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第6章
空蝉編 6-1「ボンデージ感覚の芽生え」1: 革のコルセット
しおりを挟む「そういうのって、着エロって言うのかしら?」
「みたいですね……」
「胸元が全部見えてるし、ノーブラなの丸わかりだし」
「えへっ……、ダイタン過ぎるかな?」
「今の若いコって、そういうの平気だよね」
「エロ可愛って言いかた、しますよ。」
「わたしも若かったら、そんなの着てみたいけど」
夕貴ママはファッションに関しては意外に古風なのだ。
湛(しずか)は『ケルベロスの首輪』を訪れて夕貴ママとおしゃべりしていた。
湛は週に一度か二度、こうして『ケルベロスの首輪』に来るのを楽しみにしている。
今日の湛はおなかのところにリボンを巻いた胸刳りの深いサテンキャミを着ていた。
黒地からうっすらと白い乳房が浮き上がっているところがかなりセクシーだ。
近頃の湛(しずか)は、ショッピング大好き人間になってしまっている。
何といっても、高級なお店の下着コーナーに行って堂々とパンティやブラに触れることができるのがうれしい。
おそろしいほどの値札がついていて後込みしてしまうが、館岡からもらったカードを使えば買えないことはない。
でもまだそれらをエレガントに着こなす自信はない。
上品さ……が自分に備わっているとは思えないからだ。
湛は女のフェイクである事には違いはないから……。
「ミニに網タイツにブーツか……、いいわねえ」
着て歩くにはギリギリのスタイルで、少し前までの湛なら無理な女装だった。
夕貴ママにほめられた湛はカウンターの止まり木から降りて、くるりとターンしてみせる。
ひらひらミニが浮き上がり、ストッキングを吊ったサスペンダーとともに白い太腿の付け根があらわになる。
「しずかちゃんって、ほんとセクシーになったわねえ」
「しずかちゃん、それ、何?」
有頂天になって烈しく回転したものだから、キャミの裾がまくれてしまったのだ。
「あ? これ、コルセット」
「コルセット?」
湛(しずか)はカウンターのほうに歩み寄り、キャミをまくり上げて腹部を夕貴ママに見せた。
「館岡さんにもらったの。ウエストを細くしなさい、って」
「へえー、これ、本革ね」
「しずかのために別注で造ってもらったんだって。ストッキングを吊るサスペンダーが付いててSMチックでしょ」
「ふーん、組み紐で絞り上げるようになってるのねえ」
「この紐、うしろだと、自分で締められないから前側なんだって」
「このコルセット、いつも着けてるの?」
「うん」
「苦しくない?」
「苦しいけど、館岡さんに着けるように言われてるから」
館岡に命じられて従うことが湛にとっては何よりも大事だった。
館岡はきつい調子で命じたわけではない。
買ってきたコルセットをチカオに見せて、「これを着けてウエストを絞りなさい」と言っただけだ。
湛(しずか)は、さっそくその日からコルセットを着用し、苦しいぐらいに締め上げている。
お風呂から上がってゆったりくつろいでいるときなど、コルセットを着ける気分ではなくなる。
でもそんなことしたら、あのひとを裏切ることになる、苦しくてもやっぱ、着けとかなくっちゃね。
と、湛は何度も自問自答したものだ。
奇妙なことにコルセットによる胴腹部への圧迫感が、湛には館岡をより身近に感じさせた。
コルセットを常用していると、館岡との一体感がある。
性行為で挿入してもらったときの一体感は肉体的結合にすぎないが、コルセットを媒介にして館岡とよりいっそう緊密な精神的一体感を得られたような気がする。
遠隔操作の調教の一つなのだと解ってはいたが、理屈ではなかった。
「しずかちゃん、前からほっそりしてたじゃない? ダイエットしなくても、女として通るわよ」
「あたし、ダイエットなんかしてませんよ」
「やせるんでしょ?」
「コルセットするのはウエストを細くするためだけですよお。お食事の量を減らしてるわけじゃないんです。今までとおんなじ、あたしって、もともとそんなにたくさん食べるほうじゃなかったし……」
