貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました

峯松めだか(旧かぐつち)

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第182話 アオバの勇気

「ちょっとお手を拝借」
「ん? どぞ?」
 ご飯の後、のんびりとお茶を飲んでいる翡翠さんに一声かけると、何の気無しに手を出してくれたので、その手を掴み、症状を見る。
 肌艶、皮脂の分泌、爪の状態、兎に角健康状態の何やらかにやらと、特に問題無しと。
 後はこっち……
 左手を相手の手首に沿え、右手を首に沿える。
 とくん とくん
 落ち着いた鼓動が聞こえる。
 特に目立った違和感は感じない。
 同時に口元や首元、見えて居る皮膚は、健康診断には大事な見所だ。
 私の知識は医師免許までは行かないので、若干漏れるが、そこら辺はツブリとか、トキ婆様辺りがどうにかしてくれる筈だ。
 あくまで日常の栄養補給で献立とか、漢方的なアレコレを見る程度なのだが……
 今の時点では問題無さそうだ。
 最初からコレやっとけばよかった。
 最初の風邪とか、先回りして葛根湯とかで潰せて居れば。もっと有用な所をアピールできたのにとか、そんな今更な事を……
 ふう……
 思わず、内心でため息をついた。

「どんなもんでしょ?」
 声に反応して、顔を上げる。
 優し気に微笑むその顔と目が合った。
「あ………」
 今度は変な声が出た。
 この距離感は思ったより近かったと言う、そんな当たり前な事を、今更気が付いた。
 顔が熱くなる、きっと外から見ても紅い事だろう、コレは恥ずかしい。
 今度はどくどくと心音が跳ねる。
 こっちは自分のだ、相手のじゃない。
 スマートウォッチとかのデバイス付けてたら、不整脈を検出しましたとか、そんな変な事を言われそうな、そんな跳ね方。
 瞳が思ったより澄んでる事とか、睫毛がちょっと長い事とか、目が合った時、そのまま見てくれることとか……
 そんなアレコレが一瞬で分からせにかかって来る、多分そんな事は翡翠さん的には意識もしていない事だと思う。
 こっちが勝手に壁打ちで何か敗けそうって成ってるだけだ。
「健康状態とかは、問題無さそうです……けど……」
「けど?」
 この鼓動とかを聴かせた方が話が早いだろうか?
 流れ的に、このまま抱き着いて?
 この手を胸元に導いて?
 ……
 …………
 いや、もっと可愛いのとか!
 雰囲気とか!
 何か良いの!
 一人で内心パニックになる。
 あーもう! ついでに五月蠅い! 外野!
 視界の隅で、今だやれ、やっちまえと、無言でわいきゃいしている面々が、さっきから刻一刻と増えて行く。
 人の恋バナとか大好物な奴らなので、後で弄られるのは確定だ。

 思わず、目をつぶって虚空を見上げて、深呼吸して精神を落ち着かせる。
 キッと目を開けて、翡翠さんと目を合わせる。
「抱いて下さい!」
 あれ?
 何か変なのが出た。
 皆が動きを止め、変な空気が流れる。
 キョトンとした顔で、パチクリと瞬きをする。
 何言ってんだ私?!
 先程より、さらに顔が赤くなる、耳まで熱い。
 最終目標それにしても、初手それは何か違うじゃないか?!
 と言うか滑った感が!
 いたたまれないんですが!
 思わず顔を背けた。

「はい、喜んで」
 ちょっぴり笑ってそうな、そんな声色の返事が聞こえて。
 ふわっと抱きしめられた。
 こっちは座って居たので、胸元に顔を埋める形に成った。
 視界が無防備な浴衣と、その奥の肌色とかで埋まった。

「まあ、色々騒がしいですけど、落ち着いて下さいな?」
 直ぐ近くから、そんな声が聞こえる。
 とん とん とん とん
 背中とか首筋とか、後頭部とか、ゆっくり叩くように撫でられる。
 いやこれ、子供あやすヤツ!
 子供っぽいかもだけど!
 背低いかもだけど!
 コレでも年齢的にハチクマより上だし、スズメより身長有るんだぞと。
 内心でそんな脱線しつつ、深呼吸して落ち着けようとする。
 良い匂いするんですけど……
 新しい汗の匂いとか、凄いうっとりするんですけど!
「良いの思いつくまで、こうしてます?」
 そんな言葉を聞きながら、頷くように、思わずぐりぐりと顔と頭を擦り付ける。
 お化粧とか落ちるから止めれとか言われそうだが、私は料理人なので、お化粧は基本禁止で、スキンケアも毎日の温泉と、寝る前のヘチマ水とワセリン位であるので、大丈夫だ。
 そんなこんなで……

 もぞ……
 もう大丈夫と、ちゃっかり抱き着いて居た手を離す、ソレに合わせて手が緩んだので、もぞもぞと位置を直す。
 目線を合わせる。
「これからもずーっと、私の料理、食べてくれませんか?」
 コレが精一杯考えた口説き文句だった。
「はい、喜んで」
 翡翠さんが、くすりと笑う。
「と言うか、毎日、毎食、美味しいご飯、ありがとうございます」
 料理人としては最大の賛辞に、思わずにやける。
 ん? あれ? 近?

 ちゅ……

 唇が重なった。


 一段落してから、目いっぱい集まって居た姉妹達に、祝福と称して、それはもうもみくちゃにされたのは、言うまでも無いオチだった。


 追申
 そんな感じに、アオバさん無事一段落です。
 外に出て、しっかりと世間の荒波に揉まれてきた組のオジロやハクト、ルリとかは大人として色々強いですが、地元に残った組のミサゴ、スズメ、アオバは若干子供っぽく、打たれ弱いです。
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