生徒会執行部の剣姫

生獣屋 芽怠

文字の大きさ
16 / 26

第十五話 柳刃誠十郎VS後藤まりあ

しおりを挟む

 とある日、自分の部屋で机に座りながら頭を抱えていた。

「ふに~」

 後方のドアの隙間からこちらを見つめている人物が俺をこうさせている訳だ。

「ふに~」

「……姉貴、さっきから何やってるんだ?」

 そう、ドアの隙間から睨む様に見詰めているのは我が家の大きな問題児、そして俺の姉貴、後藤まりあだった。
 もう三十分くらいだろうか、あのまま俺を睨んでいる。

「ふに~」

「一体なんなんだよ」

「教えてあげようか兄さん?」

「何か知ってるのかめい……って、ちょっと待て、いつの間に俺の部屋に入りやがった?」

「そんなのは気にしないの、些細な事よ些細な。さて、姉さんは何をしているのかそれは兄さんが悪いのよ?」

 俺が悪い?

「だって姉さんと言う女がありながら彼女を作ったんだもん、姉さんも怒るわよ」

「はぁ、やっぱりか」

「ふに~」

 確かに姉貴なら起こり得る事態だ。姉貴は俺を溺愛している、危ない関係になりそうな程に。
 話し合わないといけないよな、それも今すぐに。それが頭を抱える問題を解決する方法だからだ。

 実は今日、家に姫ちゃんが遊びに来る事になっている。行きたいですと潤んだ瞳で上目遣いされたんじゃ断れなかった。
 もし二人が鉢合わせになってしまったら姉貴が姫ちゃんに喧嘩を吹っ掛けるのは目に見えてる、なんとかしなければ。

「めい、頼みがある」

「何兄さん? 内容によっては報酬が高いよ?」

「実はな、今日姫ちゃんが家に来るんだよ、だから姉貴に会わせない様に協力してほしい」

 さて、こいつの事だ小遣いとか、何か買ってくれと言うに決まっている……のだが、今日は違った。

「良いわよ、あたしに任せなさい」

 あれ? いつもは何か欲しい物を言うのに、どうなってるんだ?

「柳刃さんには借りがあるからね」

 と呟いていたのだが俺には聞こえていなかった。謎のまま、後藤まりあ阻止計画が実行されようとしていた。

「姉さんをあたしの部屋に入れて出て来れなくするから」

「それなら有難い……けど、あの姉貴だぞ? お前一人で大丈夫か?」

「任せて兄さん、あたしを誰だと思うの? ふふ、姉さんならあたしの演技でイチコロよ」

 めいは姉貴の元へ、何故かその背中が大きく見える。すごく頼もしい。
 めいはドアを開け、姉貴に話しかけ始めた。

「姉さん、話があるの」

「ごめんねめいちゃん、お姉ちゃんは今忙しいの」

 さぁ、めいはどう出るんだ? 

「う、ううっ……ひっく」

「え? めいちゃん、どうしたの? 泣いているの?」

「だって、姉さんはいつも兄さんばかり可愛がって、あたしを見てくれ無いもん、ひぐっ、姉さん、酷いよ、あたしだって、“お姉ちゃん”と遊びたいもん! うわああああん!」

 泣き落とし作戦か。

「ふに~! めいちゃん! ご、ごめんね、お姉ちゃんが悪かったよ、泣きやんで? そ、そうだ、今日はずっとめいちゃんの側にいるから、ね? だから機嫌を直して?」

「ぐすっ、本当?」

 めいは上目遣いの涙目で姉貴を見詰めた。
 これがヒットしたらしい、姉貴の頬がピンクに染まり、魅了された。

「ふ、ふに~、泣き顔のめいちゃん可愛い~、さ、めいちゃんの部屋に行こうね?」

 めいの勝利。さすがだ、あの演技力は素晴らしい。
 あいつ、女優になれるんじゃないのか?
 二人がここを離れて行く、めいがちらりとこちらを向き八重歯むき出しの笑い顔をしてこの部屋から退場。多分、嫌、絶対今ちょろいって思っていやがったなあいつ。
 よし、姉貴はなんとかなった。さて、もうそろそろ姫ちゃんが来ても良いはずだ。
 不意に部屋のドアをノックする音が聞こえた。ドアを開くとそこにいたのは、俺の母親。しかもまた下着姿。

