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22話★帰還
しおりを挟むアーサーに会えなくなってから、3週間。
帰還は明日と聞いていたのに、ウィルさんがサラの部屋にやってきて告げた。
「陛下が、ご帰還されました。」
久しぶりに見るウィルさんは、少しお疲れみたいだった。
「ウィル様。陛下もご無事で?」
テルマさんが問う。
「はい。国境を固めるのに、お忙しくしておられましたが、お元気ですよ。」
サラは、読んでいた本を、閉じて思わず立ち上がる。
「アーサー、帰って来たの?」
ウィルが、にっこりと笑って、私の方に向きなおる。
「はい。予定よりも早く帰還いたしました。事前の連絡ができず、申し訳ありません。それから、レオン団長をサラ様がお助けしたと伺いました。本当に感謝いたします!」
「え?!」
ウィルは、嬉しそうに満面の笑みで言う。
「団長が怪我を負ったと知らせを受けたのですが、すぐに魔法省に転移してしまっていて状況がわからず、陛下も私も心配していたのです。その後すぐに、女神様のお力で全快されたと伺いました。」
わ・・・私の力でって・・・まさか、キスしたこと報告受けてる?
「あ、あの、それでアーサーは?」
「はい。たった今戻られたばかりで、自室にお戻りです。」
それを聞いて、急いで部屋を出る。
自然と、速足になる。胸が苦しくなるほど、動悸がする。
会いたい。
早く会いたいと、気が急く。
アーサーの部屋の前まで来ると、ノックと同時に扉を開けてしまう。
部屋の中には、着替え中のアーサーが居た。
アーサーは、振り返る。シャツのボタンをしている途中だった。
「・・・サラ。おまえ、部屋に入る時は・・・」
お説教を始めた彼に気をとめることもせずに、走り出す。
瞬間、アーサーの胸に飛び込んで行った。
思いっきり、走っていって、体当たりしたのに、彼はびくともしなかった。
受け止めた、大きくて冷たい手。
思いっきり深呼吸をすると、アーサーの匂いがした。
私自身、驚いている。
みるみる視界がぼやけて、見えなくなっていく。私の目から、ボロボロと涙があふれた。
どうして自分は泣いているのか、戸惑いながら考えてみる。
私には、闘いとか戦争とか、命をかけるとか、やっぱり実感が湧かない。
負傷したレオンさんを見て、目の当たりにして、アーサーは大丈夫かと頭をよぎった。
アーサーに何かあったら、私は・・・この世界で、生きていけるだろうか?
本当は、怖かった。すごく怖かったんだ。
「・・・!アーサー、会いたかった!!」
アーサーはお城に書簡を何度か送っていたし、無事なのは分かっていたけど、本当は不安だった。心細かった。
勉強に必死になって、恐ろしい考えはしないように避けていたんだ。
もしも・・・その恐怖と対峙して、考えてしまっていたら、きっと待ってなんか居られなかっただろう。
アーサーを目の前にして、安心して、今になって噴き出す、自分の我慢していた感情。
「サラ・・・そんなに泣くな。」
アーサーは、優しく抱きしめてくれる。
顔を上げると、そっと触れるだけのキスをくれた。
ジンと鼻先が熱くなる。
もっと欲しくなって、自分からキスをする。何度も角度を変えて、アーサーにキスをした。アーサーも答えるようにキスを返してくれる。むさぼるように、キスを交わす。
夢中になりすぎて、アーサーを自分からベッドに押し倒してしまう。
そうして、無性に、アーサーを体中で感じたいという衝動にかられる。ここに居るんだと、生きているんだと感じたくなる。
アーサーの服に手をかけて、シャツのボタンを外す。そのまま、首筋にキスをする。
「サラ・・・!」
アーサーの耳たぶを甘く噛む。耳の後ろにキスをする。そのまま首筋を這うようにキスをしていく。
「待て!・・・サラ!」
アーサーが、私を制止して肩を掴んだ。
少し辛そうな、困ったような顔をして、私を見つめた。
「これ以上は・・・。」
ため息をついて、アーサーは言う。
「おまえは、私の妃ではないのに、これ以上は・・・。」
目を細めて、眉を歪めて、辛そうな顔に手を伸ばす。
「好き。傍にいたいよ。」
気持ちが溢れて、ダダ洩れた。前に1度告白して、受け入れてもらえなかったのに、拒まれても、気持ちを止められない。あなたを好きだという気持ち。
アーサーは、目を閉じて、ため息をついた。
サラを引き寄せて、抱きしめる。思いつめたように、再度ため息をついて言った。
「この世界で、一生、私の傍で暮らす事になっても。いいのか?」
ドクンドクンと、アーサーの胸から心臓の音がする。
覚悟はあるのか?と、聞いているのだと分かった。
王妃になる覚悟?
