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75話 最後の約束
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「約束してほしいの。」
この先、何が起きても、一緒だって誓うよ。
でも。
「もしも、ね。この先、また、同じような選択をしなくちゃいけなくなったら。もしも、どちらかが先に死ぬようなことがあったら。」
自分で、言っていて、もしもの話だけれど、涙があふれてくる。
「アーサーは、私が先に死んでも、生きてね。」
ギュウっとアーサーの手を握りしめる。
「約束して?約束だよ。私が死んだら、ルカの為に生きて。私の事は、早く忘れて誰か別の人と結婚して、幸せになって。」
アーサーは、眉間に皺を寄せる。
お願い。約束して?アーサー。
自分で言っておいて、視界が涙で見えなくなって、すすり泣く。弱い自分が嫌い。
だけど、知ってしまったから。私たちは、お互いを愛しすぎてしまって、もう互いに、1人では生きて行けそうに無いってことを。どこまで、いつまで一緒にいられるのか、分からないけれど。きっと。きっとね。
この約束が、この先の、その瞬間に、生きていく意味になるように。
「おまえは、私が先に死んだら、ルカの為に生きて、他の男と結婚するのか?」
そう言われて、ボロボロと涙が溢れだす。
「う~・・・!!」
自分で言いだしたくせに、呻き泣く。
嫌。嫌だ。嫌だよ。そんなの絶対ムリだよ。嫌だよ。
「バカ。」
アーサーの、その声が、酷く優しかった。
2人で確かめ合うように、抱き合って、体を擦り合わせて愛撫し合う。
髪を撫でて、背中をさすって、腕も足も絡めて、キスを交わして、指を絡ませて握りしめる。
お互いに手繰り寄せて、紡ぎ合って、生きていく。約束なんか必要ない。そうして生きていく。
アーサーは、サラを抱きつぶしてから、明け方に言った。
「許せ。生涯、おまえ一人しか愛せない。」
◇◇◇◇◇
サラがお城に戻って来て、半年後。
その日、国をあげての盛大な結婚式が行われた。
「普通はですね、最低でも1年かかるんですよ?国王の結婚式ですからね。王妃の誕生ですからね。準備に時間がかかるのです。こんな急ごしらえで。」
女官長が、グチグチと朝から愚痴っているのは、どうやら王妃が身につけるアクセサリーが気に入らないかららしい。本来は、新しい王妃様の為に、結婚式に身につけるアクセサリーは全て新調される。
しかし、サラが今日身につけるのは、アーサー王の母上である、マルグレーテ様のお古だったからだ。
マルグレーテ様が、ガルーダから嫁いで来た時に母国から持って来た物で、豊かな国であったガルーダらしく贅沢な作りだった。大きなサファイヤとダイアモンドがちりばめられ、ティアラとネックレス、それからイヤリングが対になっていて、デザインはクラシックで洗練された物だった。そのデザインや、サファイヤの美しさに、サラはコレが良い!と強請ったのである。
テルマは、なんとなくサラの気持ちを理解したのと、結婚式が急だったのもあって、これ以上の物を作らせるのには難しいだろうとふんで良しとした。
「サラ様。ちょっと・・・食べ過ぎです。」
「え?でもでも、式が始まってから、長丁場でしょ?しかもガツガツ食べるなって言われたし~。それにね、昨日まで緊張で食欲無かったでしょ?だけど、なんか、今日になって、食べられるというか、胃がムカムカしてても、この干し芋だけ、ひたすら食べれるんだもの!」
その様子を見ていた、年配の女官がテルマを呼んだ。
少々失礼しますと言って、女官と2人で部屋の外に出ていく。
「テルマ様。式までに時間があります。可能でしたら、すぐに医師を呼んで王妃様を診て頂いた方が良いかと。」
「え?」
「私は、早朝から王妃様を拝見していましたが、おそらく・・・・」
テルマは、その話を聞いて、慌てて医師を呼んで貰った。
アーサーは、準備が整ったので、サラの部屋に向かっていた。
ウィルが、歩きながら報告する。
「陛下。式後のパレードですが、ルート変更要請がきています。騎士団からは・・・あれ?」
