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14話「俺のターンだ」
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――第四大陸・獣人軍陣営。
大規模な第三大陸への侵攻の先行部隊として上陸した彼らは、現在の戦況を見て余裕を覚えていた。
先行部隊の将、筋骨隆々な黒豹の獣人は纏った黄金の鎧を鳴らして吠える。
「フン……平和ボケした第三大陸の人間が、我々に勝てると思ったのか?」
その言葉を聞いた周囲の兵士たちが「違いない」と笑う。
数で勝る第三大陸軍ではあったが、第四大陸の過酷な環境で鍛え上げられた獣人の前に苦戦を強いられるばかりだ。
獣人軍の将軍は、昨日フォルテが倒したものと同じモンスターに跨り、巨大な矛を振るって猛る。
「そろそろ我が出よう……獣の血を持たぬ劣等種を蹴散らしてくれる!」
彼の咆哮が地を揺らし、獣人軍の戦士を更に奮起させる。
獣人軍の単騎戦力において最強。自他共に一騎当千と語られる彼の強さは、第三大陸側に止められるものなどいない脅威だった。
もはや獣人軍の勝利は当然……かのように思われた。
戦場である草原に突如、突き上げるような地鳴りが響く。
それにいち早く気付いた将軍が周囲を制止する。
「待て……なんだこの気配は?」
その言葉に周囲の兵は辺りを見回した、まさにその時だった。
バキリという甲高い音と共に地面が割れた
突如ヒビの入った地表にどちらの軍も狼狽える。
そして地中から――巨大な円筒状の氷柱が現れ、獣人軍を吹き飛ばした。
打ち上げられ抗うこともできない自軍の兵が地面へと落下していく光景を見て、将軍は目を丸くして呟いた。
「なん……だと……!?」
聳え立つ氷柱に、彼らの思考も凍り付いた。
フォルテは第三大陸の陣から離れ、敵陣に近い丘の上にいた。
緩やかな丘陵であるため敵の誰か一人でもこちらを見れば気づかれる位置だが、彼をここまで運んだ重装兵の言う通り、敵軍の死角に入った絶好のポイントだった。
当然ながら彼らの位置からでも氷柱の出現は目視できる。
重装兵はその光景を見て、驚きを隠せずフォルテに尋ねた。
「ぼ、ボウズ!? あれ何だ? 本当にお前がやったのかぁ!?」
「見てたんだからわかるだろ?」
そう言うとフォルテは重装兵に貰った剣を前方に掲げて敵陣を見る。
掲げた剣を照準器代わりに獣人軍へ合わせ、彼は小さく唱えた。
「『巨神柱:氷
アイス・オベリスク
』!」
彼の詠唱に応じて、敵陣のど真ん中に二つ目の柱が出現する。
狼狽える獣人軍を見た第三大陸の戦士達は、これを転機と捉え一転攻勢の動きに入った。
獣人軍は氷柱に怯え、密集し動きが緩慢になる。
フォルテはそれを「計画通り」と笑みを浮かべ、剣を掲げなおして再び同じ呪文を唱えた。
(上々だ……ここまで来れば敵陣を誘導するなど容易い)
そんなフォルテの思惑通り、侵攻を拒む大小様々な氷柱と第三大陸軍の奮闘により、獣人軍は着々と劣勢に迫られていく。
しかしこの状況でも、獣人軍最強である将軍は抗い続けていた。
モンスターを駆り氷柱の森を疾走し術の使用者を探す敵将。
それを拒むように第三大陸の戦士達が彼の前へと立ち塞がる。
だが彼は巨大な矛を手に、戦士達を一薙ぎで吹き飛ばした。
「ぐああっっ!」
戦士達など木っ端のように薙ぎ払い、術の使用者を探す将軍。
状況打開のために猛進する彼の瞳は真っ赤に血走っていた。
「どこだッ! どこにいる!?」
必死のあまり、将軍は声に出して吠える。
彼は本能的に使用者が第三大陸の陣にいないことを察していた。
乱れる戦場において、ピンポイントに獣人軍のみを狙う氷柱の出現パターンを怪しんだのだ。
その驚異的な野生の勘は、無意識にフォルテのいる丘へ目を向けさせた。
丘の上で剣を掲げる少年と、殺気立つ将軍の視線が合わさる。
将軍の心に少年を侮る慢心はなかった。
「いたぞおおおぉぉぉぉぉォォォッッッッ!」
将軍の雄叫びに振り向く獣人軍の戦士達。
彼らの瞳は将軍の視線を追い、丘の上の存在に気付かせた。
「あのガキがこの氷を作ったのか!? 信じられねぇ!」
「でも標的は決まったようだなァ……!」
敵の獣戦士達は口々に言うと、将軍を皮切りに我先にとフォルテめがけて駆けだした。
道中を氷柱に阻まれながらもその進軍は止まらない。
フォルテを守る重装兵はその光景に剣を抜く。
数でも力でも圧倒的に相手の有利な状況だが、重装兵はひるまず彼へ告げた。
「下がってろ! ここは俺が食い止めるから、逃げるんだッッ!」
火を見るよりも明らかな不利にも関わらず虚勢ではない言葉を告げる重装兵に、フォルテは心動かされ目を丸くして感心する。
だからこそ――彼を見捨てるわけにはいかないと、フォルテは返す。
「いや、下がるのはお前だ!」
フォルテはそう言うと重装兵の一歩前へ出る。
間近まで迫った敵軍とたった一人で向き合うフォルテ。
その表情が……不敵な笑みを浮かべる。
前方に右の掌をかざしリラックスするように息を吐く。
そして心に覚悟を決め、フォルテは告げた。
「俺のターンだ」
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大規模な第三大陸への侵攻の先行部隊として上陸した彼らは、現在の戦況を見て余裕を覚えていた。
先行部隊の将、筋骨隆々な黒豹の獣人は纏った黄金の鎧を鳴らして吠える。
「フン……平和ボケした第三大陸の人間が、我々に勝てると思ったのか?」
その言葉を聞いた周囲の兵士たちが「違いない」と笑う。
数で勝る第三大陸軍ではあったが、第四大陸の過酷な環境で鍛え上げられた獣人の前に苦戦を強いられるばかりだ。
獣人軍の将軍は、昨日フォルテが倒したものと同じモンスターに跨り、巨大な矛を振るって猛る。
「そろそろ我が出よう……獣の血を持たぬ劣等種を蹴散らしてくれる!」
彼の咆哮が地を揺らし、獣人軍の戦士を更に奮起させる。
獣人軍の単騎戦力において最強。自他共に一騎当千と語られる彼の強さは、第三大陸側に止められるものなどいない脅威だった。
もはや獣人軍の勝利は当然……かのように思われた。
戦場である草原に突如、突き上げるような地鳴りが響く。
それにいち早く気付いた将軍が周囲を制止する。
「待て……なんだこの気配は?」
その言葉に周囲の兵は辺りを見回した、まさにその時だった。
バキリという甲高い音と共に地面が割れた
突如ヒビの入った地表にどちらの軍も狼狽える。
そして地中から――巨大な円筒状の氷柱が現れ、獣人軍を吹き飛ばした。
打ち上げられ抗うこともできない自軍の兵が地面へと落下していく光景を見て、将軍は目を丸くして呟いた。
「なん……だと……!?」
聳え立つ氷柱に、彼らの思考も凍り付いた。
フォルテは第三大陸の陣から離れ、敵陣に近い丘の上にいた。
緩やかな丘陵であるため敵の誰か一人でもこちらを見れば気づかれる位置だが、彼をここまで運んだ重装兵の言う通り、敵軍の死角に入った絶好のポイントだった。
当然ながら彼らの位置からでも氷柱の出現は目視できる。
重装兵はその光景を見て、驚きを隠せずフォルテに尋ねた。
「ぼ、ボウズ!? あれ何だ? 本当にお前がやったのかぁ!?」
「見てたんだからわかるだろ?」
そう言うとフォルテは重装兵に貰った剣を前方に掲げて敵陣を見る。
掲げた剣を照準器代わりに獣人軍へ合わせ、彼は小さく唱えた。
「『巨神柱:氷
アイス・オベリスク
』!」
彼の詠唱に応じて、敵陣のど真ん中に二つ目の柱が出現する。
狼狽える獣人軍を見た第三大陸の戦士達は、これを転機と捉え一転攻勢の動きに入った。
獣人軍は氷柱に怯え、密集し動きが緩慢になる。
フォルテはそれを「計画通り」と笑みを浮かべ、剣を掲げなおして再び同じ呪文を唱えた。
(上々だ……ここまで来れば敵陣を誘導するなど容易い)
そんなフォルテの思惑通り、侵攻を拒む大小様々な氷柱と第三大陸軍の奮闘により、獣人軍は着々と劣勢に迫られていく。
しかしこの状況でも、獣人軍最強である将軍は抗い続けていた。
モンスターを駆り氷柱の森を疾走し術の使用者を探す敵将。
それを拒むように第三大陸の戦士達が彼の前へと立ち塞がる。
だが彼は巨大な矛を手に、戦士達を一薙ぎで吹き飛ばした。
「ぐああっっ!」
戦士達など木っ端のように薙ぎ払い、術の使用者を探す将軍。
状況打開のために猛進する彼の瞳は真っ赤に血走っていた。
「どこだッ! どこにいる!?」
必死のあまり、将軍は声に出して吠える。
彼は本能的に使用者が第三大陸の陣にいないことを察していた。
乱れる戦場において、ピンポイントに獣人軍のみを狙う氷柱の出現パターンを怪しんだのだ。
その驚異的な野生の勘は、無意識にフォルテのいる丘へ目を向けさせた。
丘の上で剣を掲げる少年と、殺気立つ将軍の視線が合わさる。
将軍の心に少年を侮る慢心はなかった。
「いたぞおおおぉぉぉぉぉォォォッッッッ!」
将軍の雄叫びに振り向く獣人軍の戦士達。
彼らの瞳は将軍の視線を追い、丘の上の存在に気付かせた。
「あのガキがこの氷を作ったのか!? 信じられねぇ!」
「でも標的は決まったようだなァ……!」
敵の獣戦士達は口々に言うと、将軍を皮切りに我先にとフォルテめがけて駆けだした。
道中を氷柱に阻まれながらもその進軍は止まらない。
フォルテを守る重装兵はその光景に剣を抜く。
数でも力でも圧倒的に相手の有利な状況だが、重装兵はひるまず彼へ告げた。
「下がってろ! ここは俺が食い止めるから、逃げるんだッッ!」
火を見るよりも明らかな不利にも関わらず虚勢ではない言葉を告げる重装兵に、フォルテは心動かされ目を丸くして感心する。
だからこそ――彼を見捨てるわけにはいかないと、フォルテは返す。
「いや、下がるのはお前だ!」
フォルテはそう言うと重装兵の一歩前へ出る。
間近まで迫った敵軍とたった一人で向き合うフォルテ。
その表情が……不敵な笑みを浮かべる。
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