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魔王アスモデウスⅡ
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「そ――そのような人類が本当にいらっしゃるのですか?」
そう問いかけてきたのはシトリーじゃった。
「本当じゃ。そもそも嘘を付く必要がなかろう」
「も――申し訳ございません」
そう言って冷や汗をダラダラと流し始め、顔色は一気に青ざめていたシトリー。別に少々な事であれば、妾は怒らないのに、どうしても部下達はこのような表情になってしまう。そこまで恐れなくてもよいのに、と言うのが本音じゃ。
「その御方はどのくらいの強さでしょうか?」
そう問いかけてきたのは家臣のうちの1人じゃった。
「――多分、ルシファーといい勝負をすると思ぞ。流石にベリアルにはまだ勝てないかもしれないがのう。じゃが、地上では色々問題があって、黒龍を含めたZ級の相手を、三人も倒さないといけなくての。常に緊張感で張りつめている状態じゃ」
「な――成程。そのような状況に陥っていたのですね」
「そうじゃ。じゃから今回も事が上手く運べばいいのじゃが、途中で地上に行くかもしれない。青龍が危機を感じた時に、地上へ強制転移をされる手筈になっておる」
「そうでしたか。せっかく来て頂けたのであれば、こっちで体を休めてほしいというのが、我々の願いではありますが……」
そう家臣が漏らすと、他の皆も暗い表情を浮かべていた。
「そうも言ってられん。事態は一刻を争う。シトリーだけ妾に付いてくるがよい。他の者は警備に当たってほしい」
「しかしシトリーだけでは――」
そう一人の家臣が呟いたので、妾は首を左右に振った。
「良いのじゃ。妾はルシファーに喧嘩を吹っ掛ける訳ではない。あくまで交渉をしに行くのじゃからな。大人数で行くと相手も警戒するじゃろう?」
「た……確かにそうですが、もしアスモデウス様の事に何かあってしまっては――」
「大丈夫じゃ。シトリーもいるんじゃ。死にはせん。シトリー、早速準備を行ってくれ。早急にルシファーの元へ行くぞ」
「かしこまりました!」
そうして10分程でシトリーは身支度を済ませた。シトリーは転移をする事ができないので、黒魔竜の背中に乗って、邪気を感じ取りながらルシファーの元へ向かった。黒魔竜は魔族と竜族の血を引く特殊な竜で、地上には1頭もいない魔界限定の竜じゃ。戦闘値はバフォメットと同等クラス。魔界でもこの魔物を飼い慣らしているのは、妾以外だと、ベリアルとルシファーくらいじゃ。
炎と氷の遠距離攻撃を得意とし、飛行速度は音速を超える。何より――。
「アスモデウス様をお背中に乗せるのは何百年ぶりでしょうか――私、ラーゼンはこの上なく幸せでございます」
そう。この子は魔族語を話すことができる優秀な子じゃ。人型化も使うことができるので、妾の配下の中では数少ない雄となる。しかしまあ、この子は赤子の時から育てているので、どちかと言うと親みたいな情じゃ。色目は一度も使ったことが無い。まあ、この子自体は、妾が色欲支配を使うとメロメロになってしまうがの。
「まあ1,000年ぶりくらいじゃないかのう――あんまり覚えとらんな」
「それはそれで何処か寂しいですね。なんかこう私に興味が無さそうと言うか――」
「そんな事はないぞ。いつも地上でも気にかけておる」
と言ってみたものの、今となってはナリユキ閣下と、地上の事で頭がいっぱいじゃから、ラーゼンに関しては全く気にしていなかった。自分でも吃驚するくらいの嘘を付いてしまったのじゃ。
「――私にはもったいない御言葉です! 私、感動のあまり……」
