Eternal Chains - 圧政の影

ペコかな

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第3章: 反逆の決意

1. 決意の夜

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月明かりが湿地帯を薄く照らし、霧がゆっくりと流れる夜。
リーシャは一人、反乱軍の集会場である古びた納屋の中に立っていた。

彼女の心は重く、そして決意に満ちていた。


初めての戦いでの勝利と、仲間の犠牲。

その記憶が彼女の心を締め付けていた。

リーシャは、自分がリーダーとして本当にふさわしいのか、悩んでいた。
戦いの厳しさを知り、仲間たちの命が自分の手に委ねられていることを痛感していたからだ。


納屋の扉が静かに開き、アンリが入ってきた。
彼もまた、戦いの後遺症に苦しんでいるようだったが、その目にはまだ強い光が宿っていた。


「リーシャ、こんなところにいたのか。」
アンリは彼女に近づき、そっと声をかけた。

「みんな、君を探していたんだ。大丈夫か?」


リーシャは無言で頷いたが、その表情はどこか不安げだった。


アンリは彼女の様子に気づき、静かに問いかけた。
「何か、悩んでいるのか?」

リーシャはしばらく沈黙を守った後、重い口を開いた。
「アンリ、私は…リーダーとして、本当にこの反乱を導くことができるのか、わからなくなってきた。」

アンリは驚いた表情でリーシャを見つめた。
「リーシャ、そんなことを言うなよ。君はこの村の希望なんだ。
みんな、君を信じている。君の導きがあったからこそ、俺たちはここまで来られたんだ。」


リーシャは苦笑いを浮かべた。
「でも、アンリ、私は仲間を失った。ダリオを救えなかった。
あの時、もっと別の選択があったのかもしれないって、ずっと考えてる。」


アンリは彼女の言葉を聞き、深く息をついた。
「確かに、俺たちはダリオを失った。それは辛いことだ。
でも、リーシャ、君は最善を尽くしたんだ。
俺たちは全員がリスクを承知で戦っている。
君一人にその責任を背負わせるつもりはない。」


「でも…」リーシャは言葉を詰まらせた。
「私がもっと強ければ、もっと賢ければ…」


その時、納屋の奥からグレタが現れた。


彼女は静かにリーシャに歩み寄り、その肩に手を置いた。

「リーシャ、リーダーであることは簡単なことではない。
特に、私たちのように命をかけた戦いに身を投じる者にとっては。
あなたが感じている不安や恐れは当然のことだ。
それを乗り越えてこそ、真のリーダーとなる。」


リーシャはグレタの言葉に耳を傾け、じっと考え込んだ。


グレタは続けて言った。

「リーダーとは、常に正しい選択ができる者ではなく、困難な状況でも希望を見失わずに進む者のことだ。
あなたは、もうその力を持っている。
仲間たちはあなたを信じ、共に戦う覚悟を持っている。
今、あなたがリーダーとして覚悟を決める時だ。」


リーシャはグレタの言葉に心を打たれた。


彼女はこれまで、自分の力に自信を持てずにいたが、仲間たちの信頼と期待を無駄にするわけにはいかないことを悟った。


「ありがとう、グレタさん。」
リーシャは深く息を吸い込み、心を落ち着けた。


「私がリーダーとして、この戦いを導きます。
どんな困難があっても、私は皆を守り抜くと決めました。」

アンリは微笑んでリーシャに頷いた。


「それでこそリーシャだ。
俺たちはどんな時でも君を支える。君一人じゃない。
みんなで一緒に戦うんだ。」


リーシャはアンリとグレタに感謝の意を込めて微笑んだ。


「ありがとう、二人とも。これからは、迷わずに進むわ。
私たちの戦いはまだ始まったばかり。
セリオンに立ち向かい、この国を取り戻すために、全力を尽くします。」


リーシャの決意に、アンリとグレタも力強く応えた。

三人は互いに目を見合わせ、これからの戦いに向けて新たな覚悟を固めた。

その夜、リーシャは納屋の外に出て、星空を見上げた。

彼女の心には、ダリオをはじめとする失われた仲間たちの姿が浮かんでいた。

彼らの犠牲を無駄にしないために、彼女はリーダーとしての責任を全うする決意を再び胸に刻んだ。


「私は、この戦いを勝利に導く。」
リーシャは静かに呟いた。


「どんなに辛い道でも、私は進み続ける。そして、必ずこの国に自由を取り戻すんだ。」

その言葉は夜空に吸い込まれ、まるで星々が彼女の決意に応えているかのように、輝きを増していった。

リーシャはその場を立ち去り、仲間たちのもとへと戻った。


彼女の足取りは、もはや迷いも不安もなく、強い意志に満ちていた。
反乱軍のリーダーとして、彼女はついに覚悟を決めたのだった。
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