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月光の囁き・外伝

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     洋館。夕焼けを映す窓を背景に、見覚えのあるシルエットが拓也の目に入る。

「紗月?どうしたの?」
「・・拓也。」
 紗月の優しい声色ではなく、凛とした厳しい声に自分の名を呼ばれ、拓也は心臓を跳ね上がらせた。
 紗月の髪型は挑発的なものに変わり、服もいつものような学生服でも…少女じみたブラウス姿でもなく、美しく威圧的なファッションに変わっていた。
 化粧もきつく派手で口調まで違っているが、彼女はやはり同級生の紗月に間違いなかった。

「テーブルの上を見て、」
「えっ・・・・・ああっ!!」
 拓也が驚愕の声を上げるのも無理はない。そこには、彼が数週前に紗月の部屋から盗み出し崇拝し、とうとう昨夜、自分で汚したばかりのショーツが乗っていたのだ。

「私の下着を盗んだ上に、身の程知らずの真似をするなんて。絶対に許さないわ。」
「紗月・・・・」
 自分には見慣れない女性が近づいてくるのを呆然と見つめる内、頬へ激しい平手打ちを喰らわされ、拓也は、床に崩れ落ちた。
 それを見下ろす紗月の目に、いつもの優しさなどかけらも見ることはできなかった。

「服を脱ぎなさい。」
「え・・・」
「聞こえなかったの? 今着ているものを全部脱ぐのよ。」
「は、裸に?!」
「早くなさい」
 床にくずおれた拓也に覆い被さるように顔を近づけ紗月はそう命じた。
 その厳しさは、これまで幼なじみで同級生という二人の関係を甘いものとして感じてきた拓也に、世界がひっくり返ったような衝撃を与えた。

(そんな・・・・・紗月の前で裸なんて)
 下着の盗みや、それによる自慰がばれたことも大きなショックだったが、紗月の豹変はそれをもはるかに上回った。
 幼なじみである自分に裏切られた怒りが、それほどまでに大きかったのかと思うと、拓也は申し訳なさで胸がいっぱいになった。

(それでも・・・・・紗月の、この姿は!)

 良く鍛え上げられたスリムなプロポーションを惜しげもなく晒す黒いラバー製のドレス。それは拓也が、今まで見たこともない様な奇妙で蠱惑的なものだった。
  背中は大胆に開かれ、形の良い臍も露出している。
 スカートにも両脇にスリットがあり、腰近くまで美しい脚が露わになっていた。
「どうやらキツくしないと言うことが聞けないようね」
 その言葉と同時に、紗月のつま先が拓也の腹にめり込む。
 女性に足蹴にされるのも、腹部を蹴られたのもこれが生まれて初めてだった。

「ぅぐっ!!」
(紗月は本気だ!!)

 泣き呻き、苦しさにのたうち回りながら、拓也は紗月が本当に"変身"したことを悟った。
 それが自分にとってどんな意味を持つことになるのか、拓也にはまだ理解できていなかったが。

「もう一度だけ言うわ。着ているものを全部脱いで、裸になるのよ。」 
「・・・・どうしたの。まだ痛い目に遭い足りないの?」
「は・・・・は、はいっ!」

 苦痛でかすみがちな意識を必死に奮い立て、拓也は着ている学校のブレザーやネクタイ、シャツを脱ぎ始める。
 下着姿になってさすがにためらいを覚え、そっと紗月の様子を窺ったものの、その表情からは冷厳な意志しか読み取ることができなかった。

「脱ぎました・・・・」
「前を隠さないの。まっすぐ立って、手は後ろで組みなさい。」
(うう・・・恥ずかしい!)

