紅い薔薇 蒼い瞳

星河琉嘩

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第4章

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 目が覚めると理菜は、ベットの中にいた。部屋の中には良樹の姿はない。
 だけどすぐに良樹が、部屋の中に入って来た。



「起きたか」
 ベットの中でグダグダしていた理菜に声をかけると、キスをして来た。
「みんな起きて出かけたぞ」
 出かけたってことは、亜紀も浩介も駿壱たちもどこかへ行ったのだろう。
 理菜を見下ろす良樹が、ニコッと笑う。
 整ったキレイな顔。
 目の前にある良樹のキレイな顔を見ると、なんだか照れてしまう。


「リナ。メシ、食いに行くか」
 そう言って理菜の頭を撫でる。その言葉に「うん」と答えた。
 顔を洗って身支度をした理菜は、良樹がいるリビングへ入っていった。
 リビングは昨日の惨劇が残っていた。


「酷いなぁ」
 ポツリと言った理菜に良樹は笑った。
「昨夜騒いだからな」
 空き缶がゴロゴロ転がっていて、テーブルの上も食べたものの残りが散乱していた。
「片付けなきゃ」
「平気だ」
「え」
「戻ってくる時には元通りだから」
 その言葉に理解出来ない理菜は、キョトンとしている。

「うちの親が雇ってる」
 なんの話かよく分からない理菜は、良樹の顔をじっと見ていた。
「親が雇った家政婦がじきに来る」
 ──家政婦。そんな話、初めて聞いた。
 理菜は改めて林家の凄さを知った。


 理菜の手を取り、家から出る良樹。その良樹に、少し距離を感じてしまった。


 ──ねぇ。
 ──何を考えてるの?


 もしかしたら良樹は、寂しさを感じているのかもしれない。親と一緒に住んでないこの状況に、寂しさを感じているのかもしれない。
 でもだからって、何か言える立場じゃない。家のことを話さないから、林家はどんな状況なのかは理解出来ない。



     ◆◆◆◆◆



 繁華街はまだ人通りが少なかった。まだ昼間だからなのかもしれない。
 静かな繁華街だった。


 ハンバーガー屋で良樹が、理菜の手に視線を落として言う。
「リナ。それ、外すなよ」
 理菜の左手に嵌められたリング。
 銀色に光るリング。
「うん」
 返事を返した理菜に、目を細めて笑う。
 それは本当に嬉しそうだった。
 だからさっきのは気のせいだったみたいだ。距離を感じた良樹は、もうどこにもいなかった。


「静かだな」
 繁華街を歩いていると、良樹がそう言った。
「まだ昼前だからじゃないの?」
 理菜はそう言った。
 だけど良樹は違う何かを感じているようで、真剣な目をしていた。


「ちょっと寄る」
 と、いつか来たことのあるラーメン屋に入って行く。
 ラーメンを食べに来たわけじゃない。ラーメン屋の店長のところに、話を聞きに来たらしい。


「ヨシキ」
 店長はそう声をかけて来た。店内は客がまだいない。
「なんでこんなに静かなんだ」
「あ?」
「いつも以上に静か」
「ああ。なんか動きがあったらしいな」
 店長も真剣な目で言う。そして理菜に視線を移した。

「え」
 思わず店長をじっと見てしまった。それに気付いた良樹も、理菜を見ていてどうしたらいいのか分からなくなった。
「ヨシキ。問題はBTのことだけじゃねぇぜ」
 BTと聞いて身体が強張る。
 でもそれ以上に強張ったのは、その後に聞いた言葉。





「J・Fが……、動いた」





 J・F。

 初め、なんのことか分からなかった。
でも、当てはまることはひとつ。
 店長さんが理菜に視線を移したこと。聞かれたくなかったのかもしれないと、理解した。



 ──ううん。違う。



 理菜に聞かせる為だったのかもしれない。
「……パパ……」
 ポツリと呟いた。


 ──パパが動き出してる。


「リナ」
 そう声をかける良樹に、微かに笑う。だけど理菜はは分かっていた。自分には、やらなきゃいけないことが迫っているってこと。


 この繁華街に出入りする人間が、J・Fに何かされないようにしなきゃいけない。
 タカシがいなくなったのも、きっとそれが関係している。
 そんな気がしてならなかった。


 ──パパはあたしを捕まえようとしている。
 
 
 でも本気で捕まえようとするなら、とっくに捕まってる。なのに、なかなか捕まえようとしないのは何かあるから。もしかしたら理菜を追い詰める為に、なかなか動かなかっただけなのかもしれない。繁華街の人たちを使って、何かしようとしているのかもしれない。それを見て楽しんでいるのかもしれない。


 理菜はそう感じていた。


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