106 / 274
3章 活躍する坊主
第107話 エリザの出産 ギルマス視点
しおりを挟む
いよいよ自分の子供が生まれるのかと妻のエルザの手を握って居た、先にエリス達の子供、孫が生まれたので散々喜んだが、自分の正式な子供が生まれると言うのは感慨深いと言うか、今となっては何も考えられない、ただ時々うめき声を上げる妻の手を握りしめているだけだ。
先の娘二人、灯とエリスの時、和尚は本当に焦らず慌てず、落ち着いて手を握らせて、的確に産婆に指示を出していたらしいが、いざ自分の番に成ると、頭が真っ白になってしまい、全て任せることしか出来ない。
「そろそろ出口が全開で、出て来る頃何ですけど、未だかかるようですね。」
本当に、何をすれば良いのかわからない、こういう時には婿殿の和尚は如何するのだろう?
カンカンカンカン
今は聞きたく無かった半鐘の音が聞こえた。思わず顔を上げ、妻の手を放し部屋の外に飛び出した。
「何か有ったのか!?」
状況を確認しようと声を上げる。
「ゴブリンだー!群れが出たぞー!戦えるのは集まれー!」
外から声が響いている。聞くまでも無く、聞こえて来た、領主でギルマスである自分は行かなくてはいけない・・・
「私達で行きますから。お義父さんはここに居てください!」
義娘の灯が強く窘めて来る。そのまま部屋に戻るようにと押し込まれる。と言うか、灯の力が強い、自分に迷いが有るのは確かだが、有無を言わせ無い勢いと力強さがある、自分が実質片足なのを差し引いても、押し勝てそうな空気が無い。
「だが俺が出ないと責任者が居ない。大丈夫だ、子供は後でもちゃんと抱ける。」
責任者としての仕事はしなければいけないのだ、出産の立ち合いの重圧から逃げて居る訳では無い。
「ああ、もう!身代わり一個じゃ足りません!グロス単位で持って来て下さい!」
灯が叫び声を上げた。相変わらず、時々言って居る事が解らない。
「どれぐらいかかります?」
エリスが産婆に確認している。
「大体ほぼ全開まで開いてるけど。未だ破水してないから。まだしばらくは。」
専門家がしばらくかかると言って居る、今すぐ子供が抱けるとは思えない。
「開いてるんですね?すいません、割ります。」
婿殿、和尚が強い口調で割り込んだ。
「割るって?」
産婆が訝し気に繰り返す。
「多分、破水させれば出てきます。」
和尚が強く断定する。
「え?」
産婆が疑問符を浮かべる。どうやら、専門家でも意味が解らないらしいが、大丈夫だろうか?
「すいません、ちょっと痛みますけど、大丈夫ですか?信じてくれますか?」
真剣な顔で確認してくる、此処まで真剣な顔も珍しい。
「信じろと言うなら信じるが、何を?」
恐らく和尚の事だから信用は出来る筈だが、いったい何をするのだろう?
