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後日談・番外編
離宮の長い2日間 1
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王子がせっせと課題をこなしている横で、私が仕事の書類に目を通していると、ラズトさんの声がした。
「『“開かれた王室”キャンペーン』?」
顔を上げると、机に置いておいた読み終わった分の書類を、ラズトさんがパラパラとめくっている。
ここは、王子がラズトさんに勉強を教わるのに使用されている書斎。普段からラズトさんはここにいることが多いので、半ばラズトさんの私室と化している。自分の部屋はまた別にあるんだけどね。
「ええ、来月から始まるんですよ。王家について、もっと国民に知ってもらおうっていうキャンペーン」
私は説明した。
「王宮で、普段公開しない場所の見学ツアーを組んだり、護衛士の訓練に一般の人が参加したり、ガーデンパーティで王家秘伝のレシピの料理を振る舞ったり。この離宮でも、いくつかイベントを考えてるの」
王子が来て以来、このシズ・カグナ離宮の中心は王子。
お膝元の街――離宮のある丘の下に広がる街、そこの人々の中には、誇りを込めて『王子宮』と呼んでくれる人もいるくらい。
そんな人たちを、ぜひ離宮に招待したいな。
離宮で働き始めて、最初のうちはいっぱいいっぱいで仕事をしていたけど、私の方にもだいぶ余裕が出て来ていた。
だって、あれからそろそろ一年になる。朝起きて、すっかり伸びた髪をゆるく編み込んで、乳母のお仕着せであるつばなしボンネットを着けるのも、すっかり慣れた。
このイベントも積極的に参加して、楽しいものにしたいな。
責任者のタヴァルさんは、離宮内の博物館で公開講座をやろうとしているし、料理長のガエンさんも、何か美味しいイベントを考えているみたい。
私はソラミーレさまと相談して、一般の人々と王子の交流ができたらいいなと思ってるんだけど。
「ああ、師匠が参加するって言ってたのはこれか」
「え、レモニーナさんが?」
「博物館の公開講座の一つを受け持つらしい。ファシード殿も見に来るだろ、絶対」
「うわ、賑やかになりそう」
話しているうちに、王子が「でーきたっ」と書き取りの課題をラズトさんに差し出してきた。
おおっ、王子、だいぶ“人繋印”(表音文字)が上手くなった! もうね、初めて私の名前を書いてくれた時なんて、感動ものだったよ。
私はといえば、“人繋印”は覚えたものの、書く方が苦手。
言葉はこちらの世界に来た時に、睡眠学習ですでに覚えているけど、それを頭の中で印に置き換えて書くのに時間がかかっちゃって。
王子と一緒に鋭意特訓中です。
「上手に書けましたね。それじゃ、ここまでにしよう」
ふふ、ラズトさんは王子と話す時、未だに敬語を使い慣れないみたい。私もだけど。
「ラズト先生、ありがとーございましたっ。コウメ、ぼくおにわであそぶ!」
全員で書斎を出ると、王子はさっそく庭に飛び出していった。身体を動かしたくてしかたないみたい。
「オージ様、お飲み物はいいんですかー?」
侍女のローレンが、急いで追いかけていく。
テラスにティーセットを用意してくれてるから、今日は私がお茶を淹れようかな、とエプロンの紐を結び直した。
そこへ、護衛士のカザムさんが顔を見せた。
いつもと同じ、黒の詰襟の制服姿。手に、私と同じような書類を持っている。
「コーメ、それにラズト先生もちょうど良かった。ちょっとお話が」
何だか困った表情……?
