを陰に陽に言われては、堪ったものではない。
しかも、この社会、世界では、それが正論なのだから、尚更、性質が悪い。
私は、自分がメアリの立場になって、げっそりする想いをしていた。
私は原作者だから、自分の身体を熟知しており、自分が子どもを産めないと覚悟を固めている。
それでも、こんなことを周囲に言われるのは、精神的にきついのだ。
原作のメアリが、精神的に追い詰められていって当然だ。
自分で考えたことだが、ここまで実際にやられるときついものだとは。
そして、私の目の前のチャールズは。
「結婚したばかりなので、暫く新妻との生活を楽しませてください」
等、如才ない返答をしている。
私は、チャールズの会話を聞きながら、それとなくワインをたしなんで、気持ちを落ち着けることにした。
この身体になって、私はアルコール関係に強い身体になってしまった。
少々、ワインを飲む程度では全く酔いが回らないので、つい、私は多めに飲んでしまう。
そういえば、原作のメアリは、最後はアルコール依存症にもなっていたな。
私は、自分がそうしたことながら、更に嫌なことを思い出した。
少しの酒で酔って忘れられるのなら、まだしも、大量の酒を飲まないと酔えないからだ。
注意しないと、原作のメアリの二の舞になる。
気を付けないといけない、私は自戒した。
そして、そんな想いを私にさせた後、園遊会は無事に終わった。
私は、楽器の演奏や詩歌等、園遊会での課題を無難にこなし、将来の大公妃に相応しい片鱗を無事に示せた。
そのことで、貴族社会の間で、一定の評価を私は得ることはできたが。
私は改めて思った。
園遊会への出席は、私の精神的に本当につらい。
更に陰で噂が流れていくのでは、と心配にもなってくる。
とは言え、私の立場上、年2回の園遊会への欠席等はできない。
自分が原作を描いたとはいえ、自分が恨めしくてならなかった。
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