バタバタと廊下を、王族専用の医師が走って行くのを見て、止まる。
アーサーも、侍医の姿に気が付く。そして、血相変えて走って行く方向に気が付いて、慌てて走りだす。
侍医は、サラの部屋に入って行くのと同時に、女官たちが部屋から全員追い出されていく。アーサーが走りこんで来たのを見て、女官たちがアーサーを止める。
「陛下?!お、お待ちくださいませ!今は、部屋に入ってはなりません!」
アーサーは、5人の女官に抑えられて、叫んだ。
「何事だ?!サラは?何があった?」
「えっ・・・と、それが・・・その。」
年若い女官が戸惑いを見せる。そこへ、年配の女官がアーサーの前に出る。
「陛下。王妃様の命に別状はありません。至ってお元気でいらっしゃいます。少々、王妃様のご様子から気になることがありまして、念のために検査を依頼しました。式の時間もありますから、侍医には急いで来て頂いたのです。」
それを聞いて、少し安心したものの、安心しきれないアーサーは聞く。
「どういった症状なのだ?」
女官は無表情で答える。
「先日まで、殆ど食事を受け付けなかったと伺いました。王妃様は緊張でと仰られてましたが・・・。念のためと申し上げました。」
ウィルは、キョトンとした。そこへ、騎士団と一緒にルカが現れた。
「あれ?父上?どうされたんですか?」
きちんと正装して、準備万端だったルカは、式の前に母にご挨拶をとやってきていた。
アーサーは、ルカを見て、冷静さを取り戻した。息子の前で取り乱すわけにはいかない。
「母上はもう少し準備に時間がかかるようだ。ルカは昨日はよく眠れたか?」
「はい!今日がすっごく楽しみで、早く寝ました!だから今日はすっごく早く起きちゃって、支度もこの通りです!」
ルカはクルリと回って見せる。結婚式用に仕立てさせた服装に、正式な場所で着用する装飾された剣を腰に差している。それが嬉しそうだった。
「僕、この剣がお気に入りです!」
アーサーは、ルカの可愛さに微笑む。
「今度、剣術の手合わせを、父としよう。」
「本当?!わーい♪いつですか?」
ルカは飛び回って喜んだ。
すると、王妃の間の扉が開く。侍医が出てきた。
「サラは?容体はどうなのだ?」
侍医と看護師が、アーサーの剣幕に驚いて一瞬固まる。そして言った。
「陛下。王妃様は、自ら陛下に伝えたいと仰っておいでです。どうぞ、中へ。」
それを聞いて、アーサーはすぐさま部屋の中へ入って行く。
その姿に、ルカも慌てて部屋の中に入って行く。
サラは、服を整えてベッドから降りて、ソファーの所まで歩いてきたところだった。
「あれ?アーサーもルカも2人で来てたんだね。」
ニコッと笑うのを見て、アーサーは堪らなくなり、サラの傍まで行くと抱きしめた。
「どうしたんだ?どこか具合が悪いのか?」
アーサーが聞くと、サラはアーサーを抱きしめて背中をトントンする。
「ううん。大丈夫だよ。ごめんね。驚いたよね。大丈夫だから。」
サラは直ぐに気が付いた。アーサーは不安から、人には気が付かれない程度に震えていたこと。
「ねぇ、アーサー。」
少し体を離して、じっと彼の顔を覗き見る。
「どうした?」
「うん。あのね。えへへ。」
心の準備をしてから、思い切って伝える。私はきっと、この瞬間が見たかったから。
「赤ちゃん、できたみたいなの。」
「・・・・・・え。」
アーサーの表情が止まったのを見て、サラはあれ?予想と違うぞ?と思う。
「私も気が付かなくて、このところ体調悪いのも結婚式で極度の緊張のせいだと思い込んでて。今、妊娠3ヵ月だって。ここまで気がつかないとか、なんていうか・・・。どうやら、悪阻が始まってたみたいなの。あ、でも安定期に入れば、もう少し食欲も出てくると・・・あ、アーサー?!」
アーサーの目には、今にも零れ落ちそうな涙がたまっていた。サラは慌てて、ハンカチを取り出したところで、抱きしめられる。
「サラ・・・・嬉しい。」
強く抱きしめられて、くぐもった声だけが聞こえるだけで、その表情は見せてくれなかった。だけど、ずごく喜んでくれてることは、分かった。
「・・・・うん。私も。嬉しい。」
ウィルは、ずっと、口に両手を当てて、声を出すのを我慢していた。が、とうとう我慢できなくなる。