「どうしたんですか?」
「今、来月のイベントの招待客リストを見ていたんですが……」
警備はカザムさんたちの仕事だもんね。招待客のチェックを真っ先にしたみたい。
そう思いながらリストをのぞき込み、カザムさんが指さすところを見た。
うおう、イディンさんの名前。来るんだ、あの人。
目的は博物館の公開講座。
「イディンさん、勉強熱心ですね」
言うと、カザムさんとラズトさんが二人して、じろっと私を見た。
「のんきなことを言ってる場合か」
「そうです。前みたいなことになったらどうするんですか」
「ええ? そんな、何もないですよ。こちらから近づかなければいいじゃないですか」
私は当日、基本的に王子と一緒に行動してるだろうから、イディンさんとは下手したらすれ違うこともないかも。
だいたい、星心殿では私がウッカリしてて、あんなことになっただけだし。
でも、カザムさんとラズトさんは警戒心をあらわにしてる。
「そういうところが甘いんだコーメは。向こうから来るぞ。隙なんかいつでも突ける」
「あの人はここは初めてじゃないはずだし、星心術が使えます。何をしかけてくることか」
こ 、怖いこと言わないでよ二人とも……。
もやもやしていると、カザムさんがなだめるように私の肩に触れた。
「もちろん、俺も当日は気をつけます。本当はずっとコーメについていたいですが、仕事があるのでそういうわけにもいかない。コーメ自身も気をつけて下さい。……ラズト先生、何か予防策はないんですか」
「……ないこともないが……」
ラズトさんはしばらく考え込んでから、顔を上げて私に言った。
「コーメ。いざという時のために、腕に星心印を刻んでおくか? 変身して逃げられるように」
えっ!? ついに私も、もふもふ化!?
◇ ◇ ◇
そして、『“開かれた王室”キャンペーン』の一環、シズ・カグナ離宮一般公開の日がやってきた。
朝から近隣の住民が大勢訪れて、離宮の中はお祭りのように賑やかになる。
公開期間は二日間。初日の今日は、博物館見物ツアー(タヴァル館長の解説付き)と離宮内見学ツアー(タヴァル館長の奥さん・侍女頭ミレットさんの解説付き)が、午前と午後に一回ずつ。
護衛士さんの公開訓練と体術講座、それに、離宮お抱えの楽団のミニコンサートもある。
食堂も開放されていて、軽食とお茶をご用意しております。
王子は乳母の私と護衛士さん(交代制)を従えて、あちらこちらのイベントにちょっとずつ顔出し。
参加者の皆さんにご挨拶したら、若い女の子たちがキャーとか声をあげてくれた。うわぁ、アイドルみたい。
王子の自室でお昼ご飯にしようと思って、渡り廊下を歩いていると、庭の方でわぁーっと歓声がした。
「あ、ニーナせんせーとモリオが、ケンカしてる」
「ええっ、ケンカ!?」
ビックリして王子が指さすのを見ると、レモニーナさんとカザムさんがガチで戦っていた。
周りをお客さんや他の護衛士さんたちまでが囲んで、歓声を上げたり煽ったりしてる。
こちらに気づいて、
「あ、王子さまと乳母さまだ!」
って声をかけてくれるお客さんもいるけど…。
な、なんなのこの出し物、聞いてない!!
二人とも変テコな武器を持っている。ブルース・リーみたいな、えーっとそうそうヌンチャク。それの、普通は二本ある棒の部分が三本あるみたいなやつ。
あっ、もしかして武器オタクのレモニーナ先生が持ち込んだの?
ちょっとちょっとお義母さま……許可取ってくれたのかなぁ。
いったん飛び離れた二人。レモニーナさんが息を弾ませながら挑発する。
「この獲物は苦手みたいねぇ、カザム先・生?」
「レモニーナ先生……どこから手に入れたんですかこんなものっ」
カザムさん、構えながらもちょっと呆れてる。
「昔の文献で見つけたんで、知り合いに復元してもらったの。ほら、コーメが見てるわよー負けられないわね?」
「くっ……行きます!」
再びぶつかり合う二人。
レモニーナさんはその武器を、一本の棒のようにクルクル回したかと思ったら、今度はわざと地面にぶつけて可動部分を跳ねさせたりして、カザムさんを追いつめていく。
カザムさんも身体の周りを回すようにして、思わぬところから武器を飛び出させる。
……結局楽しそう。
はぁ……全くもう、二人とも好きなんだから。
「ばんがれー! ばんがれー!」
王子っ。応援しなくていいからっ。
「コウメ、ぼくもケンカする! モリオとおなじみたいに!」
しなくていいから!