 予想通り、紗月の視線がある一点に留まったのを知って拓也の恥ずかしさはさらに燃え上がったが、紗月に抗うことはできなかった。
「よく見ると図体の割には小さいのね。しかも包茎。そんなお粗末なモノで私の下着を汚すなんて、ますます無礼もいいところだわ。」
「あうう・・・・」
 秘かに悩んでいた性器の悩みを無惨な言葉で形容され、拓也は身も世もない恥辱に煩悶する。
 幼なじみの紗月の口から飛び出す残酷な嘲りに打ちのめされつつ、しかし暗く甘い快感が内側から次第にわき上がってくるのを拓也は覚った。

「お前の幼なじみであることを、こんなに情けなく思ったことはないわ」
 そう言いつつ、紗月は拓也に近寄り、その顔をにらみ据える。
 
 拓也の中性的な顔立ち。
    堅牢さと華奢を同時に備えたギリシャ彫刻、、少女のように白く輝く肌を持つ拓也の裸身のエロチシズムは、紗月を疼かせた。

「なんていけないオチンチンなの。」
 その言葉よりも早く拓也のペニスが手のひらに包まれ、そっと扱かれる。
    拓也はすっかり別の者に生まれ変わった幼なじみが、その真っ赤なマニキュアを塗った細い指で自分のモノを刺激する様を、信じられない思いで見つめていた。

(紗月・・・・紗月がぼくのを!!)
 自慰の際の妄想に登場する女性。そしてそれ以外にも夢想し続けていた理想の女達。
    その夢見ていた美女が現実に現れ彼を支配し、弄んでくれている。
 現実とは思えない、紗月の声、紗月の顔、紗月のプロポーションを持つ極上のドミナ。
 包皮を被ったペニスはあり得ない早さで充血し、拓也の喘ぎとともに硬度を増していった。 


 自分の指のわずかな動きに派手に反応し、艶めかしく喘ぐ幼なじみの男を見ながら紗月の心にサディスティックな気持ちが芽生える。
「ぁぁん・・・イ、イく・・・・・・」
「!?」
 切ない喘ぎ声に紗月は冷えて我に返り、目の前で悶える拓也を見つめる。
    これまで嬲ったことのない、極上の獲物。

 私をこんな風に変えたある男から、私に投げ与えられた、シミだらけの骸骨じみた身体とも、脂肪まみれの醜い豚共とも違う、最高のマゾ。
  そして私と同様の反転したマゾ。
  他の者は誰もが、あの男と私はどこかで血の繋がりが見えるという。
  拓也もそうなのかも知れない。
    その"血の繋がり"はむしろ共犯者意識を高め、背徳の関係への甘やかな誘惑をもたらしていた。

(この子は望んでいる・・・・・・私の、震えが来るような責め嬲りを!!)
(そして私も望んでいる・・・・・この子を徹底的に虐め抜くことを・・・・・・)

 拓也の白い肌を鞭の条痕で真っ赤に刻むことを考えるだけで、じわりと溢れてくるものがあった。
 拓也のなにもかもを奪い尽くし、嬲り、責め抜いたそのときこそ、二人はお互いを真に理解し合えるだろう。
 今にも射精しそうな拓也の狂おしい顔を見下ろしつつ、紗月はそれまでの拓也に対する自分の背信の苦しさから解放されたことを悟り、幸福に包まれた。
    私は悪い悪いメスガキなんだよ。お前が思ってるような少女じゃない。


「んんっ・・・・・・ああ・・・・・っ!」
(あっあ、いけない、もったいない、逝かしては駄目!)
 拓也の喘ぎの変化に気づいた紗月は、咄嗟にペニスに絡めていた指をその根本に移動させ、強力に締め付ける。
 それによって今まさに射精しようとしていた拓也は、天国から一気に地獄へと突き落とされた筈だ。

「あひいいいっ!!」
「なにを勝手に出そうとしているの? お前は本当に、いつでもどんな時でも猿みたいに、その汚い液を撒き散らさずにはいられないのね。最低よ。」
「ご、ごめんなさいっ!!」
(この卑屈で怯えた顔・・・・・可愛いわ、本当に・・・・・私の、素敵な拓也・・・・)

「口をお開け。」
「はいっ!」

 もはや拓也は最初に感じていたとまどいも消え、完全に目の前のドミナに服従するようになっていた。
 ほんの一時間前には、予想だにしていなかった、しかしいつも漠然と夢見、憧れていた世界。
 自身が単なる射精などはるかに上回る、禁断の悦楽の中に在るのをマゾとしての本能で覚り、拓也は屈辱を至高のワインのように深々と味わうのだった。

「これを綺麗にしておきなさい。」
 屈従の歓喜にわななく拓也の口に押し込まれたもの―――それは自分の精液まみれのショーツだった。
 昨夜自分が汚したものを口腔に詰め込まれ、拓也は目を驚きで見開いた。

