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コノカ
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次の日の朝、バスで帰路に着いた頃、アリシアの不調は治ったかのように見えた。久しぶりの教室に着くとみんな安心して休憩を始めた。帰りは急いだのでバスの中で制服に着替えることが出来ず、教室での着替えとなった。発注していた制服も届き、皆着替えてから休憩していた。制服の安心感を何故か覚えてしまう今までになかった不思議な感覚だった。
生徒たちは自分の寮の個室に戻り、昨日の疲れを寝て癒した。アリシアといるのは大変そうだと感じたのか、制服をスカートかパンツか選べる女性陣はほとんどパンツスタイルになった。欄とシティアは動きやすくするため元々パンツだったが、女心からするとスカート姿の方が確かに可愛い。それにショートパンツなので、脚の魅力に自信が無いと履けないだろう。男性陣にはそう言った選択肢がなくロングパンツしかないので仕方が無いが。もちろん夏冬関係なく長いズボンだ、厚さはもちろん変わるし上は夏冬関係なく袖がない。
コノカは火を扱うので寒さを感じにくい体質でもあるのだ。むしろ暑がりの方が多い。
今朝のような冷え込む朝でもぐっすり眠られる。
――……筈なのだが、シティアは昨日のことで頭がいっぱいいっぱいで眠れるどころか目が冴えていた。
運動に少し廊下を歩いてみようと部屋を出て寝巻きのまま寮内を歩いていると、まだ薄暗い中、向かい側の男子寮の一室の灯りが着いており、同じように眠れない人がいるんだ、と窓枠に手を掛け、その場所をじっと、眺めた。
そうしていると、男子寮の廊下をアリシアが歩いていくのが見える。その灯りの着いた部屋に入り、窓のスリガラス越しにもわかる、白い服を脱ぎ、白い肌が晒される。
一体何が起きているのか、彼女はもしかして男の子であの部屋は彼女の部屋なのか。
まったくの不正解である。
シティアはあの部屋の主を知っていた。蘭がよく話すからだ。だから眠れない夜を過ごすその人に、自分もそうだと言いたいくらいには喜びを覚えていた。
あの部屋は、蓮の部屋だ。蓮の部屋でアリシアが服を脱いだ。……全く意味が分からない。シティアは窓を開けて、耳を今朝の静けさに傾ける。化け物だからか、耳の良さには自信があった。その中に、微かだが女の子の甘い上声が聞こえてきた。
「あ、アリシア……まさか」
シティアはすぐに女子寮を飛び出して、男子寮へ入っていった。出入り禁止ではないので、すぐに通して貰えたが、夜だったら門限で通して貰えなかっただろう。
シティアが蓮の部屋の前に立つと、ちょうど扉が開いた。中からアリシアが出て来て、その顔はぼうっとしている。服はちゃんと来ていたから、シティアは胸を撫で下ろす。しかし、その服の襟の上に、彼女の白い首に赤い跡が残っているのが見えて、ゾッとする。
「あ、アリシア。私……」
震える拳に例えようのない怒りが満ちていた。
「何怒ってるのよ。呼び出されたの。私はそれに答えただけよ」
「で、でも」
「激しすぎて毎日は無理ね。声、漏れないようにしてたんだけど聞こえてたの?」
「私、昔から耳がいいから」
「そう……そうだったかしら。そうならオトウサマとジェキシイン・ダーワークの恋路にも気付けた筈じゃない?」
「え……私たち一緒に暮らしていたの!?」
「そうね。でも貴方だけは特別扱い。オトウサマは私のことを嫌っていたわ」
「……そんなこと」
「ないなんて言いきれないでしょ。可愛がられて何も知らされなかった協会に保護された小さな女の子。私はずっと施設で実験されていたわ。人体発火……それを身につけたのが私よ。心配しないで、貴方もそうなれるわ、貴方を実験に招待したの」
「…………」
シティアは、それを聞いて、実験なんかよりも先に思い出していたことがあった。
施設のバスよりもっと高そうな車に乗って、どこかにお父さんと帰って行った記憶があった。その中に他に誰か数人いて、皆優しくて、頼りになって。それが、協会の人だとは分かっていたけれど、保護されたと言うことは知らなかった。保護とはなんだろう、アリシアは保護されなかったのか? 協会に保護されるような場所に、置いてけぼりにされていたのか? 人体発火の実験って、アリシアがしてたの……? 身につけたって何よ。
