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第一章
30長老評議会 レイジェス視点
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私はレイジェス=アルフォード。今日も行きたくない城に出仕する。
以前までは朝起きて城への出仕はいつもの極普通の朝の出来事だった。
が、彼女が我が屋敷に来てからそれは一変した。
彼女と離れたくないのだ。
だから出仕したくない。
と言うと彼女にはダメな大人ですね、と叱られた。
私は晩餐会以来彼女と愛の言葉を交わし閨事もし、幸せに過ごしている。
私が彼女の気持ちも考えず結婚すると言っていていたのは、多分彼女はそうなっても「嫌じゃない」から結婚するだろうと考えていたからだ。
彼女は私のする事全てを許していた、だからそういう考えに至った訳だが……。
たぶん、彼女が順番を教えてくれなければなんの疑問も抱かなかったろう。
そもそも私は女と付き合った事が無いし、女の喜ぶ言葉など知らなかったし、必要なかった。けれど、彼女が教えてくれたこと。
「好きです」
「愛してます」
「結婚してください」
目から鱗が落ちた。
彼女はこの言葉がなくても私と結婚してくれたろう。
だけど、彼女が私に言ったその言葉は涙が出るほど嬉しかったのだ。
彼女に好かれ、愛され、結婚したいと思ってもらえた。
喜びに打ち震えて、私は年甲斐もなく子供のように泣いた。
だが私はどうだ? こんな簡単なことさえ言ってなかった。
言ったら相手が嬉しいなどと考えた事も無かった。私はダメな人間だ。
これが彼女だけじゃなく、私の部下のヒューイットにも愛の言葉もない結婚は【ないわー】と言われていたのだ。
世間の一般常識では愛の言葉は言うべきなのだということを初めて知った。
その事から、私は自分の思いや、考えをなるべく彼女に話してみることにした。
閨事にしても、私が彼女にしたいと言うと普通に良いと言った。
私と触れ合うのは好きだと。
そんな事も私が彼女に思い切って閨事をしたいと言わなければ分からなかった事だった。
彼女は嫌じゃないから触られているだけで、私と触れ合うのが好きと思ってなかったのだ。
心の中が喜びで溢れる。
彼女が良いと言うので私は彼女を弄りまくった。
寝ていても我慢できずに、私の白濁した液でどろどろにした。
うとうとしていた彼女はぐっすり眠っていたわけではなく、ときどき浅く起きていたようで、自分がぬるぬるしていたのはわかっていたようだった。
あの可愛らしい顔に白濁の私の液体が掛かっているのにも関わらず微笑むのだ。
考えただけで達しそうになる。
「ミドルキュア」
いかんいかん。理性が飛びそうだ。
最近はただされるだけではなく私の大事な所も舐めたり扱いたりするようになった。
小さな手なのでつたないのだがそれがまた良い。
口も小さくて私の先の半分も入らない。
なのでぺろぺろと舐めるかちゅぱちゅぱと吸うだけなのだが、彼女にしてもらえるということが嬉しいのだ。あ~幸せだ。
昨日は初めて彼女が反応した。ほんの一瞬だったが、驚いた。嬉しかった。
こんなに小さくても反応するのだと。
しかも私の刺激で愛液がすぅっと垂れた。彼女の愛液は甘かった。
彼女の半分はトウミで出来てるのかもしれない。どこもかしこも甘い。
トウミとおなじ薄桃でもあった。あんなひだの間まで薄桃なのかと驚いた。美しかった。
とにかく、今はもう彼女のいない生活など耐えられない。
さっさと長老評議会で神籍の許可をもらって彼女と結婚したい。
すぐには結婚は無理なのでせめて婚約状態になりたい。
あれだけ根回しで金と女を貢いだのだ、今すぐ何とかしろと言いたい。
股間が熱くなったのでローブの裾をふさふさと扇ぐ。
そして事務所へ。
入り口でおはようと挨拶して自分の机へ。
「おはようございますレイジェス様」
「ああ、おはようヒューイット」
「晩餐会の時は済まなかった先に帰ってしまって。あと、君のおかげで色々気付かせられた。心から感謝する、ありがとうヒューイット」
私は感謝の念を込めて手を握った。するとヒューイットの顔が赤くなった。
「誤解されるのでそういう感謝の仕方はやめてくださいませ」
「レイジェス様は愛の教科書でもお買いになって読んだらよいのです。本屋で売ってますよ?」
「なんだそれは?」
「恋をするときの手順や相手にどういう風に愛を伝えるかが書いてある本です」
「なんだと!? そんなものがあったのか…」
「レンブラント様も14の頃読まれたそうです。参考になったとおっしゃってました」
「ほぅ、私も買ってみようか、面白そうだ」
「それがようございます、アリア様のためにも」
とヒューイットが微笑んだ。彼女は良い人である。化粧臭くないし。
「やぁ、おはようレイジェス!」
コモンが来た。
「おはよう、昨日はすまなかった。シエラ様のことは必ず約束を守ろう」
「ホントに? やった! あ、調査したよ? 後宮の女達。国王は真っ黒だった。何人も殺されて後宮の庭に埋められてた。番所の役人が掘って死体を確認したそうだ」
コモンが不思議そうに私を見た。
「何故後宮の女の事を知っていた? レイジェス」
「以前、里帰りをすると言っていた後宮の女がいつまでも帰って来ないと番所に通報があった。後宮も探したがそちらにもおらず、結局行方不明扱いになった。気に掛かっていたのだ。王の加虐嗜好を見て、もしかしたらと思った。殺人を犯しているとなると……」
「処刑確実だね」
コモンがきっぱりと言った。
「あんな愚王などどうでもいいがな、次の王が気になる」
「一番有力なのは長男のイフリート王子様だけど、今の王の息子だけあって女好きだからね~もしアリアちゃんと会うはめになったら、何されるかわかったもんじゃないよね」
「うむ、あれに害のない王がいい」
「じゃ、害のなさそうな王の後ろ盾になっちゃう?」
「うむ、それしかあるまい」
「じゃ、俺も後ろ盾になる!」
「では会議に行ってくる」
「頑張れ!」
応援されて長老評議会へ。
まず、評議会というのは国で起こる難しい問題を会議で話し合う。
評議会には国王、左大臣、右大臣、宰相、長老などが参加する。
その前段階で、相談のある者はこうして申請をすれば話を聞いてもらえる。
そして、評議会の前段階であるこの場を長老評議会と言う。
聞いてもらえるだけで結果はこの場でどうにかなる場合と他の長老と相談して決定となる場合がある。
今回の長老評議会で話す内容は
1アリアの神籍作成の許可
2アリアと私との結婚許可(婚約)
3新しい王の選定。誰がいいかの推薦。
この中でアリアの件はその場で決められるかも知れないが、王の選定は推薦のみする予定である。選抜は他の長老と大臣達も含めての評議会で決まるだろう。
私は新しい王には以前アリアが言っていた内政改革をする方が良いという意見に賛成してる。前王の長男であるガブリエル王子がいいと思っている。
ちなみに前王が病気で亡くなったあと、本来はガブリエル王子が継ぐはずであったが、未成年だからと前王の弟である愚王が王座を奪ったのである。
本筋に戻すだけだ何の問題もない。
私は事務所を出て階段を降りた。
1階の階段を左に曲がった所に長老評議会会議室がある。
私は部屋のルームプレートを確認したあとノックした。
「入れ」と長老がいう。
「失礼しますアルフォードでございます」
「よくきた」
と先程とそっくりの顔をした長老が言う。
「久しぶりだな」とまた似ているが別の長老が発言する。
長老達の顔は全て似ている。私は区別がつかないので、いつも人数は無視して1人と話すように対応している。
丸いテーブルに3人の長老がいる。本当は長老達は全部で8人いるが、この場にいる3人が長老達の仲で最も権威があり、発言力がある。
私もその丸いテーブルについた。
長老達は小さいので私一人が突き抜けて背が高い。
「なんでも神の子がいるとか?」長老1
「君が預かっているのだろう?」長老2
「いくつだ?」長老3
「アリア=アズライル様8歳でございます」
「ん? 君はこの子と結婚許可申請を出したいと言っていたが……8歳なのか!?」長老1
「そうですが? 何か問題でも?」
「歳が離れすぎだろう!」長老2
「貴族の結婚で歳若い女を娶るなど良くある事ではないですか」
「それは大人になってからだろうが」長老3
「彼女は成長すれば大人になりますし、私達は愛し合っています。なんの問題もありません。所で神籍は作成して頂けるんですよね?」
「神籍など、そうそう簡単に出せぬわ! 出せばその者を神と認めたことになる!」長老1
「そうだ慎重にやらねば!」長老2
全く……三人共似たような顔をした小さなじじぃ達が、替わり替わり話すのでどれがどれだか分からなくなってきた。それだけでもイライラするのに、彼女の神籍申請を許可する気がないのか……? こいつらは。
「……先日我が家に女神マティオン様が降臨されました」
「「「はぁ?」」」」
「アリア様の音楽に【誘われて来ちゃった!】そうです」
「そんなことが……」長老3
「アリア様を預けに来たのは天地創造の神、アズライル神様です」
「「「!!」」」
「今より遥か昔、神々はこの地に遊びにいらっしゃってた時代がこざいます。どうして降臨されなくなったのかはわかりません。しかし、こうして今いらっしゃってるのですよ? 場を整えないと神々が安心してこの地に降りられる事が無くなってしまうのではないでしょうか?」
長老達は三百年は歳を経ていると聞いている。普通の人族の人間は寿命が70年前後だ。他種族と比べると寿命が短い。その中で三百年も生きているとは妖怪か?
まぁ、見た目は皺くちゃの癖に背丈は小さく皆似た様な見た目と言う事を考えると長生きをする遺伝子異常なのかも知れない。
蜜花の法律を作ったのもこいつらだという。
なんだかこのじじぃ共が恨めしくなった。
あんな法律が無ければ、今頃私とアリアは…いやいや、私は頭を振った。
彼女を傷つける事など絶対ダメだ。
「うーむ…」長老1
「神々を人の籍で扱うことはできません。神籍の整備をお願いします、そして私との婚約も許可してくださいませ」
「それとこれとは別であろう?」長老2
「アズライル様は私に慈しみ守り育てよ。傷つけたり穢したりしたらこの国ごと大陸を滅ぼすとおっしゃられました。守り育てるには人々は穢れきっていて彼女は傷つけられてしまうのですよ。婚約は彼女を守るための力にもなるのです。私はこれでも公爵ですからね」
「うーむ。大陸が滅ぶとは……」長老3
「一大事ではないか、何故もっと早く……」長老1
「あの愚王に言いました。そしてアリア様に会わせろと言われてあのざまです」
「王はアリア様に無礼を働いてスティグマ持ちになったんだろう?」長老2
「そうです。ちなみに……神の怒りに触れてスティグマの烙印を押されたのはもう3人もいます」
「そんなにか!?」長老3
金も女も相当使ったとセバスに聞いた。
御託はいいからさっさと許可を寄越せ!
「烙印がつかない程度の無礼をする者もいました。アリア様を、国を、大陸を守る為にも神籍と婚約の許可を」
「ふむ……」長老1
「その、アリア様にお会いして神かどうか確かめるというのはどうだ?」長老2
「……そう言って愚王はスティグマ持ちになりましたが、長老様達は彼女が怖くないのですか? 私は庇護者の称号があるので比較的影響が少ないですが、悪しき者になりスティグマ持ちになるかも知れない可能性があるんですよ?」
「わしは老い先短い……スティグマなぞ関わりたくも無い」長老3
神と対峙する心構えもない。何が長老だ、知識の塔だ、老いぼれじじぃ共が!
「わしもじゃな」長老1
「レイジェスが言ってるのだから本当であろう」長老2
「この男は嘘はつかん」長老3
「許可でいいと思う」長老1
「だな」長老2
「金も女も貰ったしな」長老3
「神籍は作成。結婚は許可、ただし未成年のため婚約にせよ」長老1
よしっ!! 私は心の中で拳を握った。ああ、後それだけではだめだ。
次代の王をアリアに邪気のない奴にせねば。
「国王選抜の件ですが、アリア様は前王を大変評価しておりました」
「なぜ前王を知っている?」長老2
「我が家にあったプリストン王国の歴史という本を読まれました。惜しい人を亡くしたと嘆いてらっしゃいました。本来なら前王が亡くなったら子息が即位するのが流れ。その流れを切ったのはあの愚王でございます。前王の弟という立場を利用しご子息様から王座を奪ったのですから……。私はこの王座を奪われた子息である、ガブリエル王子を次期国王に推薦いたします。王として立つのであれば全力を持って後ろ盾になる所存であります。愚王の子息などもっての他、どうぞ私が述べた意見も参考に王の選抜をお願い致します」
「あい、わかった」長老3
「参考としよう」長老1
「うむ」長老2
私はお辞儀をして会議室を後にした。
はぁ……許可がおりた!!
今すぐゲートで帰って彼女を抱きしめたい!!
と言っても今は仕事中だ。事務所に寄って机に書置きがあるのを見る。
番所に来いと書かれていた。
「番所にちょっと行ってくる」
事務員のエマに言う。
番所に言って応接室に呼ばれると番所所長が現れた。
「わざわざ申し訳ありません、師長様」
「いや、時間があったので大丈夫だ。所でどうした?」
「昨日の事件で少しお聞きしたい事が」
「ふむ、なんだ?」
「国王の罪は殺人と師長様の婚約者への暴行で罪は確定なのですが、護衛の者2名の罪は何なのでしょうか? 彼らはスティグマもありませんし、目も赤黒くないのです」
私は目が赤黒くなればそれはもう治らないと思っていた。
それが元に戻る? では正気の正常である場合と赤黒く異常な場合を繰り返す事も出来るのではないか? そう考えると…それはとても恐ろしい事の様な気がした。
「…なんだとっ!?」