と、ぐすんぐすん言い始めたの感動のあまり泣いてしまったのじゃ。冷静に考えると、妾はこのようにして愛を向けられることが多い。しかしナリユキ閣下は割と素っ気ないからのう。もしかしたら、そこがいいのかもしれん。駄目じゃ、ナリユキ閣下の事を考えているだけでムラムラしてくるのう――。
今からルシファー。今からルシファー。奴は面倒くさい男。奴は面倒くさい男。
――何をしとるんじゃ妾は――。
そうこうしているうちにだんだんとルシファーの邪気が近づいてきた。奴等はデミゴルン森林と呼ばれる森にいるようだ。魔王同士の戦争で時折使われている場所だ。面積はおよそ3,000㎢程あるらしい。
「相変わらず、凄い邪気ですね。まだまだ距離はあるはずなのに、寒気が止まりません」
「この遠さなら、ベリアルの邪気も混じっているからのう。仕方ない事じゃ」
本当に――まだ目的地まで数十キロはあるはずなのに、ここまで大きな邪気だと気味が悪いのう。
シトリーの状態を気にしつつ、ルシファーの邪気が更に強くなってきたのが分かった。勿論、地上では剣を使って戦う雑兵が確認でき、その中でも一際ド派手に緑を吹き飛ばして戦うS級クラスの魔族同士の戦いも確認できる。
「この辺りの筈じゃが、もう少し先かの」
「アスモデウス様、どうやらあの辺りルシファーが拠点を構えているかと」
ラーゼンの助言に確かに確認できた。黒龍以上のやたら目立つ邪気を放つ者がいる。この感じ間違いない。あの小さな城に奴はいる。というか、随分と会わないうちに強くなっていないか? これはZ級の妾でも気を抜いたら負けてしまうのう――。
黒龍と対峙した時のように、妾は額から冷や汗を流していた。心臓の鼓動が早くなるのが驚くほどに分かる。
「行くぞ」
「お任せください!」
ラーゼンが向かった先――。突如現れた妾達に意表を突かれて反応が遅れる雑兵と、瞬時に臨戦態勢に入るルシファーの家臣達。
「強大な邪気が近付いてくるのは知っていた。まさかお前だったとはな」
漆黒の鎧を身にまとい、長い黒鳶色の髪をたなびかせてこちらを振り向く一人の騎士。容姿も声も全く変わっとらん。久々のご対面じゃ。
そう問いかけてきたのはシトリーじゃった。
「本当じゃ。そもそも嘘を付く必要がなかろう」
「も――申し訳ございません」
そう言って冷や汗をダラダラと流し始め、顔色は一気に青ざめていたシトリー。別に少々な事であれば、妾は怒らないのに、どうしても部下達はこのような表情になってしまう。そこまで恐れなくてもよいのに、と言うのが本音じゃ。
「その御方はどのくらいの強さでしょうか?」
そう問いかけてきたのは家臣のうちの1人じゃった。
「――多分、ルシファーといい勝負をすると思ぞ。流石にベリアルにはまだ勝てないかもしれないがのう。じゃが、地上では色々問題があって、黒龍を含めたZ級の相手を、三人も倒さないといけなくての。常に緊張感で張りつめている状態じゃ」
「な――成程。そのような状況に陥っていたのですね」
「そうじゃ。じゃから今回も事が上手く運べばいいのじゃが、途中で地上に行くかもしれない。青龍が危機を感じた時に、地上へ強制転移をされる手筈になっておる」
「そうでしたか。せっかく来て頂けたのであれば、こっちで体を休めてほしいというのが、我々の願いではありますが……」
そう家臣が漏らすと、他の皆も暗い表情を浮かべていた。
「そうも言ってられん。事態は一刻を争う。シトリーだけ妾に付いてくるがよい。他の者は警備に当たってほしい」
「しかしシトリーだけでは――」
そう一人の家臣が呟いたので、妾は首を左右に振った。
「良いのじゃ。妾はルシファーに喧嘩を吹っ掛ける訳ではない。あくまで交渉をしに行くのじゃからな。大人数で行くと相手も警戒するじゃろう?」
「た……確かにそうですが、もしアスモデウス様の事に何かあってしまっては――」
