勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音

文字の大きさ
181 / 236

181.

しおりを挟む
そう思って尋ねてみると意外な答えが返ってきた。
なんでも俺に話があるのだという。
一体なんだろうと思いながら続きを促すと、意を決したように話し始めた。
話の内容は以下のようなものだった。
「実はあなたにお願いしたいことがあるんです」
真剣な表情でこちらを見つめてくる彼女に思わずドキッとする。心臓の鼓動が激しくなるのを感じた。
(なんだこれ? なんでこんなにドキドキしてるんだ?)
自分でもよくわからない感情に翻弄されていると、彼女は続けて言った。
「どうか私をここから連れ出してほしいのです」
それを聞いて頭が真っ白になった。
何を言っているのか理解できなかったのだ。
いや、正確には理解したくなかったというべきか、とにかく信じられなかったのだ。
冗談かと思ったが、彼女の目は真剣そのものでとても嘘をついているようには見えなかった。
そこで思い切って尋ねてみることにする。
「なんで、そんなことをする必要があるんだ? ここにはお前の父親も母親もいるじゃないか」
「ええ、そうね」
「だったら、別に出ていく必要はないだろ?」
そう問いかけると、彼女は首を横に振った。
「いいえ、違うのよ。私はここにいてはいけない存在なの」
意味が分からないことを言い出した彼女に困惑していると、さらに続けた。
「私がいると皆不幸になってしまうもの」
悲しげに目を伏せる彼女を見て、胸が締め付けられるような気持ちになった。
どうしてそんな顔をするんだよ……そんな顔されたら放っておけないじゃないか……
そう思うと自然と口が開いていた。
「そんなことはないさ」
そう言って彼女の手を握ると優しく微笑みかける。
大丈夫、俺がついているからなと言うと、安心したように頷いてくれた。
そしてそのまま二人で歩き出そうとした時のことだった。
突然背後から声をかけられたのだ。
驚いて振り返るとそこにはレイナが立っていた。
いつの間に戻ってきたのだろうかと思っていると、彼女はこちらに向かって歩いてきた。
その顔はどこか怒っているように見えるのだが気のせいだろうか?
いや、気のせいではないだろうなと思う。
何故なら目が笑っていないからだ。
どう考えてもこれはまずい状況だろうということは理解できたが、だからといってどうすることもできないのも事実であった。
ここは大人しく叱られておくしかないだろうなと思っていたら案の定怒られてしまったというわけだ。
まあ当然といえば当然だとは思うが……とりあえず今は黙って聞いているしかなさそうだと思い黙って聞いていた。
やがて一通り言いたいことを言い終わったのか落ち着いた様子を見せると最後にこう付け加えた。
「これからは勝手にいなくなったりしないでね?」
そう言われると頷くしかなかった。
渋々ながら了承するとようやく許してもらえたようだ。
ほっと胸を撫で下ろすと同時に心の中で感謝の言葉を述べるのだった。
「それじゃ行こうか」
そう言って歩き出した彼女を慌てて追いかけると隣に並ぶようにして歩くことにした。
その際さりげなく手を繋ぐことに成功した俺は内心でガッツポーズを決めると意気揚々と歩みを進めるのだった。
街へと到着するとまずは冒険者ギルドへと向かうことにした。
目的はもちろん登録するためである。
早速受付に向かうと空いている窓口があったのでそこへ向かうことにした。
名前を記入して必要事項を記入していくと無事に登録することができた。
これで晴れて冒険者の仲間入りを果たすことができたわけだ。
嬉しくてつい口元が緩んでしまうがそれを誤魔化すために咳払いをすると気持ちを切り替えた。
そしてクエストボードの前へ向かうと張り出されている依頼書を眺めることにした。
「どれにしようかな~」
などと独り言を言いながら選んでいると、不意に後ろから声をかけられた。
振り返るとそこにはレイナの姿があった。
どうやら彼女もまた依頼を受けに来たところのようだ。
お互いに挨拶を交わすとそのまま一緒に選ぶことにした。
とは言ってもそれほど選択肢があるわけではないためすぐに決まってしまったが、その中でも比較的簡単そうなものを受注することにした。
内容はゴブリン退治である。場所は街から少し離れたところにある森の中だそうだ。
さっそく出発しようと準備をしていると、レイナも一緒に行くと言い出したため、三人で行くことになった。
道中は特に何事もなく順調だった。
途中何度か魔物に遭遇したりもしたが問題なく対処することができたため特に苦戦することもなかった。
「そういえば、この森にはどんな魔物が出るんですか?」
ふと気になったので尋ねてみると、彼女はこう答えた。
「えっと、確かオークとかウルフ系の魔物が多いって話を聞いた気がするわ」
それを聞いて納得した。確かにそれなら俺一人でもなんとかなるかもしれないと思ったからである。
しかし、油断はできないため警戒だけは怠らないように気をつけることにした。
しばらく進むと開けた場所に出たためそこで休憩をとることになった。
俺は周囲を警戒しつつ木陰に身を隠すと、そっと様子を窺うことにした。
今のところ周囲に怪しい気配はないようだったが、念のためだ。
しばらくするとレイナ達もやってきたので、今のうちに聞いておくことにすることにする。
「ところで、二人はこれからどうするつもりなんだ?」
その問いに、まず最初に口を開いたのはレイナだった。彼女は真剣な表情でこちらを見つめると、
はっきりとした口調で言った。
「私はこの街に残るつもりよ」
その言葉に驚くことになるとは思わなかったので、思わず聞き返してしまうほどだった。
てっきり二人で出て行くものだとばかり思っていたからだ。
だが、返ってきた答えは予想もしないものだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

処理中です...