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バシリアス ※BL
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茄遊矢はルイスがトイレに行っている隙に彼と別れ、壁まで帰って来ていた。
どうやら壁は光線を放ってこないようだった。羅聖がコントロールしたのだろう。待っていてくれたのだ。しかし壁の外で出迎えたのは咲路だった。
「…………ここが外の世界か」
咲路はキラキラとした目で町を眺めた。茄遊矢の沈んだ顔は咲路の嬉しそうな様子を見て明るくなっていく。
「羅聖さんは許してくれたんですか?」
「いいやまったく」
「え!? いいんですか!?」
「どうせ喧嘩してるし今はかんかんだし」
「げ……」
「想い人には会えたのか?」
咲路はいたずらっ子の様に笑いかけてくる。
「はい……!」
◇◇◇
咲路と共に屋敷へ帰り扉を開くと、羅聖が玄関で待ち構えていた。茄遊矢は咲路が「今はかんかんだし」と言った意味が分かった。眉は釣り上げられ、口角は下げられ、顔が真っ赤でまるで鬼面を被っているかのようだ。
「随分と遅かったな……」
「す、すみませんでした」
「兄さんも兄さんで外へ出ているし」
「外周を散歩しただけだ。半日は掛かったけど……こんなに壁が大きかったとは」
「あんまり壁の中も歩かないんです……のか?」
「俺はほとんどあの森で暮らしてるからな」
「へぇ……壁の中は外より緑も多くて素敵だから、俺もう一度行ってみたかったんで……だ。今度一緒に散歩しよう……ませんか」
「お、おう。そうだな。二人きりで行こうな」
茄遊矢と咲路で羅聖をそっちのけで会話していた。瞬間、地獄門が開かれ中の鬱々たる空気が漏れ出した。茄遊矢と咲路はハッとして、ギギギ……とホラー映画の主人公も及ばぬ振り返りを見せた。
「……おい、今の俺の前でよくそんな話が出来るな」
「今じゃなくてもどうせキレるだろ」
「俺がそう簡単にキレるか」
「いつも茄遊矢のことでキレてんじゃん」
「え?」
俺ってそんなに羅聖さんの事怒らせてたのか……! うわ~どうしよう……。
おろおろする茄遊矢に更に苛立ちを募らせる羅聖。
咲路はそれを見て口角を上げた。
「さっ、今日も一緒に寝ようぜ茄遊矢」
「あ、うん。はい」
「おいこら待て。俺への詫びはないのか」
「茄遊矢は故郷に帰っただけだろ。元々彼の居場所だったんだから――」
「――茄遊矢の居場所はここだ」
羅聖は謝らない限りしつこく文句を言ってくるだろう。茄遊矢は元々申し訳なく思っていたので謝った。
「羅聖さん、遅くなってすみませんでした」
「許す代わりに今晩は俺と寝ろ」
「え……」
「嫌なのか?」
茄遊矢はちら、と咲路へ助けを求めるように視線を向ける。
咲路は笑って茄遊矢の頭を撫でた。
「強引な男は嫌いだよな~茄遊矢」
「え……」
「…………」
茄遊矢がそんなこと言ったっけと考えている間、羅聖は目を瞑って考え事をし、拳を震わせていた。羅聖がふぅ……と溜め息をつく。
「分かった。今日は三人で寝るぞ」
「「は?」」
咲路と茄遊矢は二人同時に首を傾げる。
「茄遊矢は真ん中で寝ろ」
茄遊矢の手を取って無理やり自分の部屋へ連れて行く。
三人で寝るとしたら羅聖のキングサイズベッドで眠るしかない。
茄遊矢は確かに強引だと思ったが、羅聖の手の少し熱いくらいの暖かさに鼓動を速くしていた。咲路はその様子を見て眉を寄せる。
三人でベッドの中に眠った深夜、咲路はなかなか寝付けなかった。咲路は隣にある茄遊矢の顔を見つめていた。
もし茄遊矢と愛し合えたとしても、βασιλιάςが自分達を引き裂くだろう。
自分と茄遊矢は愛し合えない。
茄遊矢が羅聖に惹かれるのはβασιλιάςの浸透性が高い羅聖としか愛し合えないからかもしれないと咲路は考えた。
次の日の早朝、咲路は目の下にクマを作りながら狩りに出かけた。
鳥を狩ることが出来、森の開けた場所、小屋の傍で作った自分の小麦畑から出来上がった小麦を小屋にせっせと運ぶ。
粉にした小麦はコツコツ溜めていたので咲路はそれと、捌いた鳥の肉を屋敷に持ち帰り、調理した。
手作りのパンと、それに味付けし焼いた鶏肉を挟んだ料理である。それに山羊ミルクを添えて。いつもより野生感がない。
料理が出来上がった頃に、茄遊矢と羅聖が階段を下りてくる。
咲路はすぐに茄遊矢の顔が赤いことに気が付いた。
二人きりの間羅聖が何かしたのだ、絶対にそうだと考える。朝早かったから起こすことに躊躇ったが、起こしておけば良かったと咲路は思う。
