異世界坊主の成り上がり

峯松めだか(旧かぐつち)

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3章 活躍する坊主

報告

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「今日はいつもの服じゃないんだな、と言うか俺のか?」

「ええ、泥だらけで着替えなかったので借りました。」

「まあ、しゃあないな、確かに昨日は泥だらけだった。」

 ギルマスも納得したようだ。あらためてこっちをしげしげと眺め。

「こうしてみると普通だな。」

 ギルマスがしみじみと呟いた。

「何で皆そんなリアクションを・・・」

 突っ込んでおく。

「何時もの服が珍しいんですよ。」

 と、エリス。

「私の服より目立ってましたよね?」

 灯が。

「確かにあの服は珍しかったですね。」

 神父さんまでもと、揃っていじられた。

 ついでにもう一人、議事録を取っているらしい職員の人が肩をぴくぴくさせていた、笑って良いですよ?



「まあ、和尚の服はこの際どうでも良いが、報告書と調書作るから話を頼む。」

 ギルマスに促されて改めて報告を始める。

「まず最初に沼の浄化からで?」

「ああ、順を追って頼む。」

 今回は書記の人もいるようだ。今回はギルマス聞き役に徹するらしい。

「まず沼に行って、この辺りで一度般若心経で範囲浄化を・・・」

 地図を指さしながら説明を始めた。



「・・・・と、言う流れで、ドラゴンゾンビ砕きながら、骨蛭を焼き殺した後で、水源浄化して帰ってきました。」

 一通り説明する頃には神父さんとギルマスは頭痛をこらえるように頭を抱えていた。

「まあ、なんだ、前回のゴブリン戦もアレだったが、今回は輪をかけてだな。」

「これ、このまま中央に出せます?」

 書記の人も困惑した様子で、書いた内容を改めて確認して欲しいという様子で、記録した紙をギルマスに見せている。

「まあ、これをそのまま出すかは後で決めよう。」

 取り合えず置いて置こうと言う様子で調書を横に置く。

「証拠と言うか、沼のサラマンダードラゴンとドラゴンゾンビの骨は回収できたか?」

 まあ、鵜呑みにするには無理やりらしい。純粋に見たいだけかもしれないが。

「ええ、骨は出せますが、サラマンダーはでかいので下で?」

「ああ、頼む。」



 万一見られると騒ぎに成ると言う事で、下の解体所の室内で取り出すことになった。

「ノウボウ アキャシャ ギャラバヤ オン アリキャ マリ ボリ ソワカ」

 虚空の蔵からサラマンダーとドラゴンゾンビの骨を取り出す。

「門での目撃報告と持ち込み量が違うと思ったらそういう事か。」

「御仏の加護です。」

「便利すぎるな、外で見せるんじゃねえぞ。」

 ギルマスは片手で頭を抱えるジェスチャーをしながら釘を指してきた。

「はい、出来る限り隠しますので、口止めお願いします。」

「職員には口止めしとくから、次からこっち入って出せよ?」

「はい。」

 灯とエリスも予想済みなようで、そりゃそうですよねえと言う顔をしている。

「それでこれか、ゾンビは見事に骨しか残ってないな、ドラゴン自体、現状相場が存在しないから、今は預かるだけで、売れたらって形になるが良いか?」

「俺たちが持ってても何にも使えませんので、お任せします。」

「よし、預かった。」

 さて、次はこれだとサラマンダーの死体を見る。

「何と言うか、普通の陸上サラマンダーなんだが、此処まででかいと別の生き物だな。」

「頭落ちでも生きてるのは普通ですか?」

「それ自体は普通だ、半分に割ってもしばらく生きてるぞ。」

 なるほどハンザキ。

「こいつの肉は結構うまいし、精力剤にもなるんだが、毒で汚染されてそうだから、浄化してみてくれないか?」

 それぐらいなら幾らでも。

 居住まいを正し、合掌して何時ものように唱え始めた。

「摩訶般若波羅蜜多心経 観自在菩薩行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識亦復如是。舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。是故空中。無色無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。無眼界。乃至無意識界。無無明。亦無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。無苦集滅道。無智亦無得。以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罜礙。無罜礙故。無有恐怖。遠離一切顛倒夢想。究竟涅槃。三世諸仏。依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。故知。般若波羅蜜多。是大神呪。是大明呪。是無上呪。是無等等呪。能除一切苦。真実不虚故。説般若波羅蜜多呪。即説呪曰。羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶。般若心経。」

 合掌を解いて目を開ける、さっきよりはマシになったんだろうか?

「独特の臭気も抜けてるようだな、下手すると腐った肉もどうにかなるかもしれん。」

 切り口に鼻を近づけて匂いを嗅いでいる、どうやら変な臭いはしないらしい。

「どうする?お土産に持って帰るか?」

「「是非とも。」」

 何でエリスと灯が乗り気で前のめりになる・・・

「どの程度浄化出来てるか怪しいから、毒見してからな・・・」

 ギルマスも保証はできないらしい、俺自身効果が怪しいので毒見は欲しい。



 ギルマスが小さく切り出した肉をぽちゃんと二つの水槽に沈める。わらわらと黒い生き物が沸いて出た。迷うことなく食べている。

「特別水が奇麗な地域にだけ住んでるオタマジャクシとエビだ、こいつらは何でも食べるんだが、毒物に敏感でな、変な毒が含まれてると直ぐ死ぬんだ。」

 問題無く全て食い尽くした黒い生物、オタマジャクシは悠々と泳いでいる。

 もう一つの水槽にはエビが同じようにわらわらと群がっている。今のところ大丈夫なようだ。

「見たところ大丈夫だな。」

「安心しました・・」

 真面目な顔で水槽を観察していたギルマスと神父さんが、ほうと息を吐く。

「同じようにお前らが来る前に、この水槽で川の汚れも確認したんだ。まだ問題の川の水入をれるとオタマジャクシが死ぬから、完全浄化とは行かないようだが、若干丈夫なエビが生存してるから十分浄化されたらしい。無事依頼達成だな。」

 俺と灯、エリスが、ほうと安堵のため息を付いた。



「依頼料の残り、金貨4枚だ。それと、サラマンダーの納品で、金貨4枚で良いか?」

 前回のイノシシより高い。ゴブリンキング討伐と同等?

「大分高いんですね?」

「無事毒が抜けてたからな、もし毒が抜けてなきゃただの肥料だ。むしろ土壌汚染付くから買い取り拒否も有りだ、ついでにお前らじゃなきゃ人が食われてた落ちが容易に想像できる。依頼を後付けで増やすより、ここで買い取りに色付けてた方が書類上楽だ。」

「なるほどお役所。」

「ギルドはお役所だからな。」

 ギルマスが笑った。

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