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第1部 メアリー・グレヴィル
第27話
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私が主に暗躍した結果、ヘンリー大公とアンは、結婚することが正式に決まった。
とは言え、その裏には様々な思惑が駆け巡る結婚でもあった。
私は、ヘンリー大公とアンの結婚式について、教会の協力を求めるために挨拶に赴いた。
トマス教皇猊下は、皇族出身で、私の父ウィリアムの異母弟にあたる。
本来からすれば、帝室の一員と言ってよい存在だ。
だが、実際には、帝室との関係は微妙極まりない。
何故かというと。
そもそも私の父もそうだが、トマス教皇猊下にしても、実母は皇后ではなく、皇妃であり、それもあって帝室から教会に入らされた身の上という実情がある。
だから、トマス教皇猊下の本音としては、余り教会に入りたくなかった、と父は言っていた。
(ちなみに父にしても、そういった事情から、帝室から出され、皇族公爵になっている)
また。
帝室、元皇帝ジェームズが進めようとした荘園整理問題は、教会内部の広い層に不快感を広めた。
何しろ、教会自身も大荘園主なのだ。
帝室は、大公家に今は矛先を向けているが、その後は、教会に矛先を向け、荘園を奪い取るのではないか、そう考えた教会の上層部の面々は多かった。
だからこそ、チャールズの父アーサー大公が進めた、皇帝ジェームズの退位が成功したと言える。
教会のトップ、トマス教皇猊下は、皇帝ジェームズに対し、そういった経緯から非好意的中立を貫き、アーサー大公の退位工作に半ば加担した。
そのために、教会は味方せず、貴族層の大半にそっぽを向かれる有様になったジェームズは、退位を余儀なくされる羽目になってしまったのだ。
私は、トマス教皇猊下と正式に会談した。
私は実際にトマス教皇猊下の姪に当たるし、ヘンリー大公ともアンとも縁がある。
だから、ヘンリー大公とアンの結婚に際し、トマス教皇猊下と会談するのは、ある意味、当然の話だったが。
「ヘンリー大公が、私の姪に当たるアン・グレヴィルと再婚されるとはめでたい限り。私自ら、結婚式を執り行いましょうか」
「いえ、そこまでのことはされなくとも」
私は、トマス教皇猊下からお会いして早々に発せられた、お言葉に思わず引いて答えた。
トマス教皇猊下は、どこまで腹黒いのだろうか。
ちなみに原作、漫画では、トマス教皇猊下はモブキャラに近い存在で、私は性格設定等をきちんとしていない。
一応、名前等は決めていたものの、それ以上のことはしていなかったのだ。
だから、トマス教皇猊下のことを、原作者とはいえ良く知らなかったのだが。
これは、私の予想以上に黒い性格かも。
「あんたの書くキャラは、ほとんど実際には腹黒いよね」
「そんなことないわよ」
「でもね~」
みたいな会話を、何度、作画家の彼女と繰り返したことか。
私は、トマス教皇猊下の仮面の笑顔の裏をのぞきながら、そんなことを考えた。
そもそも。
「教皇猊下に結婚式を執り行っていただいては、教会が公然と大公家に肩入れした、と周囲が見かねません。教会は帝国の政治に関与せず、を公式の立場とされていた筈。それから外れるようなことはされないでください」
「おう、そうでした、そうでした。いや、姪の結婚と聞いて、舞い上がってしまいました」
嘘つけ、私とチャールズの結婚の際には、そこまでの態度を示さなかった、と父から聞いているぞ。
私は、思わず腹の中で毒づいた。
私は気を取り直して言った。
「首都大聖堂にて、枢機卿の何方かに、結婚式を執り行っていただけませんか。その際、結婚式の警備を大公家の騎士達が執り行うのを認めていただきたいのです」