「『“開かれた王室”キャンペーン』?」
顔を上げると、机に置いておいた読み終わった分の書類を、ラズトさんがパラパラとめくっている。
ここは、王子がラズトさんに勉強を教わるのに使用されている書斎。普段からラズトさんはここにいることが多いので、半ばラズトさんの私室と化している。自分の部屋はまた別にあるんだけどね。
「ええ、来月から始まるんですよ。王家について、もっと国民に知ってもらおうっていうキャンペーン」
私は説明した。
「王宮で、普段公開しない場所の見学ツアーを組んだり、護衛士の訓練に一般の人が参加したり、ガーデンパーティで王家秘伝のレシピの料理を振る舞ったり。この離宮でも、いくつかイベントを考えてるの」
王子が来て以来、このシズ・カグナ離宮の中心は王子。
お膝元の街――離宮のある丘の下に広がる街、そこの人々の中には、誇りを込めて『王子宮』と呼んでくれる人もいるくらい。
そんな人たちを、ぜひ離宮に招待したいな。
離宮で働き始めて、最初のうちはいっぱいいっぱいで仕事をしていたけど、私の方にもだいぶ余裕が出て来ていた。
だって、あれからそろそろ一年になる。朝起きて、すっかり伸びた髪をゆるく編み込んで、乳母のお仕着せであるつばなしボンネットを着けるのも、すっかり慣れた。
このイベントも積極的に参加して、楽しいものにしたいな。
責任者のタヴァルさんは、離宮内の博物館で公開講座をやろうとしているし、料理長のガエンさんも、何か美味しいイベントを考えているみたい。
私はソラミーレさまと相談して、一般の人々と王子の交流ができたらいいなと思ってるんだけど。
「ああ、師匠が参加するって言ってたのはこれか」
「え、レモニーナさんが?」
「博物館の公開講座の一つを受け持つらしい。ファシード殿も見に来るだろ、絶対」
「うわ、賑やかになりそう」
話しているうちに、王子が「でーきたっ」と書き取りの課題をラズトさんに差し出してきた。
おおっ、王子、だいぶ“人繋印”(表音文字)が上手くなった! もうね、初めて私の名前を書いてくれた時なんて、感動ものだったよ。
私はといえば、“人繋印”は覚えたものの、書く方が苦手。
言葉はこちらの世界に来た時に、睡眠学習ですでに覚えているけど、それを頭の中で印に置き換えて書くのに時間がかかっちゃって。
王子と一緒に鋭意特訓中です。
「上手に書けましたね。それじゃ、ここまでにしよう」
ふふ、ラズトさんは王子と話す時、未だに敬語を使い慣れないみたい。私もだけど。
「ラズト先生、ありがとーございましたっ。コウメ、ぼくおにわであそぶ!」
全員で書斎を出ると、王子はさっそく庭に飛び出していった。身体を動かしたくてしかたないみたい。
「オージ様、お飲み物はいいんですかー?」
侍女のローレンが、急いで追いかけていく。
テラスにティーセットを用意してくれてるから、今日は私がお茶を淹れようかな、とエプロンの紐を結び直した。
そこへ、護衛士のカザムさんが顔を見せた。
いつもと同じ、黒の詰襟の制服姿。手に、私と同じような書類を持っている。
「コーメ、それにラズト先生もちょうど良かった。ちょっとお話が」
何だか困った表情……?