「昨日、私が見たときは確実に濁っていた。そして国王の言うことを聞いて…はっ! その護衛と話がしたい。いいか? 所長」
「はい」
しばらくして手錠をした二人が長めの紐に繋がれてやってきた。
「君達は自分のやったことがわかるか? 覚えているか?」
「それが、夢のようにふわふわしてて覚えてないのです」
「アルフォード公爵様の預かり子様が来た所まではわかるが、それ以降は…」
「ふむ……」
「所長、これらの者は私への傷害罪と服務命令違反で処罰してくれ。その後は番所預かりにしておいてくれ。実験に使いたい」
「はぁ、了解いたしました」
所長は二人を連れて行き、私も事務所に戻った。
しかし、目が濁った者が元に戻るだと? しかもスティグマもない。
……あっ、そういえば、あの応募してきた教師で1人目が赤黒かったがスティグマが出なかった奴はどうなった? 確認してなかった。せねば…。
手の者が足りん。くそっ! 文官か諜報の者を雇うべきか……。
先程までの嬉しい気分が台無しだ。
帰宅の夜の5の刻になったのでゲートを開いて屋敷に戻った。
「おかえりなさいませ」
彼女が微笑んで私を迎えた。
「ただいま戻った」
私は彼女の手を取った。暖かい。少し屈んで頬にキスしたあと、先に談話室に行くように言う。
「セバス執務室に」
「はい、旦那様」
執務室の机を前に椅子についた。セバスは私の前に立っている。
「先日の謁見の間での事件で逮捕した護衛の者と今日話をしたのだが」
「ええ?」
「目の濁りが消えていた。私が見たときは悪しき者と同じ赤黒く濁っていたのだが、赤黒く濁っても元の人間に戻るのか? ちなみに、愚王はまだ濁ったままだそうだ」
「元に戻るならそれに越した事はないですが、戻ったとしてまた悪しき者になる可能性も無いわけではないですよね?」
「うむ。色々知りたいので実験をしたいと思っているのだが……」
「姫様に会わせなければいけないという事ですね?」
「気が進まないがあれの魅了に関してはよく分からぬ事が多くてなぁ…」
「知っておけば対処もできますからね」
セバスは淡々と私が言った事をメモしている。
「うむ、あと、文官を何名か、諜報の者を何名か、と彼女用の護衛騎士が何名か欲しい」
「すぐに用意できるのは諜報の者二名だけですね。領地の城におりますので呼び寄せましょう」
「女か?」
「いえ、二人とも男ですが、1人は衆道です。もう1人はどうなるか……けれど姫様に会わせなければいいかと存じます」
「お前のような者もいるし、なんとも言えないからな…」
「実験は監視する者がいる中での面会ならば何も出来ないでしょう。旦那様が抱きかかえていれば尚更です」
「ふむ。お前にまかせることにする」
「他の者はもう少々お待ちくださいませ」
「わかった」」
セバスと話をしていて、私はふいに12歳の頃の事を思い出した。
「セバス、12年前、お前に助けられなかったら、こうしてアリアと楽しく暮らすことも無かったかもしれない。お前と、お前の父に感謝している」
というとセバスは疑問符のついたような顔で私を見た。
「12年前? 何のことでしょう?」
「ん? ……私が第二夫人に地下室に監禁された時の話だ」
セバスが顎に手をやり、暫く考え込んでいる。
「ああ、思い出しました。助けたのは父です。私は事件のあらましみたいなものを父に聞きましたが、助けていませんよ?」
私は疑問に思う。
「地下室を脱出してからは確かにお前の父オーギュストに助けられた。父上に送った訴状の事とかでな。しかし、地下室を脱出するのを助けてくれたのはお前だろ?」
「いいえ?」
セバスはきょとんとした顔をした。その顔は、本当に覚えがない様な顔だった。
私は記憶を掘り起こす。脱出する時に手をつないだ。
子供の小さな手だった。
「子供の……私より小さな手だった。私を助けたのは」
「旦那様が小さいと感じる手なら私ではありませんよ。私は旦那様より年上ですよ? あなたより小さな手のはずがない。あの事件は領地の城の地下室で起こりましたよね?」
「ああ」
「あの頃城には使用人の子供もいなかったですよ。みな年寄りばかりでしたから。孫なんて職場に連れてきませんしね」
私は固まる。この12年間、自分を助けてくれたのはずっとセバスだと思っていた。でも違ったというのか?
