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俺に配慮しないお前の話
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Sはあまり頭が良くない男だった。少なくともKにとっての彼はそう見えた。
けれども世の中には何とかしてうまくバランスを取ろうと、見えざる力がどこかで働くものなのだろうか。
Sの顔の造形は神懸かりなレベルで整っており、均整の取れた身体つきも高い身長も、もし神様という者がいるのであれば、さぞかし気を使い調整や修正を重ねて造られたのだろうということが窺い知れる。
色素の薄い艶やかで透けるような肌、透明感のある白銀の髪も碧眼も、高い鼻も形の良い唇も持って生まれたものであり、その姿に囚われてしまえばもう自ら視線を外すことは難しいと、周囲の人間は彼を神聖化していた。
「K君さぁ、S君と仲良いよね」
またか、とKは内心溜息を吐いた。Kは成績優秀な生徒で、心も同級生に比べてみれば成熟している方だと思われる。身長は平均程度の痩せ型体型、その肌は存外白く顔立ちもよくよく見てみれば整っているほうだ。
けれども長めの黒い前髪も野暮ったい黒ぶち眼鏡もきっちり着込んだ制服も、どこか垢抜けずトータルの評価としては地味めの男子学生と言えるだろう。
「普段、S君と何して遊んでるの?」
「Sとどんな話するの?」
単純な興味で声をかけて来る者たちも勿論いるが、学年一のイケメンに懐かれている男に対しての嫉妬の念を抱く者、もしくは自分も取り入ってもらおうとすり寄って来る者たちも少なくはない。
彼は俺をペットや玩具にしているだけで、そもそも会話なんて成り立たなっていないようなものです。Kは煩わしいイケメンに、不本意ながら少しだけ思いを馳せる。
KとSは高校の入学式で席が隣同士だった。Sは校長先生の挨拶をどこか愁いを帯びた表情で聞き流しており、眠さに抗えないのか時折こっくりこっくりと舟を漕いでいた。
その姿に思わずクスリと笑みを浮かべてしまったKは、そのままSに寄りかかられてしまった。
気持ちよさそうに左肩に身を預けたまま眠る、生ぬるく重たいイケメンのようなハンデを抱えたまま、Kは誰にも助けを求められず身じろぎすることさえもなく、入学式を終わりまで過ごすことになった。
「……おはよ、誰?」
人の肩を無断で枕代わりに使用していた無礼な男は、その無礼さを上塗りするかのようにむにゃむにゃとKに話しかける。
「Kですけど」
「ふうん」
向こうから話しかけてきたというのに、興味をなくしたかのようにSはKから身体を離し目線を逸らす。何なのだこの男は。これからクラスメイトになるであろう男から心身ともに距離を置こうと立ち上がると、ぐいと手を引っ張られてしまいそのまま居眠り野郎はKを自分の腕の中に引きずり込んでしまった。
「Sだよ」
子供体温なのだろうか、すりすりとマーキングでもするようにKに抱き付いて身を摺り寄せている男は温かく、ふわりと香水の香りがした。
「S君離してください」
「なんで」
「なんでときたもんだ」
「どうして」
「言いまわしだけ変えられてもな」
これからホームルームが始まるのだから、自分の席に戻りなさいねと教師のように告げると、Sは渋々と、けれども存外素直に「わかった」とKの言葉に従った。
「またね」
ひらひらと手を振って席に戻る彼を見送りながら「まずいな、友達認定されてしまったか」と少しばかりの危機感と面倒くささを感じ、Kは突然現れた距離無し系男子と上手いこと穏便に距離を取る方法を考え始めた。
出会ってしまったが最後、もう手遅れだということには気付かぬまま。
「K」
「S君、おはよう」
少し肌寒い春の風や心地よい初夏の空気なんてものはあっという間に過ぎ去り、じわじわとうだるような夏の暑さがやってくる頃には、海外ほど明確ではないがクラス内でもぼんやりとしたスクールカーストが出来上がっていた。
その中でも一軍と呼ばれる人々は絶えず賑やかで、ひょっとしたら面白いことを探していないと呼吸や心臓が止まって死んでしまうのではないか、とKが気遣う程度に日々騒々しい。
「おうS、おはよ」
「S君おはよう」
「S~おはよ、どしたん? おねむ?」
「まだ寝ぼけてんね可愛い」
「こら、起きろ~」
一軍のメンバーやクラスメイト達は、Sをまるで可愛らしい赤ん坊のように構い倒そうとする。皆が彼と特別になりたいのだろうか、男女問わずSに声をかける者は多かった。Sはそれらを適当にあしらい、すでに机で教科書を読んでいるKの元へふらふらやってきた。
彼はきっと朝が弱いのだろう。わけのわからない呻き声のような、ふにゃふにゃした赤ん坊の喃語を操るSを「そう、へえ、ほう、なるほど」と適当に返してやるKの視界は教科書に注がれたままだ。
「……抱っこ」
「やあ、ようやく人間語を喋った」
両腕を広げてハグを待つSをそのまま無視すると、Kは「席に座りなさいよ」と厳かに言葉を発する。
「はぁい」
良い返事をしながら、SはKを後ろから抱きかかえてKの座席にドッカリ座り込み、膝にKと教科書を乗せてスリスリその身を摺り寄せた。
「……席を指定しなかった俺が悪かったか、ごめんね。S君の。君の。自分の席に座りなさいね」
「今日からここが俺の席だもん」
「そんなことがあってたまるか」
Kにとっては不本意だが、SとKの席は隣同士である。近くに俺がいるのだから今生の別れというわけでもあるまいに、と古めかしい言葉で諭すもSは「やだ、さびしい」と両手を広げてママもといKを求めている。自分に甘える規格外のイケメンを尻目に、Kは内心「早く席替えしろ」と切に願っていた。
「……」
一軍にしてみれば、幼馴染というわけでもなく同中(おなちゅう)というわけでもない、ぽっと出の地味眼鏡ことKに「何アイツ」という目線が向けてしまうのにそう時間はかからなかった。クラスどころか学年でも目立つ人気者のSに対して塩対応なのも、彼らの反感を存分に買うこととなった。
「K君ちょっといい?」
昼休みは安息の時間だ。Kは友人と昼を食べ、Sは一軍たちの元へ行くのでこの時間は暑苦しい高身長の赤ちゃんが彼に纏わりつくこともない。
今回声をかけてきたのは一軍の、どちらかと言えば端っこにいる取り巻きの女子たちで、タナカだとかタカハシだとか確かそんな名前だったとKはぼんやり記憶していた。
「つまり、どういうことでしょうか」
数人の女子に呼び出され壁に追い詰められているKは、げんなりした様子を隠すことなく控えめに質問をする。通常であれば女子の呼び出しなんて憧れのシチュエーションの一つではないだろうか。そう通常であれば。
殺気立った六つの目線を向けられてみれば、この呼び出しが告白や恋愛といった甘いものではなく、どちらかと言えばリンチのそれが適切だろうとKも判断した。
「ちょっと、K君のSに対する態度が無いかな~って」
「S君にかまってもらえて、勘違いしちゃったかな?」
Sが心を許しているように見えるKがウザい、しかもそのポジションに感謝することもなくSを邪険にしているのが許せない、調子に乗っていると一部の一軍の方々はお怒りな状況だ。
「なるほど」
ドンッと肩を強めに押されたKは状況を理解すると、すぐさま防犯ブザーの紐を引っ張りとてつもないアラームを響かせると、動揺した女子たちの一瞬の隙をついてその場から逃走した。
「おかえり、K。一緒に帰ろ」
あれ、鞄に付けてる奴ないね、どこかに落としたの? 気遣いのできないSは、Kが防犯用に付けていたブザーが鞄から無くなっていることは目ざとく見つけたが、無くした理由までは思い至らず無邪気にKを苛立たせた。
「あれは防犯ブザーっていうものでね、どうも消耗品だったみたいでさ。君のおかげで人生初めて使う機会ができたってわけ」
防犯ブザー自体は何度も使いまわせるが、逃走するためにあの場所へ置いて来てしまったので、少しばかり回収は難しいだろう。苛立ちと嫌味を交えてとげとげしい言葉をSにぶつけるが、Sはきょとんとした表情を一瞬浮かべ、それでもKの後ろを雛鳥のようについてくる。
「一人で帰る」
「一緒に帰ろ」
「寄るところがあるから、一人で帰る」
「一緒に帰ろうよ」
べたべたと纏わりつき身を摺り寄せるSは、珍しく上目遣いでKの顔色を窺っている。
「俺、なんかしちゃった? 怒ってる? 謝るから許して」
「……」
何故怒っているかその理由もわからぬままただ謝られてもイラつくだけなのだが、Kにも人の心があったので「お前が人気者過ぎて俺に被害が及んでいる」とは流石に言い出しにくかった。
「帰ろ?」
目の前の逞しい身体つきの長身は、Kの手を強引に繋ぐとぶんぶん幼稚園児のように振って、横に並んで歩き出した。放課後の校舎を歩く、少し距離感がおかしくなった二人の仲睦まじい姿を一軍の一人が目撃していたのは、Kにとってこれもまたよくないことであった。
「おはよ」