「無事・・生まれるなら・・・何でも・・・良いです・・・」
妻も、既に苦しそうな様子で子供を待ち焦がれている。
「では、すいません。切迫呼吸で、息を荒くしてください。」
妻は和尚の指示に従って息を荒くする。
和尚が妻の下半身を覗き込み、その場所に手を伸ばした。自分の視点では、何をしているのかは見えなかった。
「南無阿弥陀仏・・・」
小さく呟いたのが聞こえた。
「あぐっ。」
妻がうめき声を上げた。
「え?」
産婆が信じられないと言う様子の声を上げた。
「ああああああ!」
うめき声に続いて悲鳴が上がる、掴んで居た手が突然強く握りしめられる。
「後お願いします。こっちは祈ります。」
和尚は祈り始めた、相変わらず祈りの言葉の意味は分からないが、祈りの様子は鬼気迫ると言う感じで燐光を放っている。
「おぎゃああ。」
無事生まれた。男の子だった。産婆が手際良く後処理を始める。
無事生まれたのだから、もう出番は無いだろう、早く行かなくては・・・
「先に行ってます、義父上はコレ持ってて、落ち着いたらエリスと一緒にギルドに来てください。」
和尚に出ばなを挫かれる、袋の中には大量に木製の像が詰まって居る、そう言えば孫たちが生まれる前に和尚達が大量に削って居たなと思い出す。今渡される意味は分からないが・・・
どうやら、任せて良いから、落ち着いてから来いと言いたいらしい、其処までお膳立てされては、甘えないのも失礼か、しょうがない、お言葉に甘えるとしよう。
「ぬーさん、此処お願いしますね。」
「にゃあ。」
部屋の外で猫、ぬーさんに灯が指示を出している、何と言うか猫の手を借りたいと言うが、本当に借りるんだな。
娘たち、灯とエリスが孫たち、光とイリスを出産部屋に運んで来た。
「エリスちゃんはお義父さんの護衛お願いします。先に私達だけで行ってきます。」
娘たちが作戦会議をしている、と言うか、いつの間にか娘のエリスに護衛される立場になったのか、お義父さんは模擬戦なら未だ現役だぞ、歩くのは遅くて走れないが・・・
「はい。」
エリスはその指示で納得した様子だ、何時も婿殿と一緒に居る事を第一条件にしている娘にしては珍しい。
「和尚さん、決戦装備でお願いします。」
和尚が空間収納から戦斧と長巻を取り出し、灯とエリスにそれぞれ渡している、と言うか、その武器はまともに振れる物なのかと不安になるが、二人共危なげ無く受け取って居る、少し見ない内に強くなったらしい。
「これでフラグ回収です。」
相変わらず、灯の言う事は良く分からないが、笑顔を浮かべているので悪い意味では無いのだろう。
「それじゃあ、先に行ってます、のんびり来てください。」
そう言って二人は出て行った、こういう時はお言葉に甘えて良いのだろうか?
「取り合えず、抱きます?」
産婆が産湯に付け、御包みで包んだ子供を差し出して来る。思わず手を伸ばした。
「やっと逢えたな、お父さんだぞ。」
最初の一言を直前まで色々と考えていたが、口を付いて出たのは、そんな一言だった。
妻とエリスに笑われた気もするが、良いじゃないか、これぐらいしか思い浮かばなかったんだ。
先の娘二人、灯とエリスの時、和尚は本当に焦らず慌てず、落ち着いて手を握らせて、的確に産婆に指示を出していたらしいが、いざ自分の番に成ると、頭が真っ白になってしまい、全て任せることしか出来ない。
「そろそろ出口が全開で、出て来る頃何ですけど、未だかかるようですね。」
本当に、何をすれば良いのかわからない、こういう時には婿殿の和尚は如何するのだろう?
カンカンカンカン
今は聞きたく無かった半鐘の音が聞こえた。思わず顔を上げ、妻の手を放し部屋の外に飛び出した。
「何か有ったのか!?」
状況を確認しようと声を上げる。
「ゴブリンだー!群れが出たぞー!戦えるのは集まれー!」
外から声が響いている。聞くまでも無く、聞こえて来た、領主でギルマスである自分は行かなくてはいけない・・・
「私達で行きますから。お義父さんはここに居てください!」
義娘の灯が強く窘めて来る。そのまま部屋に戻るようにと押し込まれる。と言うか、灯の力が強い、自分に迷いが有るのは確かだが、有無を言わせ無い勢いと力強さがある、自分が実質片足なのを差し引いても、押し勝てそうな空気が無い。
「だが俺が出ないと責任者が居ない。大丈夫だ、子供は後でもちゃんと抱ける。」
責任者としての仕事はしなければいけないのだ、出産の立ち合いの重圧から逃げて居る訳では無い。
「ああ、もう!身代わり一個じゃ足りません!グロス単位で持って来て下さい!」
灯が叫び声を上げた。相変わらず、時々言って居る事が解らない。
「どれぐらいかかります?」
エリスが産婆に確認している。
「大体ほぼ全開まで開いてるけど。未だ破水してないから。まだしばらくは。」
専門家がしばらくかかると言って居る、今すぐ子供が抱けるとは思えない。
「開いてるんですね?すいません、割ります。」
婿殿、和尚が強い口調で割り込んだ。
「割るって?」
産婆が訝し気に繰り返す。
「多分、破水させれば出てきます。」
和尚が強く断定する。
「え?」
産婆が疑問符を浮かべる。どうやら、専門家でも意味が解らないらしいが、大丈夫だろうか?
「すいません、ちょっと痛みますけど、大丈夫ですか?信じてくれますか?」
真剣な顔で確認してくる、此処まで真剣な顔も珍しい。
「信じろと言うなら信じるが、何を?」
恐らく和尚の事だから信用は出来る筈だが、いったい何をするのだろう?
「無事・・生まれるなら・・・何でも・・・良いです・・・」
妻も、既に苦しそうな様子で子供を待ち焦がれている。
「では、すいません。切迫呼吸で、息を荒くしてください。」
妻は和尚の指示に従って息を荒くする。
和尚が妻の下半身を覗き込み、その場所に手を伸ばした。自分の視点では、何をしているのかは見えなかった。
「南無阿弥陀仏・・・」
小さく呟いたのが聞こえた。
「あぐっ。」
妻がうめき声を上げた。
「え?」
産婆が信じられないと言う様子の声を上げた。
「ああああああ!」
うめき声に続いて悲鳴が上がる、掴んで居た手が突然強く握りしめられる。
「後お願いします。こっちは祈ります。」
和尚は祈り始めた、相変わらず祈りの言葉の意味は分からないが、祈りの様子は鬼気迫ると言う感じで燐光を放っている。
「おぎゃああ。」
無事生まれた。男の子だった。産婆が手際良く後処理を始める。
無事生まれたのだから、もう出番は無いだろう、早く行かなくては・・・
「先に行ってます、義父上はコレ持ってて、落ち着いたらエリスと一緒にギルドに来てください。」
和尚に出ばなを挫かれる、袋の中には大量に木製の像が詰まって居る、そう言えば孫たちが生まれる前に和尚達が大量に削って居たなと思い出す。今渡される意味は分からないが・・・
どうやら、任せて良いから、落ち着いてから来いと言いたいらしい、其処までお膳立てされては、甘えないのも失礼か、しょうがない、お言葉に甘えるとしよう。
「ぬーさん、此処お願いしますね。」
「にゃあ。」
部屋の外で猫、ぬーさんに灯が指示を出している、何と言うか猫の手を借りたいと言うが、本当に借りるんだな。
娘たち、灯とエリスが孫たち、光とイリスを出産部屋に運んで来た。
「エリスちゃんはお義父さんの護衛お願いします。先に私達だけで行ってきます。」
娘たちが作戦会議をしている、と言うか、いつの間にか娘のエリスに護衛される立場になったのか、お義父さんは模擬戦なら未だ現役だぞ、歩くのは遅くて走れないが・・・
「はい。」
エリスはその指示で納得した様子だ、何時も婿殿と一緒に居る事を第一条件にしている娘にしては珍しい。
「和尚さん、決戦装備でお願いします。」
和尚が空間収納から戦斧と長巻を取り出し、灯とエリスにそれぞれ渡している、と言うか、その武器はまともに振れる物なのかと不安になるが、二人共危なげ無く受け取って居る、少し見ない内に強くなったらしい。
「これでフラグ回収です。」
相変わらず、灯の言う事は良く分からないが、笑顔を浮かべているので悪い意味では無いのだろう。
「それじゃあ、先に行ってます、のんびり来てください。」
そう言って二人は出て行った、こういう時はお言葉に甘えて良いのだろうか?
「取り合えず、抱きます?」
産婆が産湯に付け、御包みで包んだ子供を差し出して来る。思わず手を伸ばした。
「やっと逢えたな、お父さんだぞ。」
最初の一言を直前まで色々と考えていたが、口を付いて出たのは、そんな一言だった。
妻とエリスに笑われた気もするが、良いじゃないか、これぐらいしか思い浮かばなかったんだ。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】
kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。
※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。
『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。
※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
構造理解で始めるゼロからの文明開拓
TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。
適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。
だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――!
――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる