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2章 いちゃつく坊主の冒険者
動く骨
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指を鳴らし、九字切りの結界を収める。
ゾンビの腐った肉が無くなっただけでも、だいぶ安心感がある。腐った肉や体液、液状化したその他の汁にはあらゆる疫病が詰まっている、腐った肉の鎧が無く、返り血ならぬ返り汁での感染症を気にすることもない。
清潔な骨なら叩き折れば良いだけである。
刃こぼれを気にせず振り回せる鉄の棒はかなり重宝した、これならハンマーも買って置けばよかったかもしれない。
動き回る骨はどうやらこちらを認識しているようだ、目の部分は空洞なのだが。恐らく骨に纏わり付いている黒い物が本体でそっちが認識しているのだろうが、目ではなく匂いとか温度感覚なのだろうか?
腐った肉と皮の鎧が無くなった骨はデッドウエイトが無くなった分早くなったが、咄嗟に攻撃を避けるハイエナや、集団で罠を使って襲ってくるゴブリン、武器を扱うゴブリンキングとは違い、純粋に近づいて飛び掛かって来るだけの単純な動きは読み易い。
「ナウマクサンマンダ・バサラダンカン!」
不動明王の真言の力も借りて骨を砕いて行く。
骨だけゾンビ、(肉が無いので最早スケルトンで良いかも知れないが)各部分が折れるとバランスを崩すが、関節が残っているとその部分だけでも動くらしく、放っておくと変な所から攻撃が来る。黒い部分を攻撃、切断してみるが、どうやら切れても死ぬわけではないらしい、切断時にビクンビクンとのたうち回っているようだが、プラナリアのような生き物なのだろうか?
段々と使える関節が減り、つま先やら指先やら何やらが無くなり、動きが鈍くなってきた。
「生麦大豆・二升五号!(なまむぎだいずにしょうごんごう)」
いつの間にか灯とエリスが近くに戻って来ていた。
灯が杖で生麦大豆と唱えながら細かくなった部分を潰して歩いている。
教えた覚えは無いが、聞き覚えのある小話の経文だ。
空海の御法号【南無大師遍照金剛なむだいしへんじょうこんごう】が訛った物だが、信じて唱えれば効果はあるらしい、この世界でも大丈夫か・・
「ナウマクサンマンダ・バサラダンカン!」
大きめの骨の塊を力いっぱい砕く。何だかんだで灯が細かい物を砕いてくれるので手が空いた。
エリスが近くに来る。
「ゾンビの中身の骨蛭は燃やさないと死なないんです。油出してください。」
「ノウボウ アキャシャ ギャラバヤ オン アリキャ マリ ボリ ソワカ」
虚空の蔵から靴屋で貰った手入れ用の油の瓶を取り出す、エリスに渡すと、枝に端切れを巻いて松明を作り、魔法で着火、先ほどの黒い生き物に押し付けて燃やして歩いていく、どうやら切断される分には死ななくても、熱には弱く燃えやすいらしい。次から次へと消し炭になっていく。
残っていた大きめの塊を俺が砕き、小さめの物を灯が念入りにつぶし、エリスが骨蛭の部分に松明で火をつける。ルーチンワークが完成し、いつの間にか動き回る骨も張り付いている骨蛭も燃え尽きて無くなった。
「これで全部?」
「大体見える分には済みましたけど、残ってると危ないんで見回りましょう。」
「そだね。」
三人で松明を掲げて残骸を燃やして回る、やはり見落とし個所はあったようで結構な数を燃やした。
「結局これって何だったんだ?」
改めて休憩しつつエリスに聞く。
「死体が動くのがゾンビですけど、ゾンビの中身に骨蛭って言う、黒い生き物が骨の周りに張り付いてるんです、宿主は死体で、生きてる物には取り付けません、この骨蛭が死体の骨に張り付いて筋肉の代わりに伸縮するので動けるらしいです。」
「またすごいとんでも生物だな・・・」
寄生虫にしてもやたらと高度だ。
「いくら切っても増えるだけで、燃やすか乾燥させないと死なないって聞いてました。」
