20 / 39
【19】久々の休日
しおりを挟む
本日は予約も入っていないので、幸栄達にも
休みということは昨日伝えておいた。
私達が入院している時から、あの二人には
休みという休みを取ってもらっていない
気がする…。
冠婚葬祭というが、予定が予め決まっている
結婚式とは違い、人の不幸というのはいつ
起こるかわからない不測のもの。
少人数で経営しているうちのような葬儀屋は
まとまった休みをとることが難しいのだ。
今日は起きてすぐに朝食を作ることはせずに
布団の中で微睡みのひとときを楽しむことにした私は、ゴロゴロと寝転んでネットニュースを読み漁っていた。匠君は夜中にやっていたスポーツをソファーで見ながら、そのまま眠ってしまったらしく、二階には上がってきていないようだ。
朝のワイドショーが一段落して、通販番組が
増えてくる時間、下から私を呼ぶ声が聞こえてきた。
『つーばーさー?ご飯出来たよー?』
まだ、寝ていると思っていたら既に起きて
朝ご飯を作ってくれているとは…
「すぐ降りるねー!」
一階に降りると、トーストや目玉焼きなど
洋風の朝食が並んでいた。
『おはよう翼!コーヒーだけ淹れてくれるかな?俺が淹れるより確実に美味しいしさ?』
「匠君おはよう!ご飯ありがとー。朝起きてご飯出来てるのって、幸せすぎるね!すぐコーヒー淹れるから座って待ってて!」
朝食を食べ終わり、本日の予定の相談をする。事故に遭った時は別として、匠君と二人でゆっくりと休日を楽しむことは本当に少ない。そう、どこかに行こうとした途端に鳴る依頼の電話…。取らなければいいだけの話だが、宣伝もしていない私達のような小さな葬儀屋を、わざわざ選んで問い合わせをしてくれているお客様を無視するわけにもいかない。
「匠君、今日何かやりたいことあるー?」
『んー?何だろ、いざそう言われると思いつかないものだねー!…何しよっか。翼は何かやりたいことないの?』
「私はね、一つだけ見たい映画があったの!それくらいしかないかな?」
『えー、何々?じゃあそれ見に行ってどこかランチでも食べに行こうよ!ちょっとデートっぽいじゃん?!』
「じゃあ、そうしましょうか!
ご飯食べたら出る準備するねー!」
『よーし、翼!久しぶりのデートに出発しますか!映画の時間まで後一時間だから、少し急ぎますよー!』
玄関を出て、車に乗り込む。
…あれ?私今日、左足から靴履いたかな?
何か違和感があるような気がする…。
きっと、履いたよね?うん、多分…。
ギリギリで上映時間に間に合い久しぶりに
大画面で映画を見ることができる!
映画泥棒に二人で静かに突っ込みをいれつつ
ようやく始まった本編に集中する。
そして、物語も中盤に差し掛かった、いよいよクライマックスに向かう!という時に恐れていたことが起こる…。
静かな映画館内に響き渡る匠君の
スマホのバイブレーションの音…!
「…ちょっと、音消してって言ったじゃん!早くどうにかしてよ!!」
『だってー、かかってくるとか思わないし
バイブでいいかなって思ったのー、とりあえず外に出るわ!』
小声でやり取りをし、退出した匠君。
数分後に戻ってきた彼の顔は、先ほどまでの
微睡みの表情から、仕事モードのキリッとした表情に変わっていた。
「……もしかして、依頼の電話?」
『……はい、15時にくるってさ。映画終わったらそのまま帰らないと間に合わないな』
やはり…、私は左足から靴を履かないと
ダメなのだ…。右足から靴を履いて、こういう目に合うのは一度や二度ではない。
クライマックスに入り、周りから泣き声が
聞こえてきたりしている感動のシーンだが
私はその後の内容が全く頭に入ってこなかった。
「あの電話から、映画の内容が全く頭に入ってこなかったよー。お昼も豪華なランチ食べようと思っていたのに、結局ファストフードのテイクアウトだしさー。」
『まぁまぁ、仕方ないじゃない?寿郎達も
そろそろ着いてる頃だと思うし、幸栄さんにいっぱい愚痴ってよね!?』
「まぁ匠君は悪くないし、全ては私が右足から靴を履いた所為だしね。さーて、仕事しますかー!」
『…ねぇ翼?何?右足から靴ってー?
