7 / 50
7
しおりを挟む
その後はどうやって帰ってきたのか、翔と何の話をしたのか覚えていなかった。
そのくらいの衝撃的なことだった。
「私と……中山くんが……?」
何だか信じれない話で、頭の中がふわふわしている。
リビングのソファーに座り、何気なくつけたテレビの内容も頭に入らない。こんな状態で仕事も出来るわけなかった。
「どうしたらいいの……?」
高校生の頃、好きだった人。だけど、今も好きなのかは分からない。忘れられない人には変わらないが、その思いは好きな気持ちなのかは分からない。
◇◇◇◇◇
「え!?」
かよは驚いた。まさかそんなことになってるとは思ってもいなかった。
「中山くん、やるねぇ」
と、茶化すくらいだ。
「で、あんたはなんでそんな顔してるのよ」
微妙な顔をしている菜々美がおかしいのか、笑いながら言った。
「なんで笑うのよ」
「あんたのその顔が面白い」
「かよっ」
ふふっと笑い、菜々美を見る。
「でもどうするの?」
「え」
「中山くんのこと」
どうするのと聞かれて、菜々美はどうしたらいいのか答えに詰まる。
自分で自分が分からない。どうしたらいいのか決めかねてる。
「……どうしたらいいと思う?」
かよにそう聞いてみる。聞かれたかよは、菜々美を見た。
「菜々美の気持ちはどうなの?今も好き?」
「………分からない」
「でも中山くんのことを忘れたことはないんでしょ」
「うん……」
忘れられる筈がなかった。告白して振られたわけでもないから、次へと進めなかったのだ。
「ま、少し考えてみなよ」
こういう時、かよは適当なことを言わない。そこがかよといて好きなところだ。
「仕事も頑張ってね」
毎日のように顔を出しては適度話をし、帰っていく。
かよの後ろ姿を見送って、また仕事部屋に籠る。書けるところは書き進めておこうと、パソコンを起動させた。
◇◇◇◇◇
暫く、キーボードを叩く音が部屋に響く。マンションにひとりきり。静かなものだ。静かな空間で菜々美は小説を書く。たまに音楽をかけながら書くのだが、今日は静かな空間で書きたい気分だった。
そんな空間を遮るように、菜々美のスマホが鳴り出した。
「……もしもし?」
迷惑そうに電話に出るのは今書いてる小説が、乗ってるから。止めたくはなかったのだ。
『菜々美先生!』
担当編集者の山之内だった。
「なに?」
迷惑だと言わんばかりの声で言うと、山之内はマズイところにかけたと分かった。
『原稿、どうですか?』
マズイと分かっていながらもそう聞くのは、それが山之内の仕事でもあるから。
「今書いてる」
『書けますか?例のところ』
その言葉は詰まる菜々美を分かってるのか、山之内は笑った。
『だと思って、そういうDVD、送っておきました!』
と元気よく言った山之内は電話を切った。
(そういうDVDって……?)
頭の中に過る嫌な予感。それは大当たりだった。
その日の夕方に届いた山之内からの荷物。ダンボールの中を開けた瞬間、脱力した。
「山之内~っ」
目の前にはいない担当編集者の名前を恨めしそうに呟く。
「これをどうしろとっ!」
ダンボールの中身は所謂、アダルトDVDがいくつか入っていて、おまけのようにそういうグッズが入ってる。
「絶対、面白がってる」
山之内は菜々美が未経験だとは知らないが、経験は浅いと思っている。だからか、こういうものを送って反応を面白がってるのだろう。半分は仕事の為に。半分はおフザけで。
菜々美は直ぐに抗議の電話を入れた。
『嫌だなぁ。フザけてなんかいないですよ~』
電話の向こうではクスクス笑う山之内。
『参考にしてください~』
「参考……って!」
『あ、入ってるグッズは是非とも使ってみてくださいね!』
クスクス笑う山之内は絶対面白がってる。
「使えるかっ!」
珍しく菜々美は大声を出す。そして再び脱力感でいっぱいになった。
そのくらいの衝撃的なことだった。
「私と……中山くんが……?」
何だか信じれない話で、頭の中がふわふわしている。
リビングのソファーに座り、何気なくつけたテレビの内容も頭に入らない。こんな状態で仕事も出来るわけなかった。
「どうしたらいいの……?」
高校生の頃、好きだった人。だけど、今も好きなのかは分からない。忘れられない人には変わらないが、その思いは好きな気持ちなのかは分からない。
◇◇◇◇◇
「え!?」
かよは驚いた。まさかそんなことになってるとは思ってもいなかった。
「中山くん、やるねぇ」
と、茶化すくらいだ。
「で、あんたはなんでそんな顔してるのよ」
微妙な顔をしている菜々美がおかしいのか、笑いながら言った。
「なんで笑うのよ」
「あんたのその顔が面白い」
「かよっ」
ふふっと笑い、菜々美を見る。
「でもどうするの?」
「え」
「中山くんのこと」
どうするのと聞かれて、菜々美はどうしたらいいのか答えに詰まる。
自分で自分が分からない。どうしたらいいのか決めかねてる。
「……どうしたらいいと思う?」
かよにそう聞いてみる。聞かれたかよは、菜々美を見た。
「菜々美の気持ちはどうなの?今も好き?」
「………分からない」
「でも中山くんのことを忘れたことはないんでしょ」
「うん……」
忘れられる筈がなかった。告白して振られたわけでもないから、次へと進めなかったのだ。
「ま、少し考えてみなよ」
こういう時、かよは適当なことを言わない。そこがかよといて好きなところだ。
「仕事も頑張ってね」
毎日のように顔を出しては適度話をし、帰っていく。
かよの後ろ姿を見送って、また仕事部屋に籠る。書けるところは書き進めておこうと、パソコンを起動させた。
◇◇◇◇◇
暫く、キーボードを叩く音が部屋に響く。マンションにひとりきり。静かなものだ。静かな空間で菜々美は小説を書く。たまに音楽をかけながら書くのだが、今日は静かな空間で書きたい気分だった。
そんな空間を遮るように、菜々美のスマホが鳴り出した。
「……もしもし?」
迷惑そうに電話に出るのは今書いてる小説が、乗ってるから。止めたくはなかったのだ。
『菜々美先生!』
担当編集者の山之内だった。
「なに?」
迷惑だと言わんばかりの声で言うと、山之内はマズイところにかけたと分かった。
『原稿、どうですか?』
マズイと分かっていながらもそう聞くのは、それが山之内の仕事でもあるから。
「今書いてる」
『書けますか?例のところ』
その言葉は詰まる菜々美を分かってるのか、山之内は笑った。
『だと思って、そういうDVD、送っておきました!』
と元気よく言った山之内は電話を切った。
(そういうDVDって……?)
頭の中に過る嫌な予感。それは大当たりだった。
その日の夕方に届いた山之内からの荷物。ダンボールの中を開けた瞬間、脱力した。
「山之内~っ」
目の前にはいない担当編集者の名前を恨めしそうに呟く。
「これをどうしろとっ!」
ダンボールの中身は所謂、アダルトDVDがいくつか入っていて、おまけのようにそういうグッズが入ってる。
「絶対、面白がってる」
山之内は菜々美が未経験だとは知らないが、経験は浅いと思っている。だからか、こういうものを送って反応を面白がってるのだろう。半分は仕事の為に。半分はおフザけで。
菜々美は直ぐに抗議の電話を入れた。
『嫌だなぁ。フザけてなんかいないですよ~』
電話の向こうではクスクス笑う山之内。
『参考にしてください~』
「参考……って!」
『あ、入ってるグッズは是非とも使ってみてくださいね!』
クスクス笑う山之内は絶対面白がってる。
「使えるかっ!」
珍しく菜々美は大声を出す。そして再び脱力感でいっぱいになった。
0
あなたにおすすめの小説
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる