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リョウゲ
35
本堂に着くと、白馬は変身状態から一部だけ人の形に戻っていた。腕はないが、頭と胴体と下半身はある。ただ、背中から大きな翼が八本と、お尻から大きな尻尾が出ている。
本堂の屋根を壊し、中に侵入したらしいが翼が屋根の上に引っ掛かり、畳の上につま先で立つことしか出来ない。
黄泉はそんな白馬と鉢合わせし、ここまで千里眼の術で読んでいたために彼に駆け寄り呼びかけた。
「白馬、白馬なのか。返事をしろ」
「よ……み……」
「白馬」
黄泉は白馬に口づけをする。白馬は驚いたように目を見開いた。
「黄泉……」
身体が小さくなり、元に戻ろうとする。
「白馬。もう分かった。私は何をされてもいい。お前になら。白馬」
「黄泉……お前」
「頼む。どこにも行かないでくれ」
白馬の腕が戻り、黄泉の身体を抱きしめる。
黄泉は抵抗しなかった。
「抱いてくれ、白馬」
「なっ、今か!」
真っ赤になり慌てふためく。いつもの白馬の反応だ。
「怖いんだ。お前と会えなくなりそうで」
「黄泉……」
「白馬」
こうやって足止めしておけば、青海が来て二人で助けられる。そう思った。
だが、本当にそうなのか。作戦なんて考えていたのか。
無我夢中で走って、ただ身体が動くままに衝動的に口づけをした。
本当に、私は。
「白馬……お前がお前ならいい。化け物になったって私はお前ならいいんだ」
「黄……泉……」
白馬は瞠目する。黄泉が胸から背中に手を回すと、白馬はうめき声をあげる。
「う、ううう。ううううううう」
「白馬」
「俺は。お前を。うううううううううう、ううううう」
「白馬兄さんしっかりしろ」
「化け物になんて」
白馬の身体が変化していく、化け物に元通りになったと思えば、藻掻くように化け物は手のような部分で頭らしきものを抱えてのたうち回る。
屋敷は壊れ、足場がなくなりそうになる。
白馬は転がり回り、本堂とつり橋ごと引きちぎり、滝へと落ちていく。
黄泉も屋敷の柱に掴まりながら落ちていった。他の屋敷も本堂につながるつり橋で引きずられて落ちる。
「白馬……!!」
屋敷から飛び出そうとした白馬は、吊り橋を破り、他の屋敷を潰し、木片や縄を身体に絡めとりながら堕ちていった。
河に飲まれ、滝がいつも以上に飛沫を揚げて白馬を奈落の底へと連れていく。
「──白馬ッ!!」
黄泉はその身を投げ出した。
はくば。
はくば。
「姉貴……! アンタ何してんだよ!? ついに人生が面倒になったのか!?」
真黒は黒い天使の翼を背中に生やし空を飛ぶ。黄泉の腕を捕まえて言った。黄泉はその姿に驚く。
「真黒、お前」
「いつかやるとは思ってたけど、本当に面倒臭がりだな……はぁ……」
「おい、私をなんだと思っている。お前……」
「さっきのあれ、白馬の兄貴だろ。どこに行きたいんだよ。連れてってやるよ」
黄泉はにこりと笑って、「滝つぼに」と答える。
「お前の翼、天使みたいだな」
「な、や……」
今だに勘違いしている真黒は真っ赤になって叫んだ。
「──やめろこっ恥ずかしいッ!!」
◇◇◇
真黒は青海もつれてくると言い飛び立ち、黄泉は池の周辺を周り、滝壺の洞窟の中へと入っていく。
青海と砂金と歩いた時は蟻の巣のように入り組んでいたのに、今は巨大な一本道になっている。白馬が無理やり入って行ったのだろう。大量の赤と青のマーブル模様の血が道の中央に溜まっている。
長い長い一本道の先には白い壁が広がっていた。
砂金の隠れ家ではない。場所が離れすぎている。
何かの施設のようだった。
黄泉は血液の跡を辿って歩いていく。走りたがったが、地面が凸凹した長い一本道で体力が尽きていた。