「かな、さっきから何を騒いでいるのよ、鳴き声が聞こえた様だけど? まさかめいちゃんをいじめて無いでしょうね?」

「いじめて無いって。それより服を着ろ! 今から客が来るんだからな、そんなみっともない姿を晒すなよな!」

 母さんは俺が言うのもあれだが美人だ。子供三人生んでいるのに、三十前半くらいの容姿。だから余計に下着姿を姫ちゃんに見せる訳にはいかない。

「客? 誰が来る……あ~! 分かったわ、かなの彼女でしょ? 今から来るの? よっしゃどんな女に骨抜きされたか見てやるか」

「ちょっと待った、なんで母さんがその事を?」

「ふっふっふ、めいちゃんに聞いたのよん!」

 あのお喋りめ。

「とにかく服を……」

 着ろと言う前に我が家のチャイムが鳴り響く、来たみたいだ。
 母さんを自分の部屋に直行させて服を着る様に促し、玄関にダッシュ。
 玄関へ行ってみると父さんが応対していた。

「こ、こんにちはです、柳刃と申します、かなめさんにはいらっしゃいますか?」

「かなめの友達だね? こんにちは。さ、上がって、かなめもすぐに……お、もう来ていたか」

「いらっしゃい、姫ちゃん」

 あれ? 今日は休日なのだが、姫ちゃんは制服を着ていた、なんでだ?

「どうして制服?」

「えっと、実は学校に数学の宿題を忘れてしまって、ついでによって来たんです」

「そっか。ま、取りあえず上がって」

「お、お邪魔します」

「ゆっくりしていってね。かなめ、後でお茶とお菓子届けるが何がいい?」

 父さんに和菓子を頼むと伝え、姫ちゃんを俺の部屋へと導く。
 中へと招入れる、よし姉貴に姫ちゃんの姿を見られてない。
 見られ無い様に素早くドアを閉めた。

「かなめさん? どうかしたんですか?」

「へ? あ、えっと、なんでもないさ、あははは!」

 笑って誤魔化した。今日は絶対に姉貴を姫ちゃんに近付けないと固く決意する。
 さてと、今は姫ちゃんとの時間を楽しむだけだ。

「ここに入るのは二度目ですね、最初は生徒会の皆さんと。二回目は……かなめさんの恋人さんとしてです。あはは、自分で言ってて恥ずかしくなっちゃいました」

 紅葉する様に頬が赤く染まる。そして笑顔を振りまく。
 やっぱり姫ちゃんは可愛くて、温かい日常を与えてくれる。
 本当に彼女が俺の彼女だなんて、いまだに信じられない自分がいた。

「と、とにかく座れよ」

「はい」

 机のイスに座らせ、俺はベッドに。
 だが、姫ちゃんが何やら不満そうな顔をしている。どうしたんだ?

「あの、ボク、かなめさんの隣りに座りたいです。良いですか?」

「へ? あ、そっか、じゃあどうぞ……」

 隣りに腰を下ろした。彼女の良い香りがする。
 幸せだ、隣りに姫ちゃんがいてくれて。
 だが二人の空間に割り込むようにノック音、現れたのは母さんだ、お茶とお菓子を持って。
 ちなみにちゃんと服を着ていた。

「こんにちは、私がこいつの母親よ」

「かなめさんのお母様ですか! は、初めまして、ボクは柳刃と申します! よ、よろしくです!」

 ペコリと頭を下げた。その仕草が可愛らしく、母さんもそう感じたみたいだ。

「か、可愛い! お人形みたい。嘘、かなにこんな彼女が出来ただとぉ? なかなかやるわね、見直したわよ、かな」

 母さんが姫ちゃんを気に入った様だ。それは良い事だ、仲が良いならそれにこした事は無い。

「母さんもう良いだろ?」 

「何よ、彼女に独占欲ぅ? かなも男って訳か」

「う、うるさいな!」

 ケラケラ笑いながら出て行こうとしたが、急に止まり姫ちゃんを見ながらこう言った。

「柳刃ちゃんだったわね、今夜ご飯食べて行きなさいよ」

「え? ボクなんかが食べていっても良いんですか?」

「大いに結構よ! 食事は大勢で楽しく、家の家訓よ」

 そんな家訓いつ作ったんだよ、聞いた事無いぞ? けっこう適当なんだよな母さんは。
 まぁいいか、姫ちゃんは素敵な笑顔で了承しているし。そのまま母さんは笑顔で扉を閉める。

「あのかなめさん、夕食良いんですか? 迷惑じゃ無いですか?」

「迷惑なもんか、逆に嬉しい。父さんの料理は旨いぞ? 楽しみに待っていろよな?」

「はい、楽しみにしちゃいます!」

 ん? 姫ちゃんが夕食を一緒に食べる?
 すごく良い事じゃないか、なのにどうしてこんなに嫌な予感がするんだ?

「そうだ、めいさんは元気ですか? かなめさんのお姉様も」

「ああ元気だよ、いつものようにめいは生意気だし姉貴は……」

 ちょっと待て、夕食を姫ちゃんが食べるって事は姉貴と鉢合わせしちまう。
 どうする? 多分父さん達がいる前なら姉貴も少しは大人しいとは思うが、だが未知数だぞ。

「かなめさん? 顔色が悪いですよ?」

「だ、大丈夫だ、なんとか策を考えるから!」

「ほぇ? 策……ですか?」

 くそ、考えても考えても策が浮かばない。どうする俺、何とかしないと。
 考えにふけっていると姫ちゃんがつまらなそうにしていた。

 しまった、せっかく来てくれたのに彼女を不快にさせてしまった。何やってんだ俺。

「かなめさん、何か悩みがあるんですか? もし良かったらボクに話してくれませんか? 話すだけでも楽になるかもです」

「えっと、その……」

 なんて言えば良いんだ? こうなったら正直に話すか? 俺に彼女がいるって事に腹を立てている姉貴の事をか?
 そんな事言ったら姫ちゃんはどうするのだろうか、嫌な予感がする。

「えっと……」

 考えがまとまらないでいると廊下から騒がしい声が、まさか。

「姉さんダメだったら!」

「放してめいちゃん、お姉ちゃんね、嫌な予感がするの、かなめちゃんの部屋から!」

 姉貴がここに乗り込んで来ようとしているのか?