次の日。SはKの元へ一目散にやってくると、大手電気屋のビニール袋の開け口を逆さにしてジャララと何かをKの机にぶちまけた。
「おはよう、S君これは?」
Kの机には沢山の防犯ブザーが転がっている。Kが以前使っていた物やSの好みだろうか、赤や黄色のカラフルなブザーもあった。
「前の無くなっちゃったんでしょ? だから新しいのあげる」
Sは赤くて可愛らしい子供用ブザーを自身の鞄につけると、Kの鞄にも同じように赤いブザーを一つ取り付けた。
「君とおそろか」
「うん」
「……ありがとう、大切にするよ」
「えへへぇ、俺も」
ブザーの用途を考えると「何か違うな」と思いつつも、Kは他に貰った多量のブザーを優先的に使うことに決めた。
「Sさん、ついに本命にエンゲージブザープレゼントすか」
「おめでとうざいます」
「おめでと」
「ありがとう」
クラスメイトのヤマザキやヨシオカといった、一軍の中でも性格の良いメンバーはからかい交じりにSとKの中を祝福してやっている。普段は怠そうに適当な返事を返すだけのSが、無邪気かつ異様なまでに執着しているKのことは皆知っていた。
「K君のどこが好きなんすか」
「全部」
「ストレートに惚気きた」
「俺の一目惚れ」
「聞いてねえし追撃エグイて」
「S、K君好ハオすぎるしょ」
珍しく浮かれているSを尻目に、一軍とその周辺の一部の目線は冷ややかであった。
一軍たちは基本的にトラブルには無関心で、いじめなどに対しても関わらない反面、表立って止めるということもほぼない。
それが彼らの処世術の一つではあるが、それ以上に一軍側の人間として一部のいじめを行う者たちは無駄に人脈もあり知恵が働く分、被害者側としては非常に厄介であった。
「K大丈夫?」
「……うん」
最初は揶揄いや悪ふざけ、そして物を隠されたり机に画びょうやゴミを捻じ込まれたりなど陰湿な嫌がらせが行われた。都度証拠を取り、友人たちも協力してくれたが犯人の尻尾が掴めない。「消えろ」「Sに関わるな」「Sと離れてください」なんて手紙が下駄箱に投函される程度の嫌がらせなんて、まだ可愛いほうだ。
「……かかわるなって言われても」
Sが自分から離れてくれないなんて言おうものなら、彼らの怒りは更に悪化するだろう。何をどう訴えても「自慢」や「調子に乗っている」と囚われてしまう、狂信者的なファンを持つ人気者と、モブのような自分は隣にいるだけでも駄目らしい。
そしてKが思うにSの頭はあまり良くない。学力は今一つで中の下といったぐらいで済んでいるが、彼の心の発育は遅い方だとKは判断する。
人気者の自分がSに絡むことによって周囲はどう思うか、Kはどんな目を向けられてしまうかといったことまで、きっと彼はまだ考えが及ばないのだ。
或いは、Kがどんな目に遭おうとも自分には関係がなく、彼は彼でただKをお気に入りの玩具にでもして、自身の好きなようにできればそれでよいのかもしれない。
「K、遊ぼ」
美しい男は、Kに執着し惜しみなく好意を向けて、本人はそうとは知らずに純粋に残酷にKを傷つけてゆく。
「S君」
「なあに?」
「今日ね、君のことが好きな人に嫉妬されてね、うっかり殺されかけるところだったんだ」
階段の踊り場で突き飛ばされた瞬間Kは死を覚悟したが、たまたま近くにいた一軍のヤマザキという男が手を引っ張ってくれたので、ケガすることなく踏みとどまることができたのだ。
『大丈夫? ちょっとシャレにならないよなこれ。ごめん俺から言っとくわ。先生にも』
『……いいえ』
嫌がらせが酷くなるから。絞り出すようにようやくそれだけ答えると、ヤマザキは悲し気に表情を歪ませていた。
「K君の彼氏は何してんだろうね」
好きな人も守れないなんて、ひでー男よな。今回のことは大事にする気はないといった様子で、ヤマザキはふざけた調子でKの肩を軽く叩くと安全な場所に着くまで、彼は行動を共にしてくれた。
「……ごめんね、K。俺知らなかった」
イジメの話を聞かされたSは、眉も目尻も下げて泣きそうな表情で抱き付こうとするがKはやんわりそれを止める。
「こういうのがね、彼らを刺激するんだ。君はものすごく目立つしモテるんだから、こんな簡単に、思わせぶりな態度を取っちゃだめなんだよ」
「うん」
SはKを抱きすくめると、チュッチュとリップ音を盛大に響かせて、頭部に唇を何度も落としている。
「何に対しての『うん』だ、何に対しての」
「うん」
何もわかっていないじゃないかと、必死にSを引きはがそうとしながら憤るKをそのままに。
「Kだけだもん。ほかの人に、思わせぶりな態度? は取らない」
とSは明後日の方向に固く誓いを立てていた。
「K君さぁ、人の話聞いてた?」
「……ですよね」
放課後、いつもの校舎裏もといリンチ場に呼び出されたKは、複数の女子に囲まれて絶体絶命のピンチとしか言いようのない状況に陥っていた。
Sはいよいよ遠慮がなくなったのか、真面目な生徒や教師が顔をしかめる程度には、おはようからおやすみまでぴったりとKにひっつくようになってしまった。四六時中傍にいることにより表面上の嫌がらせの回数は減ったのだが、それは本当に表向きだけであった。
物を隠される、上履きやスポーツシューズにも画鋲が投入される、中でも真面目な学生であるKにとってノートを破かれたのは、彼としても心身ともにダメージが大きかった。
ヤマザキや気のいい一軍のメンバーは「くだらないことはするな」と注意をしてくれたが、複数人数でシフトでも組まれているのか嫌がらせは実に巧妙で、犯人の特定は難しいところであった。
「……なんかあったら連絡して」
ヤマザキや心優しい一軍たちとこっそりラインの交換をしたところをSに見つかり、Sの一方的な嫉妬と怒りにより彼らは初めて衝突した。Sは腕っぷしはとても強かったので教師の仲裁が入るまで教室は荒れ狂い混沌を極めた。
「S、やめろ、やめてマジで。ヤマザキ君ごめん、本当にごめんなさい」
Sに殴られて頬を腫らしたヤマザキは「なんでKが謝るんだよ」と、やりきれないような悲しそうな表情を浮かべている。
「君たちみたいないい人が、理不尽なことで嫌な目に遭うのは見てて本当に辛いんだ」
でも、現にそんな状況になっちゃってるから。だからありがとう。Kの「ありがとう」はさようならと同意で、クラスの災厄ともいえるSを引き受けるかのように彼は孤立していった。
Kの心には周囲の偏見と理不尽に対する怒りがあった。自分の付き合う知人友人にチクリチクリと口出しをされる閉鎖的な環境に対する息苦しさがあった。
目の前が赤く染まるような意味の分からない憎しみが時折心を支配した。何故自分だったのだという、災厄に魅入られた己の不運さに嫌気がさした。
何故自分なんだ、なぜ自分だけがこんな、どうしてこんな目に遭わされなければならないんだ。バケツで水を掛けられ鞄や学生服を濡らし、電車にも乗れない彼はゆらゆら地面が溶けるような蜃気楼を遠くに見つけながら、ぼんやりと亡霊のように家路につく。
「キモイんだよね、K君は」
全体的にさ。女子たちのイジメは真綿で首を絞められるような心を削り取られるようなそれだったが、目の前の男、イオという名字の男子生徒は美しい顔を化け物のように歪ませてKの髪を鷲掴みにして引きずり回している。
バイセクシャルで、Sに崇拝にも近い恋愛感情と劣情を抱いているイオにとって、Kという存在はとても許すことができない者だった。
「……」
「何怯えた振りしてんの。被害者面してんじゃねえよ」
こいつがイジメの中心人物かと、Kは存外冷静に主犯格の顔を見つめた。美しい顔とあわせて小柄で華奢な彼は「王子」だとか「姫」だとか相反するあだ名が付けられていた。
守ってあげたいという理由で男女問わず一定の人間に好かれている彼は、反面裏表が激しい人物でもあり、気に入らない人間はこうして徹底的に潰しているのだと心優しい一軍の一部にそれとなく教えてもらったことがある。
「S君の謹慎期間中に俺を呼び出すの、頭いいね」
ヤマザキや一軍の良心たちに、勘違いから暴行に走ったSは謹慎処分を受けていた。Sが傍にいたのであれば、きっとKに嫌がらせをした女子やイオに害をなすであろうから、いじめっ子たちがKを呼び出すタイミングとしては今が良い機会だったのだろう。
「なにそれ、Sがお前を守ってくれるって?」
ヒロイン気取りウザいね。苛立ち紛れにイオはKの腹部に蹴りを入れた。Kも痛い目には遭いたくないし回避したかったのだが、取り巻きに羽交い絞めにされていたので攻撃をもろに食らってしまい思わず吐き気を催す。
「っ汚えなぁ、吐くなよ……」
「吐かせるようなことしてる人が、何言ってんの?」
がさりとスマホを抱えたままこちらへやってきたのは、ヤマザキと一軍の良心数名だった。
「おい何見てんだ、お前らチクんなよ」
「はい、馬鹿だね」
証拠動画を収めたヤマザキは、心底軽蔑した眼差しをイオに送る。それからクラスのグループラインにイジメ動画を共有した。
「イオさぁ、お前やりすぎなんだよ」
