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イルヴルヴ
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しおりを挟む研究基地と比べてかなり小さな小屋だった。6号――アシャの上半身の骨折は治ったが、下半身……両足がまだ治らなかった。
アシャを救った彼はアシャを車椅子に乗せて世話をした。
わざわざアシャのために木から車椅子を作ってくれたのだ。最初は抱きかかえたりおんぶしたりして運んでくれたが、思いのほか大変だったのだろう。
暖かい食事を食べ内側から温め、冷えた肌には熱い湯を浴びて、ぽかぽかのまま布団に寝かされる。
彼はベッドの隣に椅子を持ってきて座り、話せないアシャの為に昔話を話してくれた。
むかしむかし、ある壁の中に王様が住んでいました。
王様は壁の外の世界を何もかも支配できました。
ある兄弟は壁の外で暮らしていました。
兄弟はとても仲良しでした。
しかし、兄が壁に囚われてしまいます。
弟は会いたくて壁に近付いてしまいました。
不思議なことに壁の中の王様は弟に攻撃しませんでした。
しかし。どれだけ呼び掛けようと兄は出て来ません。
弟は自分が来たことを知らせるために、兄に貰ったネックレスを地面に置きました。
次の瞬間、壁は光の攻撃をしてきました。
その光を見て、弟はある日のことを思い出しました。
自分を庇った兄の姿を思い出したのです。
しかし、しかし。
その光を吸収したのは自分であったことも思い出しました。
兄は光を吸収する箇所がなかったため、双子である自分がそれをすべて奪ってしまっていたのだと気が付きました。
この国で唯一、光を跳ね返す力を持つ兄が、壁に浚われてしまったのは、自分の所為だったのだと、気が付きました。
100年が経ち、200年が経ち、友人も家族も死んでいってしまいました。
光を誰よりも吸収してしまう弟は、何百年も生きました。
弟はひとりぼっちになってしまいました。
弟は壁の中の兄に会いたがりました。
弟が壁に近づくと、壁の扉が開きました。
兄に貰ったネックレスが壁の扉を開く鍵だったのです。
壁の中には知らない人がたくさんいました。
弟は光を吸収するので、その人たちに身体の一部を提供しました。
その人たちはお礼に、兄と弟の子を作ってくれました。
そしてたくさんの子供達に囲まれて暮らしましたが、弟は寂しいままです。
なぜなら兄が何百年も前に王様と一緒に死んでしまっていたからです。
子供達も知らない人達もいつの間にか減っていき、知らない人が増え続けます。
皆が弟の身体を欲しがったので、弟は壁の中から逃げました。
そうして弟は、また一人ぼっちになりました。
そこへある少女が現れたのです。
………………………………。
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「この話はここまでにしよう」
アシャは首を傾げて疑問を覚えていることを示す。彼は困ったように眉を下げ、笑って言った。
「自分で話し始めてなんだけど、その先を知らないんだ。まだお話は続く筈なんだけど」
彼は思い出すようにハッとして言った。
「そう言えば、お前の名前のことばかり考えていて自分が名乗るのを忘れてたよ」
彼はアシャの前にそっと手を差し出してきて言った。
「俺はルイス。よろしくなアシャ」
ルイスは手を握らないアシャの手を反対の手で掴んで、自分の手を握らせる。
「握手だ」
「あうゆ……」
「そう握手」
「あうしゅ……」
ルイスはまた、困ったように笑った。
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