正解でなければいいのに。
持ち前のペシミズムを発動させてしまい、シティアはかぶりを振って気持ちを立て直す。しかし、そこに既にアリシアはいなくて、置いていかれたのは自分のような気分にもなってしまった。
生徒たちは自分の寮の個室に戻り、昨日の疲れを寝て癒した。アリシアといるのは大変そうだと感じたのか、制服をスカートかパンツか選べる女性陣はほとんどパンツスタイルになった。欄とシティアは動きやすくするため元々パンツだったが、女心からするとスカート姿の方が確かに可愛い。それにショートパンツなので、脚の魅力に自信が無いと履けないだろう。男性陣にはそう言った選択肢がなくロングパンツしかないので仕方が無いが。もちろん夏冬関係なく長いズボンだ、厚さはもちろん変わるし上は夏冬関係なく袖がない。
コノカは火を扱うので寒さを感じにくい体質でもあるのだ。むしろ暑がりの方が多い。
今朝のような冷え込む朝でもぐっすり眠られる。
――……筈なのだが、シティアは昨日のことで頭がいっぱいいっぱいで眠れるどころか目が冴えていた。
運動に少し廊下を歩いてみようと部屋を出て寝巻きのまま寮内を歩いていると、まだ薄暗い中、向かい側の男子寮の一室の灯りが着いており、同じように眠れない人がいるんだ、と窓枠に手を掛け、その場所をじっと、眺めた。
そうしていると、男子寮の廊下をアリシアが歩いていくのが見える。その灯りの着いた部屋に入り、窓のスリガラス越しにもわかる、白い服を脱ぎ、白い肌が晒される。
一体何が起きているのか、彼女はもしかして男の子であの部屋は彼女の部屋なのか。
まったくの不正解である。
シティアはあの部屋の主を知っていた。蘭がよく話すからだ。だから眠れない夜を過ごすその人に、自分もそうだと言いたいくらいには喜びを覚えていた。
あの部屋は、蓮の部屋だ。蓮の部屋でアリシアが服を脱いだ。……全く意味が分からない。シティアは窓を開けて、耳を今朝の静けさに傾ける。化け物だからか、耳の良さには自信があった。その中に、微かだが女の子の甘い上声が聞こえてきた。
「あ、アリシア……まさか」
シティアはすぐに女子寮を飛び出して、男子寮へ入っていった。出入り禁止ではないので、すぐに通して貰えたが、夜だったら門限で通して貰えなかっただろう。
シティアが蓮の部屋の前に立つと、ちょうど扉が開いた。中からアリシアが出て来て、その顔はぼうっとしている。服はちゃんと来ていたから、シティアは胸を撫で下ろす。しかし、その服の襟の上に、彼女の白い首に赤い跡が残っているのが見えて、ゾッとする。
「あ、アリシア。私……」
震える拳に例えようのない怒りが満ちていた。
「何怒ってるのよ。呼び出されたの。私はそれに答えただけよ」
「で、でも」
「激しすぎて毎日は無理ね。声、漏れないようにしてたんだけど聞こえてたの?」
「私、昔から耳がいいから」
「そう……そうだったかしら。そうならオトウサマとジェキシイン・ダーワークの恋路にも気付けた筈じゃない?」
「え……私たち一緒に暮らしていたの!?」
「そうね。でも貴方だけは特別扱い。オトウサマは私のことを嫌っていたわ」
「……そんなこと」
「ないなんて言いきれないでしょ。可愛がられて何も知らされなかった協会に保護された小さな女の子。私はずっと施設で実験されていたわ。人体発火……それを身につけたのが私よ。心配しないで、貴方もそうなれるわ、貴方を実験に招待したの」
「…………」
シティアは、それを聞いて、実験なんかよりも先に思い出していたことがあった。
施設のバスよりもっと高そうな車に乗って、どこかにお父さんと帰って行った記憶があった。その中に他に誰か数人いて、皆優しくて、頼りになって。それが、協会の人だとは分かっていたけれど、保護されたと言うことは知らなかった。保護とはなんだろう、アリシアは保護されなかったのか? 協会に保護されるような場所に、置いてけぼりにされていたのか? 人体発火の実験って、アリシアがしてたの……? 身につけたって何よ。
正解でなければいいのに。
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