「陛下!!おめでとうございます!!王妃様、おめでとうございます!!」
それをきっかけに、女官たちも次々にお祝いの言葉を述べる。
「ねぇねぇ!僕、お兄ちゃんになるの?」
サラのドレスを引っ張って、ルカが言う。
「ルカ。そうだよ。ルカに弟か妹が出来るんだよ。」
「やったー!僕、お兄ちゃんだ!!」
ジャンプするルカの手を取り、何故かウィルと一緒にジャンプしている。
そこへ、バタン!と扉を開けて入ってきたのは、ゴードンだった。
「陛下!王妃様!ご懐妊とのこと、おめでとうございます!!」
まさかの、ゴードンの大きな声に、全員がビックリする。しかも、扉の前で、目頭を押さえて上を向き、ふるふると震えて動かなくなってしまった。
後ろから、黄色いドレス姿の女性が現れた。
「あらやだ!お兄様ったら、こんな所で泣かないでくださいまし!ご挨拶申し上げますので、失礼しますわ。」
エブリンが、レオンと一緒に部屋に入ってくる。レオンは、信じられない物を見たとばかりに、ゴードンを眺める・・・。
エブリンは綺麗にカーテシーをした。
「王妃様、ご懐妊おめでとうございます。今からお産まれになるのが楽しみですわ。ですが、安定期までは御無理なさらずに。ところで、本日はパレードを行うと伺いましたが、馬車は宜しくないのでは?」
そう言われて、全員が「あ」と言う。
「それと、長時間座ったままや、長時間立ったままも気になりますわ。大聖堂は冷えますしね。」
アーサーは、サラをギュウっと抱きしめる腕に力が入る。
「結婚式はとりやめる!」
アーサーの発言に、全員が息を飲む。
「な、何言ってるのよ?!アーサー、それは今更ムリ!お客様だってもう集まってるのよ!?」
「ダメだ!サラと子供に何かあったらどうするんだ?」
「だ、大丈夫だよ!少しだけ予定変更して、ムリ無い程度に休みながらとか、ね?悪阻だって酷くはないし!」
「ダメだ!お前は温かくして、寝ていろ!この部屋から出るな!生まれるまでベッドに居るんだ!」
「はぁ?ちょっと、ちょっと!アーサー落ち着いて!」
その後、
予定の結婚式の時間には間に合ったけれども、パレードは無くなった。
王妃ご懐妊は、すぐさま公表されて式の時間も短縮されることとなった。
この先、何が起きても、一緒だって誓うよ。
でも。
「もしも、ね。この先、また、同じような選択をしなくちゃいけなくなったら。もしも、どちらかが先に死ぬようなことがあったら。」
自分で、言っていて、もしもの話だけれど、涙があふれてくる。
「アーサーは、私が先に死んでも、生きてね。」
ギュウっとアーサーの手を握りしめる。
「約束して?約束だよ。私が死んだら、ルカの為に生きて。私の事は、早く忘れて誰か別の人と結婚して、幸せになって。」
アーサーは、眉間に皺を寄せる。
お願い。約束して?アーサー。
自分で言っておいて、視界が涙で見えなくなって、すすり泣く。弱い自分が嫌い。
だけど、知ってしまったから。私たちは、お互いを愛しすぎてしまって、もう互いに、1人では生きて行けそうに無いってことを。どこまで、いつまで一緒にいられるのか、分からないけれど。きっと。きっとね。
この約束が、この先の、その瞬間に、生きていく意味になるように。
「おまえは、私が先に死んだら、ルカの為に生きて、他の男と結婚するのか?」
そう言われて、ボロボロと涙が溢れだす。
「う~・・・!!」
自分で言いだしたくせに、呻き泣く。
嫌。嫌だ。嫌だよ。そんなの絶対ムリだよ。嫌だよ。
「バカ。」
アーサーの、その声が、酷く優しかった。
2人で確かめ合うように、抱き合って、体を擦り合わせて愛撫し合う。
髪を撫でて、背中をさすって、腕も足も絡めて、キスを交わして、指を絡ませて握りしめる。
お互いに手繰り寄せて、紡ぎ合って、生きていく。約束なんか必要ない。そうして生きていく。
アーサーは、サラを抱きつぶしてから、明け方に言った。
「許せ。生涯、おまえ一人しか愛せない。」
◇◇◇◇◇
サラがお城に戻って来て、半年後。
その日、国をあげての盛大な結婚式が行われた。
「普通はですね、最低でも1年かかるんですよ?国王の結婚式ですからね。王妃の誕生ですからね。準備に時間がかかるのです。こんな急ごしらえで。」