「じゃあ、一体誰だ? 私が手をつないだ小さな手は誰だったんだ?」
セバスが眼鏡のブリッジを中指で押さえる。
「夢とか幽霊では?」
「いや、感触を今でも覚えている。柔らかくて小さな手だった」
セバスは顎に手をやって考えている。
「父に聞けば何か分かるかも知れませんね」
「セバスの自宅は確か…」
「領地の城の近くですよ」
「領地に行った時に聞くしかないか…」
今すぐどうこうできる問題ではないので私はしばらくこの問題を放置することにした。
「あ、そういえば、コモンにシエラ様との仲を取り持つ約束をしたのだが」
セバスは眼鏡の端の位置をクィっと直し、言った。
「近々、また催されるリッツ伯爵様の晩餐会に行くのがよろしいでしょう」
「コモン様の親御様であるエルサレム伯爵様はリッツ伯爵家と付き合いがないですから、招待状は来ないと思われます。なので晩餐会に誘うだけでも取り持つ事になるのでは? それに、リッツ伯爵の晩餐会では米料理が必ず1品はでるそうです」
「それは…彼女が喜ぶな」
「そうです、前回は旦那様が色々残念でしたからね……これを機会にいい所を見せましょう」
「良いな、アリアと共に行こう」
私は米料理を美味しそうに食べる彼女を想像した。
満足そうに私に笑いかけ、その笑顔に私も満足する。
そんな、たわいもない想像だった。
以前までは朝起きて城への出仕はいつもの極普通の朝の出来事だった。
が、彼女が我が屋敷に来てからそれは一変した。
彼女と離れたくないのだ。
だから出仕したくない。
と言うと彼女にはダメな大人ですね、と叱られた。
私は晩餐会以来彼女と愛の言葉を交わし閨事もし、幸せに過ごしている。
私が彼女の気持ちも考えず結婚すると言っていていたのは、多分彼女はそうなっても「嫌じゃない」から結婚するだろうと考えていたからだ。
彼女は私のする事全てを許していた、だからそういう考えに至った訳だが……。
たぶん、彼女が順番を教えてくれなければなんの疑問も抱かなかったろう。
そもそも私は女と付き合った事が無いし、女の喜ぶ言葉など知らなかったし、必要なかった。けれど、彼女が教えてくれたこと。
「好きです」
「愛してます」
「結婚してください」
目から鱗が落ちた。
彼女はこの言葉がなくても私と結婚してくれたろう。
だけど、彼女が私に言ったその言葉は涙が出るほど嬉しかったのだ。
彼女に好かれ、愛され、結婚したいと思ってもらえた。
喜びに打ち震えて、私は年甲斐もなく子供のように泣いた。
だが私はどうだ? こんな簡単なことさえ言ってなかった。
言ったら相手が嬉しいなどと考えた事も無かった。私はダメな人間だ。
これが彼女だけじゃなく、私の部下のヒューイットにも愛の言葉もない結婚は【ないわー】と言われていたのだ。
世間の一般常識では愛の言葉は言うべきなのだということを初めて知った。
その事から、私は自分の思いや、考えをなるべく彼女に話してみることにした。
閨事にしても、私が彼女にしたいと言うと普通に良いと言った。
私と触れ合うのは好きだと。
そんな事も私が彼女に思い切って閨事をしたいと言わなければ分からなかった事だった。
彼女は嫌じゃないから触られているだけで、私と触れ合うのが好きと思ってなかったのだ。
心の中が喜びで溢れる。
彼女が良いと言うので私は彼女を弄りまくった。
寝ていても我慢できずに、私の白濁した液でどろどろにした。
うとうとしていた彼女はぐっすり眠っていたわけではなく、ときどき浅く起きていたようで、自分がぬるぬるしていたのはわかっていたようだった。
あの可愛らしい顔に白濁の私の液体が掛かっているのにも関わらず微笑むのだ。
考えただけで達しそうになる。
「ミドルキュア」
いかんいかん。理性が飛びそうだ。
最近はただされるだけではなく私の大事な所も舐めたり扱いたりするようになった。
小さな手なのでつたないのだがそれがまた良い。
口も小さくて私の先の半分も入らない。
なのでぺろぺろと舐めるかちゅぱちゅぱと吸うだけなのだが、彼女にしてもらえるということが嬉しいのだ。あ~幸せだ。
昨日は初めて彼女が反応した。ほんの一瞬だったが、驚いた。嬉しかった。
こんなに小さくても反応するのだと。
しかも私の刺激で愛液がすぅっと垂れた。彼女の愛液は甘かった。
彼女の半分はトウミで出来てるのかもしれない。どこもかしこも甘い。
トウミとおなじ薄桃でもあった。あんなひだの間まで薄桃なのかと驚いた。美しかった。
とにかく、今はもう彼女のいない生活など耐えられない。
さっさと長老評議会で神籍の許可をもらって彼女と結婚したい。
すぐには結婚は無理なのでせめて婚約状態になりたい。
あれだけ根回しで金と女を貢いだのだ、今すぐ何とかしろと言いたい。
股間が熱くなったのでローブの裾をふさふさと扇ぐ。
そして事務所へ。
入り口でおはようと挨拶して自分の机へ。
「おはようございますレイジェス様」
「ああ、おはようヒューイット」
「晩餐会の時は済まなかった先に帰ってしまって。あと、君のおかげで色々気付かせられた。心から感謝する、ありがとうヒューイット」
私は感謝の念を込めて手を握った。するとヒューイットの顔が赤くなった。
「誤解されるのでそういう感謝の仕方はやめてくださいませ」
「レイジェス様は愛の教科書でもお買いになって読んだらよいのです。本屋で売ってますよ?」