「キモイと思う奴に構う、お前の方がはるかにキモいよ」
分が悪いと悟ったのか、イオの取り巻き達は蜘蛛の子を散らすようにその場から去っていった。突然集団という後ろ盾がなくなったイオは、先ほどの横暴な態度が嘘のようにおとなしくなっている。
「っなんで、そんな奴庇うんだよ」
「見ててウザいから。お前がね」
Kを助けてくれたクラスメイト達からの冷ややかな目線に耐えきれなかったのか、イオもその場から逃げるように立ち去る。
「……K君、せっかく勉強できるのにさ。こんな学校に来たのが間違いだったのかもね」
「こんな奴らが一軍気取ってさ、いっちょ前にイジメのエグさだけは進学校かって」
「でも皆頭わりいから、ほら。証拠とか全部ガバガバなんだよね」
自分を卑下しながらも、ヤマザキと一軍たちはなんともやりきれない表情を浮かべている。イオや女子たちに呼び出される前、Kはヤマザキ達に「最後のお願い」をしていた。SNSにでもどこにでも投稿してくれていいし、どこかの雑誌に売っても良いからイジメの証拠となる動画を撮影してほしいと。
「俺達にもね、人の心はありますよ」
だからそんな悲しいことを言うなよ。助けられる範囲で助けてあげたいと思ったんですよ、君の事。ぽんと軽く肩を叩いてくれた心優しい人たちの言葉に感謝をしながらもKは、自分はここに居て良い人間ではないとあらためて思った。
「さらば我が母校……なんてね」
Sの謹慎が終わるタイミングを頃合いに、Kはイジメを受けた心的ならびに物理的な外傷を理由に学校を休む。それからほどなくして彼は転校した。蝉の音が少しだけ遠のいた夏の終わりに。
こういった事態に対して普段は腰が重い教師や教育委員会の者たちも、物的証拠が揃いすぎており、かつ警察にも窃盗や暴行で「相談」をしていたので、加害者たちへの処分は早かった。Kが転校までの間、少しばかりの平和な学園生活が遅れたのも、彼らが少々長めの停学処分となったからだ。
それでも、理不尽に対する怒りの炎は消えてはくれなかった。檻のような閉鎖的な空間に対する息苦しさも、目の前が赤く染まるような意味の分からない憎しみも消えてはくれず、時折黒い憎悪がKの心を支配した。
何故自分だったのだという、生贄や餌食にされたような惨めさだけがただただ心に残った。
自分に執着した彼のせいでKはいじめられたというのに。きっとSはそれをわかっていないのだろうとKは思う。彼は頭があまり良くないのだから。心が未成熟なのだから。
転校はSに対するささやかな意趣返しだ。けれどもこれが仕返しになっていると考えるのは、少々自惚れが強いだろうか。
どんな暴力よりも嫌がらせよりもKの心を貫いたのは、鞄に付けていたSとお揃いの赤い防犯ブザーを、目の前で踏みつけられて破壊された時だった。
こんな時にこそ鳴ってくれなかったブザーに苛立ち、ブザーが破壊された瞬間にSの笑顔が脳裏をよぎったのも、Kには悔しくてしかたがなかった。
「認めたくは、なかったな」
とっくのとうにどこかでSに絆されていたその心を。諸悪の根源はKに対してだけいつも優しかった。去り際に思い出す彼の無邪気な好意が、Kにとってはただただ悲しかった。
環境を変えたのはKにとって良い作用となり、転校先の学校ではあっさり平穏が与えられた。楽しい学生生活、部活動、心穏やかに過ごせる友人たちに、恋人だってできた。幸せながらもぬるま湯のような環境に浸っているうちに、やはりあの学校での出来事はつくづく異常だったのだと洗脳が解かれるかのように、徐々にKの視界はクリアになってゆく。
Kが転校してから、Sからの連絡はなかった。やはりSはKを玩具やペット替わりとして見ていたのではないか、彼にとって遠くへ離れてしまったのなら追ってまで手に入れるほどのものではなかったのだろう。
Kは自分から決別したにもかかわらず、チクリと冷たい感覚が棘のように心に残り続けた。
「K君ってさ、別に私の事好きじゃないよね」
振られて終わってしまうその恋たちからは、いつも同じセリフを突き付けられる。服装に少しばかり気遣い、眼鏡も変えた彼はそれなりに恋人もできるようになったのだが、別れの言葉はいつも同じだ。
「受け身過ぎでは?」
「絶食系男子」
「いや聖職系男子」
「女の子はね、ちょっと強引なぐらい求められたいものなのよ」
友人たちの助言にそうかと思い、それでは今度は求められてみるために、男と付き合ってみようとするのはKの変な思い切りの良さ、方向性さえ間違えなければ長所の一つなのだろう。
けれどもマッチングアプリを使用し何人かの男と出会うも、皆「もっと自分を大切にしな」と、普通の友人としてKと接してはそのまま消えていった。
「何故だ」
そんなに俺には魅力がないのかとKは頭を抱えるが、明日から大学生となるのでそこで出会いなんていくらでもあるだろうと彼は悩むのをやめた。
「何故」
「この子可愛いね、俺お持ち帰りする」
Kが死に物狂いで受験をして無事合格した大学は、日本でもトップクラスの名門だ。それなのに新歓で出会った男は、もう二度と会うこともないと思っていた規格外のイケメン、Sだった。
「裏口入学?」
「失礼なこと言わないで」
Kが失礼を承知で言わせてもらうのであれば。
数年ぶりに会ったSは、煌めくようなイケメンや筋肉質で均整の取れた身体付きはそのままで、さらにその顔立ちに知性が追加されたようだと褒めているのだか貶しているのだかわからない感想を素直に述べる。
「K」
「久しぶり」
「うん」
「元気だったか」
「うん」
「そうか。じゃあ」
離してくれと身を起こそうとするKを、Sがそのままにするわけもなく両手をひとまとめに掴み、Kの頭の上で拘束するようにベッドに押し付けた。
「S」
「なあに」
「ここどこ」
「ラブホ」
スンスン甘えるようにSはKの首筋に顔を寄せて、鼻を摺り寄せ匂いを嗅いでいる。汗臭いからやめてくれと身じろぐKの耳元でクスリと小さい笑い声を上げると、そのままペロリと舌を這わせる。
「ずっと会いたかった」
「……そうか」
「Kに会いたくてね」
「うん」
「頑張っちゃった」
「……」
何を、とは聞けない。粗方ヤマザキ達のラインで状況は把握していたからだ。謹慎処分が明けたSは、Kの転校を知り荒れに荒れるかと思いきや、存外通常通りであったという。それから何を思ったのか、SはKを苛めた女子達やイオと次々に身体の関係を持った。
『S、俺を苛めた奴と付き合ったのか』
『いや……付き合うなんてまともなもんじゃない。セフレ以下だよあれ、奴隷とも違う』
心優しい一軍たちからのグループラインには、目にするのも痛々しい出来事が淡々と語られている。
Kに嫌がらせをした回数が多い者ほどSとの性行為の回数も多かったが、それは相手がたとえ国宝級のイケメンであっても目を覆いたくなるような残酷な行為で、性器を裂傷された者、顔面に消えない傷がつくほどに暴行された者、心的外傷となった者など再起不能なまでに今後の人生に良くない影響を及ぼされる者が大半であった。
『あの人たち、訴えなかったの?』
『訴えるわけがない。周囲からも学校からも自業自得扱いだった。もともと股の緩い連中だったから』
『それに、脅されてたからね』
彼らはKのいじめのネタを中心に、ハメ撮り動画なども全て取られ文句が言えないように強請られていたのだという。表向きは学年一のイケメンと関係を持てたのだと、ある種のステータス扱いとして無理やり割り切っていたが、最後は皆ぐちゃぐちゃにされて使い捨てのゴミのようにあっけなくポイと捨てられた。
まるで、Kの目の前で踏みつぶされた赤い防犯ブザーのように。
『イオ……いじめの主犯格なんてもう酷かった』
人としての尊厳を無視された行為をされても、イオはSに心酔し縋りついていたのだという。Sはそんなイオを心底嫌悪し「お前だけはやり方間違えたわ。気持ち悪い」と軽く後悔するほどであったという。
『Sもね、復讐に人を巻き込まないのだけがポリシーみたいだったんだけど』
『復讐?』
誰のための、と聞くのはあまりに察しが悪いだろう。Kは初めて現実から目をそむけたくなった。
イオはS以外の複数の人間に輪姦され、ゴムも使われず不衛生な場所で人としての尊厳を踏みにじられる行為を強いられ、次第にそれは悪化していった。
Sの協力者たちの気がすっかり済む頃には、イオはすっかり精神を壊されたセックス依存症になっていた。けれども彼にとってそれ以上に残酷なことは、美しい容姿までも醜く傷をつけられ抉られ破壊され、そして後孔も酷く破損し今は人工肛門を取り付けたと風の噂で聞いた。
もう前を勃たせることもできず、後孔も使えなくなったイオだというのに、枯渇することのなく湧いて出てくるリビドーは地獄の苦しみのようなものだ。
「K」
「なに」
「ごめんね」
「……何が」
俺のせいで沢山嫌な目にあわせてごめん。Kがひどい目に遭ってるなんて本当に知らなかった。考えすらも及ばなかったの。守れなくてごめんなさい。
