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第四章
7 メヌット到着 レイジェス視点
しおりを挟む私達は戦闘の準備をしてすぐにゲートで北の領地の城に着いた。そこの表玄関から召喚獣を出して飛び立つ。飛べるだけ飛んだら休憩に入るつもりだが、出来ればこのまま夜まで飛んで行きたい。
が、現実はうまく行かない。みな疲れてきた様で昼の1の刻に休憩を取る事になった。川沿いで魚を取り焼いて食べた。
この川の魚は以前リアと一緒に食べた店の【神居】の魚の味に似ていた。淡白でさっぱりして美味かった。
昼休憩を終えるとまた召喚獣で飛び立った。
暫く飛んでいると少し寒気を感じた。ワイアットは北にあり、肌寒くて当然なのだがそこまで私は考えていなかった。夕焼けが終わり夜空に星が瞬き始め、セバスが今日はもうここで休憩しようと言い出した。
私達は道中の何も無い丘でテントを張ることにした。
夕食は干し肉とスープだ。大きな干し肉を半分に千切り、スープの中に入れてふやかす。残りの半分は普通に食べる。スープに入れると出汁が出て美味いし、肉も柔らかく食べやすくなる。テントは三つ張られ、男用、女用、私一人用となっていた。
外で食事を終えた私は、空間収納から毛布を全員分出して皆に渡した。
私の空間収納には色々な物が入っている。
この毛布も正しくは毛布ではない、以前アリアが天界に行っていた時に、コモンとキメラ狩りをしていた時にアイテムドロップで出たキメラの毛だ。何が役に立つか分からないので取っておくと、こうして役に立つ時が来る。
「この毛布は随分と肌触りが良くて暖かいですね~」
アーリンがそう言って頬をすりすりさせていた。
「まぁ、それがあれば皆暖かく寝れるだろう。皆明日も早い、早く寝るようにな」
私は食事を取ると早々にテントに戻り、皆のテントに結界を張ってから寝た。
北の領地から出発して、私達がメヌットに到着したのはアリアが攫われてから二日目の夜だった。
地図で見たよりも実際のメヌットは遠かった。これではもしかして、メヌットからワイアットの首都、イズミルまでは30分程度で着かないかもしれない。
メヌットには昼前には着くと思っていた、計算が狂って私は正直焦っている。
いくら男になっているとはいえ、あの可愛らしさだ。
ユリウスが男相手に変な気を起こすという事もありえる。
私だって彼女が男に変わってもさほど気にせず致せたのだからな……。
そんな状態はきっと彼女を傷つけるだろう。早く助けなくてはと気ばかり焦る。
「旦那様、宿が取れました!」
セバスが手を上げて走って来た。
メヌットは小さな町で人口が200人程度だ。宿はたったの三軒でワイアットの行き帰りの商人達で二件の宿屋が埋まっていた。最後の一軒だったのだ。
「さすがに二日続けて野宿は嫌だからな」
私が言うとみんな頷いていた。
昨夜は道中でテントを張って寝た。
「部屋は全部で三つ取りました。アーリン、リリー、サーシャは同じ部屋で。
アラン、エドアルド、私が同じ部屋です。そして旦那様は一人部屋です。ここから左に曲がった所の角にある【三匹の子豚亭】という宿屋です。今夜はもう遅いので食事を取り、明日の早朝から攻め込みましょう」
私達は宿へ行き、部屋に荷物を置いて食堂へ行った。
食堂には他の客が沢山いた。私達は空いている丸いテーブルに座った。椅子が一つ足りなくて店主に言うと店主の娘が椅子を持って来てくれた。
そのまま娘が注文を取り出す。
「じゃ、A定食四つとB定食三つだね? 飲み物は?」
「ビア七つで」
と私が言うと娘は元気に「はいよ!」と言って、カウンターの店主の所に行った。
「でよぅ! 笑えることにツアーリ様が連れてきた花嫁は男だったんだとさ!」
私はその一言を聞いて隣の男を見た。良い身なりをしていて金を持ってそうな印象だ。宮殿に出入りしてる御用商人らしき男と、その男と取引をしている商人らしき男の会話だった。
「で、ツアーリ様はその攫った男の子を返したんですか?」
「間違って攫ったなら、普通返すだろう? それが、そのままそこに置いてるんだぜ? ツアーリ様は男色家だったのかも知れん! どうりで後宮があるのに、いつまでたっても子が産まれないはずだよ!」
私はその言葉を聞いて眩暈がした。
「……ユリウスが男色家だと……!?」
それではリアが危ないじゃないか! 早く助けに行かねば……!
私はテーブルに手をつき立ち上がった。
「まさか今から一人で行くおつもりじゃないでしょうね?」
セバスが私の手首を掴んで引き止めた。
「私が思うに…ユリウス様は男色家では無いと思いますけどね…」
エドアルドが顎に手をやりながら言う。
それに続いてアランも言った。
「あの男はどう見ても女好きだろ? 俺と同じ匂いは感じなかったぞ?」
アランがそう言ったので少し安心して椅子に座りなおした。
「そうですよね~男色家ならもっと雰囲気があるんです! 独特の!」
サーシャが何故か瞳をきらきらさせて話しだした。
私達は食事を終え部屋に戻った。
明日は朝食を7の刻に取ってから、すぐ首都イズミルを目指す事となった。
私は服ごとアクアウォッシュをしてから寝巻きに着替えた。
そして寝台にごろりと横になった。
アリアが居ないのは天界へ行って以来だ。やはり一人眠るのは寂しい。
左腕を広げるがそこに彼女はいない。
リアが居なくなってから私の指輪の警報が何回か鳴った。
彼女の鼓動に異常が起きてるということだ。
心配で堪らない……。
今頃リアは心細く怖い目に合っているんじゃないか……?
それを思うと胸が痛む。
ユリウスめ……八つ裂きにしても足りない!
彼女に何かあったら……絶対許さん!
その夜、私は中々眠りにつけなかった。
「おはようございます旦那様、起きて下さい!」
セバスが部屋に押しかけて私を引っ張り起こした。
「昨日の旦那様の様子ですと、眠れて居ないかと思い起こしに参りました」
セバスはフッと笑った。
「本日は姫様奪還の日ですよ? そんな状態では困ります。…大丈夫ですか?」
「うむ、大丈夫だ。焼け野原にしてやる!」
「それはやり過ぎです! 私達の最重要目的は【姫様奪還】ですからね? それだけはお忘れなく?」
「……はいはい」
私はセバスの説教にうんざりして適当に返答した。師団の戦闘服に着替え、洗面所で顔を洗った。やはり冷たい水で顔を洗うと目が覚める。
そして食堂に行った。皆既に来ていて、キリッとした顔つきでいる。
朝食は好きな物を皿に盛るシステムらしく、皆料理のある所にトレーを持って並んでいた。私も並んで料理を取ってきた。
このシステムは面白い。こんな安宿など泊まった事が無いから何気に楽しんでいる。
ここは料理も美味い。昨夜のA定食も美味かった。
皆で食事をしたあと、荷物を持ち外に出る。精算は金を渡してセバスがやった。
私達は宿の裏にある草むらで召喚獣を出した。
「さぁ、行くぞ! イズミルへ!」
私の召喚獣を先頭に、皆が空へ舞い上がった。
私は天空に描く魔方陣を今から描き溜めていた。
ユリウスよ、私の大事な宝を奪った報いは……必ず受けてもらう!
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