「なんだそれは?」
「恋をするときの手順や相手にどういう風に愛を伝えるかが書いてある本です」
「なんだと!? そんなものがあったのか…」
「レンブラント様も14の頃読まれたそうです。参考になったとおっしゃってました」
「ほぅ、私も買ってみようか、面白そうだ」
「それがようございます、アリア様のためにも」
とヒューイットが微笑んだ。彼女は良い人である。化粧臭くないし。
「やぁ、おはようレイジェス!」
コモンが来た。
「おはよう、昨日はすまなかった。シエラ様のことは必ず約束を守ろう」
「ホントに? やった! あ、調査したよ? 後宮の女達。国王は真っ黒だった。何人も殺されて後宮の庭に埋められてた。番所の役人が掘って死体を確認したそうだ」
コモンが不思議そうに私を見た。
「何故後宮の女の事を知っていた? レイジェス」
「以前、里帰りをすると言っていた後宮の女がいつまでも帰って来ないと番所に通報があった。後宮も探したがそちらにもおらず、結局行方不明扱いになった。気に掛かっていたのだ。王の加虐嗜好を見て、もしかしたらと思った。殺人を犯しているとなると……」
「処刑確実だね」
コモンがきっぱりと言った。
「あんな愚王などどうでもいいがな、次の王が気になる」
「一番有力なのは長男のイフリート王子様だけど、今の王の息子だけあって女好きだからね~もしアリアちゃんと会うはめになったら、何されるかわかったもんじゃないよね」
「うむ、あれに害のない王がいい」
「じゃ、害のなさそうな王の後ろ盾になっちゃう?」
「うむ、それしかあるまい」
「じゃ、俺も後ろ盾になる!」
「では会議に行ってくる」
「頑張れ!」
応援されて長老評議会へ。
まず、評議会というのは国で起こる難しい問題を会議で話し合う。
評議会には国王、左大臣、右大臣、宰相、長老などが参加する。
その前段階で、相談のある者はこうして申請をすれば話を聞いてもらえる。
そして、評議会の前段階であるこの場を長老評議会と言う。
聞いてもらえるだけで結果はこの場でどうにかなる場合と他の長老と相談して決定となる場合がある。
今回の長老評議会で話す内容は
1アリアの神籍作成の許可
2アリアと私との結婚許可(婚約)
3新しい王の選定。誰がいいかの推薦。
この中でアリアの件はその場で決められるかも知れないが、王の選定は推薦のみする予定である。選抜は他の長老と大臣達も含めての評議会で決まるだろう。
私は新しい王には以前アリアが言っていた内政改革をする方が良いという意見に賛成してる。前王の長男であるガブリエル王子がいいと思っている。
ちなみに前王が病気で亡くなったあと、本来はガブリエル王子が継ぐはずであったが、未成年だからと前王の弟である愚王が王座を奪ったのである。
本筋に戻すだけだ何の問題もない。
私は事務所を出て階段を降りた。
1階の階段を左に曲がった所に長老評議会会議室がある。
私は部屋のルームプレートを確認したあとノックした。
「入れ」と長老がいう。
「失礼しますアルフォードでございます」
「よくきた」
と先程とそっくりの顔をした長老が言う。
「久しぶりだな」とまた似ているが別の長老が発言する。
長老達の顔は全て似ている。私は区別がつかないので、いつも人数は無視して1人と話すように対応している。
丸いテーブルに3人の長老がいる。本当は長老達は全部で8人いるが、この場にいる3人が長老達の仲で最も権威があり、発言力がある。
私もその丸いテーブルについた。
長老達は小さいので私一人が突き抜けて背が高い。
「なんでも神の子がいるとか?」長老1
「君が預かっているのだろう?」長老2
「いくつだ?」長老3
「アリア=アズライル様8歳でございます」
「ん? 君はこの子と結婚許可申請を出したいと言っていたが……8歳なのか!?」長老1
「そうですが? 何か問題でも?」
「歳が離れすぎだろう!」長老2
「貴族の結婚で歳若い女を娶るなど良くある事ではないですか」
「それは大人になってからだろうが」長老3
「彼女は成長すれば大人になりますし、私達は愛し合っています。なんの問題もありません。所で神籍は作成して頂けるんですよね?」
「神籍など、そうそう簡単に出せぬわ! 出せばその者を神と認めたことになる!」長老1
「そうだ慎重にやらねば!」長老2
全く……三人共似たような顔をした小さなじじぃ達が、替わり替わり話すのでどれがどれだか分からなくなってきた。それだけでもイライラするのに、彼女の神籍申請を許可する気がないのか……? こいつらは。
「……先日我が家に女神マティオン様が降臨されました」
「「「はぁ?」」」」
「アリア様の音楽に【誘われて来ちゃった!】そうです」
「そんなことが……」長老3
「アリア様を預けに来たのは天地創造の神、アズライル神様です」
「「「!!」」」
「今より遥か昔、神々はこの地に遊びにいらっしゃってた時代がこざいます。どうして降臨されなくなったのかはわかりません。しかし、こうして今いらっしゃってるのですよ? 場を整えないと神々が安心してこの地に降りられる事が無くなってしまうのではないでしょうか?」
長老達は三百年は歳を経ていると聞いている。普通の人族の人間は寿命が70年前後だ。他種族と比べると寿命が短い。その中で三百年も生きているとは妖怪か?