たくさん勉強をしたせいなのか、心の成長が進んだSに対してKはかつての友人としての喜びと、それから「もう遅い」という虚しさと悲しさがじんわり心に滲む。
「K」
「嫌だ」
Kもそれなりに恋もしてきたので潔癖というわけではないが、自分の復讐のためとはいえ数多の人間を、それも自分に酷い目に遭わせてきた身体を繋げてきたSに対して拒絶と生理的な嫌悪感が走る。
「拒絶しないで」
「嫌だ」
「……チューはね、Kだけなの」
はあ?と怪訝そうな表情を浮かべるKの唇を、Sは容赦なく奪う。ガチンと歯がぶつかって高い鼻が邪魔だといわんばかりに、不器用過ぎて呼吸もままならなさそうなSの様子に、こいつはキスだけは誰ともしてこなかったんだろうかと、思わず泣き出しそうな笑みを浮かべてしまう。
やめろと身体を背ける度に、Sの拘束は強くなり「ごめんね、お願い。逃げないで、離れないで」と引っ掻かれても乱暴に叩かれてもSはKを抱きしめ続けた。
「S」
「なあに」
「お前、社会に出したら危ない奴だよ」
「そう」
「お前、ヤバくて怖い奴だ……気が狂っている。だからもう俺のそばに居ろ」
周囲に迷惑をかけるな、いつか何かをやらかしそうだから監視しててやるとKが耳元で囁くと、Sは「うん。ずっといる」とKの身体に両腕を絡める。今度は拒絶されることもなく、互いに体温を伝え合った。
『エンゲージリングすか』
『おかげさまでね。お前らには感謝している』
スマホに簡素な返信を打つと、Sは隣で寝息をたてているKを愛おしくてたまらないという目線を送り、そして全身にキスの雨を落とす。
Sのことを「頭があまり良くない」と呼んでも良いのは、彼の中ではKだけだ。実のところSは全てにおいて優れていたので、一つぐらいハンデがないとこの先の人生つまらなくてやっていられないだろうと、子供の頃からぼんやり思っていた。
『勉強縛り』
『そう』
授業を聞かず勉強を全くしなくても赤点を免れている時点で、彼はそういう人間だった。高校進学を機に、そろそろ真面目に授業でも受けてやろうかと入学式に顔を出した瞬間、彼は自身の運命と出会った。
野暮ったい髪型も眼鏡も、存外色白な肌も無遠慮にクスリと笑みを漏らした声すらも、Sにとっては宝石のように煌めいて見えた。
居眠りのふりをしてKの肩を無断で借りると、その温かさと匂いにSは酷く高揚する。
「欲しい」
一目惚れとは理屈で語ることができないものなのだろう。どうしてと聞かれてもきっと彼にもその意味すらわかっていない。モノクロのような退屈な世界に宝石やドロップスのような煌めきと色を教えてくれたKに、Sは人生で初めて恋をした。
「あ、あっ、あぁ、ん」
舌をペニスのように唇で扱かれて、ちろちろ先端を舐められるとKの身体が撓る。耳元を甘噛みし、首筋と鎖骨に唇を落とし朱色の執着の痕を付けてゆく。薄桃の胸の突起に舌を這わせてかりりと噛むと「あっ」という声が上がる。
Sの視界は興奮のあまり赤く染まり、くちゅくちゅと響く湿った熱い音はまるで耳から犯されてゆくような、媚薬を流し込まれているかのようで、狂った欲がアドレナリンのように全身を駆け巡る。
Sとの行為はKに快楽と愛を伝えるためだけの、甘くて執着めいた終わりのない拷問のようだった。
「両方、だめ、あっあっあぁあ」
「気持ちい?」
胸の突起とペニスを同時にいじられると、Kの喉から可愛らしい悲鳴が上がる。自身を甚振るようにKの尻に男根を摺りつけるとそれだけで興奮してしまうのか、Kからは「やだ、恥ずかしい」と耳まで顔を赤く染めて身を震わせる。
「恥ずかしいのK? 可愛いね」
「そういうの、やめ」
「やだ」
もっと見せて。ベッドの横にある大き目の鏡にKの姿を映し、恥ずかしがるKの両足を少し強引に開かせると乳首をくりくり弄る。その度にペニスも揺れて触られていないというのに先走った透明が鈴口から涎のように垂れている様を、Sはまじまじと見入っている。
「あ、あぁっあっあっ……」
「ここ、クチュクチュ音立ててエロいね」
冷たい粘度のある液体を垂らされて、Kは後孔に指を挿し入れられている。きつく閉じたそこはゆっくり弧を描くように弄られて、ズプズプといやらしい音を立ててSの指が抜き差しされている。
「あ、あっあっあぁあっあ、やぁあ!」
もどかしい指の動きが、的確にKの良いところに当たった。強い衝撃にびゅるると白濁を放つと、がくがくいやらしくKは下品に腰を痙攣させる。
「前立腺でイッちゃったの。いい子」
「あぁああ♡ あっ♡ あぁあん♡ やだやだぁ♡」
「んーやなの? いやいやするKも可愛いね♡」
息をつく暇もなく、Kの後孔はSの滾りを捻じ込まれ、出し入れを繰り返されている。初めはゆっくりと、次第に早く肌がぶつかり合う音やぐちゅぐちゅ体液が擦り合う音が絶えず部屋に響き渡る。
「K、キスしよ」
「うぅんっ! んっんっんっ♡」
唇も塞がれてしまい、唾液交換とペニスと肉壺の擦り合いが同時に行われてしまう。ゆっくりとKを気遣うような動きは次第に激しくなってゆき、きゅうきゅう締め付けるそこはきついのに柔らかく、本来であれば受け入れる場所ではないというのにSを捕らえて離さない。
「S、こっちも触ってくれっ!」
「だめ。後ろだけでイこうね♡」
「あぁああっ♡」
パンパンっと強く腰を打ち付けられ、Kはびゅるるとまた鈴口から白濁を吐いた。イケたね、かわいい。好き。Sに耳元で囁かれ、それだけでもKの身体は快楽で痙攣する。
「K可愛い、可愛い、食べちゃいたい、可愛い、かわいい……」
Kの身体が撓り痙攣する度に、奥を突いてめちゃくちゃにしているのはSのはずなのに立場が逆転したかのような狂いそうな良い刺激がペニスを伝い、脳がぐちゃぐちゃに犯されてゆくようだった。
「K、Kっずっと俺を見ててね、死ぬまでずっと監視してて、見張ってなきゃだめだよ?」
俺、何するかわからないヤバい奴なんだから。Kがそう言ったんだよ? 口から零れ出る台詞はとても物騒だというのに、SはKを酷く優しく抱きつぶす。全身にちりばめられた執着の証は、彼にしては控えめなキスマークだらけで、Sのことなら噛みつくぐらいはしそうなのにとKはぼんやり考える。
「S」
「んー?」
ちゅいちゅい頬に、唇にバードキスを降らされて。
「俺がいなくなって、ほんの少しぐらいは寂しかったか?」
「……」
「……すまん、忘れてく」
「殺してやろうかと思った」
何で勝手に俺から離れるの?何で逃げるの?やだよ、いなくならないで。身体が半分に裂かれたみたい、痛いよやだよ。なんで。俺から逃げる足なんていらないよね、切り落としてやろうかな、でもきれいなKの手足を駄目にするのはいやだな。KはKのままが一番好きだから。大好き。なんでKは俺の元からいなくなったの。
……そっかアイツらがKと俺を引きはがしたんだね。アイツらがKを傷つけたのか。どうしてやろうかな、なんで人殺しってやっちゃだめなんだろう、縛りが多いよね。面倒だな。でも一思いに殺してやったらアイツら楽になっちゃうから駄目だね、罰にならないね。ずっと苦しめなくちゃ。でも殺しちゃだめなのはちょっと難しいな。
「……そうか」
少しだけSの心の内を知ってしまったKの中で、踏みつぶされた赤いブザーと自身が重なった気がした。それが何故なのかはわからないが、壊れた赤いブザーが二つ地面に落ちているところを、彼は妄想した。
「Kのおかげで沢山頭使ったから、俺少し疲れちゃったみたい」
「そうか、ごめんな」
「ううん」
「S」
「なあに」
「おいで」
ぎゅうっとKの胸に頭を抱きかかえられたSは「苦しいよぉ」と形だけ抵抗してみせるが、くすくすとこの男には少々似合わない愛らしい笑みを浮かべており、やがてKよりも強い力で彼の身体を抱きしめる。
疲れたというのは本当のようで、Kの胸に顔を預けてスースー眠るSは、小さい子供のように無防備だった。
Kが恋人達と長続きしなかったのも、マッチングアプリで男と出会うも肉体関係までに至らなかったのも、実は全部Sの仕業だった。離れていてもKの行動は絶えず監視されており、彼が本当に自由な時間は眠った後の夢の中ぐらいだろうか。
「何となく、わかってた」
Sの独白のような告白にも、Kは素直に頷いていた。
「飽きられて、見捨てられていたわけではなかったんだな」
もしあの閉鎖された空間での嫌がらせもいじめも、本当は全てSが仕組んだことだとしたら。 「良い」一軍グループとの交流も、本当は監視目的だとしたのなら。それはKの考え過ぎだろうか。
「K」
「どうしたの」
「一つだけ信じて」
俺、Kを傷つけることだけは絶対にしない。いじめのことだけは本当に、ごめんなさい。次は絶対に守るから、もうあんな思いはさせないから。
Kは無言でSの目尻に溜まった涙を指で拭うと、そのままSの髪を指で梳いてみる。
この日、Kは美しい化け物を飼うことを、心に決めた。
けれども世の中には何とかしてうまくバランスを取ろうと、見えざる力がどこかで働くものなのだろうか。