まあ俺は散歩の約束をしているからその時に色々……い、色々……するから、無理やりじゃないし。うん。
どうやら壁は光線を放ってこないようだった。羅聖がコントロールしたのだろう。待っていてくれたのだ。しかし壁の外で出迎えたのは咲路だった。
「…………ここが外の世界か」
咲路はキラキラとした目で町を眺めた。茄遊矢の沈んだ顔は咲路の嬉しそうな様子を見て明るくなっていく。
「羅聖さんは許してくれたんですか?」
「いいやまったく」
「え!? いいんですか!?」
「どうせ喧嘩してるし今はかんかんだし」
「げ……」
「想い人には会えたのか?」
咲路はいたずらっ子の様に笑いかけてくる。
「はい……!」
◇◇◇
咲路と共に屋敷へ帰り扉を開くと、羅聖が玄関で待ち構えていた。茄遊矢は咲路が「今はかんかんだし」と言った意味が分かった。眉は釣り上げられ、口角は下げられ、顔が真っ赤でまるで鬼面を被っているかのようだ。
「随分と遅かったな……」
「す、すみませんでした」
「兄さんも兄さんで外へ出ているし」
「外周を散歩しただけだ。半日は掛かったけど……こんなに壁が大きかったとは」
「あんまり壁の中も歩かないんです……のか?」
「俺はほとんどあの森で暮らしてるからな」
「へぇ……壁の中は外より緑も多くて素敵だから、俺もう一度行ってみたかったんで……だ。今度一緒に散歩しよう……ませんか」
「お、おう。そうだな。二人きりで行こうな」
茄遊矢と咲路で羅聖をそっちのけで会話していた。瞬間、地獄門が開かれ中の鬱々たる空気が漏れ出した。茄遊矢と咲路はハッとして、ギギギ……とホラー映画の主人公も及ばぬ振り返りを見せた。
「……おい、今の俺の前でよくそんな話が出来るな」
「今じゃなくてもどうせキレるだろ」
「俺がそう簡単にキレるか」
「いつも茄遊矢のことでキレてんじゃん」
「え?」
俺ってそんなに羅聖さんの事怒らせてたのか……! うわ~どうしよう……。
おろおろする茄遊矢に更に苛立ちを募らせる羅聖。
咲路はそれを見て口角を上げた。
「さっ、今日も一緒に寝ようぜ茄遊矢」
「あ、うん。はい」
「おいこら待て。俺への詫びはないのか」
「茄遊矢は故郷に帰っただけだろ。元々彼の居場所だったんだから――」
「――茄遊矢の居場所はここだ」
羅聖は謝らない限りしつこく文句を言ってくるだろう。茄遊矢は元々申し訳なく思っていたので謝った。
「羅聖さん、遅くなってすみませんでした」
「許す代わりに今晩は俺と寝ろ」
「え……」
「嫌なのか?」
茄遊矢はちら、と咲路へ助けを求めるように視線を向ける。
咲路は笑って茄遊矢の頭を撫でた。
「強引な男は嫌いだよな~茄遊矢」
「え……」
「…………」
茄遊矢がそんなこと言ったっけと考えている間、羅聖は目を瞑って考え事をし、拳を震わせていた。羅聖がふぅ……と溜め息をつく。
「分かった。今日は三人で寝るぞ」
「「は?」」
咲路と茄遊矢は二人同時に首を傾げる。
「茄遊矢は真ん中で寝ろ」
茄遊矢の手を取って無理やり自分の部屋へ連れて行く。
三人で寝るとしたら羅聖のキングサイズベッドで眠るしかない。
茄遊矢は確かに強引だと思ったが、羅聖の手の少し熱いくらいの暖かさに鼓動を速くしていた。咲路はその様子を見て眉を寄せる。
三人でベッドの中に眠った深夜、咲路はなかなか寝付けなかった。咲路は隣にある茄遊矢の顔を見つめていた。
もし茄遊矢と愛し合えたとしても、βασιλιάςが自分達を引き裂くだろう。
自分と茄遊矢は愛し合えない。
茄遊矢が羅聖に惹かれるのはβασιλιάςの浸透性が高い羅聖としか愛し合えないからかもしれないと咲路は考えた。
次の日の早朝、咲路は目の下にクマを作りながら狩りに出かけた。
鳥を狩ることが出来、森の開けた場所、小屋の傍で作った自分の小麦畑から出来上がった小麦を小屋にせっせと運ぶ。
粉にした小麦はコツコツ溜めていたので咲路はそれと、捌いた鳥の肉を屋敷に持ち帰り、調理した。
手作りのパンと、それに味付けし焼いた鶏肉を挟んだ料理である。それに山羊ミルクを添えて。いつもより野生感がない。
料理が出来上がった頃に、茄遊矢と羅聖が階段を下りてくる。
咲路はすぐに茄遊矢の顔が赤いことに気が付いた。
二人きりの間羅聖が何かしたのだ、絶対にそうだと考える。朝早かったから起こすことに躊躇ったが、起こしておけば良かったと咲路は思う。
まあ俺は散歩の約束をしているからその時に色々……い、色々……するから、無理やりじゃないし。うん。
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