「私の下着が好きなんでしょう? こびりついた自分の精液ごと良く味わうがいいわ。」
(ああ紗月・・・・・ぼくにこんなことをするなんて・・・・・・どうして)

 真性のマゾとして、お仕置きをの範疇を超える一連のこの行為に不満があるわけではもちろんない。
 だが今朝までは、甘すぎるほど優しい同級生であった紗月なのに、なぜ今は理想とも言える冷酷なドミナに激変したのか、それが拓也には不思議だった。

「そのまましばらく味わっていなさい。」 
 拓也は生臭さと芳香の残り香をまとうショーツを唾液で濡らし、それらの綯い交ぜになったエキスを呑み下しては恍惚とした。
(ぼくと・・・・紗月のが一緒になって・・・・・ああ!)

 複雑微妙な風味を喉と鼻腔で堪能し、再び口腔内の繊維を柔らかく咀嚼し、舌の上に溶け出す魅惑にマゾとしての悦びを味わう。
 宵闇の中、なおも命令に忠実に手を後ろに回して直立したまま、拓也は紗月と一体になったような錯覚に包まれていた。

……………………

「良い子にしていたようね。キツくした甲斐があったわ。」
 ドアのある背後から声がして、拓也は思わず振り向く。
   そこには大きなトランクを持った紗月がいた。

「どうだったかしら、自分が汚したものの味は?」
 彼女は拓也に近寄るとその口をこじ開け、唾液でグッショリとなったショーツをゆっくり引き出して尋ねる。
「美味し・・・・・です・・・」
「そう。気に入ってもらえてなにより。でも、これはお仕置きとしては只のアペリティフに過ぎないの、、」
 そう言いつつ紗月は、拓也の前でトランクを開ける。
    そこに詰め込まれている禍々しい道具の数々を見て、拓也は驚きとともに胸の動悸が激しくなるのを感じた。
   しかし紗月はどうしてこんなモノを持っているのか?

    彼女の部屋にはそれらを隠せるような空間はなかった筈だ。
    でも他の部屋になら…。
     今夜は家族の者がいないからと誘ったのは紗月だった。
    つまり今日は紗月も普段は出入りを躊躇われる部屋に行けるという事だった。

「SMの本をたっぷり隠し持ってるあなたならこれがなにかわかるでしょうね。」
「あ・・・・・うぅ・・・・・・・・・」
(鞭がある! ・・・・拘束具や、首輪・・・・・バイブ?! それにアレは・・・・アレも・・・・・)

 見覚えのあるものにはその使用方を思い出して震え、知らないものはそれがどう自分に使われるのかを思って不安に打ち震える。
 拓也はこれから行われることが単なる罰に終わらないだろうことを予見して、始まったばかりの夜に、おののくのだった。 

「まずはおイタをした手を使えないようにしてあげる」
 紗月は革製の器具を取り出すと拓也の両手を背中側に回したままがっちり拘束してしまう。
 それから拓也をベッドへ仰向けに押し倒した。
「思い切り脚を拡げなさい。お粗末なオチンチンも含めて恥ずかしい場所がよく見えるようにするのよ。」
「は、はいぃ・・・」

 より惨めな姿勢で、股間をさらけ出す恥辱に胸を疼かせながら拓也は命じられたとおり膝を開き、幼なじみへの羞恥心で全身を真っ赤に染める。
 その姿を眺めつつ紗月は右手にラテックスの手袋を着けると、さらにその指にグリースを塗った。 
 彼女は人差し指を拓也のアヌスにいきなり挿入する。
    その衝撃に拓也は反射的に悲鳴を上げ、脚を閉じそうになった。

「我慢しなさいっ!! でないとお前のココをひねり潰すわよ!!」
 その言葉と、ともに睾丸が紗月の左手に包まれ、ぐっと握りしめられる。
   本気としか思えないその叱声に、拓也は心の底から震え上がった。