女官長が、グチグチと朝から愚痴っているのは、どうやら王妃が身につけるアクセサリーが気に入らないかららしい。本来は、新しい王妃様の為に、結婚式に身につけるアクセサリーは全て新調される。
しかし、サラが今日身につけるのは、アーサー王の母上である、マルグレーテ様のお古だったからだ。
マルグレーテ様が、ガルーダから嫁いで来た時に母国から持って来た物で、豊かな国であったガルーダらしく贅沢な作りだった。大きなサファイヤとダイアモンドがちりばめられ、ティアラとネックレス、それからイヤリングが対になっていて、デザインはクラシックで洗練された物だった。そのデザインや、サファイヤの美しさに、サラはコレが良い!と強請ったのである。
テルマは、なんとなくサラの気持ちを理解したのと、結婚式が急だったのもあって、これ以上の物を作らせるのには難しいだろうとふんで良しとした。
「サラ様。ちょっと・・・食べ過ぎです。」
「え?でもでも、式が始まってから、長丁場でしょ?しかもガツガツ食べるなって言われたし~。それにね、昨日まで緊張で食欲無かったでしょ?だけど、なんか、今日になって、食べられるというか、胃がムカムカしてても、この干し芋だけ、ひたすら食べれるんだもの!」
その様子を見ていた、年配の女官がテルマを呼んだ。
少々失礼しますと言って、女官と2人で部屋の外に出ていく。
「テルマ様。式までに時間があります。可能でしたら、すぐに医師を呼んで王妃様を診て頂いた方が良いかと。」
「え?」
「私は、早朝から王妃様を拝見していましたが、おそらく・・・・」
テルマは、その話を聞いて、慌てて医師を呼んで貰った。
アーサーは、準備が整ったので、サラの部屋に向かっていた。
ウィルが、歩きながら報告する。
「陛下。式後のパレードですが、ルート変更要請がきています。騎士団からは・・・あれ?」
バタバタと廊下を、王族専用の医師が走って行くのを見て、止まる。
アーサーも、侍医の姿に気が付く。そして、血相変えて走って行く方向に気が付いて、慌てて走りだす。
侍医は、サラの部屋に入って行くのと同時に、女官たちが部屋から全員追い出されていく。アーサーが走りこんで来たのを見て、女官たちがアーサーを止める。
「陛下?!お、お待ちくださいませ!今は、部屋に入ってはなりません!」
アーサーは、5人の女官に抑えられて、叫んだ。
「何事だ?!サラは?何があった?」
「えっ・・・と、それが・・・その。」
年若い女官が戸惑いを見せる。そこへ、年配の女官がアーサーの前に出る。
「陛下。王妃様の命に別状はありません。至ってお元気でいらっしゃいます。少々、王妃様のご様子から気になることがありまして、念のために検査を依頼しました。式の時間もありますから、侍医には急いで来て頂いたのです。」
それを聞いて、少し安心したものの、安心しきれないアーサーは聞く。
「どういった症状なのだ?」
女官は無表情で答える。
「先日まで、殆ど食事を受け付けなかったと伺いました。王妃様は緊張でと仰られてましたが・・・。念のためと申し上げました。」
ウィルは、キョトンとした。そこへ、騎士団と一緒にルカが現れた。
「あれ?父上?どうされたんですか?」
きちんと正装して、準備万端だったルカは、式の前に母にご挨拶をとやってきていた。
アーサーは、ルカを見て、冷静さを取り戻した。息子の前で取り乱すわけにはいかない。
「母上はもう少し準備に時間がかかるようだ。ルカは昨日はよく眠れたか?」
「はい!今日がすっごく楽しみで、早く寝ました!だから今日はすっごく早く起きちゃって、支度もこの通りです!」
ルカはクルリと回って見せる。結婚式用に仕立てさせた服装に、正式な場所で着用する装飾された剣を腰に差している。それが嬉しそうだった。
「僕、この剣がお気に入りです!」
アーサーは、ルカの可愛さに微笑む。
「今度、剣術の手合わせを、父としよう。」
「本当?!わーい♪いつですか?」
ルカは飛び回って喜んだ。
すると、王妃の間の扉が開く。侍医が出てきた。
「サラは?容体はどうなのだ?」
侍医と看護師が、アーサーの剣幕に驚いて一瞬固まる。そして言った。
