リクゴウシュ

隍沸喰(隍沸かゆ)

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カナキリ

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 イダをコントロールできてきた天地は能力協会に来ていた。まあコントロールできていない時にも幡多が連れてきてしまっていたのだが。
 幡多の元に一人の男性が近づいていく。
 漆黒の髪とルビーの瞳の美形だ。
「よっ、幡多お前こんなところで何してるんだ?」
「うわ! いきなり肩組んでこないでくださいよジェキシインさん!」
「ごめんごめん」
 天地が「ええっと……」と戸惑っていると、幡多は「この人はジェキシインさん、俺の上司になっちまった人だ」と紹介する。
「なっちまった?」
「バカエロ幡多がその人より先に能力協会に幡多が入ったのに、抜かれた」
「うわっ!! 誰ですか!」
 淡々と喋ったその女性はまたもや美形で天地は惚れ惚れする。
「叫ばないで崩れる」
「おいラ矢、失礼だぞ。こいつはちゃんと訓練してコントロールできるようになってきたんだ」
「なってきた? その段階で連れてきていいの?」
「聖唖が文句言わなかったんだから大丈夫だろ」
 ラ矢と幡多がバチバチ火花を飛ばしていると、ラ矢の後ろからぽよんぽよんと言う音が聞こえてきて、幡多がラ矢の後ろを覗き込む。天地も幡多の真似をして覗き込んで、真っ赤になった。
「ラ矢隊ちょ~う! 置いていかないでください~!」
 メロンが二つ揺れて迫ってくる姿に、幡多は鼻血を垂らし、天地は目を背ける。
 幡多が真顔で指を動かして両手を前に突き出すのを見て、ラ矢が拳で幡多の頭を叩いた。容赦がない。
 ラ矢がメロンに紹介する。
「幡多と、ジェキシインさんと、カナキリ」
「えええ!? カナキリ!? 普通に施設にいるものなんだ!」
「保護されたカナキリは訓練を受ける。イダがコントロールできるようになったら去るか、能力協会の会員になる」
「へえ! よろしくお願いします! 私は多涙羅摩可です!」
「よろしく摩可ちゃん」
 幡多が摩可の目の前に突如現れて差し出された手ではなく胸を鷲掴みにし揉みしだく。メロンの中心にあるのへたを指で何度も弾いて幸せな顔をする。
「ひええええ!」
「俺は幡多。よろしくな。ちゅっちゅっ」
「きゃあああああああ!?」
 摩可の差し出された手を反対の手が握り、頬擦りし、何度も口付けする幡多。ラ矢に吹っ飛ばされた。
 天地は吹っ飛ばされた幡多を見てから呆れ、用事があるとラ矢たちに別れを告げる。
「俺たちはこれで」
「待って。あなた、名前は?」
「天地コウシです」
「天地。私はラ矢。よろしく。今からどこに行くの?」
 ラ矢が目を光らせたのは聖唖が一緒に行くだろうと思っているからだ。
「講演を聞きに行ってきます」
「そう。ためになる話ばかり。頑張って」
「はい」
 幡多に連れられ、天地は能力協会の開く能力協会内だけの講演にやってきていた。
 天地は、カナキリの成り立ちを聞くことになる。