「どうしたんですか?」
「今、来月のイベントの招待客リストを見ていたんですが……」
警備はカザムさんたちの仕事だもんね。招待客のチェックを真っ先にしたみたい。
そう思いながらリストをのぞき込み、カザムさんが指さすところを見た。
うおう、イディンさんの名前。来るんだ、あの人。
目的は博物館の公開講座。
「イディンさん、勉強熱心ですね」
言うと、カザムさんとラズトさんが二人して、じろっと私を見た。
「のんきなことを言ってる場合か」
「そうです。前みたいなことになったらどうするんですか」
「ええ? そんな、何もないですよ。こちらから近づかなければいいじゃないですか」
私は当日、基本的に王子と一緒に行動してるだろうから、イディンさんとは下手したらすれ違うこともないかも。
だいたい、星心殿では私がウッカリしてて、あんなことになっただけだし。
でも、カザムさんとラズトさんは警戒心をあらわにしてる。
「そういうところが甘いんだコーメは。向こうから来るぞ。隙なんかいつでも突ける」
「あの人はここは初めてじゃないはずだし、星心術が使えます。何をしかけてくることか」
こ 、怖いこと言わないでよ二人とも……。
もやもやしていると、カザムさんがなだめるように私の肩に触れた。
「もちろん、俺も当日は気をつけます。本当はずっとコーメについていたいですが、仕事があるのでそういうわけにもいかない。コーメ自身も気をつけて下さい。……ラズト先生、何か予防策はないんですか」
「……ないこともないが……」
ラズトさんはしばらく考え込んでから、顔を上げて私に言った。
「コーメ。いざという時のために、腕に星心印を刻んでおくか? 変身して逃げられるように」
えっ!? ついに私も、もふもふ化!?
◇ ◇ ◇
そして、『“開かれた王室”キャンペーン』の一環、シズ・カグナ離宮一般公開の日がやってきた。
朝から近隣の住民が大勢訪れて、離宮の中はお祭りのように賑やかになる。
公開期間は二日間。初日の今日は、博物館見物ツアー(タヴァル館長の解説付き)と離宮内見学ツアー(タヴァル館長の奥さん・侍女頭ミレットさんの解説付き)が、午前と午後に一回ずつ。
護衛士さんの公開訓練と体術講座、それに、離宮お抱えの楽団のミニコンサートもある。
食堂も開放されていて、軽食とお茶をご用意しております。
王子は乳母の私と護衛士さん(交代制)を従えて、あちらこちらのイベントにちょっとずつ顔出し。
参加者の皆さんにご挨拶したら、若い女の子たちがキャーとか声をあげてくれた。うわぁ、アイドルみたい。
王子の自室でお昼ご飯にしようと思って、渡り廊下を歩いていると、庭の方でわぁーっと歓声がした。
「あ、ニーナせんせーとモリオが、ケンカしてる」
「ええっ、ケンカ!?」
ビックリして王子が指さすのを見ると、レモニーナさんとカザムさんがガチで戦っていた。
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こちらに気づいて、
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あっ、もしかして武器オタクのレモニーナ先生が持ち込んだの?
ちょっとちょっとお義母さま……許可取ってくれたのかなぁ。
いったん飛び離れた二人。レモニーナさんが息を弾ませながら挑発する。
「この獲物は苦手みたいねぇ、カザム先・生?」
「レモニーナ先生……どこから手に入れたんですかこんなものっ」
カザムさん、構えながらもちょっと呆れてる。
「昔の文献で見つけたんで、知り合いに復元してもらったの。ほら、コーメが見てるわよー負けられないわね?」
「くっ……行きます!」
再びぶつかり合う二人。
レモニーナさんはその武器を、一本の棒のようにクルクル回したかと思ったら、今度はわざと地面にぶつけて可動部分を跳ねさせたりして、カザムさんを追いつめていく。
カザムさんも身体の周りを回すようにして、思わぬところから武器を飛び出させる。
……結局楽しそう。
はぁ……全くもう、二人とも好きなんだから。
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