まぁ、見た目は皺くちゃの癖に背丈は小さく皆似た様な見た目と言う事を考えると長生きをする遺伝子異常なのかも知れない。
蜜花の法律を作ったのもこいつらだという。
なんだかこのじじぃ共が恨めしくなった。
あんな法律が無ければ、今頃私とアリアは…いやいや、私は頭を振った。
彼女を傷つける事など絶対ダメだ。
「うーむ…」長老1
「神々を人の籍で扱うことはできません。神籍の整備をお願いします、そして私との婚約も許可してくださいませ」
「それとこれとは別であろう?」長老2
「アズライル様は私に慈しみ守り育てよ。傷つけたり穢したりしたらこの国ごと大陸を滅ぼすとおっしゃられました。守り育てるには人々は穢れきっていて彼女は傷つけられてしまうのですよ。婚約は彼女を守るための力にもなるのです。私はこれでも公爵ですからね」
「うーむ。大陸が滅ぶとは……」長老3
「一大事ではないか、何故もっと早く……」長老1
「あの愚王に言いました。そしてアリア様に会わせろと言われてあのざまです」
「王はアリア様に無礼を働いてスティグマ持ちになったんだろう?」長老2
「そうです。ちなみに……神の怒りに触れてスティグマの烙印を押されたのはもう3人もいます」
「そんなにか!?」長老3
金も女も相当使ったとセバスに聞いた。
御託はいいからさっさと許可を寄越せ!
「烙印がつかない程度の無礼をする者もいました。アリア様を、国を、大陸を守る為にも神籍と婚約の許可を」
「ふむ……」長老1
「その、アリア様にお会いして神かどうか確かめるというのはどうだ?」長老2
「……そう言って愚王はスティグマ持ちになりましたが、長老様達は彼女が怖くないのですか? 私は庇護者の称号があるので比較的影響が少ないですが、悪しき者になりスティグマ持ちになるかも知れない可能性があるんですよ?」
「わしは老い先短い……スティグマなぞ関わりたくも無い」長老3
神と対峙する心構えもない。何が長老だ、知識の塔だ、老いぼれじじぃ共が!
「わしもじゃな」長老1
「レイジェスが言ってるのだから本当であろう」長老2
「この男は嘘はつかん」長老3
「許可でいいと思う」長老1
「だな」長老2
「金も女も貰ったしな」長老3
「神籍は作成。結婚は許可、ただし未成年のため婚約にせよ」長老1
よしっ!! 私は心の中で拳を握った。ああ、後それだけではだめだ。
次代の王をアリアに邪気のない奴にせねば。
「国王選抜の件ですが、アリア様は前王を大変評価しておりました」
「なぜ前王を知っている?」長老2
「我が家にあったプリストン王国の歴史という本を読まれました。惜しい人を亡くしたと嘆いてらっしゃいました。本来なら前王が亡くなったら子息が即位するのが流れ。その流れを切ったのはあの愚王でございます。前王の弟という立場を利用しご子息様から王座を奪ったのですから……。私はこの王座を奪われた子息である、ガブリエル王子を次期国王に推薦いたします。王として立つのであれば全力を持って後ろ盾になる所存であります。愚王の子息などもっての他、どうぞ私が述べた意見も参考に王の選抜をお願い致します」
「あい、わかった」長老3
「参考としよう」長老1
「うむ」長老2
私はお辞儀をして会議室を後にした。
はぁ……許可がおりた!!
今すぐゲートで帰って彼女を抱きしめたい!!
と言っても今は仕事中だ。事務所に寄って机に書置きがあるのを見る。
番所に来いと書かれていた。
「番所にちょっと行ってくる」
事務員のエマに言う。
番所に言って応接室に呼ばれると番所所長が現れた。
「わざわざ申し訳ありません、師長様」
「いや、時間があったので大丈夫だ。所でどうした?」
「昨日の事件で少しお聞きしたい事が」
「ふむ、なんだ?」
「国王の罪は殺人と師長様の婚約者への暴行で罪は確定なのですが、護衛の者2名の罪は何なのでしょうか? 彼らはスティグマもありませんし、目も赤黒くないのです」
私は目が赤黒くなればそれはもう治らないと思っていた。
それが元に戻る? では正気の正常である場合と赤黒く異常な場合を繰り返す事も出来るのではないか? そう考えると…それはとても恐ろしい事の様な気がした。
「…なんだとっ!?」
「昨日、私が見たときは確実に濁っていた。そして国王の言うことを聞いて…はっ! その護衛と話がしたい。いいか? 所長」
「はい」
しばらくして手錠をした二人が長めの紐に繋がれてやってきた。
「君達は自分のやったことがわかるか? 覚えているか?」
「それが、夢のようにふわふわしてて覚えてないのです」
「アルフォード公爵様の預かり子様が来た所まではわかるが、それ以降は…」
「ふむ……」
「所長、これらの者は私への傷害罪と服務命令違反で処罰してくれ。その後は番所預かりにしておいてくれ。実験に使いたい」
「はぁ、了解いたしました」
所長は二人を連れて行き、私も事務所に戻った。
しかし、目が濁った者が元に戻るだと? しかもスティグマもない。
