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アッキーラ・エンサィオ018『 超ダイジェストストーリー 蒼ざめた肌(戸川昌子)』

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【超ダイジェストストーリー
    蒼ざめた肌
    戸川昌子 文藝春秋(1965)】

 伯父の経営する東京フランセーズ・ドレスメーカー学院の講師を勤めている桑原実子は、夫との性生活にあるかすかな疑惑を抱いていた。
   "浮気"ではないがそれに近いもの…。
    だが夫は生真面目を絵に描いたような男だ。常日頃、日々の生活の中で夫から自分への不誠実を感じた事はない。
  そんな夫・泰雄が、自分に何の連絡も前触れもなく失踪してしまったのだ。
   信じられなかった。
   それに夫が居なくなったあと実子を襲う奇妙な悪夢が、これから起こる出来事を示す予知夢のようでもあり気掛かりでならなかった。

 実子は、いつものように学院に出勤し、今更ながらに自分の担当クラスの生徒のひとりである十和田熱子が長く欠席していることに気がついた。
   それもちょうど夫が姿を消した日からである。      

     その事を発端にして、実子はやはり夫には女が居たのではないかという疑惑を抱き始めた。
    根本にあるのは嫉妬心だった。
    そして夫の勤めていた出版社まで出向き、そこで同僚の山之内から、夫が預けたという品物を渡された。
 
   その中に入っていたのは、意外なことに夫の泰雄が同性愛者であることを暗示する写真だった。

 実子は十和田熱子を知っている朝岡典子という生徒に連れられ、十和田熱子のマンションに出掛けたが、鍵がかって不在の様子だった。
    その日はそのまま帰ったのだが、やがて熱子が死体となって発見され、現場には夫のタイピンが落ちていた。
  夫は殺人容疑者になってしまったのだ。

   しかし『あの写真と十和田熱子は矛盾』する、そう考えた実子は、同性愛の世界に失踪した夫の影を求めて本格的な追跡を開始し始めた。

 失踪した夫を探す実子は、夫が性転換手術を受けたのではないかと疑い、失踪直後に手術を受けた夫と背格好がそっくりの事件関係者の男の行方を探した。
     実子は、何度かその男の近くまでたどり着くが、なかなか確証をつかめない。
     男は実子が迫るたびに、勤めを代え行方をくらましてしまうのだ。

    実子は、その男がそれほどまでに自分を避けていることや、男の特徴ある手相が夫と同じであることから、この人物こそ整形手術を受け性転換した夫だと信じ始めていた。
    そんな矢先とうとう実子は、男がストリップ劇場に京太という名で踊り子として出演しているという情報を得た。

 自分が夫を探していることが、夫の立場を追いつめてしまっているという呵責の念と、そこまでして何故夫は自分を避けるのかはっきりさせたいという気持ちが交錯する中、実子は男が夫であることを確かめようと、一人でストリップ劇場の扉をくぐるのだった。
  男のなまえは京太という。

 そばに誰もいてほしくなかった。
    たったひとりで、そのブルー・ボーイ京太を観察したかったのだ。
    他の観客の好奇の目を避けるために、暗くなってから実子は場内に入った。
 暗い観客席のシートに身を埋めてから、実子はやはりひとりで来てよかったと思った。

 一回目の公演は、観客もまだまばらであった。かぶりつきというのであろうか、ステージの前のほうに観客がかたまっている。どれも男の客たちばかりであった。
 裸の女たちの踊りを喰い入るように眺めている。
    ヌードダンサーたちは、そんな男の視線をはねかえすように冷たい投げやりな表情で踊っていた。
 京太は、プログラムの終り近くなって出て来た。
    長い羽根飾りのついた帽子をかぶり、ビロードにイミテーション・ダイヤをちりばめたきらきら輝くローブをまとっている。
 金髪の鬘と一緒になって、新劇俳優の舞台衣裳のようであった。

 観客たちのあいだに、弛緩した空気が流れた。ヌード劇場の観客は、誰も欲望の対象としてこのブルー・ボーイを眺めてはいなかった。
 そこにあるのは、好奇心だけであった。
 京太は強い照明の中で両手をひらひらさせたり、ハイヒールの足をあげたり、同じようなしぐさを音楽にあわせて一分ほど続けていた。