「そうよね、そんなに体型が変わってないわよねえ。おっぱいができて、すごく変わった印象があるけど」
「それと、無駄毛を処理してるでしょ。だから、見た感じがちがってきてるんだと思うけど」
「しずかちゃんって、色白だったけど、白いだけじゃなくて、つやつやすべすべのお肌になってきたわねえ」
「うふっ、エステで磨いてもらってるから」
もちろん、館岡がいるから出来る事だった。
「ホルは?」
「ぜんぜん使ってませんよ」
「ぐっと女っぽくなるのにねえ」
「館岡さんがダメって言うんです。おっぱいつくってもらった先生は、ホルモンでもっと女らしくなれるよ、って言ってくれるんですけどね。でも、ホルモン使うと、あそこの勃起力が減退するかもしれないでしょ。館岡さん的には、そういうのはダメだって」
「チンポが縮んでしまって射精しなくなったコもいるからねえ」
「そんなの困るなあ……」
「わたしなんか、もうチンポ切り取っちゃってるから、射精の快感を味わえないけどね、あれっていいものねえ」
湛(しずか)は性転換手術を受けて女性器を造りたいとは思わない。
乳房を手に入れてからすっかり女の生活になり、男にセックスしてもらうのが楽しくて仕方がない毎日を堪能しているが、ペニスで射精する性感が無くなるなんて考えられない。
鏡の前に座ってお化粧するのは大好きだ。
目もとのメイクがばっちり魅惑的に決まり、口唇が鮮やかな赤に仕上がったとき、恍惚となってしまう。
ミニスカートで太腿を露出した無防備感がたまらないし、ノーブラで自前の乳房が揺れるのを感じると思わず勃起してしまうこともある。
湛は、本格的にしずかになったとはいえ、ペニスは必要なのだ。
「それで、太田さんナンバースリーまで来てるのね」
「そうなんです。来週、太田さんのNo4の予定なんですよ」
「ターさんを勘定に入れると、すでに四人の男を体験したわけね」
「うん」
男との体験を四人とは、少な過ぎる。当然嘘だけど、もうそんな事はどうでも良くなっている。
もうこうなったら何人でも一緒だ。
「どう?」
「……どう、って……?」
「楽しいでしょ?」
湛は顔面が火照るのを感じた。
夕貴ママは、ズバリ言い当てていた。
『楽しい』の他に何の補足説明も不要だ。
「ターさんの紹介してくれる男なら、基本的に紳士だものねえ。社会的地位もあって、お金にも余裕があって、でも、表向きの顔とは裏腹に変態のドスケベ」
夕貴ママが愉快そうに笑い、湛も笑ってしまった。
みんな女装した若い男が大好きな変態スケベおやじなのだ。
そのスケベの本性を丸出しにしてチカオを愛玩してくれる。
だからこそ、湛は楽しくて仕方がない。
「あのね、結婚したばかりの若奥さんって、いやらしいでしょう?」
「え?」
「ほら、ダンナさんとやりまくってます、チンポをハメてもらうのがうれしくて、一日中、あそこが濡れっぱなし……みたいな雰囲気をぷんぷんさせてる羞ずかしそうな新妻っているじゃない?」
「…………」
「今のチカオちゃんって、そういう感じなのよ。男にお尻を掘られまくって、楽しくて嬉しくて、っていう雰囲気がぷんぷんなのね。……匂いって言ってもいいんだけど、そういうのを濃厚にまき散らして、すごく色っぽいのよねえ」
「……そうかなあ」
「すっごくいやらしいのよね。そのいやらしさが色っぽさなんだけど」
「…………」
「お下劣にいやらしいわけじゃないのよ。チカオちゃんの性格だと思うけど、さっぱりしてるのにセックス大好きの濃い匂いが漂ってくるのよねえ。変態すけべのおじさんたちには、たまらない魅力だと思うわよ」
その指摘に、湛(しずか)は、なるほど、と思った。
湛の日常の頭の中はセックスのことが大部分を占めている。
男にお尻を掘られまくって、楽しくて嬉しくて……、と夕貴ママに言われて、確かにその通りだ、と納得してしまうのだ。
こうしていても、革のコルセットの締め付けて来る感触が気持ち良かった。
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