「大丈夫じゃ。シトリーもいるんじゃ。死にはせん。シトリー、早速準備を行ってくれ。早急にルシファーの元へ行くぞ」
「かしこまりました!」
そうして10分程でシトリーは身支度を済ませた。シトリーは転移をする事ができないので、黒魔竜の背中に乗って、邪気を感じ取りながらルシファーの元へ向かった。黒魔竜は魔族と竜族の血を引く特殊な竜で、地上には1頭もいない魔界限定の竜じゃ。戦闘値はバフォメットと同等クラス。魔界でもこの魔物を飼い慣らしているのは、妾以外だと、ベリアルとルシファーくらいじゃ。
炎と氷の遠距離攻撃を得意とし、飛行速度は音速を超える。何より――。
「アスモデウス様をお背中に乗せるのは何百年ぶりでしょうか――私、ラーゼンはこの上なく幸せでございます」
そう。この子は魔族語を話すことができる優秀な子じゃ。人型化も使うことができるので、妾の配下の中では数少ない雄となる。しかしまあ、この子は赤子の時から育てているので、どちかと言うと親みたいな情じゃ。色目は一度も使ったことが無い。まあ、この子自体は、妾が色欲支配を使うとメロメロになってしまうがの。
「まあ1,000年ぶりくらいじゃないかのう――あんまり覚えとらんな」
「それはそれで何処か寂しいですね。なんかこう私に興味が無さそうと言うか――」
「そんな事はないぞ。いつも地上でも気にかけておる」
と言ってみたものの、今となってはナリユキ閣下と、地上の事で頭がいっぱいじゃから、ラーゼンに関しては全く気にしていなかった。自分でも吃驚するくらいの嘘を付いてしまったのじゃ。
「――私にはもったいない御言葉です! 私、感動のあまり……」
と、ぐすんぐすん言い始めたの感動のあまり泣いてしまったのじゃ。冷静に考えると、妾はこのようにして愛を向けられることが多い。しかしナリユキ閣下は割と素っ気ないからのう。もしかしたら、そこがいいのかもしれん。駄目じゃ、ナリユキ閣下の事を考えているだけでムラムラしてくるのう――。
今からルシファー。今からルシファー。奴は面倒くさい男。奴は面倒くさい男。
――何をしとるんじゃ妾は――。
そうこうしているうちにだんだんとルシファーの邪気が近づいてきた。奴等はデミゴルン森林と呼ばれる森にいるようだ。魔王同士の戦争で時折使われている場所だ。面積はおよそ3,000㎢程あるらしい。
「相変わらず、凄い邪気ですね。まだまだ距離はあるはずなのに、寒気が止まりません」
「この遠さなら、ベリアルの邪気も混じっているからのう。仕方ない事じゃ」
本当に――まだ目的地まで数十キロはあるはずなのに、ここまで大きな邪気だと気味が悪いのう。
シトリーの状態を気にしつつ、ルシファーの邪気が更に強くなってきたのが分かった。勿論、地上では剣を使って戦う雑兵が確認でき、その中でも一際ド派手に緑を吹き飛ばして戦うS級クラスの魔族同士の戦いも確認できる。
「この辺りの筈じゃが、もう少し先かの」
「アスモデウス様、どうやらあの辺りルシファーが拠点を構えているかと」
ラーゼンの助言に確かに確認できた。黒龍以上のやたら目立つ邪気を放つ者がいる。この感じ間違いない。あの小さな城に奴はいる。というか、随分と会わないうちに強くなっていないか? これはZ級の妾でも気を抜いたら負けてしまうのう――。
黒龍と対峙した時のように、妾は額から冷や汗を流していた。心臓の鼓動が早くなるのが驚くほどに分かる。
「行くぞ」
「お任せください!」
ラーゼンが向かった先――。突如現れた妾達に意表を突かれて反応が遅れる雑兵と、瞬時に臨戦態勢に入るルシファーの家臣達。
「強大な邪気が近付いてくるのは知っていた。まさかお前だったとはな」
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