 音の悪いスピーカーから流れてくる曲は、いぜん流行したコーヒー・ルンバをスローにアレンジしたものであった。
   ときどきそのたかまったリズムが、ひどく絶望的に聞こえた。
 とつぜんスポットが、オレンジ色からブルーに変った。
 その瞬間、京太が長いローブを舞台の袖にむかって投げすてた。
    スパンコールを刺繍したバタフライが、わずかに腰の部分をおおっているほか、どこもあらわに露出していた。
 実子は思わず息をのんだ。目をつぶりたい気持だった。
 京太の胸は、大きくふくらみ、女と同じ乳房のかたちをしていた。
    頭の中では、男性からの転換手術を理解していたけれど、視覚の中にふくらんだ柔らかい乳房があらわれると、やはりたじろがずにはいられなかった。
 彼の肩や胸や腰や腿も、ホルモン注射と舞台照明のせいか、男にしては柔らかく白く盛り上がっていた。
 あれが夫だろうか、夫の泰雄がこんなふうに変身するということがあり得るのだろうか。
    足のホクロはやいてしまったのか、見当らなかった。
 ステージの上では、京太が両手で乳房を持ち上げるようにしながら、腰と脚を快楽の絶頂のときのようによじっていた。
 それから、充分に観客の視線をひきつけておいたところで、最後に肌をおおっていたきらきら輝くバタフライを落とすようにして剥いだ。
 手で交互に隠すようにしながら、ちらちらと見せる場所には、女と同じ躰があった。男は失われていた。
 実子の頭に何の意味もなく、反射的に小笠原という医学生の持っていた太い試験管が浮かんだ。
 小笠原は本当に、この男の躰も採集したのだろうか。
 実子が、うつろな視線を舞台の上に戻したとき、京太の肌は一段と強いブルーのスポットで蒼ざめていた。
 実子は、その次のステージも見た。二階にわずかばかりの客席があるのを見つけ、そこにのぼったのだった。二階には客はひとりもいなかった。
 そこから舞台を見下すと、まったく違う角度から彼を観察することが出来た。けれども、なにも新しい発見は出来なかった。
 肩の線が、いくらか夫に似ているような気もした。
 山之内と約束の最後のステージにも、前のほうに行って坐った。さすがに最終回は満員だった。
    ステージのすぐ前の、今にも手の届きそうなところで、ヌードたちは踊っていた。
 男たちの女の裸に注ぐ執拗な視線と、むんむんするような熱気とを見ていると、自分の夫に対する夫婦生活が、どこかで欠けていたのかもしれないと思ったりした。

 京太がステージに出て来たとき、実子はだいぶ疲労していた。それでもなにか掴みたい一心で、彼をみつめ続けた。照明と化粧のせいで、京太はしっかりと仮面をかぶり続けていた。
 京太はパントマイムの役者のする化粧のように、無表情だった。閤の中の遠くの一点をみつめながら踊っていた。
 実子の前まで来たとき、彼はターンしようとして腰を折った。そして偶然、実子の上に視線をおとした。

 はっと実子をみつめたようだった。
 けれども白い表情は変らなかった。ただ長いつけまつ毛をつけた目だけが、一瞬、深い悲しみをたたえているように見えた。
 そのとき、実子は思わず腰を浮かせ、なにか叫びかけたようだった。
 しかし、トランペットのかん高い音にその声は消された……。


 戸川昌子さんに限らず女性というのは、本当に度胸があるものだと思います。           本作も女性作家が書いていることですから、女性のとる行動としてはとっぴな考えではないのだと思います。
    アタシなら、その立場にいても、ストリップ劇場に足を踏み入れる勇気などとてもありません。夫が女性になった姿だけでも正視できないと思うのに、まして、夫のストリップ姿を見に行くなんて。
    逆に、アタシがこの男の立場で、観客席の妻に気がついたとしたら……。
 こんな事を考えるアタシはまだまだ中途半端なのですね。


※以下は戸川昌子さんの作品蒼ざめた肌とは何の関係もアリません。


○京太の記憶

     中学2年のときは借家住まいでした。
     父と母は共稼ぎ、家にいるのは私だけの時間が長かったです。
 私の部屋から、狭い下水を隔てて、隣の家のお勝手の窓が見えました。
    いつも少し開いていて、そこのお嫁さんがひとりで料理している顔が見え隠れしてました。
 33、4歳の決してやせ形のちょっと美人なお嫁さんでした。
 ある日、私は部屋のガラス戸を全開し、このお嫁さんに全身が見えるように、風呂上りを装い、小さいタオルだけを腰に巻き、うつ伏せになり、ペニスを畳で圧迫しながら、このお嫁さんの様子を伺っていました。
 このお嫁さんの左目だけが、少し開いている隣のお勝手のガラスの間から、私を行動をのぞき見しているようでした。

 私はうつ伏せのまま、巻いていたタオルを取り、全裸の背中や尻を晒しました。タオルを丸めペニスと畳の間に挟み、刺激を得る為にペニスを圧迫しました。
 そのうちにこのお嫁さんの方に向かって正座をし(全裸なので、もちろんいきり立ったペニスを曝け出している)、右手でペニスを握り、皮を精一杯剥き、亀頭の形がお嫁さんからはっきり確認できるように、荒々しくマスターベーションを始めました。
 ペニスからは先走り汁がタラタラと糸を引いて流れ出しています。

 当然このお嫁さんも、私がお嫁さんに対し露出していることに程なく気づくことになります。お嫁さんの反応は、目をカッと見開き、表情は明らかに怒っていました。
 でも、その後もお嫁さんは、窓を閉めることはせず、家事を続けながら、窓の開いた隙間から、チラチラとこちらの様子をうかがっていました。
 10分ぐらいかかりましたが私は絶頂に達しました。

