異世界坊主の成り上がり

峯松めだか(旧かぐつち)

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3章 活躍する坊主

第111話 モブ冒険者と珍しい武器  時系列 前回の馬鹿登場前

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「本気で、何時に成ったら終わるんだ?!」
「知らん!」
 思わず誰宛と言う訳でもなく、叫んだ所で、隣で弓を弾いて居た先輩冒険者が叫び返して来た。
「あ、すいません。」
 思わず驚き、謝る。
「気にするな、この場合の叫びに意味は無い。」
 先輩冒険者は薄い笑いを浮かべ、そのまま矢を射る。
 一目で分かる程度に、下はゴブリンで埋まって居る、地平線の向こう迄居そうな群れにうんざりする。
 何時もなら弓の在庫を気にして、出来るだけ節約するためにここぞと言う時以外では近接武器をメインに使うと言う、悲しい弓士が、緊急時のギルドの大盤振る舞いだと、武器と弓矢の補給をギルド持ちだと、大風呂敷を広げられて、最初は大喜びだったのだが、流石に疲れがたまって来た。
 魔の森と村の境界に作られた防衛線の巨大防壁の上から延々と押し寄せるゴブリン相手にひたすら弓を撃ち続けていたが、好い加減、既に弓を弾く握力すらない。
「いったん休め、下がって広場の通りで炊き出しやってる、食べて一眠りして、回復したら戻って来い。」
「はい、すいません、下がります。」

 一旦下がって休憩させてもらう。
 手っ取り早く補給できるようにと、汁物とパンをもらい、汁物に沈めて纏めて掻き込む。こういう時に炊き出しで温かい物が食えると言うのはありがたい。
 そうしていると武器屋の親父とギルド職員が大量の武器を荷車に乗せて運んで来た。
「あれは?」
「ギルマスの厚意で、大盤振る舞いだ!借用書だけで貸してやる!」
 武器屋の親父が大声で宣言した、あの武器屋の親父が扱う武器の性能は評判が良い、その分高いが、安い物は本気で安物の上、値切る毎に質が下がるので、やはり高くて手が出せないのだ。
 タダじゃないのか・・・
 思わず落胆した様子で呟く周囲に、気にする様子も無く武器屋の親父が続ける。
「うちの武器で活躍した奴にはタダでくれてやる!自信があったら持っていけ!」
 とんでもない台詞が出て来た。周囲の冒険者の目付きが変わる。
 あっという間に人だかりで埋まってしまった。
 出遅れてしまった自分の分は残っているだろうか?
 それにしても眠い・・・

 食事を終え、目をつぶって少しだけ休憩。意識は一瞬で無くなった。
 目を開け、少し人が減ったのを見計らって、武器の残りを見に行った。
「これは?」
 見覚えの無い、弓の先に滑車の付いた変な形の弓を見つけた。
「おう、現在活躍中の和尚提案の新作だ、出来は弾いてみりゃ分かる。」
 お言葉に甘えて構えて弾いて見る。
「?」
 弾き始めの感触より、弾ききった時の感触が軽い。
「この弓は弱いのか?」
 思わずそんな言葉が出た。
「いんや、アンタが今持ってる、その弓より強いぞ?」
「こんな軽いのに?」
「滑車を使ったテコの原理だとさ、作った俺にも分からんが、実際強いんだから困る。コンパウンドボウとか言うそうだが。」
「じゃあ、これを、後払いで。支払いは待ってもらっても?」
 此処の武器屋は結局高いし、駆け出し冒険者の自分が払えるとは思えないし、これがタダで貰えるほど夢を見ちゃいない。
「名前だけ書いてけ、活躍ぶりは後で確認する。」
 武器屋の親父は気にする様子も無く名前確認用の借用書の束とペンを出して来る。
 震える手で名前を書き込んだ、さあ、稼がなくては・・・

 結果として、体感半分の力で何時もの出力が出せるこの弓にはかなり助けられ、其れなりの成果を上げた。
 これでタダにあるほどの活躍をできただろうか?

 武器屋視点
 まあ、無事に使い手は見つかったか。
 幾ら強いのに軽くて使い易いと言っても、弓に丸い滑車、玩具の様にも見える。下手すると壊れやすそうで、見覚えの無い異質な新しい武器と言う物は、生死をかける冒険者の間では倦厭される為、こう言った場所では残って居たのだ、幾ら活躍している和尚のアイディアで作った物だと言っても、そもそも和尚が弓矢を使ったと言う話は聞かない、槍と棒と剣、小刀の投擲だけで暴れ回って居る為、畑違いだろうと言う事で箔付けには弱かったのだ。
 和尚曰く「滑車が2つ付いて居るだけで引き代は倍に成るが、同じ力で引ける分なら威力が倍に成る、構造と理屈が理解出来れば、更に滑車を増やせる、でも増やし過ぎると壊れやすくなるから、後は貴方の技術次第。」
 まったく新しい試みだったため、手間がかかっている、手間賃も考えると、普通に店に出しては高いと文句を言われていた、こういう時に代金ギルド持ちで不良在庫も一掃出来ると考えればめっけものだ。
 当然だが、この武器を持ち逃げされても最終的に補填されるので痛くも痒くも無い。
 活躍を見ると言ったのは方便だ、タダで持ち逃げされては流石に勿体無い。
 後は彼奴がアレを使った活躍でしっかりと宣伝できるかの勝負だ、
 それと、防衛組が無事、今回の群れを乗り越えられるかの勝負に成る、いざと言う時は引退組の自分も戦う事に成るだろう、前回よりも下準備は出来ていたし、和尚も居る、それほど心配はしていないが・・・・
 そんな事を考えていたら、人がごった返した通りを、華美に飾られた馬車が通り過ぎて行った、何だありゃ?
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