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6章 変な石とその後の話
第216話 偽の薬と人体実験
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「良く飲ませられましたね?」
神父さんに薬を飲ませた後、部屋から出て、暫く離れた所で和尚さんが感心した様子で呟いた。
「薬を飲もうとしない相手に呑ませることには慣れてますから」
苦笑を浮かべつつ返す。実際、私が今まで相手して来た御貴族様達は薬を嫌がる子供じみた者から、本気で子供までいっぱい居るのだ、産婆の仕事対象が子供と言うのがまあアレなのだが、月の物が来ていれば良くも悪くも出来てしまうと言うか授かってしまうので、最終的に私の仕事と成る、身体の成熟段階の問題から通常分娩は物理的に無理な段階で生まれるとあっては、無理やりにでも薬で眠らせてお腹を割る事に成るので、こういった無理矢理飲み込ませる作業は慣れた物だ。
「成程、色々有りそうだ」
和尚さんは私が一瞬遠い目をした事から、色々察したらしい。
「でも、薬何て良くありましたね?」
先程あった時の説明とは矛盾するのだが・・・
「当然ですが、偽薬(ぎやく)、偽薬(にせぐすり)です、今回は砂糖粒ですね」
当然の疑問だと言う様子でさらっと答えてくれる、やはり予想通りだった。
期待通りの期待外れで少し残念に思う。
ん?
「今回は?」
次があると?
「次回はダメ元の通常抗生物質で、ペニシリンですね」
和尚さんの手元にまた別の瓶が握られていた、硝子らしい透明な瓶の中に収められている透明な液体が揺れる。
「何で最初に使わないんですか?」
一瞬納得しかけて首を捻る。
「私の故郷では病は気からと言う言葉が有ります、薬の様な物を摂取した時点で想像以上に薬の様な物を摂取した結果とした反応が出るんです、さっき使った偽薬で何故か治った例と、病でも無いのに死にかけた例が存在します」
「毒薬では無いんですよね?」
「ええ、この通りです」
今度は先程神父様に呑ませた白い粒を取り出すと、躊躇もせず自分の口に放り込んだ。
「試しにどうぞ?」
どうぞと此方にも促される、其の手には白い粒が乗っていた。
恐る恐る手に取り、口に入れる。
甘い味が口の中に広がり、白い粒はあっという間に溶けて無くなった、何と言うか、甘さが疲れた体に沁みわたる。
「甘いですね・・・・」
不意打ちの甘さに口元が緩みそうになりながら呆然と呟く、確かに砂糖粒だった。
「初対面の怪しい人物が、怪しい薬のような物を、怪しい呪文を唱えながら強引に飲ませるんです、それこそ何かありそうですからね?」
確かに、あれ程の剣幕で放り込まれたのなら、いかにも効きそうだが・・・
「当然、本人の気の持ち様でどうにか成る範囲に限りますので、あまり期待は出来ません」
偽なのだからそもそも効果が出ては困ると小さく呟いた気がする。
いきなり胡散臭く感じて来た。
「胡散臭いでしょう?」
表情に出て居たのか、先回りされる。
「いえ、そんな事は・・・」
「良いんです、盲目的に信じられても困ります、私の所の教祖、お釈迦様も私を疑えって言ってましたから」
「疑われるんですか?」
そう言った、神に対する疑問だとかはあまり考えてはいけないと怒られる物なのだが・・・
「真理、現実と言う物は疑おうと拒否しようと存在します、疑わしいからと言って投げ捨てられても困りますが、全ておっしゃる通り、貴方の事を全て信じます、だから私は考えませんでは困るので」
「成程?」
確かに自主性が無い者では困るのは確かだ。
「明らかに道理が通らないとかの奇行が見えたら怒ってくれて良いです」
「・・・怒りませんか?」
「今の所怒る要素在りませんから大丈夫です」
「では何で効果が出ては困ると?」
根本的なモノだ。
「今回は特効薬の製造も依頼の内です、私が与えた場合にのみ、砂糖粒で病気が治るでは其れは薬じゃありません」
「其れは奇跡とかそんな物では?」
胡散臭いを通り越した神とか聖人の類の奇跡だ、建国神話と同列に成ってしまう。