……あっ、そういえば、あの応募してきた教師で1人目が赤黒かったがスティグマが出なかった奴はどうなった? 確認してなかった。せねば…。
手の者が足りん。くそっ! 文官か諜報の者を雇うべきか……。
先程までの嬉しい気分が台無しだ。
帰宅の夜の5の刻になったのでゲートを開いて屋敷に戻った。
「おかえりなさいませ」
彼女が微笑んで私を迎えた。
「ただいま戻った」
私は彼女の手を取った。暖かい。少し屈んで頬にキスしたあと、先に談話室に行くように言う。
「セバス執務室に」
「はい、旦那様」
執務室の机を前に椅子についた。セバスは私の前に立っている。
「先日の謁見の間での事件で逮捕した護衛の者と今日話をしたのだが」
「ええ?」
「目の濁りが消えていた。私が見たときは悪しき者と同じ赤黒く濁っていたのだが、赤黒く濁っても元の人間に戻るのか? ちなみに、愚王はまだ濁ったままだそうだ」
「元に戻るならそれに越した事はないですが、戻ったとしてまた悪しき者になる可能性も無いわけではないですよね?」
「うむ。色々知りたいので実験をしたいと思っているのだが……」
「姫様に会わせなければいけないという事ですね?」
「気が進まないがあれの魅了に関してはよく分からぬ事が多くてなぁ…」
「知っておけば対処もできますからね」
セバスは淡々と私が言った事をメモしている。
「うむ、あと、文官を何名か、諜報の者を何名か、と彼女用の護衛騎士が何名か欲しい」
「すぐに用意できるのは諜報の者二名だけですね。領地の城におりますので呼び寄せましょう」
「女か?」
「いえ、二人とも男ですが、1人は衆道です。もう1人はどうなるか……けれど姫様に会わせなければいいかと存じます」
「お前のような者もいるし、なんとも言えないからな…」
「実験は監視する者がいる中での面会ならば何も出来ないでしょう。旦那様が抱きかかえていれば尚更です」
「ふむ。お前にまかせることにする」
「他の者はもう少々お待ちくださいませ」
「わかった」」
セバスと話をしていて、私はふいに12歳の頃の事を思い出した。
「セバス、12年前、お前に助けられなかったら、こうしてアリアと楽しく暮らすことも無かったかもしれない。お前と、お前の父に感謝している」
というとセバスは疑問符のついたような顔で私を見た。
「12年前? 何のことでしょう?」
「ん? ……私が第二夫人に地下室に監禁された時の話だ」
セバスが顎に手をやり、暫く考え込んでいる。
「ああ、思い出しました。助けたのは父です。私は事件のあらましみたいなものを父に聞きましたが、助けていませんよ?」
私は疑問に思う。
「地下室を脱出してからは確かにお前の父オーギュストに助けられた。父上に送った訴状の事とかでな。しかし、地下室を脱出するのを助けてくれたのはお前だろ?」
「いいえ?」
セバスはきょとんとした顔をした。その顔は、本当に覚えがない様な顔だった。
私は記憶を掘り起こす。脱出する時に手をつないだ。
子供の小さな手だった。
「子供の……私より小さな手だった。私を助けたのは」
「旦那様が小さいと感じる手なら私ではありませんよ。私は旦那様より年上ですよ? あなたより小さな手のはずがない。あの事件は領地の城の地下室で起こりましたよね?」
「ああ」
「あの頃城には使用人の子供もいなかったですよ。みな年寄りばかりでしたから。孫なんて職場に連れてきませんしね」
私は固まる。この12年間、自分を助けてくれたのはずっとセバスだと思っていた。でも違ったというのか?
「じゃあ、一体誰だ? 私が手をつないだ小さな手は誰だったんだ?」
セバスが眼鏡のブリッジを中指で押さえる。
「夢とか幽霊では?」
「いや、感触を今でも覚えている。柔らかくて小さな手だった」
セバスは顎に手をやって考えている。
「父に聞けば何か分かるかも知れませんね」
「セバスの自宅は確か…」
「領地の城の近くですよ」
「領地に行った時に聞くしかないか…」
今すぐどうこうできる問題ではないので私はしばらくこの問題を放置することにした。
「あ、そういえば、コモンにシエラ様との仲を取り持つ約束をしたのだが」
セバスは眼鏡の端の位置をクィっと直し、言った。
「近々、また催されるリッツ伯爵様の晩餐会に行くのがよろしいでしょう」
「コモン様の親御様であるエルサレム伯爵様はリッツ伯爵家と付き合いがないですから、招待状は来ないと思われます。なので晩餐会に誘うだけでも取り持つ事になるのでは? それに、リッツ伯爵の晩餐会では米料理が必ず1品はでるそうです」
「それは…彼女が喜ぶな」
「そうです、前回は旦那様が色々残念でしたからね……これを機会にいい所を見せましょう」
「良いな、アリアと共に行こう」
私は米料理を美味しそうに食べる彼女を想像した。
満足そうに私に笑いかけ、その笑顔に私も満足する。
そんな、たわいもない想像だった。
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