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第14章:本当の価値、過去への決別
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呆然と立ち尽くすアルフォンスとリリアに、店のスタッフの一人が気づいた。
「お客様、どうぞこちらへ」
案内された席に着いても、二人とも言葉を発することができなかった。やがて、イザベラが注文を取りに、彼らのテーブルへとやってきた。彼女は、フードを被った二人の客に気づくと、一瞬だけ目を見開いた。しかし、すぐに冷静さを取り戻し、穏やかな、しかしどこか壁を感じさせる業務的な笑みを浮かべた。
「……ようこそ、『太陽の恵み』へ。ご注文は、お決まりでしょうか」
その落ち着き払った態度が、アルフォンスの心をさらにかき乱した。彼は、意を決してフードを取った。
「……イザベラ」
彼の顔を見て、イザベラは少しも動揺しなかった。ただ、静かにそこに立っている。
「アルフォンス殿下。このような辺境まで、ようこそお越しくださいました」
「イザベラ……すまなかった。私は、私が間違っていた」
アルフォンスは、絞り出すように言った。プライドも何もかも、投げ打っての言葉だった。
「君の力を、私は見誤っていた。どうか、王都に戻ってきてほしい。そして、その力を、私のために、この国のために貸してほしい。君が望むなら、妃として再び……」
「お断りいたします」
彼の懇願を、イザベラは凛とした声で、きっぱりと遮った。
「私の居場所は、ここです。この土地と、ここで暮らす人々が、私の何よりの宝物ですから」
その言葉に、黙って聞いていたリリアが甲高い声を上げた。
「なんですって!?王太子殿下の妃の座を蹴るというの!?平民に媚びへつらって、すっかり落ちぶれたものね!」
リリアの罵声に、店内の空気が凍りついた。しかし、次の瞬間、彼女に向けられたのは、村人たちの冷たい、侮蔑に満ちた視線だった。
「あんたに、イザベラ様の何がわかる!」
「イザベラ様は、俺たちを救ってくれた女神様だ!」
「この村から出ていけ!」
村人たちは、イザベラを庇うようにして、リリアの前に立ちはだかった。自分を蔑む者たちに囲まれ、リリアは恐怖に顔を引きつらせる。
イザベラは、そんな騒ぎを静かに手で制し、アルフォンスに向き直った。
「殿下。本当の価値とは、地位や権力ではありません。誰かを幸せにし、誰かと共に笑い合えること。私は、その本当の価値を、ここで見つけました」
彼女の言葉は、まるで澄んだ鐘の音のように、アルフォンスの胸に深く、深く突き刺さった。王都で自分が追い求めていたものは、なんと空虚で、脆いものだったのだろうか。本当の豊かさとは、目の前にいるこの女性が築き上げた、この温かい光景そのものではないのか。
「……そうか」
アルフォンスは、力なく呟いた。
「君は、もう、私の知らない、遥か遠い場所へ行ってしまったのだな」
彼は、全てを悟った。自分は、この女性を取り戻すことなど、もうできはしない。彼女は、自分の手では決して与えることのできなかった、本当の幸せと王国を、すでにその手にしているのだから。
「お客様、どうぞこちらへ」
案内された席に着いても、二人とも言葉を発することができなかった。やがて、イザベラが注文を取りに、彼らのテーブルへとやってきた。彼女は、フードを被った二人の客に気づくと、一瞬だけ目を見開いた。しかし、すぐに冷静さを取り戻し、穏やかな、しかしどこか壁を感じさせる業務的な笑みを浮かべた。
「……ようこそ、『太陽の恵み』へ。ご注文は、お決まりでしょうか」
その落ち着き払った態度が、アルフォンスの心をさらにかき乱した。彼は、意を決してフードを取った。
「……イザベラ」
彼の顔を見て、イザベラは少しも動揺しなかった。ただ、静かにそこに立っている。
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「イザベラ……すまなかった。私は、私が間違っていた」
アルフォンスは、絞り出すように言った。プライドも何もかも、投げ打っての言葉だった。
「君の力を、私は見誤っていた。どうか、王都に戻ってきてほしい。そして、その力を、私のために、この国のために貸してほしい。君が望むなら、妃として再び……」
「お断りいたします」
彼の懇願を、イザベラは凛とした声で、きっぱりと遮った。
「私の居場所は、ここです。この土地と、ここで暮らす人々が、私の何よりの宝物ですから」
その言葉に、黙って聞いていたリリアが甲高い声を上げた。
「なんですって!?王太子殿下の妃の座を蹴るというの!?平民に媚びへつらって、すっかり落ちぶれたものね!」
リリアの罵声に、店内の空気が凍りついた。しかし、次の瞬間、彼女に向けられたのは、村人たちの冷たい、侮蔑に満ちた視線だった。
「あんたに、イザベラ様の何がわかる!」
「イザベラ様は、俺たちを救ってくれた女神様だ!」
「この村から出ていけ!」
村人たちは、イザベラを庇うようにして、リリアの前に立ちはだかった。自分を蔑む者たちに囲まれ、リリアは恐怖に顔を引きつらせる。
イザベラは、そんな騒ぎを静かに手で制し、アルフォンスに向き直った。
「殿下。本当の価値とは、地位や権力ではありません。誰かを幸せにし、誰かと共に笑い合えること。私は、その本当の価値を、ここで見つけました」
彼女の言葉は、まるで澄んだ鐘の音のように、アルフォンスの胸に深く、深く突き刺さった。王都で自分が追い求めていたものは、なんと空虚で、脆いものだったのだろうか。本当の豊かさとは、目の前にいるこの女性が築き上げた、この温かい光景そのものではないのか。
「……そうか」
アルフォンスは、力なく呟いた。
「君は、もう、私の知らない、遥か遠い場所へ行ってしまったのだな」
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