Sの顔の造形は神懸かりなレベルで整っており、均整の取れた身体つきも高い身長も、もし神様という者がいるのであれば、さぞかし気を使い調整や修正を重ねて造られたのだろうということが窺い知れる。
色素の薄い艶やかで透けるような肌、透明感のある白銀の髪も碧眼も、高い鼻も形の良い唇も持って生まれたものであり、その姿に囚われてしまえばもう自ら視線を外すことは難しいと、周囲の人間は彼を神聖化していた。
「K君さぁ、S君と仲良いよね」
またか、とKは内心溜息を吐いた。Kは成績優秀な生徒で、心も同級生に比べてみれば成熟している方だと思われる。身長は平均程度の痩せ型体型、その肌は存外白く顔立ちもよくよく見てみれば整っているほうだ。
けれども長めの黒い前髪も野暮ったい黒ぶち眼鏡もきっちり着込んだ制服も、どこか垢抜けずトータルの評価としては地味めの男子学生と言えるだろう。
「普段、S君と何して遊んでるの?」
「Sとどんな話するの?」
単純な興味で声をかけて来る者たちも勿論いるが、学年一のイケメンに懐かれている男に対しての嫉妬の念を抱く者、もしくは自分も取り入ってもらおうとすり寄って来る者たちも少なくはない。
彼は俺をペットや玩具にしているだけで、そもそも会話なんて成り立たなっていないようなものです。Kは煩わしいイケメンに、不本意ながら少しだけ思いを馳せる。
KとSは高校の入学式で席が隣同士だった。Sは校長先生の挨拶をどこか愁いを帯びた表情で聞き流しており、眠さに抗えないのか時折こっくりこっくりと舟を漕いでいた。
その姿に思わずクスリと笑みを浮かべてしまったKは、そのままSに寄りかかられてしまった。
気持ちよさそうに左肩に身を預けたまま眠る、生ぬるく重たいイケメンのようなハンデを抱えたまま、Kは誰にも助けを求められず身じろぎすることさえもなく、入学式を終わりまで過ごすことになった。
「……おはよ、誰?」
人の肩を無断で枕代わりに使用していた無礼な男は、その無礼さを上塗りするかのようにむにゃむにゃとKに話しかける。
「Kですけど」
「ふうん」
向こうから話しかけてきたというのに、興味をなくしたかのようにSはKから身体を離し目線を逸らす。何なのだこの男は。これからクラスメイトになるであろう男から心身ともに距離を置こうと立ち上がると、ぐいと手を引っ張られてしまいそのまま居眠り野郎はKを自分の腕の中に引きずり込んでしまった。
「Sだよ」
子供体温なのだろうか、すりすりとマーキングでもするようにKに抱き付いて身を摺り寄せている男は温かく、ふわりと香水の香りがした。
「S君離してください」
「なんで」
「なんでときたもんだ」
「どうして」
「言いまわしだけ変えられてもな」
これからホームルームが始まるのだから、自分の席に戻りなさいねと教師のように告げると、Sは渋々と、けれども存外素直に「わかった」とKの言葉に従った。
「またね」
ひらひらと手を振って席に戻る彼を見送りながら「まずいな、友達認定されてしまったか」と少しばかりの危機感と面倒くささを感じ、Kは突然現れた距離無し系男子と上手いこと穏便に距離を取る方法を考え始めた。
出会ってしまったが最後、もう手遅れだということには気付かぬまま。
「K」
「S君、おはよう」
少し肌寒い春の風や心地よい初夏の空気なんてものはあっという間に過ぎ去り、じわじわとうだるような夏の暑さがやってくる頃には、海外ほど明確ではないがクラス内でもぼんやりとしたスクールカーストが出来上がっていた。
その中でも一軍と呼ばれる人々は絶えず賑やかで、ひょっとしたら面白いことを探していないと呼吸や心臓が止まって死んでしまうのではないか、とKが気遣う程度に日々騒々しい。
「おうS、おはよ」
「S君おはよう」
「S~おはよ、どしたん? おねむ?」
「まだ寝ぼけてんね可愛い」
「こら、起きろ~」
一軍のメンバーやクラスメイト達は、Sをまるで可愛らしい赤ん坊のように構い倒そうとする。皆が彼と特別になりたいのだろうか、男女問わずSに声をかける者は多かった。Sはそれらを適当にあしらい、すでに机で教科書を読んでいるKの元へふらふらやってきた。
彼はきっと朝が弱いのだろう。わけのわからない呻き声のような、ふにゃふにゃした赤ん坊の喃語を操るSを「そう、へえ、ほう、なるほど」と適当に返してやるKの視界は教科書に注がれたままだ。
「……抱っこ」
「やあ、ようやく人間語を喋った」
両腕を広げてハグを待つSをそのまま無視すると、Kは「席に座りなさいよ」と厳かに言葉を発する。
「はぁい」
良い返事をしながら、SはKを後ろから抱きかかえてKの座席にドッカリ座り込み、膝にKと教科書を乗せてスリスリその身を摺り寄せた。
「……席を指定しなかった俺が悪かったか、ごめんね。S君の。君の。自分の席に座りなさいね」
「今日からここが俺の席だもん」
「そんなことがあってたまるか」
Kにとっては不本意だが、SとKの席は隣同士である。近くに俺がいるのだから今生の別れというわけでもあるまいに、と古めかしい言葉で諭すもSは「やだ、さびしい」と両手を広げてママもといKを求めている。自分に甘える規格外のイケメンを尻目に、Kは内心「早く席替えしろ」と切に願っていた。
「……」
一軍にしてみれば、幼馴染というわけでもなく同中(おなちゅう)というわけでもない、ぽっと出の地味眼鏡ことKに「何アイツ」という目線が向けてしまうのにそう時間はかからなかった。クラスどころか学年でも目立つ人気者のSに対して塩対応なのも、彼らの反感を存分に買うこととなった。
「K君ちょっといい?」
昼休みは安息の時間だ。Kは友人と昼を食べ、Sは一軍たちの元へ行くのでこの時間は暑苦しい高身長の赤ちゃんが彼に纏わりつくこともない。
今回声をかけてきたのは一軍の、どちらかと言えば端っこにいる取り巻きの女子たちで、タナカだとかタカハシだとか確かそんな名前だったとKはぼんやり記憶していた。
「つまり、どういうことでしょうか」
数人の女子に呼び出され壁に追い詰められているKは、げんなりした様子を隠すことなく控えめに質問をする。通常であれば女子の呼び出しなんて憧れのシチュエーションの一つではないだろうか。そう通常であれば。
殺気立った六つの目線を向けられてみれば、この呼び出しが告白や恋愛といった甘いものではなく、どちらかと言えばリンチのそれが適切だろうとKも判断した。
「ちょっと、K君のSに対する態度が無いかな~って」
「S君にかまってもらえて、勘違いしちゃったかな?」
Sが心を許しているように見えるKがウザい、しかもそのポジションに感謝することもなくSを邪険にしているのが許せない、調子に乗っていると一部の一軍の方々はお怒りな状況だ。
「なるほど」
ドンッと肩を強めに押されたKは状況を理解すると、すぐさま防犯ブザーの紐を引っ張りとてつもないアラームを響かせると、動揺した女子たちの一瞬の隙をついてその場から逃走した。
「おかえり、K。一緒に帰ろ」
あれ、鞄に付けてる奴ないね、どこかに落としたの? 気遣いのできないSは、Kが防犯用に付けていたブザーが鞄から無くなっていることは目ざとく見つけたが、無くした理由までは思い至らず無邪気にKを苛立たせた。
「あれは防犯ブザーっていうものでね、どうも消耗品だったみたいでさ。君のおかげで人生初めて使う機会ができたってわけ」
防犯ブザー自体は何度も使いまわせるが、逃走するためにあの場所へ置いて来てしまったので、少しばかり回収は難しいだろう。苛立ちと嫌味を交えてとげとげしい言葉をSにぶつけるが、Sはきょとんとした表情を一瞬浮かべ、それでもKの後ろを雛鳥のようについてくる。
「一人で帰る」
「一緒に帰ろ」
「寄るところがあるから、一人で帰る」
「一緒に帰ろうよ」
べたべたと纏わりつき身を摺り寄せるSは、珍しく上目遣いでKの顔色を窺っている。
「俺、なんかしちゃった? 怒ってる? 謝るから許して」
「……」
何故怒っているかその理由もわからぬままただ謝られてもイラつくだけなのだが、Kにも人の心があったので「お前が人気者過ぎて俺に被害が及んでいる」とは流石に言い出しにくかった。
「帰ろ?」
目の前の逞しい身体つきの長身は、Kの手を強引に繋ぐとぶんぶん幼稚園児のように振って、横に並んで歩き出した。放課後の校舎を歩く、少し距離感がおかしくなった二人の仲睦まじい姿を一軍の一人が目撃していたのは、Kにとってこれもまたよくないことであった。
「おはよ」
次の日。SはKの元へ一目散にやってくると、大手電気屋のビニール袋の開け口を逆さにしてジャララと何かをKの机にぶちまけた。
「おはよう、S君これは?」
Kの机には沢山の防犯ブザーが転がっている。Kが以前使っていた物やSの好みだろうか、赤や黄色のカラフルなブザーもあった。
「前の無くなっちゃったんでしょ? だから新しいのあげる」
Sは赤くて可愛らしい子供用ブザーを自身の鞄につけると、Kの鞄にも同じように赤いブザーを一つ取り付けた。
