戦闘員A(雑魚)、中身は伝説のフィクサー。~洗脳が効かなかったので、無能な幹部を裏から操り、窓際姫を悪の女帝にプロデュースします~

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第16話:死中に活あり

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「……イーッ、イィィッ(もうダメだ……腹が減って、力が出ねえ……)」

 アパートの廊下では、空腹に耐えかねた先輩戦闘員たちが幽霊のように彷徨っている。ドラクマによる供給停止から三日。第7支部の備蓄は底をつき、暖房も切れた室内は、アビスの支部とは思えないほど寒々としていた。

 だが、その最奥の一室だけは、場違いな熱気に包まれていた。

「(……はい、そうです。昨日の特売の残り、全部押さえておいてください。支払いはいつもの『地域振興費』の名目で。……ええ、配送はアパートの裏口までお願いします。荷受けには、うちの『スタッフ』を向かわせますので)」

 俺は暗闇の中、卓上コンロの青い炎で暖を取りながら、地元の商店主たちと密に連絡を取り合っていた。

「すごいわ、クロウ……。どこからこんなに食料が」  アルティナが、運び込まれたばかりの大量の「見切り品の惣菜」と、カセットコンロ用のボンベを前に目を丸くしている。

「(閣下、これが地縁というものです。ドラクマは本部の物流を止めれば俺たちが干からびると思っていますが、彼は現場の『買い物』を知らない。……本部を通さずとも、この街には食料もエネルギーも溢れています)」

 俺は震える手で割り箸を割り、半額シールの貼られたカツ丼を一口頬張った。空腹に脂が染みる。政治の世界でも、兵糧攻めに遭った陣営が真っ先にすべきは「独自の調達ルート」の確保だ。

「(さて、腹が膨れたら反撃です。……モルク査察官。聞こえますか)」

 通信を繋ぐと、画面越しにモルクが怯えた顔で現れた。

『……クロウ! ドラクマ局長が君たちを完全に潰すつもりだ。今、君たちの支部に反逆罪の濡れ衣を着せるための『証拠』を、私の手で捏造させられている!』

「(いいでしょう。そのまま、その捏造書類をドラクマの個人端末から送信させてください。……ただし、その中に一つ、俺が今から送る『特定の数字』を紛れ込ませておいてほしい)」

『数字だと? 何の……』

「(ドラクマがヴォルガス将軍に拾わせたメモ……あの数字の『本当の整合性』を取るための、真実の裏帳簿へのリンクコードです。……ドラクマは、自分が偽造した書類のせいで、自分の秘密金庫が開かれることになるとは夢にも思わないでしょう)」

 俺は不敵に笑い、端末のキーを叩いた。  ドラクマは、第7支部を飢えさせて絶望させているつもりだろう。だが、実際には俺たちが街の惣菜を食べている間に、ドラクマ自身の足元に巨大な落とし穴を掘り進めているのだ。

(……そして、もう一つの懸念材料だ)

 俺はちらりと、アパートの地下室への階段を見た。  そこには、あの爆発現場から秘密裏に運び出し、アビスの再生医療ポッドではなく「市販の医療キット」で強引に治療を続けている、全身包帯だらけの男が眠っている。

(……レオ。あんたの生存がバレれば、本部の矛先は再び外へ向いてしまう。……今はまだ、死んでいてもらわないと困るんだ。……俺がドラクマの首を獲る、その瞬間まではな)

 静寂の中、レオのバイタルモニターが、規則正しい、しかし力強い鼓動を刻んでいた。
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