「なるほど・・」
「実物見るのは初めてですけど、色々聞いておくもんですね・・・」
「知識は武器で財産だってこういう事ですね。」
灯がしみじみと呟く。
「覚えておくもんだな。」
「それで、一匹が死体を乗っ取って動くようになると、周囲の生き物に襲い掛かって殺すと、それで程よく腐った所で宿主の肉を食って増えた分が中に入ってまた増えるってサイクルで増えて行くらしいです。」
「今回はそれの中にドラゴンが居て、よりにもよって水源で仲間を増やすのに狩りをしていたと・・・」
「そういう事だと思いますけど・・・」
「出来過ぎですよねえ・・・」
三人そろってしみじみと呟く。
「実際に遭ったんだから遭った訳だけど。信じてもらえるか?」
「そのまま報告してみて義父さんの反応次第ですね・・・」
「そだな・・」
「摩訶般若波羅蜜多心経 観自在菩薩行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識亦復如是。舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。是故空中。無色無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。無眼界。乃至無意識界。無無明。亦無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。無苦集滅道。無智亦無得。以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罜礙。無罜礙故。無有恐怖。遠離一切顛倒夢想。究竟涅槃。三世諸仏。依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。故知。般若波羅蜜多。是大神呪。是大明呪。是無上呪。是無等等呪。能除一切苦。真実不虚故。説般若波羅蜜多呪。即説呪曰。羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶。般若心経。」
もう一度改めて般若心経で浄化をかけ、水を汲んで試薬を垂らす、今度は紫色に変色する様な事も無く、無色透明なままだ。三人そろって安堵のため息を漏らす。
「これで依頼達成ですね。」
エリスが安心した様子で呟く。
「無事帰るまでがお仕事です。」
灯がお約束を言い出す。
「だが今日はここで野宿だな。」
そろそろ日が落ちる。
ゾンビの腐った肉が無くなっただけでも、だいぶ安心感がある。腐った肉や体液、液状化したその他の汁にはあらゆる疫病が詰まっている、腐った肉の鎧が無く、返り血ならぬ返り汁での感染症を気にすることもない。
清潔な骨なら叩き折れば良いだけである。
刃こぼれを気にせず振り回せる鉄の棒はかなり重宝した、これならハンマーも買って置けばよかったかもしれない。
動き回る骨はどうやらこちらを認識しているようだ、目の部分は空洞なのだが。恐らく骨に纏わり付いている黒い物が本体でそっちが認識しているのだろうが、目ではなく匂いとか温度感覚なのだろうか?
腐った肉と皮の鎧が無くなった骨はデッドウエイトが無くなった分早くなったが、咄嗟に攻撃を避けるハイエナや、集団で罠を使って襲ってくるゴブリン、武器を扱うゴブリンキングとは違い、純粋に近づいて飛び掛かって来るだけの単純な動きは読み易い。
「ナウマクサンマンダ・バサラダンカン!」
不動明王の真言の力も借りて骨を砕いて行く。
骨だけゾンビ、(肉が無いので最早スケルトンで良いかも知れないが)各部分が折れるとバランスを崩すが、関節が残っているとその部分だけでも動くらしく、放っておくと変な所から攻撃が来る。黒い部分を攻撃、切断してみるが、どうやら切れても死ぬわけではないらしい、切断時にビクンビクンとのたうち回っているようだが、プラナリアのような生き物なのだろうか?