二一〇二年、鹿児島県鹿屋市に得体の知れない壁が現れた。その壁から発生した得体の知れない粒子、緑龍子は人類の歴史に大々的なダメージを与え、そして更なる進化も与えてみせた。
 九〇〇年以上経った今でも、その正体や仕組みは解明されていないが、緑龍子の持つ性質は長年の研究により解明されつつある。
 その性質の中でも突出しているモノが、物体を元の状態に戻す性質だ。しかし、これは一般人向けに公開された簡易的な表現に過ぎない。
 研究者向けに説明すれば、緑龍子は物体を元の状態に戻す性質ではなく、付与された物質・物体に対し、既存の構造の情報兼過去の構造の情報を粒子単位で記録し完全な複製・再生を行う万物の万能細胞のような性質、となる、らしい。
 この情報が最新だが、果たしてこの見解が正しいのかも、我々には確かめる術が残されていない。
 更に、この緑龍子は量を調整すれば未来への上書きも行える。
 つまり、破壊された壁にこの緑龍子を大量に付与すれば、壁は完全に元に戻る上、再び壁が破壊される未来が来ても、その時壁は元の状態へ戻ろうとして再生すると言う。これが1つ目の上書きの方法だ。
 2つ目は緑龍子を少量付与した状態だ。破壊されていた壁はその付与された量のみ戻り、欠けた状態で保たれ、再び壁が破壊された未来が来れば、元の欠けた状態へ変化し再生はされないらしい。
 3つ目は、過去の壁の情報から現在の壁を再生し、未来の壁を再生しない適度な量を付与する方法だ。
 未来を上書きする方法は、この3つ目が一番安全であるとされている。緑龍子はこの方法でなら、一部地域で活用を許可されており、役に立っている。
 もちろん、研究者達は、1つ目と2つ目の方法を扱った様々な物質・物体に対しての研究を進めている。
 また、この3つ全てに共通するのが、壁の傍には瓦礫が残るという点だ。その瓦礫に緑龍子を付与すれば瓦礫は壁に再生する。つまり大量の瓦礫から大量の壁が作られる。壁のコピペかクローンとでも表現するべきだろう。この方法を4つ目とする。
 例としてここにバナナが1本あるとしよう。それを半分に切り、先程上げた方法を試す。
 1つ目なら、食べても食べても減らないバナナが1本と、食べたら減るバナナが半分残る。
 2つ目なら、半分子し1口分食べたバナナの片方だけ、1口分多くなる。食べたら減る。
3つ目なら、食べたら減るバナナが1本と、食べたら減るバナナが半分残る。
 4つ目なら、バナナが2本になる。1つ目を応用すれば、食べても食べても減らないバナナが2本でき、3つ目を応用すれば、食べたら減るバナナができ、2つ目を応用すれば、半分子した両方のバナナが1口分多くなるのだ。
 そして5つ目。溢れるほど大量に緑龍子を付与されたバナナは、口内に入っても、噛んだ瞬間から、触れて傷を付けた瞬間から、再生し、食べることができなくなる。包丁で半分に切ろうとしても同じ結果だ、バナナは包丁では切れずにすり抜けるような感覚だけがする。
 1つ目を応用した4つ目の食べても食べても減らないバナナは、欠けた方も再生してしまう為、胃の中に入ったバナナの破片たちが戻ってしまうのではないか、と考えた研究者がいた。実際はバナナではなく、別の食べ物での研究だったが、ここでは混乱を避けるためバナナで説明する。
 緑龍子は過去の性質に従順な為、この場合バナナ・食べ物は消化され、再生することはない。緑龍子も吸収され、身体に馴染めば健康体になる。身体に浸透しない人はいないとまで言われている。
 身体の中では自然に他の物質への変化が行われるが、壁などになると変化に対しての抵抗が強く、完全に消失させない限りは再生し続け大量発生してしまうこともあると言う。
 新鮮な状態を保つため、食べ物なら腐らず、壁等なら劣化せず、生命体の健康状態も回復するので、期待は大きいが、危険も大きい為、慎重に研究を行わなくてはならない。
 空中都市・ユヤから放たれた緑龍子の光線により緑龍子は情報さえ与えれば変化することがわかっているのだが。いかんせん、変化への抵抗力さえも操ったのはその超天才1人で、その人は既に亡くなっている。その人が記録したメモも残っているが、彼が作った物質も多い為、彼だけの専門用語や物質があり、簡易的に書かれているものもあるがそれを参考に取り扱っても、超天才の中の超天才には、赤ん坊と超天才以上の差があって、結局大惨事に終わり、危険物質として見なされてしまう。
 ユヤがその超天才のコントロールで動いていたことや、その超天才がいなくなってから暴走していたことはこのことに関係しているかもしれない。超天才の技術を誰にも真似できないため、コントロールができないのだ。
 国は必要な時以上緑龍子を使わないことを決定したが。国が認めた研究者ならば緑龍子を扱える。さらに、先程言ったユヤの光線により地球全域に緑龍子が存在しているため、悪いことをする人達にも利用される。それを防止するためにも研究は必要で、研究をしないと決めることがまずできないのだ。
 過去には動物や人間に対しての実験、人造人間などの研究も行われ、その最悪の結果、六合種りぐごうしゅと呼ばれる種族が出現したと言われている。
 この六合種の出現はそれぞれ時期も違うらしいが詳しい出現時期は不明であり、やはりその構造や仕組み、彼らの生態や性質も解明されておらず、さらに人間と見た目が変わらない為、彼らを探し出して研究すると言う方法も通用しない、むしろ、人間と言う種すらも、ディノルと呼ばれ、その六合種に数えられるほどに緑龍子が世界に定着してしまっているのだ。
 だからこそ、一般的には、彼らを捕獲したり、研究の為に解剖するなんてことはしない。
 しかし、一般的ではないところならば、彼らは捕獲され、研究の為に解剖され、人体実験され、調教され、兵器へと改造され……etc。
 彼らは、自分達のしゅを隠して生きなければならない、寧ろ自分の持つ力を知らず、人間として生きている種もいるだろう。彼らを人間と呼ぶか、別の種と呼ぶのか、正しい境目が存在しない。
 人間・ディノルと言う種が、六合種の中に存在するのはそういう理由もあるのかもしれない。
 六合種は人間・ディノルを始めとし、叫ぶ者・カナキリ、歌う者・ディーヴァ、喰らう者・ヴァラヴォルフ、操る者・コノカ、飛ぶ者・リョウゲの六種類の種族の総称である。

イザラン・モルゴフ著

 誰だ。
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