「ご、ごめんなさい・・・・・ああっ!」
 身体の中心を侵されるその異様な初めての感覚に怯え、わななきながらも拓也は懸命に脚を開く。
 一方、紗月は指を拓也のアヌスに第二関節まで沈めると、それを腹側の方へやんわりと曲げていった。
「あはあああああっ?!」
「気持ちいいでしょう。この味を知った男はね、もう堕ちるしかないの。誰であろうとね。」
 腸壁と前立腺を傷めないよう注意して責め立てながら、紗月は拓也の勃起が、これ以上ないほどに反り返り、切なげに脈動する様を見守っている。

 やがて先端から透明な液がにじみ出したのを確認して紗月は指を抜くと、素早くその根元に細い革ベルトを巻き付けた。
「ひいっ! そ、それ・・・・」
「年中発情してるお前には相応しいでしょう。このコックベルトでたっぷりお愉しみなさい。」
「あああっ・・・」
 またしても絶頂寸前の状態で射精できないようペニスを締め上げられ、拓也は勃起させたままその辛さに喘ぎ啼く。
 けれど紗月の仕置きがこれで終わったわけではもちろんなかった。

「フフッ」
 自分の命になすすべなく従い、恐れおののく軟弱な拓也に紗月はサディスチンの血が冥くざわめき立つのを感じる。
 彼女は加虐への欲求を狂おしいほど膨らませていくのを止めることができなかった。

「拓也・・・・・・自分がどれほど重い罪を犯したか、わかっているでしょうね?」
「ああ紗月っ、許してっ!!」
「お前を生まれ変わらせなければならないわ。そのために、まずは赤ちゃんに戻ってやり直すのよ。」
 その言葉とともに紗月は霧吹きで年齢の割に薄い拓也の恥毛を湿らせた。
 そしてさらにシェービングクリームスプレーで泡を吹き付ける。
   男性用のメーカー品だと云う事は判った。もしかしたら紗月の父親のものかも知れない。

「赤ちゃんに毛はいらないものね。じっとしてるのよ。」
 妖艶な笑みを浮かべながら紗月は、イチジク浣腸を拓也の肛門に挿入する。
 そしてあっという間に一つめを空にし、さらにもう一つを追加した。

「ううっ? お、お腹がっ! 紗月ぁっ!!」
「お前のここを綺麗に剃るあいだ、動かずに我慢するのよ。」
 安全カミソリではない、プロの理容師が使うカミソリを手にして紗月は静かに命じる。
   ダンディな紗月の父親が愛用していそうな片刃のカミソリだった。

 だが彼女はすぐ剃毛しようとはせず、トランクから取り出した真っ赤な太いキャンドルに火を点けると燭台に差し込み、机の上に置いた。
「もうすっかり暗いから灯りがないとね。」
 電灯の存在などまるで頭にないかのようにそう呟き、紗月は効き始めた浣腸液に呻いている拓也の股間にかがみ込む。
 下腹の柔らかい肌にスッと刃を立て、それを見た拓也の瞳が恐怖の色に彩られるのを知ってゾクゾクしながら、再臨した女王は愉しげに手を動かし始めた。

(あぁ、たっ、たまらないっ・・・・)
 ギュルギュルと便意に震える下腹を鋭いカミソリで嬲られながら、拓也はそのあまりの切なさで惨めに悶える。
 今にも漏らしてしまいそうな切迫した欲求のさなかで、悠々と恥毛を剃る紗月の非情さに、拓也は真のドミナを知って辱悦にわなないた。

「もし今わたしの手がすべったら・・・・・お前の大切なオチンチンともサヨナラね。そしたら二度と悪さをしないですむわ」
「ああっ、お願いです、それだけは・・・・・それだけは許してっ!」
 からかい混じりの紗月の言葉に拓也は過敏に反応し、怖気だちながら嘆願する。
 紗月はそれを聞いて微笑みつつなおも剃毛を続けた。

「浣腸されながらのコレは切なくてたまらないでしょう? でも終わる前に漏らしでもしたら、このまま剃刀で切り落とすから覚悟するのね」
「ひいいぃぃぃっ!!」 
 彼にできるのはただ便意に悶え啼きながら柔肌を畏怖させる刃に耐え続けることだけだった。 I

「ふう・・・・・フフ、これでツルツルね。よく頑張ったわ、拓也。」
「・・・紗月お願い、早く手を解いてッ!! トイレにっ!」
「トイレ?あら、心配しなくても良いのよ」
 綺麗に剃り上げた下腹を鳴らしている鈍い蠕動音に目を細めつつ紗月は拓也に腕を伸ばし、幼児にトイレをさせるポーズで抱え上げる。
     所々でその動きに対する拓也の反射的な補助があるとはいえ、大した力だった。
 部活で維持している紗月の筋肉が優美に盛り上がり、対照的に拓也をひ弱に見せた。

「今のお前に相応しいトイレはこれよ」
 そんなものをどこで手に入れたのか、ホーロー引きのおまるに拓也のヒップを差し向けながら紗月は囁く。
 優しくありながら拒絶を許さぬその口調に、拓也は屈折した悦びを味わいつつ従った。
「ああ・・・・・恥ずかしいっ・・・・・紗月の見てる前で、ウンチしちゃう・・・・・・っ!」

ビチビチビチッ!

 聞くに堪えない破裂音とともに、おまるの中へ柔らかいモノがいくつもこぼれ落ち醜悪な山を築いていく。

 若すぎるマゾは、大いなる恥辱とついに得られた排泄の歓喜とに心を引き裂かれたまま、紗月の胸に抱かれる法悦に浸っていた。

「はぁっ・・・・・」
「かなり参ったようね。でもまだ勘弁してあげるわけにはいかないわ。」
 排泄後、拓也をバスルームに連れ込み、臀部を綺麗にした紗月はさらに洗腸を施した。
 シャワーヘッドを外したホースで限界までぬるま湯を注がれ、拓也は羞恥のこもった呻きをあげつつ汚水を噴き出すということを何度も繰り返したのである。

(こんな・・・・生き恥をさらしてしまって・・・・もう、紗月から離れられない・・・・・・)

「なぜ顔を赤くしているの? あなたのウンチなんて、子どもの時から見ているのよ。もっと恥ずかしい姿もね。」
(でも、あの時はお互い子供だったし・・・・・・)
「さあ、アノ部屋に戻るわよ。」
 紗月は消耗した拓也を連れ、闇をキャンドルの灯りが支配するあの部屋に戻っていく。

 中にはいると紗月は拓也に、ベッドに手をついてから脚を拡げるよう命じた。
「ああ・・・・なにを・・・・・」
「決まってるじゃないの、お仕置きの続きよ。」
 そう言いながら紗月は卓球のラケットを大きくしたような道具を取り出し、大きなバックスウィングをしてから、それを思い切り拓也のヒップに叩きつける。
 そのショックと痛みは、コックベルトをされていなければ失禁していたかも知れないほどのものだった。

「ああ――――――っ!!」
「まだまだよ。そらっ!」
「ぐうううぅぅぅぅぅうううううっっ!!」
 大きな打擲音が幾度も部屋に響き渡り、そのたびに拓也の哀れ極まる悲鳴が続いた。
 
「拓也―――お前を躾け直すには、赤ちゃんに戻しただけでは足りないわ。わたしの・・・・・マゾ奴隷になりなさい。奴隷になると誓えば、たっぷりと調教・・・・いえわたしの方法で愛してあげることができるの。相手が誰でもそれなら私は愛せるのよ。」
「紗月・・・・・それどういう意味?」
 口にされたその言葉を、拓也は当たり前のように受け止める。

   彼にはわかっていたのだった。
   自分が、紗月の誰かと同じように、「恋人」ではなく、最高のクイーン・或は支配者に仕えるために生まれてきた存在だということが。
 それならば、紗月の心がどこにどうあっても、拓也には耐えられる。

「もちろん拒否してもいい。そのときは今夜のことは永遠に忘れて、元通り幼なじみの同級生として過ごしましょう。あなたがそれを望むなら、紗月はそうするわ。ただしあなたは私の世界に、決してそれ以上近付くことは出来ないけど。」
「あぁ、紗月!」
 紗月が本気でそう言っていることが、拓也にもわかった。
 この仕置きと屈辱をほんの一夜の狂気として記憶から葬り、また仲の良い同級生としてこれからともに生きていく道が、まだ拓也には残されていた。

(でも、ぼくは知ってしまった。紗月が、ぼくの理想の女王様なのを・・・・・そしてあの素敵な責め嬲りを・・・・・・・!これがあるなら、僕は紗月の愛が他の誰かに注がれるのも我慢できる。)
 しかも今日のこれは紗月の責めのほんの一部でしかない。そのことを拓也はマゾとしての本能で悟っていた。

「ぼくは・・・・ぼくは紗月と堕ちたい・・・・・・」
「いいのね? 今までのような日々はもう二度と帰ってこないのよ?それにこれは普通の男達が望むような愛じゃないのよ。私の愛は別の所にあるのを貴方は知ってるでしょ。」
「いい・・・・・・紗月・・・・・紗月様・・・・・ぼくをあなたの・・・・・・・マゾ奴隷にして下さい」
「拓也・・・・!」

 涙がひとすじ、紗月の美しい頬を伝い落ちる。
    拓也の哀しさがほんの一瞬、紗月の心を支配したのだ。

「拓也・・・・・・・フフッ、馬鹿な子。」
 悲しみの顔を冷酷な笑みが徐々に侵していき、艶めかしい唇が悪魔の哄笑を形作る。
 拓也が、マゾ奴隷の道を選択したそのとき、幼なじみとしての紗月の仮面は粉々に砕け散っていた。

「お前のような腐れマゾが、わたしに飼われたいなんて、身の程を知らないにもほどがあるよ。その思い上がりをたんと反省させてあげる。」
 紗月は自分の股間にペニスバンドを装着し、成人男子の平均を大きく超えるサイズの竿部分にグリースを塗り込める。
 そしてバラ鞭を手にしたまま拓也の臀部を後ろから抱え込んだ。

「まずは服従の証を捧げてよ。」
「ひいいいいいいいっ!?」

 秘やかな蕾を荒々しく貫かれ、拓也は陵辱の苦痛に絶叫する。
   だが排泄と洗腸でほぐれていたそこはすぐに慣れ始め、拓也は次第にこみ上げてくるA性感に喘ぎだした。

「ケツマンコを初めて抉られてもう感じてるなんて、お前はなんて恥ずかしいマゾなの! お前はお前の事を密かに憧れてる女子が何人いるか知ってる?その裏切りに、ご褒美をあげるわ!」

 腰に装着されたディルドウを夢中で抽送しつつ紗月はバラ鞭を振り上げ、拓也の背中に力の限り振り下ろす。
 背中から胸へ突き抜けるその衝撃に、だが拓也は苦痛よりも痴悦による痺れで恍惚となっていた。

(鞭を浴びながら犯されて・・・・・・もう、戻れない。ぼくは・・・・・・ぼくは紗月のマゾ奴隷なんだ!!)

「あひいいいっ! もっと・・・・・もっと鞭を下さい紗月様!!」

(ふ・・・・バラ鞭なんて遊びみたいなものよ。鞭の本当の悦びはあとでゆっくり叩き込んであげるわ、拓也)

「ほら、ほらっ、この鞭が欲しいのかい、拓也っ」
「うああっ! ありがとうございますぅっ!!」
 背中を真っ赤に腫れあがらせて身悶えしつつ感謝する拓也をなおも激しく犯しながらさらに鞭打つ。
 やがて紗月は拓也の股間に手を回し、コックベルトを外した。

「ああっ?!」
「卑しいマゾに相応しく、処女だったお尻を犯されたままイくのよ。さあ汚らしいマゾ液を思う存分撒き散らすがいいわ!!」
「あううーっ、イくっ、イきますううううううううっ!!」
 勃起し続けだったペニスはついに縛めを解かれ、淫らに痙攣する。
   その直後、拓也の数倍はある逸物に肛腔を渾身の力で突き上げられ、拓也は女のような悩ましい嬌声を上げながら精液を噴き出し続けたのだった。

「ああ・・・・・・・紗月・・・・・・・紗月様・・・・・・・もっと・・・・・マゾ奴隷の拓也にお情けを・・・・・」

(拓也・・・・・同級生のわたしに哀れな格好で犯されながら賤ましく逝ったのね・・・・・・いいえまだよ、もっと屈辱的な快感を、これからその身体に教えてあげるわ・・・・・)

 自身もまた絶頂に達し、Sの喜悦の余韻に己の女性器を疼かせたまま紗月は拓也を見下ろす。
 男と女、サドとマゾの甘く蕩ける修羅は、まだ始まったばかりだった。





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