段々と使える関節が減り、つま先やら指先やら何やらが無くなり、動きが鈍くなってきた。
「生麦大豆・二升五号!(なまむぎだいずにしょうごんごう)」
いつの間にか灯とエリスが近くに戻って来ていた。
灯が杖で生麦大豆と唱えながら細かくなった部分を潰して歩いている。
教えた覚えは無いが、聞き覚えのある小話の経文だ。
空海の御法号【南無大師遍照金剛なむだいしへんじょうこんごう】が訛った物だが、信じて唱えれば効果はあるらしい、この世界でも大丈夫か・・
「ナウマクサンマンダ・バサラダンカン!」
大きめの骨の塊を力いっぱい砕く。何だかんだで灯が細かい物を砕いてくれるので手が空いた。
エリスが近くに来る。
「ゾンビの中身の骨蛭は燃やさないと死なないんです。油出してください。」
「ノウボウ アキャシャ ギャラバヤ オン アリキャ マリ ボリ ソワカ」
虚空の蔵から靴屋で貰った手入れ用の油の瓶を取り出す、エリスに渡すと、枝に端切れを巻いて松明を作り、魔法で着火、先ほどの黒い生き物に押し付けて燃やして歩いていく、どうやら切断される分には死ななくても、熱には弱く燃えやすいらしい。次から次へと消し炭になっていく。
残っていた大きめの塊を俺が砕き、小さめの物を灯が念入りにつぶし、エリスが骨蛭の部分に松明で火をつける。ルーチンワークが完成し、いつの間にか動き回る骨も張り付いている骨蛭も燃え尽きて無くなった。
「これで全部?」
「大体見える分には済みましたけど、残ってると危ないんで見回りましょう。」
「そだね。」
三人で松明を掲げて残骸を燃やして回る、やはり見落とし個所はあったようで結構な数を燃やした。
「結局これって何だったんだ?」
改めて休憩しつつエリスに聞く。
「死体が動くのがゾンビですけど、ゾンビの中身に骨蛭って言う、黒い生き物が骨の周りに張り付いてるんです、宿主は死体で、生きてる物には取り付けません、この骨蛭が死体の骨に張り付いて筋肉の代わりに伸縮するので動けるらしいです。」
「またすごいとんでも生物だな・・・」
寄生虫にしてもやたらと高度だ。
「いくら切っても増えるだけで、燃やすか乾燥させないと死なないって聞いてました。」
「なるほど・・」
「実物見るのは初めてですけど、色々聞いておくもんですね・・・」
「知識は武器で財産だってこういう事ですね。」
灯がしみじみと呟く。
「覚えておくもんだな。」
「それで、一匹が死体を乗っ取って動くようになると、周囲の生き物に襲い掛かって殺すと、それで程よく腐った所で宿主の肉を食って増えた分が中に入ってまた増えるってサイクルで増えて行くらしいです。」
「今回はそれの中にドラゴンが居て、よりにもよって水源で仲間を増やすのに狩りをしていたと・・・」
「そういう事だと思いますけど・・・」
「出来過ぎですよねえ・・・」
三人そろってしみじみと呟く。
「実際に遭ったんだから遭った訳だけど。信じてもらえるか?」
「そのまま報告してみて義父さんの反応次第ですね・・・」
「そだな・・」
「摩訶般若波羅蜜多心経 観自在菩薩行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識亦復如是。舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。是故空中。無色無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。無眼界。乃至無意識界。無無明。亦無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。無苦集滅道。無智亦無得。以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罜礙。無罜礙故。無有恐怖。遠離一切顛倒夢想。究竟涅槃。三世諸仏。依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。故知。般若波羅蜜多。是大神呪。是大明呪。是無上呪。是無等等呪。能除一切苦。真実不虚故。説般若波羅蜜多呪。即説呪曰。羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶。般若心経。」
もう一度改めて般若心経で浄化をかけ、水を汲んで試薬を垂らす、今度は紫色に変色する様な事も無く、無色透明なままだ。三人そろって安堵のため息を漏らす。
「これで依頼達成ですね。」
エリスが安心した様子で呟く。
「無事帰るまでがお仕事です。」
灯がお約束を言い出す。
「だが今日はここで野宿だな。」
そろそろ日が落ちる。
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