「陛下。王妃様は、自ら陛下に伝えたいと仰っておいでです。どうぞ、中へ。」
それを聞いて、アーサーはすぐさま部屋の中へ入って行く。
その姿に、ルカも慌てて部屋の中に入って行く。
サラは、服を整えてベッドから降りて、ソファーの所まで歩いてきたところだった。
「あれ?アーサーもルカも2人で来てたんだね。」
ニコッと笑うのを見て、アーサーは堪らなくなり、サラの傍まで行くと抱きしめた。
「どうしたんだ?どこか具合が悪いのか?」
アーサーが聞くと、サラはアーサーを抱きしめて背中をトントンする。
「ううん。大丈夫だよ。ごめんね。驚いたよね。大丈夫だから。」
サラは直ぐに気が付いた。アーサーは不安から、人には気が付かれない程度に震えていたこと。
「ねぇ、アーサー。」
少し体を離して、じっと彼の顔を覗き見る。
「どうした?」
「うん。あのね。えへへ。」
心の準備をしてから、思い切って伝える。私はきっと、この瞬間が見たかったから。
「赤ちゃん、できたみたいなの。」
「・・・・・・え。」
アーサーの表情が止まったのを見て、サラはあれ?予想と違うぞ?と思う。
「私も気が付かなくて、このところ体調悪いのも結婚式で極度の緊張のせいだと思い込んでて。今、妊娠3ヵ月だって。ここまで気がつかないとか、なんていうか・・・。どうやら、悪阻が始まってたみたいなの。あ、でも安定期に入れば、もう少し食欲も出てくると・・・あ、アーサー?!」
アーサーの目には、今にも零れ落ちそうな涙がたまっていた。サラは慌てて、ハンカチを取り出したところで、抱きしめられる。
「サラ・・・・嬉しい。」
強く抱きしめられて、くぐもった声だけが聞こえるだけで、その表情は見せてくれなかった。だけど、ずごく喜んでくれてることは、分かった。
「・・・・うん。私も。嬉しい。」
ウィルは、ずっと、口に両手を当てて、声を出すのを我慢していた。が、とうとう我慢できなくなる。
「陛下!!おめでとうございます!!王妃様、おめでとうございます!!」
それをきっかけに、女官たちも次々にお祝いの言葉を述べる。
「ねぇねぇ!僕、お兄ちゃんになるの?」
サラのドレスを引っ張って、ルカが言う。
「ルカ。そうだよ。ルカに弟か妹が出来るんだよ。」
「やったー!僕、お兄ちゃんだ!!」
ジャンプするルカの手を取り、何故かウィルと一緒にジャンプしている。
そこへ、バタン!と扉を開けて入ってきたのは、ゴードンだった。
「陛下!王妃様!ご懐妊とのこと、おめでとうございます!!」
まさかの、ゴードンの大きな声に、全員がビックリする。しかも、扉の前で、目頭を押さえて上を向き、ふるふると震えて動かなくなってしまった。
後ろから、黄色いドレス姿の女性が現れた。
「あらやだ!お兄様ったら、こんな所で泣かないでくださいまし!ご挨拶申し上げますので、失礼しますわ。」
エブリンが、レオンと一緒に部屋に入ってくる。レオンは、信じられない物を見たとばかりに、ゴードンを眺める・・・。
エブリンは綺麗にカーテシーをした。
「王妃様、ご懐妊おめでとうございます。今からお産まれになるのが楽しみですわ。ですが、安定期までは御無理なさらずに。ところで、本日はパレードを行うと伺いましたが、馬車は宜しくないのでは?」
そう言われて、全員が「あ」と言う。
「それと、長時間座ったままや、長時間立ったままも気になりますわ。大聖堂は冷えますしね。」
アーサーは、サラをギュウっと抱きしめる腕に力が入る。
「結婚式はとりやめる!」
アーサーの発言に、全員が息を飲む。
「な、何言ってるのよ?!アーサー、それは今更ムリ!お客様だってもう集まってるのよ!?」
「ダメだ!サラと子供に何かあったらどうするんだ?」
「だ、大丈夫だよ!少しだけ予定変更して、ムリ無い程度に休みながらとか、ね?悪阻だって酷くはないし!」
「ダメだ!お前は温かくして、寝ていろ!この部屋から出るな!生まれるまでベッドに居るんだ!」
「はぁ?ちょっと、ちょっと!アーサー落ち着いて!」
その後、
予定の結婚式の時間には間に合ったけれども、パレードは無くなった。
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