ち、ちょっと待ってよー!!』
車を降りて、會舘へと向かう。後ろで何か
言っている匠君の声がするが聞こえない
フリをして歩みを速めた。
休みということは昨日伝えておいた。
私達が入院している時から、あの二人には
休みという休みを取ってもらっていない
気がする…。
冠婚葬祭というが、予定が予め決まっている
結婚式とは違い、人の不幸というのはいつ
起こるかわからない不測のもの。
少人数で経営しているうちのような葬儀屋は
まとまった休みをとることが難しいのだ。
今日は起きてすぐに朝食を作ることはせずに
布団の中で微睡みのひとときを楽しむことにした私は、ゴロゴロと寝転んでネットニュースを読み漁っていた。匠君は夜中にやっていたスポーツをソファーで見ながら、そのまま眠ってしまったらしく、二階には上がってきていないようだ。
朝のワイドショーが一段落して、通販番組が
増えてくる時間、下から私を呼ぶ声が聞こえてきた。
『つーばーさー?ご飯出来たよー?』
まだ、寝ていると思っていたら既に起きて
朝ご飯を作ってくれているとは…
「すぐ降りるねー!」
一階に降りると、トーストや目玉焼きなど
洋風の朝食が並んでいた。
『おはよう翼!コーヒーだけ淹れてくれるかな?俺が淹れるより確実に美味しいしさ?』
「匠君おはよう!ご飯ありがとー。朝起きてご飯出来てるのって、幸せすぎるね!すぐコーヒー淹れるから座って待ってて!」
朝食を食べ終わり、本日の予定の相談をする。事故に遭った時は別として、匠君と二人でゆっくりと休日を楽しむことは本当に少ない。そう、どこかに行こうとした途端に鳴る依頼の電話…。取らなければいいだけの話だが、宣伝もしていない私達のような小さな葬儀屋を、わざわざ選んで問い合わせをしてくれているお客様を無視するわけにもいかない。
「匠君、今日何かやりたいことあるー?」
『んー?何だろ、いざそう言われると思いつかないものだねー!…何しよっか。翼は何かやりたいことないの?』
「私はね、一つだけ見たい映画があったの!それくらいしかないかな?」
『えー、何々?じゃあそれ見に行ってどこかランチでも食べに行こうよ!ちょっとデートっぽいじゃん?!』
「じゃあ、そうしましょうか!
ご飯食べたら出る準備するねー!」
『よーし、翼!久しぶりのデートに出発しますか!映画の時間まで後一時間だから、少し急ぎますよー!』
玄関を出て、車に乗り込む。
…あれ?私今日、左足から靴履いたかな?
何か違和感があるような気がする…。
きっと、履いたよね?うん、多分…。
ギリギリで上映時間に間に合い久しぶりに
大画面で映画を見ることができる!
映画泥棒に二人で静かに突っ込みをいれつつ
ようやく始まった本編に集中する。
そして、物語も中盤に差し掛かった、いよいよクライマックスに向かう!という時に恐れていたことが起こる…。
静かな映画館内に響き渡る匠君の
スマホのバイブレーションの音…!
「…ちょっと、音消してって言ったじゃん!早くどうにかしてよ!!」
『だってー、かかってくるとか思わないし
バイブでいいかなって思ったのー、とりあえず外に出るわ!』
小声でやり取りをし、退出した匠君。
数分後に戻ってきた彼の顔は、先ほどまでの
微睡みの表情から、仕事モードのキリッとした表情に変わっていた。
「……もしかして、依頼の電話?」
『……はい、15時にくるってさ。映画終わったらそのまま帰らないと間に合わないな』
やはり…、私は左足から靴を履かないと
ダメなのだ…。右足から靴を履いて、こういう目に合うのは一度や二度ではない。
クライマックスに入り、周りから泣き声が
聞こえてきたりしている感動のシーンだが
私はその後の内容が全く頭に入ってこなかった。
「あの電話から、映画の内容が全く頭に入ってこなかったよー。お昼も豪華なランチ食べようと思っていたのに、結局ファストフードのテイクアウトだしさー。」
『まぁまぁ、仕方ないじゃない?寿郎達も
そろそろ着いてる頃だと思うし、幸栄さんにいっぱい愚痴ってよね!?』
「まぁ匠君は悪くないし、全ては私が右足から靴を履いた所為だしね。さーて、仕事しますかー!」
『…ねぇ翼?何?右足から靴ってー?
ち、ちょっと待ってよー!!』
車を降りて、會舘へと向かう。後ろで何か
言っている匠君の声がするが聞こえない
フリをして歩みを速めた。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる