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姉妹(カルラ視点)
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「オルシーネ伯爵令嬢カルラ!!今日をもって君との婚約を破棄する!!」
王家主催による王立学園の卒業パーティー会場、そのホールのど真ん中で突然始まった茶番劇。壇上に誂えられた主催者席に王、王妃、王太子が揃った中、ほどよい楽団の演奏と楽しげな歓談の声を遮って、大公の子息とはいえ勝手に私事を始めるとは茶番、というしかない。
婚約破棄を宣言したのは現王の弟、大公殿下の嫡男でアルフレード。大公家は一代限りとされているため彼は成人後侯爵家を起こすことが決まっている。私、カルラはそのアルフレードと十二歳で婚約し、学園卒業をもって婚姻を結び侯爵夫人となる予定だったのだが。
鈍感にも周りの冷たい視線を感じないのか得意気に私を指差す彼の腕には、この場に不釣り合いな装いの少女がぶら下がっている。例え半分でも血が繋がっているとは思いたくない彼女は私の腹違いの妹、ルーチェだ。大きく胸元の空いた真っ赤なドレスはそれなりにボリュームある女性が着れば似合うだろうが、妹のささやかなサイズではまるで子供が母親のドレスを無理矢理着ている様で滑稽だ。そもそもいくら主役の卒業生とはいえ、あの格好はこの場には相応しくない。娼婦か男漁りをする未亡人の様だ。
私が卒業したら半年以内には婚姻を結ぶ事になっている為、近々事を起こすだろうとは思っていた。派手好きで考えなしの彼の事だ。大勢の人が集まる場でしでかすとは思っていたが、流石に貴族ばかりか王族までが揃うこのパーティーでとは……。普通貴族同士の婚約なら家長が相手家に出向いて話し合いをするものでしょうに。
ちらりと横目で見ればオルシーネ伯爵が真っ青な顔をしている。これだけの衆目の中で宣言してしまえばいくら彼等の力をもってしても簡単に撤回など出来ようがないものね。さもありなん。
視線を一旦二人に戻し、二人の後ろ、壇上に居られる方々へとそっと移すと、ゆっくりと小さく首肯く国王陛下の姿が目に入った。
「このような場所での宣言とは穏やかではありませんわ。一体どういう事ですの?」
さもショックを受けたように、今初めて二人の関係を知ったかのように、声を震わせ二人を交互に見る。嫌だわ、白々しくないかしら。演技っぽく見えてないかしら。ほんの少し心配に思ったが、妹の口の端が微かに吊り上がるのを見て内心ホッとする。とりあえずあの二人にそう見えていなければ問題はない。
「僕は……僕はルーチェを愛してしまったんだ!!今まで僕の婚約者として尽くしてくれていた君には申し訳ないが、真実の愛を知ってしまった今、自分の心を偽る事など出来ない!!」
まあ。真実の愛ですって。随分薄っぺらく見える真実だこと。それにしてもいちいち大きな声で叫ばないと説明できないのかしら。余計茶番くさく見えるわ。
「アル様がおねえさまの婚約者なのはわかっているの。でも私……私、アル様を愛してしまったの!!おねえさま、どうか私にアル様を譲ってください!!」
目を潤ませルーチェも叫ぶ。その殊勝に見える態度に世間知らずなお坊っちゃまなら騙される事もあるかもしれないが、今まで散々な目に遭ってきた私には通用しない事がわからないのかしら。というか、婚約者を譲ってくださいですって? 随分とまあ厚顔無恥ですこと。しかも既に愛称で呼んでいるし。
王家主催による王立学園の卒業パーティー会場、そのホールのど真ん中で突然始まった茶番劇。壇上に誂えられた主催者席に王、王妃、王太子が揃った中、ほどよい楽団の演奏と楽しげな歓談の声を遮って、大公の子息とはいえ勝手に私事を始めるとは茶番、というしかない。
婚約破棄を宣言したのは現王の弟、大公殿下の嫡男でアルフレード。大公家は一代限りとされているため彼は成人後侯爵家を起こすことが決まっている。私、カルラはそのアルフレードと十二歳で婚約し、学園卒業をもって婚姻を結び侯爵夫人となる予定だったのだが。
鈍感にも周りの冷たい視線を感じないのか得意気に私を指差す彼の腕には、この場に不釣り合いな装いの少女がぶら下がっている。例え半分でも血が繋がっているとは思いたくない彼女は私の腹違いの妹、ルーチェだ。大きく胸元の空いた真っ赤なドレスはそれなりにボリュームある女性が着れば似合うだろうが、妹のささやかなサイズではまるで子供が母親のドレスを無理矢理着ている様で滑稽だ。そもそもいくら主役の卒業生とはいえ、あの格好はこの場には相応しくない。娼婦か男漁りをする未亡人の様だ。
私が卒業したら半年以内には婚姻を結ぶ事になっている為、近々事を起こすだろうとは思っていた。派手好きで考えなしの彼の事だ。大勢の人が集まる場でしでかすとは思っていたが、流石に貴族ばかりか王族までが揃うこのパーティーでとは……。普通貴族同士の婚約なら家長が相手家に出向いて話し合いをするものでしょうに。
ちらりと横目で見ればオルシーネ伯爵が真っ青な顔をしている。これだけの衆目の中で宣言してしまえばいくら彼等の力をもってしても簡単に撤回など出来ようがないものね。さもありなん。
視線を一旦二人に戻し、二人の後ろ、壇上に居られる方々へとそっと移すと、ゆっくりと小さく首肯く国王陛下の姿が目に入った。
「このような場所での宣言とは穏やかではありませんわ。一体どういう事ですの?」
さもショックを受けたように、今初めて二人の関係を知ったかのように、声を震わせ二人を交互に見る。嫌だわ、白々しくないかしら。演技っぽく見えてないかしら。ほんの少し心配に思ったが、妹の口の端が微かに吊り上がるのを見て内心ホッとする。とりあえずあの二人にそう見えていなければ問題はない。
「僕は……僕はルーチェを愛してしまったんだ!!今まで僕の婚約者として尽くしてくれていた君には申し訳ないが、真実の愛を知ってしまった今、自分の心を偽る事など出来ない!!」
まあ。真実の愛ですって。随分薄っぺらく見える真実だこと。それにしてもいちいち大きな声で叫ばないと説明できないのかしら。余計茶番くさく見えるわ。
「アル様がおねえさまの婚約者なのはわかっているの。でも私……私、アル様を愛してしまったの!!おねえさま、どうか私にアル様を譲ってください!!」
目を潤ませルーチェも叫ぶ。その殊勝に見える態度に世間知らずなお坊っちゃまなら騙される事もあるかもしれないが、今まで散々な目に遭ってきた私には通用しない事がわからないのかしら。というか、婚約者を譲ってくださいですって? 随分とまあ厚顔無恥ですこと。しかも既に愛称で呼んでいるし。
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