「そう言う事です、薬なら、誰が作っても・・・は言い過ぎにしても。誰が使っても同じ効果が出来る物じゃ無いと問題が有りますし、砂糖粒を飲んだ患者が治った、だからこの病気の特効薬は砂糖粒では違うのです」
「治れば良いのでは?」
段々と混乱して来た、理屈は有るらしいが。
「この場で治るだけでは次の薬が作れません、極論、此処では砂糖粒を飲んだだけで治っても、隣の村では同じことをして全滅では意味が無いし、逆もあり得ます」
「何と言うか、そう成ると難しいですね・・・」
思わず生返事だ、難しいと言う事しか分からない。
「昨日まで元気のよかったタダの風邪ひき患者に、砂糖水を与えて寝せて置けば次の日にはケロっと回復して居るでしょう?」
「其れはそうですね?」
タダの風邪なら薬も何も要らない。最低限水と栄養を与えて寝せて置けば良いだけだ、だから砂糖水は栄養食としてとても都合が良い。
「じゃあ砂糖水は特効薬ですか?」
「そんな訳無いですね」
大分噛み砕いてくれたらしい。
「放っておいても治る物に薬らしい物を飲ませて治ったから薬が効いたは違います、極論何万人単位で飲ませると飲ませないでやらなきゃならない訳ですけど・・・」
「其れでは・・・・」
其れでは見殺しを大量に作る事に成ってしまう。
「でも最低限効いたかどうかと副作用を見る為に、接種と経過観察を時間差でやって行かなきゃいけないと言う訳で、こうなります、其れと薬の製造は現在進行形でコレ、EXだけが頼りで、生産数的に間に合うか勝負ですから、出来るまでは看病しながら違う薬も試しつつ色々見る訳ですね」
「分かりました、全て分かったとは行きませんが、お付き合いします」
どうせ私達のできる事は先程までと変わらないのだから、腹をくくる事にする。
「はい、お願いします」
改めて協力すると言う意思表示として握手を交わした、肩書き貴族にしては、がっしりとした力強い手だった。
少し経って神父様の様子を見ると、飲ませる前より大分血色が良くなっていた。
「ああ、そもそも食が細くなっているので栄養補給として丁度良かったわけですね」
和尚さんは素直に納得していた。
追伸
致死率50%とかの病気に何かが特効薬だと騒いだ医者の所では、2人余計に助かったからコレが特効薬と大々的に発表しましたが、実際に使って見ると効果も何も全く変わらなかった、所謂有意差が出なかったと言う事も有ります、最終的に実験の母数が物を言います。
現実世界、現代だと治験でひたすらコレをやるので時間と金がかかってしょうが有りません、最近流行病のお陰で治験やら手続きがある程度すっ飛ばせるようになったおかげで製薬業界が活気付くのを願うばかりです。
治験は第Ⅰ相から第Ⅲ相まであって、第Ⅰ相前が動物で死ななきゃOK、第Ⅰ相で人に使って無事ならOK、第Ⅱ相で量を増やしても副作用大丈夫ならOK、第Ⅲ相で薬の効果として有意差を示せなので、実はただの生理食塩水やワセリンでも第Ⅱ相迄進められます、どこぞの製薬ベンチャーはコレだけで仕事してますとアピールする事で株券を刷ると言われて居ます、相場をやる人はこれ位疑ってかかりましょう。
神父さんに薬を飲ませた後、部屋から出て、暫く離れた所で和尚さんが感心した様子で呟いた。
「薬を飲もうとしない相手に呑ませることには慣れてますから」
苦笑を浮かべつつ返す。実際、私が今まで相手して来た御貴族様達は薬を嫌がる子供じみた者から、本気で子供までいっぱい居るのだ、産婆の仕事対象が子供と言うのがまあアレなのだが、月の物が来ていれば良くも悪くも出来てしまうと言うか授かってしまうので、最終的に私の仕事と成る、身体の成熟段階の問題から通常分娩は物理的に無理な段階で生まれるとあっては、無理やりにでも薬で眠らせてお腹を割る事に成るので、こういった無理矢理飲み込ませる作業は慣れた物だ。
「成程、色々有りそうだ」
和尚さんは私が一瞬遠い目をした事から、色々察したらしい。
「でも、薬何て良くありましたね?」
先程あった時の説明とは矛盾するのだが・・・
「当然ですが、偽薬(ぎやく)、偽薬(にせぐすり)です、今回は砂糖粒ですね」
当然の疑問だと言う様子でさらっと答えてくれる、やはり予想通りだった。
期待通りの期待外れで少し残念に思う。
ん?
「今回は?」
次があると?
