ポン・すけ 日記

詩悠

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安心できるモノ

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 お母さんが「おさんかいほう」とやらで出かけて行って、お母さんの家には出入りができなくなったわ。
 でも、お母さんはいないし、何にも困らないの。 
 お母さんがいない間はお姉ちゃんたちの家にいるし、元々はわたしもお母さんもその家にいたんだから、不便なことは何もない。
 いつでも出入りが自由にできるしね。



「ポンはハコに入って寝ないの?」

 お姉ちゃんがダンボールにペット用シートを敷き、その上にわたし用のバスタオルを敷いてくれたけれど、そんなところでは休まないの、わたし。

「ポンの匂いがついた物があった方がいいんじゃない?」

 お兄ちゃんがナニやら言っているけれど

「お母さんから預かったポン用のバスタオルを敷いているよ。でも、2日に一回は洗うって、お母さん言ってたし……ポンの匂いはあんまりついてないのかも……。」

 
 今まではお母さんやお父さんと一緒に寝ていたから、わたし専用の寝床なんてないの。
 それで、お姉ちゃんはわたし用の寝床を用意してくれたんだけれど、レディの基準は満たせなかったわね。

 わたし、りっぱなレディですもの。
 
 気に入ったところでしか休めないわ。

 ちゃんとしたこだわりがあるのよ。

 どこでもいい訳ではないの。


 ホントはね、今までお母さんの布団に潜りこんでいたんだから、お姉ちゃんの布団で一緒に休みたいんだけど、お兄ちゃんのアレルギーとやらで、わたしはお姉ちゃんたちの寝室には入れてもらえないの。

 それで、わたしが夜にどこで休んでいるかというと……


「……」

 わたしを見つけたお姉ちゃんは見て見ぬふりをしてくれるの。
 その上で、そっとして置いてくれるわ。
 レディの気持ちをよく理解できている人ね。

 それに引き替え、お兄ちゃんときたら……

「ポン!! そこはダメだ!! それに、人の服の上に乗ったらダメだろう!!!」

 大きな声で怒鳴られた上に、追い出されてしまったわ。

 なんて不粋な人なのかしら。


「ポンが客室に入ってたから、入らないようにしとかないと! それにアコのサマーセーターの上で寝てたぞ!」

「えー。 そうなんだ。」

 お姉ちゃんは知らないフリして相槌を返しているわ。
 ちなみに、「アコ」っていうのは、お姉ちゃんの名前ね。

 
 お兄ちゃんに見つかってから、客室にもはいれないし、お姉ちゃんの服を布団代わりにもできなくなってしまったわ。

 次にわたしが見つけたのは……

「ポンすけ、コレは流石にダメだよ。」

 お姉ちゃんにすぐに見つかって、ダメ出しされてしまったわ。
 いなくなってしまったお父さんの作業着はダメだったみたい。
 お姉ちゃんは今回は見逃してはくれなかったの。
 お父さんの作業着は綺麗に洗濯されているけれど、何十年も着ていたから、洗濯されたって、お父さんの匂いは残っているわ。
 クリーニングとやらに出して、今度はお兄ちゃんが着るらしいけれど、わたしの寝床にするのはやっぱりダメみたいね。
 
 それは、わたしも何となく分かっていたけれど、やっぱり寂しいじゃない?

「ポンすけは自分の匂いじゃなくて、人の匂いのする寝床がいいんだね。……もう着ない服って、何かあったかなぁ?」

 
 お姉ちゃんはわたしの希望するものに気がついたみたいね。

 すぐにわたしが安心して、気持ちよく寝られる寝床を用意してくれたわ。
 夜はわたしの安心できる香りに包まれて休みたいものね。
 


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