頑張ったけど王妃になれなかった場合もあるかもしれない。
そうだ、またこの先に戦争がおきて、万が一にも彼を失うかもしれない。
彼を失えば、私は女神の力を求めた人に犯されるかもしれない。
そんな恐怖のある世界で、生きていく、挑戦する覚悟?
そんな覚悟は、私には無い。
だから、あなたの気持ちが知りたい。
「アーサー。・・・あなたは、私のこと、好き?」
アーサーは、驚いたようにサラを見た。
「そんなこと、分かるだろう?」
「・・・え?どのへんで?」
「?、おまえ・・・私が、どうでもいい女を、何度も抱くと思っているのか?お前が欲しいからだ。どうでもいい女と、こんなキスを交わすわけがないだろう。」
サラは、ガバっと起き上がって、文句を言う。
「そんなの知らないよ!好きって言ってくれなきゃ、わかんないよ!あたしばっかり、こんなに好きで、勝手に勉強とか始めて、貴方の隣に立てるように努力して、あたしの気持ちのほうが、言わなくても解るでしょ?!アーサーのバカ!!」
ポカっとアーサーの胸を、グーで叩く。
叩かれた胸に、アーサーは手を当てて、一瞬ポカンとしたけれど、おかしそうに笑った。「私を叩けるのは、お前だけだ」と笑う。
「・・・そうだな。悪かった。」
アーサーは、笑いながら言う。
「この3週間、ゴードンからサラの動向は報告を受けていた。必死で勉強していると。」
サラを引き寄せる。
「サラ、私はお前が好きだ。」
真剣な顔で、真っ直ぐに見つめられる。
「おまえの考え方も、強さも優しさも弱い所も、何もかもが、その全てが私の心を引き付けて離さない。」
アーサーは、コツン!と、おでことおでこをくっつけた。
「サラ。ずっと、私の傍にいてほしい。私と共に生きてはくれまいか?」
アーサーの手が、私の手の上に乗せられる。
私は、そのまま手をひっくりかえして、彼の指に自分の指をからめる。
「うん。私も、ずっと傍にいたい。」
驚くほど、迷いなく素直な気持ちが口から出た。
もう、何度目かのキスを交わす。
でもそれは、今までのものとは全然違う。
温かい気持ちが込み上げてくる。お互いの『好き』を確かめ合うキス。
「ずっと、傍にいる。ずっと、ずっと一緒にいる。」
強く強く、アーサーを抱きしめる。
そのまま、何度も確かめ合うようにキスを交わして、2人でベッドに倒れこむ。
ドキドキドキドキ、と高ぶる鼓動を感じる。
体に触れられる指先の感覚だけで、声を上げてしまう。
そんな私を見て、アーサーが目を細める。
「どうしたんだ?媚薬でも飲んでいるかのように、感じ過ぎだぞ。」
自分でも分かってる、呼吸がうまく出来ないほどに気持ちが高ぶってる。
「はぁ・・・ダメダメ、そんな風に言わないで、恥ずかしいから!なんかもうむり!」
自分でも、体がどうにかなってしまったのかと思うほどに感じる。熱い息を感じるだけで、ビクビクと反応してしまう。
恥ずかしくて、はじめてするかのように慌てる。
「そんなに見ないで!恥ずかしいから。」
必死に懇願する。
「サラ・・・可愛い。」
イジメるかのように、愛撫を続けられる。
深いキス、熱い舌、首筋を這う唇。胸の先端を擦る指、体を撫でる手のひら。
熱い息、熱い瞳。
「大好き。・・・好きすぎて、おかしくなりそうだよ。」
たまらなくなって抱きしめると、大きな腕で抱きしめ返される。
「私もだ。お前が愛しくてたまらない。」
嬉しくて、涙があふれる。
その一言で、何でもできる気がした。
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