残夢~思い残したことはありませんか?~

十文字心

文字の大きさ
10 / 39

【9】ハルキの告白

しおりを挟む
『…岩崎さん、大丈夫?
無事目的地に到着したみたいだよ!』

「…ここって、もしかして…。」

『そうだよ!岩崎さんの輪廻會舘!』

「ここでいったい何をするんだい?」

『え、わからないの?岩崎さん…。昨日、
お通夜終了後に僕以外の家族でさ、夜ご飯を
食べてたでしょ?そこに現れて【告白】を
したいと思います。』

「…そうか、つまりお通夜後の輪廻會舘ってことだね!なるほど。でもご家族は死んでいるはずの君が、急に現れて驚いたりしないかな?そこだけが心配なんだけど。」

『岩崎さんの心配するところって、そこなんだ。岩崎さんってさ~天然ぽいよね?周りの人から言われたりするでしょ?奥さんや仕事仲間とかに。優しくていい人なのは、初めて会った時から感じてたけどね。まぁ岩崎さんが心配している部分は、ちゃんと夢オチになりますので心配しないでね。』

「ハルキ君?大人に向かってはっきり言い過ぎだから!もう少しやんわりと言う事を覚えてほしいな?」

中学生に天然と言われたことが面白く、笑いながら死人相手にムキになって言い返してしまう俺。大人げないな…。

『…また来世ね?と言うか、岩崎さん初めて
笑ってくれたね!そっちのほうが、イケメンだからもっと笑ったほうがいいよ?』

「ハルキ君?それは誉めてると受け取っていいのかなー?あまり大人を、からかうもんじゃないよ?」

『さーて、うるさいおじさんは置いといて
そろそろ行ってきますかねー。』

「君は…本当に人の話を聞かないね…。
一人でいける?大丈夫?」

『…ん?そりゃあね、本音を言えば少し怖いよ?これまでも、キチンと家族に対して向き合ってきたことなんてなかったから。でもね、女の子を助けることができたあの時から僕は少しだけど強い人間になれた気がするんだ。岩崎さんは見守っててよね!』

「わかったよ、ハルキ君。強い男は大好きだ!応援してるから行ってこい!!」

そう言って背中を押すと、霊柩車を降りた
ハルキ君は、一瞬振り返り俺に微笑んだ。


※※※※※※※※※※※
人の気配はあるが、静まり帰った親族控室の
前に到着したハルキ。
直接話すとは言ったものの、本当にうまくいくのか?…よし、鶴の恩返し作戦でいこう!

"コンコン"

「はい、どうぞ」
父親の低い声が響いた。

『…お父さん、お母さん?それに兄さんと姉さんも…。僕だよハルキだよ!』

「え、ハルキ??」

室内がザワツキ始め襖を開けようとした
雰囲気を感じとった僕は、大きな声を
出して叫んだ。

『襖は開けないで!!』

人の動く気配が止まったのを確認すると
落ち着いてもう一度話す。

『大きな声を出してごめんね?何が起きているのか、理解できないと思うけど、話が終わったら僕は消えるから、黙って僕の話を聞いて欲しい。お父さんお母さん、まずは謝らせてください。二人よりも先に死んでしまった親不孝…本当にごめんなさい。
みんなは僕がいじめられて、自殺しちゃったと思っているよね?でも、違うんだ!そんなバカなことはしない!それだけでも分かってほしくて、僕は火葬されちゃう前にこうしてみんなに事実を伝えにきたんだ。
僕、合格発表の後に一人で海を見に行ったの。そしたらね、今にも堤防の上から飛び込みそうな女の子を見つけちゃって、声をかけても止まらないから走ってその子のところに
行ったんだよ。女の子捕まえて陸の方に落としたところまではよかったんだけど、勢いあまって僕がそのまま海に落ちて死んじゃったってわけ。
あまりに勢いがよかったから、通報してくれた人が、自分から飛び込んだって言っちゃったんだろうね、きっと。女の子も自分のせいだって思われるの怖くて言えなかったのかも。だからね、僕は
"自殺して死んだ弱い人間"ではなく
"女子を助けて誤って海に落ちた勇敢な少年"
だとみんなには思ってて欲しいんだ。
僕がいなくなったことを、本当に悲しんでくれてありがとう。とっても嬉しいんだよ?
父さんと母さん、これは運の悪い事故なんだ!だからさ、これ以上自分達を責めるのはやめてよね?
"ハルキはヒーローとして役目を終えた"
それでいいんだ。
みんな、今まで本当にありがとう。表にはあまり出さなかったけどさ、僕は本当に幸せだったんだよ?もう少し、二人の子ども、二人の弟でいたかったけど…とりあえずこれで
サヨナラだ。明日は笑顔で見送ってね。』

「ハルキ…、行かないで!最後に顔だけ
見せて…お願い…、お願いよ…」

泣きながら懇願する母親の声が聞こえた。
本当は僕も最後に会いたいよ?
でも、これでいいんだ。
襖を"コンコン"とノックすると、
僕の体は眩い光に包まれ始めた。

※※※※※※※
先ほどまで出ていた濃い霧も晴れ、気づくと俺は、元の火葬場の駐車場にいた。
さっきの出来事は幻だったのか?ご兄姉を
乗せた翼達もいつのまにか到着している。

霊柩車からハルキ君の棺をおろし
火葬場職員へと引き渡す。
確か、霊柩車に乗るまではひどく落ち込んだ様子のご両親だったはずだが…降りて火葬場に向かう二人の足どりは、決して重たいものではないように感じた。

場内に入る前にこちらを向き最敬礼を
してくださったご遺族の皆様。
私たち四人もお辞儀をする。
その時だ!遺影のハルキ君が俺にむかって
間違いなくウィンクをしてきた!
その刹那、頭の中に響いてくる少年の声。

『ありがとう岩崎さん!これでサヨナラだ!いつも笑っていてよね?イケメンさん♪』

「さようならハルキ君、元気でね!」

突然一人で話し始めた俺に少し驚いている
様子の三人だったが、翼は俺の手を
こっそり握りウインクをして囁く。

"匠君、お疲れ様!"
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...