「や、やばい、ひ、姫ちゃん隠れろ!」

「隠れるんですか? どうしてです?」

「理由は後で説明する、だから早く!」

 だが遅かった。勢いよく扉が開き、姉貴が姿を現す。
 視界に入った姫ちゃんを睨み付けている。やばい、これは非常にやばい。

「やっぱり、お姉ちゃんの予感は的中しちゃったのだ! あなたがかなめちゃんを誘惑しためぎつねだね?」

「めぎつねさんですか? ボクは人間です」

 とにかく姉貴をどうにかしないと。

「姉貴、ちょ……」

「かなめちゃんは黙ってなさい! めぎつねのせいでちゃんとした判断がつかないんだから! あなた名前は?」

「ボクは柳刃です。柳刃誠十郎です」

「ふに~? 誠十郎? ま、まさか、かなめちゃんは男にたぶらかされ……」

 俺は違うと叫んでいた。姫ちゃんは女の子だと説明してやると、安心して「やっぱりかなめちゃんはノーマルだよね?」と言ってやがった。

「と、に、か、く! かなめちゃんを誘惑しないで!」

「ボ、ボク、誘惑なんてして無いです! 純粋にかなめさんが好きなんです!」

 こんな状況でなんだけど、姫ちゃんの今のセリフがとても嬉しかった。自然と顔がにやけ始める。

「間抜けな顔」

「うわ! めいか、脅かすなよ」

 呆れた様な顔でめいが俺を見ている、間抜けな顔でも良いじゃないか、嬉しい事があったんだから。

「純粋? なら、かなめちゃんが何を好きなのか知ってるの? まりあは知ってるもん、いっぱい知ってるもん! 例えばね、かなめちゃんは焼きそばパンが大好物なんだから!」

「ボクだって知ってます! じゃあ知ってますか? かなめさんは美少年で、学校で意外と人気なんですよ! いっぱい女の子に狙われてるんですから!」

 へ? 俺が女子に人気? 初耳だぞ?

「あ、当たり前だよ! かなめちゃんの魅力は……って、いっぱいめぎつねに狙われてるの! ふに~、お姉ちゃんしっかりしないと……じ、じゃあかなめちゃんが巨乳好きだって知ってるの!?」

「ふぇ! かなめさん、巨乳さんが好きなんですか!」

「兄さん、やらしい」

 女性三人の視線が突き刺さる、ちょっと待て、確かに、その……大きい人に魅力を感じるけど、どうして姉貴がその事を知っていやがる!

「姉貴! なんで知って……じゃない、何訳の分からない事を!」

「ふに? 証拠だってあるんだよ? かなめちゃんの机の引出し三段目、その奥!」

 な! まさかアレを知ってしまったのか!
 めいが机の三段目を開け、奥に手を伸ばす。
 止めろ、それは駄目だ! 俺のアレがぁ!

「ん? 何これ? 雑誌みたい。えっとタイトルが『爆乳百連発! 今夜はこれで決まり!』……」

「うわああああ! み、見るな! 違うんだ! これは!」

 めいは何か汚い様なものを見る目で蔑む。
 姉貴は証拠を見せつけてやったと自慢げに腰に手を。
 姫ちゃんは顔を真っ赤にさせて自分の胸に視線を。
 は、恥ずかしい!

「や、やめてくれ! お、俺をそんな目で見るなぁ!」

 両手で顔を隠してうずくまる。誰か穴を掘ってくれ、そこに飛び込むから!

「かなめちゃんはね、まりあみたいなおっきい胸が良いんだから! あなたの胸じゃかなめちゃんに嫌われるもんね!」

「はぅ、そんな……かなめさんに嫌われる」

「き、嫌いにならない! それは姉貴の嘘だ!」

 本当に泣きそうになっていた姫ちゃん、姉貴め、俺と姫ちゃんを別れさせようとしやがって。
 これ以上黙っていられるか、姉貴にハッキリ言ってやる。そう意気込んで立ち上がった時だ、姉貴が姫ちゃんに攻撃を仕掛けていた。

「かなめちゃんに近付かないで! 必殺、まりあアタック! えい!」

「ほぇ? ひゃう! きゃあ、ダメです、うう、くくっ、あははは!」

 まりあアタック、それはただ脇をくすぐるだけなんだが、それを食らって耐えきれず笑いだしていた。

「ほらほら、かなめちゃんにもう二度と近付かないって誓う? そうしたらやめてあげる」

「あははは! い、嫌で……あははは! 嫌ですぅ~! あははは! きゃははは! ま、負けません! うう、お返しです!」

 スルリと姫ちゃんの手が姉貴の脇に。

「ふに! や、やめて! あははは! いぅ、あはははは!」

 なんだこれは、目の前で姫ちゃんと姉貴がくすぐり合っている光景が広がっている。
 なんて言うのか、お前らは小学生か! と突っ込みたくなるがあの二人はあれで真剣なんだ。

 数分後、二人は身体をピクピクさせながら床に倒れていた。

「ふ、ふに~、な、なかなかやるじゃない」

「か、かなめさんのお姉様こそ」

「兄さん、なんだかこの光景ってエロいね」

 アホかとめいに言ったが、互いの服がはだけてなんとも凄い光景。

「兄さん鼻の下伸びてる、やらしい」

「う、うるさい!」

「根性だけは認めてあげる、でも、かなめちゃんを誘惑した事は許さないもん!」

「ゆ、誘惑なんてしてないです! ボクは本当にかなめさんが好きなんです。かなめさんの決めた事を貫く精神、それは気高くて美しい心を持っている、そんなかなめさんだからボクは好きになれたんです!」

「兄さん、柳刃さんに大絶賛みたい、良かったね?」

 そんな事を目の前で言われて恥ずかしくなって来る。でも、それと同時に嬉しさが込み上げて来た。

「むむむ、かなめちゃんの素敵なところをこうも適格に分かってるなんて……ふに~」

「ボク、本当に好きです、だからかなめさんと付き合う事を許して欲しいです」

「うう~、かなめちゃんは……まりあのもの……ふに~」

 姫ちゃんの真っ直ぐな瞳。それが本当に悪意無く、好きだと分かったらしく姉貴は困った顔をしていた。

「ふに~、悪い娘じゃ無い事は目を見ていたら分かったけど、まりあのかなめちゃんの彼女だなんて……まりあは、まりあはぁ~」

「姉さん言ってた、兄さんは本当に素敵、だから悪い奴の手には落としたくないって。でも柳刃さんは悪い奴じゃないって分かったし兄さんを本気で好きだって。姉さんも兄さんを好きだから困ってるのよ」

 困った姉貴は俺の腕にしがみついて来た。

「ふに~、かなめちゃん~」

「姉貴、俺は姉貴の事は好きだけど、それはあくまで家族としてだ。だから……」

「ふに~」

 姉貴が涙目になって、今にも泣きそうになる。だけどこれはいつかは言わなければならないんだ。
 そんな時だ、姫ちゃんが一歩進んで姉貴に話しかけ始めた。

「あの、ならボクと勝負しませんか?」

「ふに~? 勝負?」

「どちらが、かなめさんを振り向かせるか、それを勝負しましょう。ボクはかなめさんの恋人さんですけど、そんなのは関係ないです、かなめさんのお姉様がかなめさんをメロメロにしたらお姉様の勝ち。ボクがかなめさんをメロメロにしたらボクの勝ち、どうですか?」

「ふに~、かなめちゃんをメロメロにかぁ~、……いいよ、あなたなんかよりも先にかなめちゃんをメロメロにしちゃうんだから!」

 二人が笑い合う。今まで喧嘩してたのに、笑い合えるなんて。
 今の会話を聞いていたら恥ずかしくなる様な事をいっぱい言ってたな。

「さてと、なら早速行動しちゃうからね!」

 いきなり姉貴が俺に飛び付き押し倒された。そして上着を脱ぎだしながら迫って来る。

「か、な、め、ちゃん、お姉ちゃんと良い事しようね?」

「な、何していやがる!」

「はわわ! かなめさんがピンチです! 今助けます!」

「うわ、なんてやらしい」

 姉貴を突き飛ばす姫ちゃん、そのまま俺の上に落ちて来た。咄嗟に手を掲げ、姫ちゃんを支えようとしたが手に柔らかな感触が。

「ひゃん! はう……か、かなめさんのスケベさんです」

 姫ちゃんの胸を鷲掴みに。

「ご、ごめん!」

「あなただけずるい! かなめちゃん、お姉ちゃんのも!」

「ふざけるな!」

「兄さん、本当にやらしい」

 そんな騒がしい事があったが、なんとか姫ちゃんと姉貴の喧嘩が終わらせた。

「何してるのあんたら?」

 部屋のドアが開いていて、母さんが俺達を見ている。呆れ顔で。

「かな、この変態」

「俺のせいじゃない!」

「兄さんのせいだよ」

 睨まれている、母さんに。
 つまらないものを見る様な顔をするめい。
 胸を押さえて照れてる姫ちゃん。
 俺に抱き付く姉貴。

 俺、どうしたらいいんだ? 逃げていいかな?

 なんだか分からない現場が広がっているが、どうにか俺の努力でこの場を治める事に成功。   
 よく治められたよな。

 そのまま夕食を食べる事になったのだが、ここでも姉貴と姫ちゃんのバトルが始まるとは思わなかった。

「わぁ、美味しそうです、この料理全部かなめさんのお父様が作ったんですか? すごいです」

「そうかい? ささ、温かいうちに食べよう」

 食卓にたくさんのご馳走が並んでいた。どうやら父さんが姫ちゃんのために腕をふるったらしい。
 並んでいる料理は父さんが得意としている中華だ。麻婆豆腐やチンジャオロースなどが並んでいる。いつもながら旨そうだ。

「いただきます、……ん! 美味しいです!」

「口に合ってくれて良かった、どんどん食べなさい」

 姫ちゃんがとても美味しそうに食べている。父さんの料理を気に入ってくれて良かったよ。さてと、俺も食べるかな。

「かなめちゃん、お姉ちゃんがおかず取ってあげるね?」

「むむ、ボクも取ってあげます!」

 俺の目の前に大量のおかずが。こんなに食えるか。

「かなめちゃん食べさせてあげるね? はい、あ~ん!」

「ボクもです! かなめさん、あ~んして下さい!」

「うわ、ラブラブだね」

 母さんが茶茶を言って来るが、それを言い返す事が出来ない。何故なら姉貴と姫ちゃんが俺の口に無理矢理中華を押し込んでいるんだから。
 い、いろんな味が混じって何食っているのか分からない。

「ぐ、ぐるじい(く、くるしい)!」

「あはは! 兄さんの顔おかしい! 最高!」

「ぷぷ、本当めいちゃんの言うとおりね、かな、あんた最高!」

 めいと母さんが爆笑している、人の気も知らないで。
 どうにか飲み込んだが、あ~ん攻撃第二波が待ち構えていた。

「かなめちゃん、お姉ちゃんのあ~んが良かったよね?」

「かなめさん、ボクの方が良かったですよね?」

 ちょっと待て、あ~んの採点基準なんてあるのかよ? と言い返そうとしたのだが第二波が口の中に。

「ぐ、ぐるじい、みず、みずぅ!」

「どうだ、まりあの方がかなめちゃんに上手にあ~んしてあげたんだから!」

「ボクの方が良かったはずです! かなめさん、そうですよね?」

 今返答出来ません。

「……今の若い子は積極的で大胆なんだな」

 父さんが目を丸くして修羅場を眺めていた。

 こんな感じで食事が進んで行った。料理が旨いとか、そんな記憶がない。あるのは苦しい、これだけ。
 夜もふけて来たので姫ちゃんが帰る用意を始めていた。

「それではお邪魔しました、かなめさんのお父様、ご飯美味しかったです」

「そうかい? また遊びに来なさい」

「はい!」

 家まで送ると言って一緒に出て行く。その直後姉貴が追いかけて来た。

「待って、柳刃ちゃん、まりあ負けないから! かなめちゃんはまりあがもらっちゃうんだから!」

「ボクだって負けません、かなめさんはボクがもらいます」

 は、恥ずかしい。俺の目の前で堂々と大声でそう言われて、本当に恥ずかしかった。
 二人は言い終わると、またニコリと笑い合っている。

 えっと、これって仲良しになったと受け取ってもいいのかな?
 そんな事を思いながら姉貴と別れ、姫ちゃんと夜の道を進んで行く。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※表紙はAIにより作成したものです。 ※小説内容にはAI不使用です。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」様にも掲載しております。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

処理中です...