「ふむ。本来からすれば、結婚式の警備は、教会側で行うもの。それを大公家自身が行いたいと」
トマス教皇猊下は、おもしろそうな表情を浮かべた。
とは言え、その裏には様々な思惑が駆け巡る結婚でもあった。
私は、ヘンリー大公とアンの結婚式について、教会の協力を求めるために挨拶に赴いた。
トマス教皇猊下は、皇族出身で、私の父ウィリアムの異母弟にあたる。
本来からすれば、帝室の一員と言ってよい存在だ。
だが、実際には、帝室との関係は微妙極まりない。
何故かというと。
そもそも私の父もそうだが、トマス教皇猊下にしても、実母は皇后ではなく、皇妃であり、それもあって帝室から教会に入らされた身の上という実情がある。
だから、トマス教皇猊下の本音としては、余り教会に入りたくなかった、と父は言っていた。
(ちなみに父にしても、そういった事情から、帝室から出され、皇族公爵になっている)
また。
帝室、元皇帝ジェームズが進めようとした荘園整理問題は、教会内部の広い層に不快感を広めた。
何しろ、教会自身も大荘園主なのだ。
帝室は、大公家に今は矛先を向けているが、その後は、教会に矛先を向け、荘園を奪い取るのではないか、そう考えた教会の上層部の面々は多かった。
だからこそ、チャールズの父アーサー大公が進めた、皇帝ジェームズの退位が成功したと言える。
教会のトップ、トマス教皇猊下は、皇帝ジェームズに対し、そういった経緯から非好意的中立を貫き、アーサー大公の退位工作に半ば加担した。
そのために、教会は味方せず、貴族層の大半にそっぽを向かれる有様になったジェームズは、退位を余儀なくされる羽目になってしまったのだ。
私は、トマス教皇猊下と正式に会談した。
私は実際にトマス教皇猊下の姪に当たるし、ヘンリー大公ともアンとも縁がある。
だから、ヘンリー大公とアンの結婚に際し、トマス教皇猊下と会談するのは、ある意味、当然の話だったが。
「ヘンリー大公が、私の姪に当たるアン・グレヴィルと再婚されるとはめでたい限り。私自ら、結婚式を執り行いましょうか」
「いえ、そこまでのことはされなくとも」
私は、トマス教皇猊下からお会いして早々に発せられた、お言葉に思わず引いて答えた。
トマス教皇猊下は、どこまで腹黒いのだろうか。
ちなみに原作、漫画では、トマス教皇猊下はモブキャラに近い存在で、私は性格設定等をきちんとしていない。
一応、名前等は決めていたものの、それ以上のことはしていなかったのだ。
だから、トマス教皇猊下のことを、原作者とはいえ良く知らなかったのだが。
これは、私の予想以上に黒い性格かも。
「あんたの書くキャラは、ほとんど実際には腹黒いよね」
「そんなことないわよ」
「でもね~」
みたいな会話を、何度、作画家の彼女と繰り返したことか。
私は、トマス教皇猊下の仮面の笑顔の裏をのぞきながら、そんなことを考えた。
そもそも。
「教皇猊下に結婚式を執り行っていただいては、教会が公然と大公家に肩入れした、と周囲が見かねません。教会は帝国の政治に関与せず、を公式の立場とされていた筈。それから外れるようなことはされないでください」
「おう、そうでした、そうでした。いや、姪の結婚と聞いて、舞い上がってしまいました」
嘘つけ、私とチャールズの結婚の際には、そこまでの態度を示さなかった、と父から聞いているぞ。
私は、思わず腹の中で毒づいた。
私は気を取り直して言った。
「首都大聖堂にて、枢機卿の何方かに、結婚式を執り行っていただけませんか。その際、結婚式の警備を大公家の騎士達が執り行うのを認めていただきたいのです」
「ふむ。本来からすれば、結婚式の警備は、教会側で行うもの。それを大公家自身が行いたいと」
トマス教皇猊下は、おもしろそうな表情を浮かべた。
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