これで白馬と戦えるのかと、黄泉は弱気になる。だんだんと、白馬の血液は青色の割合を多くしていく。
辿り着いた先には、ぜえぜえと息をつく大きな白い歯と舌があった。
それも半透明で、歯に纏わり付く骨や血管が見えている。
白馬の身体は融合しながら人間の形になっていく。
進化しているのだ、人間の作った環境では人の姿が動きやすい。
白馬は人型に翼が生えた状態になる。
黒い翼の生えていた真黒より物々しい。
黄泉が刀を構えると、白馬は長く刀のようにしなった爪を構えた。
二人とも息が荒い。
しかし。
――黄泉は躊躇いながらも、切りかかった。
例え白馬相手でも、助けるためなら瀕死にする。もうタフィリィを抜けないかもしれないなら、自分の手で殺す。
白馬と黄泉は戦闘になる。どちらも一歩も譲らない戦いだった。
黄泉の刀さばきと、白馬の複数の爪が交わる。
そこへ触手も加わるが、黄泉はそれを輪切りに切り刻み、さらに再生できないよう一瞬にして刀で粉々に切り刻み破壊していく。
「白馬あああああああああッ!!」
黄泉は白馬の爪を引っかけ、手ごと上にはじく。
黄泉は胸を突き刺そうとしたが、弾かれた手の指がパカッと裂け、爪が降りてくる、黄泉はそれを後ろに跳躍して避け、心臓に向かって刀を突き出した。
人間の姿に進化すると言うことは、1番あってはならない急所の、核が出来ると言うことだ。胸を、心臓さえ突き刺せば黄泉は勝てる。白馬を助けられる。
おそらくもう、本当の意味では、白馬を助けられない。血液がその証拠だ。
傷付いた身体は進化に追いつかず、皮膚は破け内臓は丸見えだ。思いっきり洞窟を抜けたせいだろう。鍾乳洞なので針のように尖った岩場も存在する。それに身体を裂かれたのだ。
白馬は黄泉が来る前に致命傷を負った。それを治そうと虫が発生した。融合し、ある程度の傷を治した。
黄泉はあと一歩で、白馬を救えると思った。
あともう少しで、黄泉の手で白馬を殺し。
一瞬でも白馬として生きて貰えると。
その筈だったのだ。
本堂の屋根を壊し、中に侵入したらしいが翼が屋根の上に引っ掛かり、畳の上につま先で立つことしか出来ない。
黄泉はそんな白馬と鉢合わせし、ここまで千里眼の術で読んでいたために彼に駆け寄り呼びかけた。
「白馬、白馬なのか。返事をしろ」
「よ……み……」
「白馬」
黄泉は白馬に口づけをする。白馬は驚いたように目を見開いた。
「黄泉……」
身体が小さくなり、元に戻ろうとする。
「白馬。もう分かった。私は何をされてもいい。お前になら。白馬」
「黄泉……お前」
「頼む。どこにも行かないでくれ」
白馬の腕が戻り、黄泉の身体を抱きしめる。
黄泉は抵抗しなかった。
「抱いてくれ、白馬」
「なっ、今か!」
真っ赤になり慌てふためく。いつもの白馬の反応だ。
「怖いんだ。お前と会えなくなりそうで」
「黄泉……」
「白馬」
こうやって足止めしておけば、青海が来て二人で助けられる。そう思った。
だが、本当にそうなのか。作戦なんて考えていたのか。
無我夢中で走って、ただ身体が動くままに衝動的に口づけをした。
本当に、私は。
「白馬……お前がお前ならいい。化け物になったって私はお前ならいいんだ」
「黄……泉……」
白馬は瞠目する。黄泉が胸から背中に手を回すと、白馬はうめき声をあげる。
「う、ううう。ううううううう」
「白馬」
「俺は。お前を。うううううううううう、ううううう」
「白馬兄さんしっかりしろ」
「化け物になんて」
白馬の身体が変化していく、化け物に元通りになったと思えば、藻掻くように化け物は手のような部分で頭らしきものを抱えてのたうち回る。
屋敷は壊れ、足場がなくなりそうになる。
白馬は転がり回り、本堂とつり橋ごと引きちぎり、滝へと落ちていく。
黄泉も屋敷の柱に掴まりながら落ちていった。他の屋敷も本堂につながるつり橋で引きずられて落ちる。
「白馬……!!」
屋敷から飛び出そうとした白馬は、吊り橋を破り、他の屋敷を潰し、木片や縄を身体に絡めとりながら堕ちていった。
河に飲まれ、滝がいつも以上に飛沫を揚げて白馬を奈落の底へと連れていく。
「──白馬ッ!!」
黄泉はその身を投げ出した。
はくば。
はくば。
「姉貴……! アンタ何してんだよ!? ついに人生が面倒になったのか!?」
真黒は黒い天使の翼を背中に生やし空を飛ぶ。黄泉の腕を捕まえて言った。黄泉はその姿に驚く。
「真黒、お前」
「いつかやるとは思ってたけど、本当に面倒臭がりだな……はぁ……」
「おい、私をなんだと思っている。お前……」
「さっきのあれ、白馬の兄貴だろ。どこに行きたいんだよ。連れてってやるよ」
黄泉はにこりと笑って、「滝つぼに」と答える。
「お前の翼、天使みたいだな」
「な、や……」
今だに勘違いしている真黒は真っ赤になって叫んだ。
「──やめろこっ恥ずかしいッ!!」
◇◇◇
真黒は青海もつれてくると言い飛び立ち、黄泉は池の周辺を周り、滝壺の洞窟の中へと入っていく。
青海と砂金と歩いた時は蟻の巣のように入り組んでいたのに、今は巨大な一本道になっている。白馬が無理やり入って行ったのだろう。大量の赤と青のマーブル模様の血が道の中央に溜まっている。
長い長い一本道の先には白い壁が広がっていた。
砂金の隠れ家ではない。場所が離れすぎている。
何かの施設のようだった。
黄泉は血液の跡を辿って歩いていく。走りたがったが、地面が凸凹した長い一本道で体力が尽きていた。
これで白馬と戦えるのかと、黄泉は弱気になる。だんだんと、白馬の血液は青色の割合を多くしていく。
辿り着いた先には、ぜえぜえと息をつく大きな白い歯と舌があった。
それも半透明で、歯に纏わり付く骨や血管が見えている。
白馬の身体は融合しながら人間の形になっていく。
進化しているのだ、人間の作った環境では人の姿が動きやすい。
白馬は人型に翼が生えた状態になる。
黒い翼の生えていた真黒より物々しい。
黄泉が刀を構えると、白馬は長く刀のようにしなった爪を構えた。
二人とも息が荒い。
しかし。
――黄泉は躊躇いながらも、切りかかった。
例え白馬相手でも、助けるためなら瀕死にする。もうタフィリィを抜けないかもしれないなら、自分の手で殺す。
白馬と黄泉は戦闘になる。どちらも一歩も譲らない戦いだった。
黄泉の刀さばきと、白馬の複数の爪が交わる。
そこへ触手も加わるが、黄泉はそれを輪切りに切り刻み、さらに再生できないよう一瞬にして刀で粉々に切り刻み破壊していく。
「白馬あああああああああッ!!」
黄泉は白馬の爪を引っかけ、手ごと上にはじく。
黄泉は胸を突き刺そうとしたが、弾かれた手の指がパカッと裂け、爪が降りてくる、黄泉はそれを後ろに跳躍して避け、心臓に向かって刀を突き出した。
人間の姿に進化すると言うことは、1番あってはならない急所の、核が出来ると言うことだ。胸を、心臓さえ突き刺せば黄泉は勝てる。白馬を助けられる。
おそらくもう、本当の意味では、白馬を助けられない。血液がその証拠だ。
傷付いた身体は進化に追いつかず、皮膚は破け内臓は丸見えだ。思いっきり洞窟を抜けたせいだろう。鍾乳洞なので針のように尖った岩場も存在する。それに身体を裂かれたのだ。
白馬は黄泉が来る前に致命傷を負った。それを治そうと虫が発生した。融合し、ある程度の傷を治した。
黄泉はあと一歩で、白馬を救えると思った。
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一瞬でも白馬として生きて貰えると。
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