「君とおそろか」
「うん」
「……ありがとう、大切にするよ」
「えへへぇ、俺も」
ブザーの用途を考えると「何か違うな」と思いつつも、Kは他に貰った多量のブザーを優先的に使うことに決めた。
「Sさん、ついに本命にエンゲージブザープレゼントすか」
「おめでとうざいます」
「おめでと」
「ありがとう」
クラスメイトのヤマザキやヨシオカといった、一軍の中でも性格の良いメンバーはからかい交じりにSとKの中を祝福してやっている。普段は怠そうに適当な返事を返すだけのSが、無邪気かつ異様なまでに執着しているKのことは皆知っていた。
「K君のどこが好きなんすか」
「全部」
「ストレートに惚気きた」
「俺の一目惚れ」
「聞いてねえし追撃エグイて」
「S、K君好ハオすぎるしょ」
珍しく浮かれているSを尻目に、一軍とその周辺の一部の目線は冷ややかであった。
一軍たちは基本的にトラブルには無関心で、いじめなどに対しても関わらない反面、表立って止めるということもほぼない。
それが彼らの処世術の一つではあるが、それ以上に一軍側の人間として一部のいじめを行う者たちは無駄に人脈もあり知恵が働く分、被害者側としては非常に厄介であった。
「K大丈夫?」
「……うん」
最初は揶揄いや悪ふざけ、そして物を隠されたり机に画びょうやゴミを捻じ込まれたりなど陰湿な嫌がらせが行われた。都度証拠を取り、友人たちも協力してくれたが犯人の尻尾が掴めない。「消えろ」「Sに関わるな」「Sと離れてください」なんて手紙が下駄箱に投函される程度の嫌がらせなんて、まだ可愛いほうだ。
「……かかわるなって言われても」
Sが自分から離れてくれないなんて言おうものなら、彼らの怒りは更に悪化するだろう。何をどう訴えても「自慢」や「調子に乗っている」と囚われてしまう、狂信者的なファンを持つ人気者と、モブのような自分は隣にいるだけでも駄目らしい。
そしてKが思うにSの頭はあまり良くない。学力は今一つで中の下といったぐらいで済んでいるが、彼の心の発育は遅い方だとKは判断する。
人気者の自分がSに絡むことによって周囲はどう思うか、Kはどんな目を向けられてしまうかといったことまで、きっと彼はまだ考えが及ばないのだ。
或いは、Kがどんな目に遭おうとも自分には関係がなく、彼は彼でただKをお気に入りの玩具にでもして、自身の好きなようにできればそれでよいのかもしれない。
「K、遊ぼ」
美しい男は、Kに執着し惜しみなく好意を向けて、本人はそうとは知らずに純粋に残酷にKを傷つけてゆく。
「S君」
「なあに?」
「今日ね、君のことが好きな人に嫉妬されてね、うっかり殺されかけるところだったんだ」
階段の踊り場で突き飛ばされた瞬間Kは死を覚悟したが、たまたま近くにいた一軍のヤマザキという男が手を引っ張ってくれたので、ケガすることなく踏みとどまることができたのだ。
『大丈夫? ちょっとシャレにならないよなこれ。ごめん俺から言っとくわ。先生にも』
『……いいえ』
嫌がらせが酷くなるから。絞り出すようにようやくそれだけ答えると、ヤマザキは悲し気に表情を歪ませていた。
「K君の彼氏は何してんだろうね」
好きな人も守れないなんて、ひでー男よな。今回のことは大事にする気はないといった様子で、ヤマザキはふざけた調子でKの肩を軽く叩くと安全な場所に着くまで、彼は行動を共にしてくれた。
「……ごめんね、K。俺知らなかった」
イジメの話を聞かされたSは、眉も目尻も下げて泣きそうな表情で抱き付こうとするがKはやんわりそれを止める。
「こういうのがね、彼らを刺激するんだ。君はものすごく目立つしモテるんだから、こんな簡単に、思わせぶりな態度を取っちゃだめなんだよ」
「うん」
SはKを抱きすくめると、チュッチュとリップ音を盛大に響かせて、頭部に唇を何度も落としている。
「何に対しての『うん』だ、何に対しての」
「うん」
何もわかっていないじゃないかと、必死にSを引きはがそうとしながら憤るKをそのままに。
「Kだけだもん。ほかの人に、思わせぶりな態度? は取らない」
とSは明後日の方向に固く誓いを立てていた。
「K君さぁ、人の話聞いてた?」
「……ですよね」
放課後、いつもの校舎裏もといリンチ場に呼び出されたKは、複数の女子に囲まれて絶体絶命のピンチとしか言いようのない状況に陥っていた。
Sはいよいよ遠慮がなくなったのか、真面目な生徒や教師が顔をしかめる程度には、おはようからおやすみまでぴったりとKにひっつくようになってしまった。四六時中傍にいることにより表面上の嫌がらせの回数は減ったのだが、それは本当に表向きだけであった。
物を隠される、上履きやスポーツシューズにも画鋲が投入される、中でも真面目な学生であるKにとってノートを破かれたのは、彼としても心身ともにダメージが大きかった。
ヤマザキや気のいい一軍のメンバーは「くだらないことはするな」と注意をしてくれたが、複数人数でシフトでも組まれているのか嫌がらせは実に巧妙で、犯人の特定は難しいところであった。
「……なんかあったら連絡して」
ヤマザキや心優しい一軍たちとこっそりラインの交換をしたところをSに見つかり、Sの一方的な嫉妬と怒りにより彼らは初めて衝突した。Sは腕っぷしはとても強かったので教師の仲裁が入るまで教室は荒れ狂い混沌を極めた。
「S、やめろ、やめてマジで。ヤマザキ君ごめん、本当にごめんなさい」
Sに殴られて頬を腫らしたヤマザキは「なんでKが謝るんだよ」と、やりきれないような悲しそうな表情を浮かべている。
「君たちみたいないい人が、理不尽なことで嫌な目に遭うのは見てて本当に辛いんだ」
でも、現にそんな状況になっちゃってるから。だからありがとう。Kの「ありがとう」はさようならと同意で、クラスの災厄ともいえるSを引き受けるかのように彼は孤立していった。
Kの心には周囲の偏見と理不尽に対する怒りがあった。自分の付き合う知人友人にチクリチクリと口出しをされる閉鎖的な環境に対する息苦しさがあった。
目の前が赤く染まるような意味の分からない憎しみが時折心を支配した。何故自分だったのだという、災厄に魅入られた己の不運さに嫌気がさした。
何故自分なんだ、なぜ自分だけがこんな、どうしてこんな目に遭わされなければならないんだ。バケツで水を掛けられ鞄や学生服を濡らし、電車にも乗れない彼はゆらゆら地面が溶けるような蜃気楼を遠くに見つけながら、ぼんやりと亡霊のように家路につく。
「キモイんだよね、K君は」
全体的にさ。女子たちのイジメは真綿で首を絞められるような心を削り取られるようなそれだったが、目の前の男、イオという名字の男子生徒は美しい顔を化け物のように歪ませてKの髪を鷲掴みにして引きずり回している。
バイセクシャルで、Sに崇拝にも近い恋愛感情と劣情を抱いているイオにとって、Kという存在はとても許すことができない者だった。
「……」
「何怯えた振りしてんの。被害者面してんじゃねえよ」
こいつがイジメの中心人物かと、Kは存外冷静に主犯格の顔を見つめた。美しい顔とあわせて小柄で華奢な彼は「王子」だとか「姫」だとか相反するあだ名が付けられていた。
守ってあげたいという理由で男女問わず一定の人間に好かれている彼は、反面裏表が激しい人物でもあり、気に入らない人間はこうして徹底的に潰しているのだと心優しい一軍の一部にそれとなく教えてもらったことがある。
「S君の謹慎期間中に俺を呼び出すの、頭いいね」
ヤマザキや一軍の良心たちに、勘違いから暴行に走ったSは謹慎処分を受けていた。Sが傍にいたのであれば、きっとKに嫌がらせをした女子やイオに害をなすであろうから、いじめっ子たちがKを呼び出すタイミングとしては今が良い機会だったのだろう。
「なにそれ、Sがお前を守ってくれるって?」
ヒロイン気取りウザいね。苛立ち紛れにイオはKの腹部に蹴りを入れた。Kも痛い目には遭いたくないし回避したかったのだが、取り巻きに羽交い絞めにされていたので攻撃をもろに食らってしまい思わず吐き気を催す。
「っ汚えなぁ、吐くなよ……」
「吐かせるようなことしてる人が、何言ってんの?」
がさりとスマホを抱えたままこちらへやってきたのは、ヤマザキと一軍の良心数名だった。
「おい何見てんだ、お前らチクんなよ」
「はい、馬鹿だね」
証拠動画を収めたヤマザキは、心底軽蔑した眼差しをイオに送る。それからクラスのグループラインにイジメ動画を共有した。
「イオさぁ、お前やりすぎなんだよ」
「キモイと思う奴に構う、お前の方がはるかにキモいよ」
分が悪いと悟ったのか、イオの取り巻き達は蜘蛛の子を散らすようにその場から去っていった。突然集団という後ろ盾がなくなったイオは、先ほどの横暴な態度が嘘のようにおとなしくなっている。
「っなんで、そんな奴庇うんだよ」
「見ててウザいから。お前がね」
Kを助けてくれたクラスメイト達からの冷ややかな目線に耐えきれなかったのか、イオもその場から逃げるように立ち去る。
