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4話「転生皇帝とエルフの剣士」

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ドッゴォォォォォォオオオオオオオン!!
 とてつもない衝撃音と共に、フォルテの意識は覚醒した。

「はあぁっ!!?」

 慌てて体を起こし、周囲を見渡す。
 やけに低い視界に映ったのは、青々と広がる草原だった。
 目の前にある光景とここに至るまでを思い出した彼は、早々に一つの答えを導き出した。

(なるほど、ここは天国か)

 死の感覚を覚え、目を覚ましたら草原にいた。

 ここは天国で間違いない、彼はそう信じた。

 だがその視界を僅かに下に向けると、彼の確信は疑問へ立ち返る。

(地面が、凍っている?)

 草原には似つかわない、氷で覆われた地面。
 それはフォルテの付近にしか存在せず、彼を中心にまるで隕石が落ちた跡のように抉れていた。

 天国という頓珍漢な答えからいったん思考を外し、立ち上がろうとするフォルテ。しかし彼が地面に手を置くと、伝わってくる感覚は草でも土でも氷でもないものだった。

 人肌に近い温かさに、上質な布の感触。
 そしてその奥に未体験のふにふにとした柔らかさ。
 初めての感覚に慌てて手をどけ、彼は自身の下にあるモノを見た。

(天使か……)

 そこには天使が……否、天使と見間違えるほどの美しい少女が下敷きになっていた。

 氷と共に煌めく白金の長髪。

 薄く開いた瞼から覗く、青空をはめ込んだような涼しげな瞳。
 白磁の肌に、赤い帯締めと純白の浴衣によく似た服を身に纏った少女。
 そして、可憐な少女に似つかわしくない紅鞘の《カタナ》。

 彼女は目を開くと、フォルテを見て眠たげな声を上げた。

「ああ……よかった、目は覚めたんですね」

 そう言うと、彼女の長く少しだけとがった耳がぴこぴこと上下する。
 肉体を持つ精霊種、エルフの特徴だ。

「いやぁびっくりしましたよ。しばらく何も食べてなくてマナは枯渇寸前、しかもモンスターに囲まれて絶体絶命って時にキミみたいな美ショタ……じゃなくて、少年が落ちてきたんですもん」

 あまりの美しさに声が出ないフォルテ。
 そんな彼の腹辺りを抱えていた手を一度離すと、その手を彼の胸に伸ばして再度抱き寄せ……。

「まあ、落ちてきた衝撃でモンスターもビビッていなくなったし、助かりまし
 たけどね」

 むにゅん! と自分の胸にフォルテの頭を埋めさせてしまった。
 空いている手でわしゃわしゃと髪を撫で、無邪気に笑う少女。

 はだけた浴衣越しでもわかるたわわなメロン級の双丘に、フォルテはなすが
 ままに揉まれていた。

「む、むぐぅ!?」

 声を上げ必死に抵抗するフォルテ。
 しかし見た目以上に強い彼女の腕力が、彼を捉えて離さない。
 むにゅんむにゅんと、暴れるほど彼女の胸に頭が埋もれていく。

「フフフ……役得ですよ少年、命を助けてくれたお礼です。生娘の温もりを
 ……って、子供にそんなのわからないか」

 フォルテを強く抱きしめたまま、ぼーっと呟く少女。
 彼はなおも暴れるが、そんな中にまた一つ、情報過多なこの状況に新たな疑問が投げかけられる。

(子供? 少年……?)

 彼は疑問のワードを頭の中で反芻させながら、抵抗を辞めずに頭を真横へと向けた。
 鏡面のような氷が、自分たちの姿を映す。
 浴衣のはだけた少女に抱かれる……幼い頃の自分の姿。
 氷の中の彼は自分の動きに対応するように暴れている。

 フォルテは、自分の肉体に起きた変化を悟った。
 そして同時に、賢王と呼ばれたその思考は、積み重なった衝撃の数々にショート寸前だった。
 彼は少女のたわわの中で叫ぶ。

「む、むぐごごごおおおーーーーーっっ!?!??(な、何が起きているんだあああーーーーーー!?!??)」

 こうして一度死んだ皇帝は生まれ変わり、新たな物語は始まった――。


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