異世界坊主の成り上がり

峯松めだか(旧かぐつち)

文字の大きさ
249 / 274
6章 変な石とその後の話

第248話 子供と猫と、見た目は子供

しおりを挟む
(うー)
 屋敷の中を歩きながら内心で唸る、新しいお酒が飲めるとウキウキで付いて行った挙げ句に、変な醜態を晒してしまった。
 でもアレだ、お酒が美味しいのが悪い、新しくて珍しくてしっかり美味しい、間違い無く売れる、あのキンキンに冷やす飲み方もかなり美味しい、危ないのは確かだけど、流石に唇が張り付いたのは驚いたが、まあ無事だし。
 何気無く唇に触れる
(うわ、ガサガサ、後で薬塗らなきゃ……)
 そんな事を考えつつ、ついつい唇をなぞる。
 パキ
(っつう)
 嫌な痛みを感じて顔をしかめる。
(あーあ)
 内心冷め気味にため息をついた。
 誰か治療術使えるの居ただろうか?
 エルフは魔術が使えるだろうって?
 いや、意外な事に私は治療系は使えないのだ、治療術と魔術は実は技術体系が違い、力の出処も違うのだ、魔術系は純粋に自前の力で、極論手足の延長に近いのだが、治療系は母なる大地の神に見初められていないと使えないので、そもそも使える者が少数派だ。あの3人、今領主をやる前は冒険者をやっていたのだから、一人ぐらいは治療系使えるのも居るだろうか?
 領主になる直前に疫病対策の防疫最前線に居たのだから、治療系も使えると考えるのが当然の流れか、結局詳しく根掘り葉掘りしたのは薬の作り方で有って、役割やら何やらは聞いていない、義姉さんが活躍したのだろうと言うことで納得してしまってそれ以上は聞く機会が無かったのだ。今更だが失敗したと思う。
 そう考えると、あの場で治療を頼んだ方が早かったのだが、謎の照れが先に立ったというか、あの至近距離で男の人に手を握られるというのは初めてだったので、びっくりしたのが先だと思う。
 でも、何というかあの人の手、暖かかったし、こうしてみると優しいという評価も何だか納得が……
「アレ? カナデお姉ちゃんどうしたの?」
 そんな上の空で歩いていると、和尚さん達の子供で有るヒカリに声をかけられた、私とこの娘では親と子程に年は離れているのだが、見た目年齢としては子供にしか見えないという事で、子供達にも大人扱いされて居ないのだ。
「何だか寒そうだから、こっちこっち」
 何故か得意気に手招きされた。
 確かにちょっと冷たい物を飲みすぎたせいか、身体が冷えてきている。
 まあ良いかと言う感じに付いていくと、暖炉の前に陣取った巨大猫、ぬーさんと、ソレを枕やら毛布やらの代わりにして思い思いの格好で眠る子供達と、その子猫達が居た。
 何と表現するのだろうこの塊? 猫玉?
 思わず立ち尽くして、どうするんだろうと見ていると、こっちこっちとぬーさんのお腹を枕のようにして寝転んで、得意気に毛をぽむぽむと叩いて誘って来る、叩かれているぬーさんも反応して薄目を開けた、何とも言えない肉食獣の目が此方を射すくめるが、ぬーさん側も何時ものことなのか、特に気にする事も無さそうな様子で、直ぐまた眠そうに目を閉じた、どうやら大丈夫らしい。
「噛まれない?」
 其れでも一寸怖いので確認する。
「大丈夫!」
 ちょっとむっとした様子で返された、油断しかしていないこの子達の感覚だと、この巨大猫に対する信頼関係は絶大らしく、そんな事はまず無いのだろうと言うのが共通認識らしい、あの人達が子守手放しに預けていることを考えてみれば当然なのだが。
 そして、どうやら一番暖かい場所を譲ってくれたらしい。
「じゃあ、失礼して……」
 おずおずと子供達の真似をして、体重をかけないように注意して、その毛皮をクッションか何かの代わりのようにして寝転んだ。

 ふわ

 もふ


 ……暖炉の近くで暖められた巨大猫の冬毛は、ふわふわのもふもふで、もこもこだった、獣の匂いやら何かもするのかと思いきや、嫌な匂いも何もない、有るとすれば日向に干した新しい布団のような、そんな果てしなく眠くなるような独特の感触に全身の力が抜けた。

 先ほどまで冷えて寒かった身体が、体温を取り戻して、指先が温かくなっていくのが、心地良い。

 更に力が抜けると、まぶたが重くなる、そもそもこうして寝転がってはもうやることも無いし、仕事の続きをするのも無粋という物だ、そもそも仕事に戻ると言って先に出てきたが、急ぎの仕事はもう済んでいるのだ。
 先ほど飲んだお酒のせいも有ってか、どんどん眠くなる。

 ゴロゴロゴロゴロ

 ぬーさんの喉が鳴る音が聞こえる、どうやら上機嫌らしい。
 何故かその音の振動で更に眠く成ってきた。
 身体も重い、もう指一本動かせない。

 そんな訳で、あっという間に私は意識を手放した。


 和尚視点
「あらま、何時もの所にいないと思ったら」
 凍傷の治療をしようとカナデを追いかけてきたのだが、何時もの執務室にいなかったので探してみたところ、ぬーさんと子供達に混ざって寝落ちしているのを発見した次第だ。
「しー」
 起きていたらしいヒカリが何処となく得意気に、静かにとジェスチャーをしてくる。
(わかったわかった)
 笑みを浮かべ、小さく肯いて返事としながら、静かに近づいて未だ寝ている子供達の頭を順番に撫でた。
(にししー)
 声を上げず、得意気にヒカリが笑う、何だかんだ、子供達の間に年の差はあまりないのだが、ヒカリは長女らしくしっかりして、妹達の世話をよく焼いている。
(まあ、こっちの仕事もやっておかないとな)
「オン コロコロ センダリマトウギ ソワカ」
 流れでカナデの頭も撫でつつ、小さく薬師如来の真言で治療する。
 皮が剥け、割れて血が滲みそうになっていた唇が綺麗に治る、気持ちカナデの寝顔が安らかになった気がする。
(其れじゃあ、又後で)
 満足げに肯いて、未だ起きているヒカリに手を振って部屋を後にした。


 追伸
 虎に関する民間伝承で、虎の吐息と唾液には麻酔効果があって、獲物は痛みを感じていないという物があったりします。
 作者の出典は「ているている」から、マイナーな伝承らしく、詳しく調べても出て来ません。
 そんな訳で、うっかり此奴らに巻き込まれると寝落ちします。
 22222の日に合わせて書いたけど、盛大に遅刻しました。
しおりを挟む
感想 256

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】

kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。 ※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。 『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。 ※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

処理中です...