 私はお嫁さんにどうしても射精の瞬間を見てほしいので、「あっっ‥。うっ。」と大きな声を上げてお嫁さんの注意をこちらに向けるようにしたのですが、実際はそれには及ばず、お嫁さんも予想していたのだろう射精の瞬間には、やはり目をカッと見開き、怒った表情でこちらを凝視していました。

 グキンという脳の芯にしびれるような快感を残し、私のペニスは、大量の精液(自分でも驚くほどすごい量でした。)を排泄しました。
 それは「発射した」という感じではなく、ドクドクとまさしく自分の手やひざにベトベトと絡まるような「排泄」でした。

 私の雄そのものの行為を目の当たりにし、お嫁さんは怖い顔で、表情は引きつり、唇がぶるぶる震えているのが、私の場所からもはっきり確認できました。
 そんなことがあった日から何日間かは、お嫁さんやお嫁さんの亭主から、苦情が両親にあるのではないかと、ビクビクしていました。

 でも何日たっても何もなかったのです。
 味をしめた私は、その後も何度も少しずつ趣向を変え、同様の行為をお嫁さん相手に続けました。
 ある日私は、思い切って外に出て、お嫁さんの家の台所の窓から3~4mのところまで近づき、お嫁さんに向かっい、着ていた服を一枚ずつ脱ぎはじめした。

 いわゆる「ストリップ」を始めたんです。
(他の家からは、よほど覗き込まなくては見えない死角になっているので、第3者に見られることは無かったのです。)
 上半身裸になった頃にお嫁さんは私に向かって「寒いよ。風邪ひくよ。」と少し震えた声で言葉をかけてきました。
 私は「大丈夫です。」と、やはり震えた声で返事をしました。
 するとお嫁さんの表情はこわばり、「しょうがないなぁ」といった顔をしましたが、やはり窓は閉めず、私を見ることは止めませんでした。

 履いていたジーンズを脱ぎ、パンツ代わりに履いていた水泳用のピッチリし、透けたサポーターを脱ぐと、先走り汁でベトベトになった、いきり立ったペニスがはじける様に露出しました。
 それが生まれて初めての野外での全裸露出でした。
 私はさらに少しお嫁さんの家に近づきました。
 お嫁さんは2mぐらい離れた位置で私の全身を見下ろすような形になりました。私の身体は緊張と寒さでプルプルと震えています。

 お嫁さんからはそんな私の毛穴やペニスの割れ目までも確認できるはず。
 お嫁さんは相変わらずひきつった表情で私の行動を凝視していました。
    私はいきり立ったペニスを掴み荒々しくマスターベーションを始めました。 

 お嫁さんには私のペニスの脈動も感じ取れるんじゃないかと思えました。私のペニスからはダラダラと先走り汁が糸を引いて流れ落ちています。
 初めての時よりは、ずっと早く絶頂がやってきました。
 ペニスの付け根からお尻の穴のあたりに、しびれるような快感が走りました。
 私のペニスからは、ドクドクと大量の精液が排泄されました。

 私はその精液を自分の左手でできる限り受け止めました。ひとしきり排泄したあとに、左手に溜まった大量の精液を自分の口に運びます。

 私の口は自分の排泄した精液と唾液の交じり合った液体で一杯になりました。
    私はお嫁さんに口を大きく開き、唾液と一体となった精液を確認させてから、ゆっくりと、それらすべてを飲み込みましだ。
 初めて飲んだ精液は自分の精液だったんです。生臭く、決して美味しくはなかったです。

 お嫁さんは、顔を真っ赤にして、震える声で「そんなの飲んじゃ、身体に悪いよ。もうやめてね。」と言いました。
 私は、コクッと頷きました。 

 しばらく経って、近所に住む同級生の姉(1つ年上)と、芸能界の話で盛り上がったあと、彼女は突然(と言うか、今思えば、彼女は、この話をしたいがために、今まで私と会話していたに違いないと思います。)、「そういえば○○ちゃん(私のこと)の噂きいたよ。」と言いました。

 私は「どんな噂? 教えてよ。」と言うと。彼女は「聞かない方がいいと思うよ。」と意味あり気なことを言って微笑みました。
「いいから、教えてよ。」と言うと、「じゃあ言うけど、他人におチンチン見せるの楽しいの?近所じゃ凄い噂だよ。○○ちゃん可愛いけれど、女の人に自分のおチンチン見せるって、自分でして(マスターベーション)、発射するって。露出狂だって言ってるよ。」と彼女は言いました。

 私は「そんなこと、しないよ!そんなの嘘だよ!」と、うわずる声で否定しましたが、彼女はそんな私の様子で「本当だ。」と察したのか「そうだよね‥。」とニヤリと笑みを浮べました。

 近所や同級生の間では、私の変態は、評判、定説となっていたようなんです。
 辛かったけどあのお嫁さんへの恨みなんかまったくないんです。お嫁さんへの行為は、私の人生の中で、一番とも言っていい程の「快感」だったから。







 
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