「……K君、せっかく勉強できるのにさ。こんな学校に来たのが間違いだったのかもね」
「こんな奴らが一軍気取ってさ、いっちょ前にイジメのエグさだけは進学校かって」
「でも皆頭わりいから、ほら。証拠とか全部ガバガバなんだよね」
自分を卑下しながらも、ヤマザキと一軍たちはなんともやりきれない表情を浮かべている。イオや女子たちに呼び出される前、Kはヤマザキ達に「最後のお願い」をしていた。SNSにでもどこにでも投稿してくれていいし、どこかの雑誌に売っても良いからイジメの証拠となる動画を撮影してほしいと。
「俺達にもね、人の心はありますよ」
だからそんな悲しいことを言うなよ。助けられる範囲で助けてあげたいと思ったんですよ、君の事。ぽんと軽く肩を叩いてくれた心優しい人たちの言葉に感謝をしながらもKは、自分はここに居て良い人間ではないとあらためて思った。
「さらば我が母校……なんてね」
Sの謹慎が終わるタイミングを頃合いに、Kはイジメを受けた心的ならびに物理的な外傷を理由に学校を休む。それからほどなくして彼は転校した。蝉の音が少しだけ遠のいた夏の終わりに。
こういった事態に対して普段は腰が重い教師や教育委員会の者たちも、物的証拠が揃いすぎており、かつ警察にも窃盗や暴行で「相談」をしていたので、加害者たちへの処分は早かった。Kが転校までの間、少しばかりの平和な学園生活が遅れたのも、彼らが少々長めの停学処分となったからだ。
それでも、理不尽に対する怒りの炎は消えてはくれなかった。檻のような閉鎖的な空間に対する息苦しさも、目の前が赤く染まるような意味の分からない憎しみも消えてはくれず、時折黒い憎悪がKの心を支配した。
何故自分だったのだという、生贄や餌食にされたような惨めさだけがただただ心に残った。
自分に執着した彼のせいでKはいじめられたというのに。きっとSはそれをわかっていないのだろうとKは思う。彼は頭があまり良くないのだから。心が未成熟なのだから。
転校はSに対するささやかな意趣返しだ。けれどもこれが仕返しになっていると考えるのは、少々自惚れが強いだろうか。
どんな暴力よりも嫌がらせよりもKの心を貫いたのは、鞄に付けていたSとお揃いの赤い防犯ブザーを、目の前で踏みつけられて破壊された時だった。
こんな時にこそ鳴ってくれなかったブザーに苛立ち、ブザーが破壊された瞬間にSの笑顔が脳裏をよぎったのも、Kには悔しくてしかたがなかった。
「認めたくは、なかったな」
とっくのとうにどこかでSに絆されていたその心を。諸悪の根源はKに対してだけいつも優しかった。去り際に思い出す彼の無邪気な好意が、Kにとってはただただ悲しかった。
環境を変えたのはKにとって良い作用となり、転校先の学校ではあっさり平穏が与えられた。楽しい学生生活、部活動、心穏やかに過ごせる友人たちに、恋人だってできた。幸せながらもぬるま湯のような環境に浸っているうちに、やはりあの学校での出来事はつくづく異常だったのだと洗脳が解かれるかのように、徐々にKの視界はクリアになってゆく。
Kが転校してから、Sからの連絡はなかった。やはりSはKを玩具やペット替わりとして見ていたのではないか、彼にとって遠くへ離れてしまったのなら追ってまで手に入れるほどのものではなかったのだろう。
Kは自分から決別したにもかかわらず、チクリと冷たい感覚が棘のように心に残り続けた。
「K君ってさ、別に私の事好きじゃないよね」
振られて終わってしまうその恋たちからは、いつも同じセリフを突き付けられる。服装に少しばかり気遣い、眼鏡も変えた彼はそれなりに恋人もできるようになったのだが、別れの言葉はいつも同じだ。
「受け身過ぎでは?」
「絶食系男子」
「いや聖職系男子」
「女の子はね、ちょっと強引なぐらい求められたいものなのよ」
友人たちの助言にそうかと思い、それでは今度は求められてみるために、男と付き合ってみようとするのはKの変な思い切りの良さ、方向性さえ間違えなければ長所の一つなのだろう。
けれどもマッチングアプリを使用し何人かの男と出会うも、皆「もっと自分を大切にしな」と、普通の友人としてKと接してはそのまま消えていった。
「何故だ」
そんなに俺には魅力がないのかとKは頭を抱えるが、明日から大学生となるのでそこで出会いなんていくらでもあるだろうと彼は悩むのをやめた。
「何故」
「この子可愛いね、俺お持ち帰りする」
Kが死に物狂いで受験をして無事合格した大学は、日本でもトップクラスの名門だ。それなのに新歓で出会った男は、もう二度と会うこともないと思っていた規格外のイケメン、Sだった。
「裏口入学?」
「失礼なこと言わないで」
Kが失礼を承知で言わせてもらうのであれば。
数年ぶりに会ったSは、煌めくようなイケメンや筋肉質で均整の取れた身体付きはそのままで、さらにその顔立ちに知性が追加されたようだと褒めているのだか貶しているのだかわからない感想を素直に述べる。
「K」
「久しぶり」
「うん」
「元気だったか」
「うん」
「そうか。じゃあ」
離してくれと身を起こそうとするKを、Sがそのままにするわけもなく両手をひとまとめに掴み、Kの頭の上で拘束するようにベッドに押し付けた。
「S」
「なあに」
「ここどこ」
「ラブホ」
スンスン甘えるようにSはKの首筋に顔を寄せて、鼻を摺り寄せ匂いを嗅いでいる。汗臭いからやめてくれと身じろぐKの耳元でクスリと小さい笑い声を上げると、そのままペロリと舌を這わせる。
「ずっと会いたかった」
「……そうか」
「Kに会いたくてね」
「うん」
「頑張っちゃった」
「……」
何を、とは聞けない。粗方ヤマザキ達のラインで状況は把握していたからだ。謹慎処分が明けたSは、Kの転校を知り荒れに荒れるかと思いきや、存外通常通りであったという。それから何を思ったのか、SはKを苛めた女子達やイオと次々に身体の関係を持った。
『S、俺を苛めた奴と付き合ったのか』
『いや……付き合うなんてまともなもんじゃない。セフレ以下だよあれ、奴隷とも違う』
心優しい一軍たちからのグループラインには、目にするのも痛々しい出来事が淡々と語られている。
Kに嫌がらせをした回数が多い者ほどSとの性行為の回数も多かったが、それは相手がたとえ国宝級のイケメンであっても目を覆いたくなるような残酷な行為で、性器を裂傷された者、顔面に消えない傷がつくほどに暴行された者、心的外傷となった者など再起不能なまでに今後の人生に良くない影響を及ぼされる者が大半であった。
『あの人たち、訴えなかったの?』
『訴えるわけがない。周囲からも学校からも自業自得扱いだった。もともと股の緩い連中だったから』
『それに、脅されてたからね』
彼らはKのいじめのネタを中心に、ハメ撮り動画なども全て取られ文句が言えないように強請られていたのだという。表向きは学年一のイケメンと関係を持てたのだと、ある種のステータス扱いとして無理やり割り切っていたが、最後は皆ぐちゃぐちゃにされて使い捨てのゴミのようにあっけなくポイと捨てられた。
まるで、Kの目の前で踏みつぶされた赤い防犯ブザーのように。
『イオ……いじめの主犯格なんてもう酷かった』
人としての尊厳を無視された行為をされても、イオはSに心酔し縋りついていたのだという。Sはそんなイオを心底嫌悪し「お前だけはやり方間違えたわ。気持ち悪い」と軽く後悔するほどであったという。
『Sもね、復讐に人を巻き込まないのだけがポリシーみたいだったんだけど』
『復讐?』
誰のための、と聞くのはあまりに察しが悪いだろう。Kは初めて現実から目をそむけたくなった。
イオはS以外の複数の人間に輪姦され、ゴムも使われず不衛生な場所で人としての尊厳を踏みにじられる行為を強いられ、次第にそれは悪化していった。
Sの協力者たちの気がすっかり済む頃には、イオはすっかり精神を壊されたセックス依存症になっていた。けれども彼にとってそれ以上に残酷なことは、美しい容姿までも醜く傷をつけられ抉られ破壊され、そして後孔も酷く破損し今は人工肛門を取り付けたと風の噂で聞いた。
もう前を勃たせることもできず、後孔も使えなくなったイオだというのに、枯渇することのなく湧いて出てくるリビドーは地獄の苦しみのようなものだ。
「K」
「なに」
「ごめんね」
「……何が」
俺のせいで沢山嫌な目にあわせてごめん。Kがひどい目に遭ってるなんて本当に知らなかった。考えすらも及ばなかったの。守れなくてごめんなさい。
たくさん勉強をしたせいなのか、心の成長が進んだSに対してKはかつての友人としての喜びと、それから「もう遅い」という虚しさと悲しさがじんわり心に滲む。
「K」
「嫌だ」
Kもそれなりに恋もしてきたので潔癖というわけではないが、自分の復讐のためとはいえ数多の人間を、それも自分に酷い目に遭わせてきた身体を繋げてきたSに対して拒絶と生理的な嫌悪感が走る。
「拒絶しないで」
「嫌だ」
「……チューはね、Kだけなの」