「次回はダメ元の通常抗生物質で、ペニシリンですね」
和尚さんの手元にまた別の瓶が握られていた、硝子らしい透明な瓶の中に収められている透明な液体が揺れる。
「何で最初に使わないんですか?」
一瞬納得しかけて首を捻る。
「私の故郷では病は気からと言う言葉が有ります、薬の様な物を摂取した時点で想像以上に薬の様な物を摂取した結果とした反応が出るんです、さっき使った偽薬で何故か治った例と、病でも無いのに死にかけた例が存在します」
「毒薬では無いんですよね?」
「ええ、この通りです」
今度は先程神父様に呑ませた白い粒を取り出すと、躊躇もせず自分の口に放り込んだ。
「試しにどうぞ?」
どうぞと此方にも促される、其の手には白い粒が乗っていた。
恐る恐る手に取り、口に入れる。
甘い味が口の中に広がり、白い粒はあっという間に溶けて無くなった、何と言うか、甘さが疲れた体に沁みわたる。
「甘いですね・・・・」
不意打ちの甘さに口元が緩みそうになりながら呆然と呟く、確かに砂糖粒だった。
「初対面の怪しい人物が、怪しい薬のような物を、怪しい呪文を唱えながら強引に飲ませるんです、それこそ何かありそうですからね?」
確かに、あれ程の剣幕で放り込まれたのなら、いかにも効きそうだが・・・
「当然、本人の気の持ち様でどうにか成る範囲に限りますので、あまり期待は出来ません」
偽なのだからそもそも効果が出ては困ると小さく呟いた気がする。
いきなり胡散臭く感じて来た。
「胡散臭いでしょう?」
表情に出て居たのか、先回りされる。
「いえ、そんな事は・・・」
「良いんです、盲目的に信じられても困ります、私の所の教祖、お釈迦様も私を疑えって言ってましたから」
「疑われるんですか?」
そう言った、神に対する疑問だとかはあまり考えてはいけないと怒られる物なのだが・・・
「真理、現実と言う物は疑おうと拒否しようと存在します、疑わしいからと言って投げ捨てられても困りますが、全ておっしゃる通り、貴方の事を全て信じます、だから私は考えませんでは困るので」
「成程?」
確かに自主性が無い者では困るのは確かだ。
「明らかに道理が通らないとかの奇行が見えたら怒ってくれて良いです」
「・・・怒りませんか?」
「今の所怒る要素在りませんから大丈夫です」
「では何で効果が出ては困ると?」
根本的なモノだ。
「今回は特効薬の製造も依頼の内です、私が与えた場合にのみ、砂糖粒で病気が治るでは其れは薬じゃありません」
「其れは奇跡とかそんな物では?」
胡散臭いを通り越した神とか聖人の類の奇跡だ、建国神話と同列に成ってしまう。
「そう言う事です、薬なら、誰が作っても・・・は言い過ぎにしても。誰が使っても同じ効果が出来る物じゃ無いと問題が有りますし、砂糖粒を飲んだ患者が治った、だからこの病気の特効薬は砂糖粒では違うのです」
「治れば良いのでは?」
段々と混乱して来た、理屈は有るらしいが。
「この場で治るだけでは次の薬が作れません、極論、此処では砂糖粒を飲んだだけで治っても、隣の村では同じことをして全滅では意味が無いし、逆もあり得ます」
「何と言うか、そう成ると難しいですね・・・」
思わず生返事だ、難しいと言う事しか分からない。
「昨日まで元気のよかったタダの風邪ひき患者に、砂糖水を与えて寝せて置けば次の日にはケロっと回復して居るでしょう?」
「其れはそうですね?」
タダの風邪なら薬も何も要らない。最低限水と栄養を与えて寝せて置けば良いだけだ、だから砂糖水は栄養食としてとても都合が良い。
「じゃあ砂糖水は特効薬ですか?」
「そんな訳無いですね」
大分噛み砕いてくれたらしい。
「放っておいても治る物に薬らしい物を飲ませて治ったから薬が効いたは違います、極論何万人単位で飲ませると飲ませないでやらなきゃならない訳ですけど・・・」
「其れでは・・・・」
其れでは見殺しを大量に作る事に成ってしまう。
「でも最低限効いたかどうかと副作用を見る為に、接種と経過観察を時間差でやって行かなきゃいけないと言う訳で、こうなります、其れと薬の製造は現在進行形でコレ、EXだけが頼りで、生産数的に間に合うか勝負ですから、出来るまでは看病しながら違う薬も試しつつ色々見る訳ですね」
「分かりました、全て分かったとは行きませんが、お付き合いします」
どうせ私達のできる事は先程までと変わらないのだから、腹をくくる事にする。
「はい、お願いします」
改めて協力すると言う意思表示として握手を交わした、肩書き貴族にしては、がっしりとした力強い手だった。
少し経って神父様の様子を見ると、飲ませる前より大分血色が良くなっていた。
「ああ、そもそも食が細くなっているので栄養補給として丁度良かったわけですね」
和尚さんは素直に納得していた。
追伸
致死率50%とかの病気に何かが特効薬だと騒いだ医者の所では、2人余計に助かったからコレが特効薬と大々的に発表しましたが、実際に使って見ると効果も何も全く変わらなかった、所謂有意差が出なかったと言う事も有ります、最終的に実験の母数が物を言います。
現実世界、現代だと治験でひたすらコレをやるので時間と金がかかってしょうが有りません、最近流行病のお陰で治験やら手続きがある程度すっ飛ばせるようになったおかげで製薬業界が活気付くのを願うばかりです。
治験は第Ⅰ相から第Ⅲ相まであって、第Ⅰ相前が動物で死ななきゃOK、第Ⅰ相で人に使って無事ならOK、第Ⅱ相で量を増やしても副作用大丈夫ならOK、第Ⅲ相で薬の効果として有意差を示せなので、実はただの生理食塩水やワセリンでも第Ⅱ相迄進められます、どこぞの製薬ベンチャーはコレだけで仕事してますとアピールする事で株券を刷ると言われて居ます、相場をやる人はこれ位疑ってかかりましょう。
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