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第2部 アリス・ボークラール
第7話
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そんなことを想いながら、春の園遊会の準備に私は励むことになった。
それにしても。
「本当に食事の度に幸せそうな顔をするわね」
「というか、教会の食事にずっと慣れていたのに、よく平気ね」
「へへ、食い意地が張っているもので」
「いいわよ。膳部(宮中で食事を作る所)が喜んでいるらしいわ。幸せそうに食べてもらえて嬉しいって」
「そこまで、話が通っているのですか」
「まあ、それだけ幸せそうに大量に食べたらね」
「へへ」
いつか、先輩の女官、侍女の方々に、そんなふうに私は食事の度にからかわれる立場になっていた。
何で、こんなことになったか、というと。
私も前世で聞いたことがあるが。
教会での戒律に従った食生活(21世紀で言えば、完全なヴィーガン生活といってもよい)を、ずっと送っていたら、肉や魚や卵、乳製品等に、いつか拒絶反応を起こすようになってしまうらしい。
だから、私が侍女になった当初、周囲は、私が宮中での食生活(当然、肉類等がふんだんに使われる)に耐えられるのだろうか、と心配していたらしいのだが。
私は、あっという間に慣れてしまい、逆に食い意地が張り過ぎではないか、と言われる身になってしまった。
私にしてみれば、10年以上も食べたくて仕方なかった肉や魚、卵、乳製品が溢れており、しかも、私的とはいえ宮中に仕える侍女ということで、無料で食事が食べられる身なのだ。
だから、食べられる限り、食べては、幸せな顔をするようになってしまった。
そして、これは想わぬ効果も生じさせた。
3月下旬になり、園遊会がいよいよ迫ったある日。
「アリス・ボークラールは、いるかな」
「「エドワード大公世子殿下」」
私と、私の周囲にいた女官、侍女が、ほぼ声を揃えていう羽目になった。
エドワード大公世子殿下が、私達が園遊会の準備をしている場を訪ねて来て、更に私を名指ししたのだ。
更に間の良いというか、悪いというか、私が大量の昼食を平らげた直後だった。
私が平らげた昼食の量を見て、エドワード大公世子殿下は、目を見張られた。
「よく、そんなに食べられるね」
うっ、だって、ずっと食べたかったんだもの。
私は、懸命に心の中で言い訳をした。
前世では、ラーメンは、ありふれた食事に過ぎなかったが、ここでは、私は宮中の侍女として働いていることもあり、中々食べられない。。
そんな想いをしている時、鶏ガラをメインに出汁を取った醤油ラーメンを、膳部が作ってくれた。
幸か不幸か、花冷えで少し冷えてもいて、とても美味しく、私には感じられた。
だから、私は、つい(?)3杯も平らげてしまったのだ。
私が、エドワード大公世子殿下の言葉を聞いた瞬間、俯いたのを見て、エドワード大公世子殿下は、私の気分を害した、と察したのだろう。
すぐに慰めてくれた。
「いや、膳部の皆が褒めていたよ。新しく入った侍女の一人、アリス・ボークラールは、気持ちのいい食べ方をしてくれて、こちらも気分がいいって。それで、本当なのかな、と気になって、覗きに来たんだ。何しろ、教会出身者の多くが、肉や魚等をふんだんに使った宮中料理に中々馴染めないらしいから」
「ありがとうございます。ちょっとすぐに馴染み過ぎまして」
私は、エドワード大公世子殿下の言葉に笑顔で返事をした。
「そんなにすぐに馴染めるのなら、大丈夫そうだね」
エドワード大公世子殿下も、笑いを含んだ言葉で返してくれた。
その笑顔を見た私は、絶対に無理な話かも、と想いながら考えた。
こんな風に笑いをかわせるのならば、もしかしたら。
エドワード大公世子殿下の愛人に、私はなれるのではないだろうか。
愛人、前世の私だったら拒絶反応を示していただろうが、この世界ではやむを得ない。
それにしても。
「本当に食事の度に幸せそうな顔をするわね」
「というか、教会の食事にずっと慣れていたのに、よく平気ね」
「へへ、食い意地が張っているもので」
「いいわよ。膳部(宮中で食事を作る所)が喜んでいるらしいわ。幸せそうに食べてもらえて嬉しいって」
「そこまで、話が通っているのですか」
「まあ、それだけ幸せそうに大量に食べたらね」
「へへ」
いつか、先輩の女官、侍女の方々に、そんなふうに私は食事の度にからかわれる立場になっていた。
何で、こんなことになったか、というと。
私も前世で聞いたことがあるが。
教会での戒律に従った食生活(21世紀で言えば、完全なヴィーガン生活といってもよい)を、ずっと送っていたら、肉や魚や卵、乳製品等に、いつか拒絶反応を起こすようになってしまうらしい。
だから、私が侍女になった当初、周囲は、私が宮中での食生活(当然、肉類等がふんだんに使われる)に耐えられるのだろうか、と心配していたらしいのだが。
私は、あっという間に慣れてしまい、逆に食い意地が張り過ぎではないか、と言われる身になってしまった。
私にしてみれば、10年以上も食べたくて仕方なかった肉や魚、卵、乳製品が溢れており、しかも、私的とはいえ宮中に仕える侍女ということで、無料で食事が食べられる身なのだ。
だから、食べられる限り、食べては、幸せな顔をするようになってしまった。
そして、これは想わぬ効果も生じさせた。
3月下旬になり、園遊会がいよいよ迫ったある日。
「アリス・ボークラールは、いるかな」
「「エドワード大公世子殿下」」
私と、私の周囲にいた女官、侍女が、ほぼ声を揃えていう羽目になった。
エドワード大公世子殿下が、私達が園遊会の準備をしている場を訪ねて来て、更に私を名指ししたのだ。
更に間の良いというか、悪いというか、私が大量の昼食を平らげた直後だった。
私が平らげた昼食の量を見て、エドワード大公世子殿下は、目を見張られた。
「よく、そんなに食べられるね」
うっ、だって、ずっと食べたかったんだもの。
私は、懸命に心の中で言い訳をした。
前世では、ラーメンは、ありふれた食事に過ぎなかったが、ここでは、私は宮中の侍女として働いていることもあり、中々食べられない。。
そんな想いをしている時、鶏ガラをメインに出汁を取った醤油ラーメンを、膳部が作ってくれた。
幸か不幸か、花冷えで少し冷えてもいて、とても美味しく、私には感じられた。
だから、私は、つい(?)3杯も平らげてしまったのだ。
私が、エドワード大公世子殿下の言葉を聞いた瞬間、俯いたのを見て、エドワード大公世子殿下は、私の気分を害した、と察したのだろう。
すぐに慰めてくれた。
「いや、膳部の皆が褒めていたよ。新しく入った侍女の一人、アリス・ボークラールは、気持ちのいい食べ方をしてくれて、こちらも気分がいいって。それで、本当なのかな、と気になって、覗きに来たんだ。何しろ、教会出身者の多くが、肉や魚等をふんだんに使った宮中料理に中々馴染めないらしいから」
「ありがとうございます。ちょっとすぐに馴染み過ぎまして」
私は、エドワード大公世子殿下の言葉に笑顔で返事をした。
「そんなにすぐに馴染めるのなら、大丈夫そうだね」
エドワード大公世子殿下も、笑いを含んだ言葉で返してくれた。
その笑顔を見た私は、絶対に無理な話かも、と想いながら考えた。
こんな風に笑いをかわせるのならば、もしかしたら。
エドワード大公世子殿下の愛人に、私はなれるのではないだろうか。
愛人、前世の私だったら拒絶反応を示していただろうが、この世界ではやむを得ない。
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