はあ?と怪訝そうな表情を浮かべるKの唇を、Sは容赦なく奪う。ガチンと歯がぶつかって高い鼻が邪魔だといわんばかりに、不器用過ぎて呼吸もままならなさそうなSの様子に、こいつはキスだけは誰ともしてこなかったんだろうかと、思わず泣き出しそうな笑みを浮かべてしまう。
やめろと身体を背ける度に、Sの拘束は強くなり「ごめんね、お願い。逃げないで、離れないで」と引っ掻かれても乱暴に叩かれてもSはKを抱きしめ続けた。
「S」
「なあに」
「お前、社会に出したら危ない奴だよ」
「そう」
「お前、ヤバくて怖い奴だ……気が狂っている。だからもう俺のそばに居ろ」
周囲に迷惑をかけるな、いつか何かをやらかしそうだから監視しててやるとKが耳元で囁くと、Sは「うん。ずっといる」とKの身体に両腕を絡める。今度は拒絶されることもなく、互いに体温を伝え合った。
『エンゲージリングすか』
『おかげさまでね。お前らには感謝している』
スマホに簡素な返信を打つと、Sは隣で寝息をたてているKを愛おしくてたまらないという目線を送り、そして全身にキスの雨を落とす。
Sのことを「頭があまり良くない」と呼んでも良いのは、彼の中ではKだけだ。実のところSは全てにおいて優れていたので、一つぐらいハンデがないとこの先の人生つまらなくてやっていられないだろうと、子供の頃からぼんやり思っていた。
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『そう』
授業を聞かず勉強を全くしなくても赤点を免れている時点で、彼はそういう人間だった。高校進学を機に、そろそろ真面目に授業でも受けてやろうかと入学式に顔を出した瞬間、彼は自身の運命と出会った。
野暮ったい髪型も眼鏡も、存外色白な肌も無遠慮にクスリと笑みを漏らした声すらも、Sにとっては宝石のように煌めいて見えた。
居眠りのふりをしてKの肩を無断で借りると、その温かさと匂いにSは酷く高揚する。
「欲しい」
一目惚れとは理屈で語ることができないものなのだろう。どうしてと聞かれてもきっと彼にもその意味すらわかっていない。モノクロのような退屈な世界に宝石やドロップスのような煌めきと色を教えてくれたKに、Sは人生で初めて恋をした。
「あ、あっ、あぁ、ん」
舌をペニスのように唇で扱かれて、ちろちろ先端を舐められるとKの身体が撓る。耳元を甘噛みし、首筋と鎖骨に唇を落とし朱色の執着の痕を付けてゆく。薄桃の胸の突起に舌を這わせてかりりと噛むと「あっ」という声が上がる。
Sの視界は興奮のあまり赤く染まり、くちゅくちゅと響く湿った熱い音はまるで耳から犯されてゆくような、媚薬を流し込まれているかのようで、狂った欲がアドレナリンのように全身を駆け巡る。
Sとの行為はKに快楽と愛を伝えるためだけの、甘くて執着めいた終わりのない拷問のようだった。
「両方、だめ、あっあっあぁあ」
「気持ちい?」
胸の突起とペニスを同時にいじられると、Kの喉から可愛らしい悲鳴が上がる。自身を甚振るようにKの尻に男根を摺りつけるとそれだけで興奮してしまうのか、Kからは「やだ、恥ずかしい」と耳まで顔を赤く染めて身を震わせる。
「恥ずかしいのK? 可愛いね」
「そういうの、やめ」
「やだ」
もっと見せて。ベッドの横にある大き目の鏡にKの姿を映し、恥ずかしがるKの両足を少し強引に開かせると乳首をくりくり弄る。その度にペニスも揺れて触られていないというのに先走った透明が鈴口から涎のように垂れている様を、Sはまじまじと見入っている。
「あ、あぁっあっあっ……」
「ここ、クチュクチュ音立ててエロいね」
冷たい粘度のある液体を垂らされて、Kは後孔に指を挿し入れられている。きつく閉じたそこはゆっくり弧を描くように弄られて、ズプズプといやらしい音を立ててSの指が抜き差しされている。
「あ、あっあっあぁあっあ、やぁあ!」
もどかしい指の動きが、的確にKの良いところに当たった。強い衝撃にびゅるると白濁を放つと、がくがくいやらしくKは下品に腰を痙攣させる。
「前立腺でイッちゃったの。いい子」
「あぁああ♡ あっ♡ あぁあん♡ やだやだぁ♡」
「んーやなの? いやいやするKも可愛いね♡」
息をつく暇もなく、Kの後孔はSの滾りを捻じ込まれ、出し入れを繰り返されている。初めはゆっくりと、次第に早く肌がぶつかり合う音やぐちゅぐちゅ体液が擦り合う音が絶えず部屋に響き渡る。
「K、キスしよ」
「うぅんっ! んっんっんっ♡」
唇も塞がれてしまい、唾液交換とペニスと肉壺の擦り合いが同時に行われてしまう。ゆっくりとKを気遣うような動きは次第に激しくなってゆき、きゅうきゅう締め付けるそこはきついのに柔らかく、本来であれば受け入れる場所ではないというのにSを捕らえて離さない。
「S、こっちも触ってくれっ!」
「だめ。後ろだけでイこうね♡」
「あぁああっ♡」
パンパンっと強く腰を打ち付けられ、Kはびゅるるとまた鈴口から白濁を吐いた。イケたね、かわいい。好き。Sに耳元で囁かれ、それだけでもKの身体は快楽で痙攣する。
「K可愛い、可愛い、食べちゃいたい、可愛い、かわいい……」
Kの身体が撓り痙攣する度に、奥を突いてめちゃくちゃにしているのはSのはずなのに立場が逆転したかのような狂いそうな良い刺激がペニスを伝い、脳がぐちゃぐちゃに犯されてゆくようだった。
「K、Kっずっと俺を見ててね、死ぬまでずっと監視してて、見張ってなきゃだめだよ?」
俺、何するかわからないヤバい奴なんだから。Kがそう言ったんだよ? 口から零れ出る台詞はとても物騒だというのに、SはKを酷く優しく抱きつぶす。全身にちりばめられた執着の証は、彼にしては控えめなキスマークだらけで、Sのことなら噛みつくぐらいはしそうなのにとKはぼんやり考える。
「S」
「んー?」
ちゅいちゅい頬に、唇にバードキスを降らされて。
「俺がいなくなって、ほんの少しぐらいは寂しかったか?」
「……」
「……すまん、忘れてく」
「殺してやろうかと思った」
何で勝手に俺から離れるの?何で逃げるの?やだよ、いなくならないで。身体が半分に裂かれたみたい、痛いよやだよ。なんで。俺から逃げる足なんていらないよね、切り落としてやろうかな、でもきれいなKの手足を駄目にするのはいやだな。KはKのままが一番好きだから。大好き。なんでKは俺の元からいなくなったの。
……そっかアイツらがKと俺を引きはがしたんだね。アイツらがKを傷つけたのか。どうしてやろうかな、なんで人殺しってやっちゃだめなんだろう、縛りが多いよね。面倒だな。でも一思いに殺してやったらアイツら楽になっちゃうから駄目だね、罰にならないね。ずっと苦しめなくちゃ。でも殺しちゃだめなのはちょっと難しいな。
「……そうか」
少しだけSの心の内を知ってしまったKの中で、踏みつぶされた赤いブザーと自身が重なった気がした。それが何故なのかはわからないが、壊れた赤いブザーが二つ地面に落ちているところを、彼は妄想した。
「Kのおかげで沢山頭使ったから、俺少し疲れちゃったみたい」
「そうか、ごめんな」
「ううん」
「S」
「なあに」
「おいで」
ぎゅうっとKの胸に頭を抱きかかえられたSは「苦しいよぉ」と形だけ抵抗してみせるが、くすくすとこの男には少々似合わない愛らしい笑みを浮かべており、やがてKよりも強い力で彼の身体を抱きしめる。
疲れたというのは本当のようで、Kの胸に顔を預けてスースー眠るSは、小さい子供のように無防備だった。
Kが恋人達と長続きしなかったのも、マッチングアプリで男と出会うも肉体関係までに至らなかったのも、実は全部Sの仕業だった。離れていてもKの行動は絶えず監視されており、彼が本当に自由な時間は眠った後の夢の中ぐらいだろうか。
「何となく、わかってた」
Sの独白のような告白にも、Kは素直に頷いていた。
「飽きられて、見捨てられていたわけではなかったんだな」
もしあの閉鎖された空間での嫌がらせもいじめも、本当は全てSが仕組んだことだとしたら。 「良い」一軍グループとの交流も、本当は監視目的だとしたのなら。それはKの考え過ぎだろうか。
「K」
「どうしたの」
「一つだけ信じて」
俺、Kを傷つけることだけは絶対にしない。いじめのことだけは本当に、ごめんなさい。次は絶対に守るから、もうあんな思いはさせないから。
Kは無言でSの目尻に溜まった涙を指で拭うと、そのままSの髪を指で梳いてみる。
この日、Kは美しい化け物を飼うことを、心に決めた。
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もし思いついたらその時はまた読んでやってください笑
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読んでくださりありがとうございます!
いつか何か思いついた際には、こっそり書きますね。
この作品も好きです(〃艸〃)ムフッ
ありがとうございます!!