追放された悪役令嬢ですが、港町で寿司屋を開店します~前世の知識で寿司を握ったら辺境伯様に溺愛されるようです~

緋村ルナ

文字の大きさ
12 / 17

第11章:聖女の仮面、その終焉

しおりを挟む
 リズがカイとの婚約を発表し、その名声が「食の革命家」として王都で揺るぎないものになっていく一方で、嫉妬と憎悪の炎を燃やす者がいた。聖女ミアだ。
 レオナルドがリズに未練を残していること、そして世間の注目が自分ではなくリズに集まっていることが、彼女には我慢ならなかった。追い詰められたミアは、最後の、そして最悪の手段に打って出ることを決意する。聖女に与えられた聖なる力を、己の私怨のために悪用するのだ。
 彼女は、リズの王都店に毎日納品される魚に、密かに呪いをかけた。それは強力な毒ではない。食べた者をすぐには殺さず、しかし確実に体を蝕み、苦しめる、微弱で陰湿な呪い。聖なる力とは正反対の、邪悪な波動をまとったものだった。大規模な食中毒事件を引き起こし、「リズのSUSHは呪われた食べ物だ」と吹聴して、彼女を社会的に抹殺する算段だった。
 しかし、彼女の浅はかな計画は、すべてお見通しだった。
 カイは、ミアが何かを仕掛けてくることを警戒し、腹心の密偵を彼女の周辺に放っていた。そして、ミアが魚市場で不審な動きを見せたことをいち早く察知したのだ。
 報告を受けたカイは、すぐさまリズと連携を取った。呪いがかけられた魚が店に届くと、リズは厨房を完全に隔離し、浄化の魔法を最大限に発動させた。彼女の清浄な魔力は、魚にかけられた邪悪な呪いを綺麗に無効化した。だが、リズはカイの指示通り、あえて呪いの残滓――その痕跡だけを、僅かに魚に残しておいたのだ。
 何も知らないミアは、計画が成功したと思い込み、王宮に駆け込んで芝居がかった悲劇のヒロインを演じた。
「陛下! 大変です! リズの店の邪悪な料理で、多くの人々が原因不明の病に苦しんでいます! あれは神の教えに背く悪魔の食べ物ですわ!」
 彼女の訴えを受け、王の命により、高位の神官たちが「SUSH屋 リズ」の調査に入った。彼らが呪いの残滓が残る魚を鑑定した結果は、ミアの予想を根底から覆すものだった。
「こ、これは…! 間違いありません。聖女様が使われる聖なる力と波長は酷似している…。しかし、これほど邪悪で、禍々しい呪いの痕跡は見たことがない!」
 聖女の力に似た、邪悪な呪い。その使い手は、一人しか考えられない。神官たちの報告により、ミアの嘘と、聖女の力を私利私欲のために悪用したという前代未聞の大罪は、完全に白日の下に晒された。
 王宮を揺るがす大スキャンダル。ミアは聖女の称号を剥奪され、その奇跡の力の源だった魔力もすべて失い、一介の平民以下の犯罪者として、国外の修道院へ永久追放となった。
 そして、彼女を盲信し、婚約者を不当に断罪し、国政を混乱させた責を問われたレオナルドもまた、王太子位の剥奪こそ免れたものの、その権威と権力の大半を削がれ、政治の表舞台から事実上姿を消すこととなった。
 悪意は悪意によって滅び、永かった因縁は、ついに完全な終焉を迎えたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~

有賀冬馬
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」 婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。 けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。 セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。 「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。 ――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。

元悪役令嬢、偽聖女に婚約破棄され追放されたけど、前世の農業知識で辺境から成り上がって新しい国の母になりました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢ロゼリアは、王太子から「悪役令嬢」の汚名を着せられ、大勢の貴族の前で婚約を破棄される。だが彼女は動じない。前世の記憶を持つ彼女は、法的に完璧な「離婚届」を叩きつけ、自ら自由を選ぶ! 追放された先は、人々が希望を失った「灰色の谷」。しかし、そこは彼女にとって、前世の農業知識を活かせる最高の「研究室」だった。 土を耕し、水路を拓き、新たな作物を育てる彼女の姿に、心を閉ざしていた村人たちも、ぶっきらぼうな謎の青年カイも、次第に心を動かされていく。 やがて「辺境の女神」と呼ばれるようになった彼女の奇跡は、一つの領地を、そして傾きかけた王国全体の運命をも揺るがすことに。 これは、一人の気高き令嬢が、逆境を乗り越え、最高の仲間たちと新しい国を築き、かけがえのない愛を見つけるまでの、壮大な逆転成り上がりストーリー!

悪役令嬢は廃墟農園で異世界婚活中!~離婚したら最強農業スキルで貴族たちが求婚してきますが、元夫が邪魔で困ってます~

黒崎隼人
ファンタジー
「君との婚約を破棄し、離婚を宣言する!」 皇太子である夫から突きつけられた突然の別れ。 悪役令嬢の濡れ衣を着せられ追放された先は、誰も寄りつかない最果ての荒れ地だった。 ――最高の農業パラダイスじゃない! 前世の知識を活かし、リネットの農業革命が今、始まる! 美味しい作物で村を潤し、国を救い、気づけば各国の貴族から求婚の嵐!? なのに、なぜか私を捨てたはずの元夫が、いつも邪魔ばかりしてくるんですけど! 「離婚から始まる、最高に輝く人生!」 農業スキル全開で国を救い、不器用な元夫を振り回す、痛快!逆転ラブコメディ!

崖からポイ捨てされた不運令嬢ですが、銀髪イケメン竜王に『最愛の伴侶』としてスカウトされました!

有賀冬馬
恋愛
不作も天災も、全部わたしのせい!? 「不運な女」と虐げられ、生贄として崖から捨てられたわたし、ミラ。 でも、落ちた先で待っていたのは、まぶしいほど綺麗な銀髪の竜王・アルベルト様でした! 「君がいたから、この国は守られていたんだよ」 えっ、わたしって実はすごい聖女だったの!? 竜宮城で贅沢三昧&溺愛生活スタート! そんな中、わたしを捨てて大ピンチになった元婚約者が「ミラ、戻ってきて!」と泣きついてきて……。

婚約破棄された悪役令嬢の私、前世の記憶を頼りに辺境で農業始めます。~美味しい野菜で国を救ったら聖女と呼ばれました~

黒崎隼人
ファンタジー
王太子アルベルトから「悪役令嬢」の濡れ衣を着せられ、辺境へ追放された公爵令嬢エリザベート。しかし彼女は動じない。なぜなら彼女には、前世で日本の農業研究者だった記憶があったから! 痩せた土地、疲弊した人々――「ならば私が、この地を楽園に変えてみせる!」 持ち前の知識と行動力で、次々と農業改革を成功させていくエリザベート。やがて彼女の噂は王都にも届き、離婚を告げたはずの王太子が、後悔と疑問を胸に辺境を訪れる。 「離婚した元夫婦」が、王国を揺るがす大きな運命の歯車を回し始める――。これは、復縁しない二人が、最高のパートナーとして未来を築く、新しい関係の物語。

処理中です...