60 / 68
最終章 決戦
【五十九】登場(弥助)
しおりを挟む
”才蔵達はきっとワシの洞窟におるじゃろう”という小太郎殿の見立て通り、現場に到着すると、洞窟前の広場は至る所に戦闘があったことを裏付ける血痕や刀傷で溢れていた。
『弥助!あそこに誰か倒れておるぞ!!』
左京が叫び、皆で近づくと倒れていたのは才蔵師匠であった…。まさか、近くに敵が…
『…おぉ…やっと来おった、みたいだな。遅いぞ弥助に左京よ…姫様と弥生も無事なようで、良かった…こ、小太郎殿、こやつらの子守りまでさせてしもうて、かたじけのうございます…』
「し、師匠、いったい何が起こったのですか?誰がこの様な酷い仕打ちを…!」
一度ならず二度までも師匠のこの様な姿を見ることになろうとは夢にも思っていなかった…必死に笑顔を作り肩で息を吸いながら話している様子を見て涙が溢れそうになる…
『お、お主達が、もう少し早く、来ていれば、この様に無様な、姿を見せずに済んだものを…なんてな、これもワシの力不足故じゃ。うっぅぅ…しかし、やつも虫の息のはず…弥助と弥生よ…ワシが戦っておったのはお主らの父親、猿飛佐助じゃ…この血痕を辿って、奴を追ってはくれぬか?幸景殿には隠れてもらっておるが、少し心配じゃ…洞窟の奥へ行き、奴を捕えこちらに連れて、きてくれんかの…?』
「師匠、私は今日まで心の底から人を憎んだ事など一度もありませんでした。弥生と二人、いかなる時でもです。しかし、今日初めて人を憎く思い、殺意を覚えました。たとえその相手が父であってもです。師匠の仇は我々が必ずとって参ります…だから、だから、まだ死なないでください…俺達にはまだまだ、師匠が必要なのです…。」
『そうですよ、才蔵師匠…!こんな所業をするような父など私にはおりませぬ。今も昔も、貴方が師匠であり父であると思っております…こんな所で死んでしまうなんて、弥生は絶対に許しませぬ!』
左京と姫様が佐助に接触するのは危険という判断からこの場に残り小太郎殿と共に才蔵師匠の手当てをお願いし、俺と弥生の二人で洞窟の中へと向かうことにした。
『弥助兄さん…私は…どうして良いかわかりませぬ…父親は死んでいると納得していたのに、あの日父親の話を聞いて…しかも父親が、私を育ててくれた国の滅亡に加担していた首謀者の一人…私は一体どんな感情で向き合えばいいのでしょうか…』
俺が小太郎殿より初めてその話を聞いた時の感情が思い出される。そして、どのような感情を持ち合わせていればいいのかという答えは未だに出ていない…
洞窟内に続く血痕の痕は小太郎殿の酒蔵のところで止まり、中に人の気配を感じた。
『…来たようだな、大きくなったお主達に会うのは初めてか…、弥助と弥生よ…別に今更父親づらするつもりもない故、そう固まらずともよい…』
どうやら、才蔵師匠同様に佐助も深い傷を負い瀕死の状態のように見受けられる。薄暗い酒蔵の壁にもたれて、話し始めた佐助の肩は上下に揺れ息をするのも苦しそうであった。
「貴様を父だと呼ぶつもりは微塵にもない。俺たちの父は才蔵師匠のみ、長々と話すつもりもない故、素直にこちらに来てもらおうか?今の貴様では相手にもならぬ。」
『ふふ、さすがは…我が血を引く…呪われた子。お主達の、母親を殺めたのは…拙者、まさかあの時の、我が子に自分の命を奪われることになろうとは…人生とは…面白いものだな…さっさと殺せ!』
母親を殺めたという言葉を聞き頭に血が昇った俺は無意識のうちに三日月を手に取り、佐助の首に刃を突きつけていた。
『や、弥助兄さん待って!!今殺してしまっては母上のことも何も聞けない、ここまできたら私は母上のことを知りたい…』
弥生の叫びが聞こえ、手を緩めた。
佐助の首筋からは新しい血が一筋流れ始めた。
『弥助よ…見事に三日月を、使いこなしているようだな、流石は猿飛だけでなく霧隠の血も引く忍びよ…完璧な状態で戦いたかった…』
切られたというのに、笑みを浮かべ嬉しそうに微笑んでいる佐助と言う男に寒気を覚えた。俺たちはこんな奴の血を引いているのか…
『うっ、うううぅ…や、弥助兄さん…弥生は弥生はどうしたらいいのでしょうか…』
『弥生殿…貴方は何も悪いことはしておりませぬ、弥助殿も同様です。全ては闇に捕らわれたこの男の所業というだけの事。仏様は全てを見ておられます故、大丈夫、心を落ち着けなさい。』
城側の通路から現れた幸景殿。
悟りを開いたお方の言葉は重みがあり、俺と弥生は自然と落ち着きを取り戻す事ができた。
『ま、まさか…ほ、本当に城主、が…?あ、有り得ない!!…あの時、拙者は右京に殺された城主の脈をみたのだ…』
胸を抑えながら、はぁはぁと息をしている佐助、相当に驚いている様子だ。
『…貴殿の中には、母上の亡霊が住み着いているように見受けられる…私が抑えて差し上げましょうか?』
『や、や、やめろ!近寄る…な……』
佐助はその場で意識を失ってしまった。
『弥助!あそこに誰か倒れておるぞ!!』
左京が叫び、皆で近づくと倒れていたのは才蔵師匠であった…。まさか、近くに敵が…
『…おぉ…やっと来おった、みたいだな。遅いぞ弥助に左京よ…姫様と弥生も無事なようで、良かった…こ、小太郎殿、こやつらの子守りまでさせてしもうて、かたじけのうございます…』
「し、師匠、いったい何が起こったのですか?誰がこの様な酷い仕打ちを…!」
一度ならず二度までも師匠のこの様な姿を見ることになろうとは夢にも思っていなかった…必死に笑顔を作り肩で息を吸いながら話している様子を見て涙が溢れそうになる…
『お、お主達が、もう少し早く、来ていれば、この様に無様な、姿を見せずに済んだものを…なんてな、これもワシの力不足故じゃ。うっぅぅ…しかし、やつも虫の息のはず…弥助と弥生よ…ワシが戦っておったのはお主らの父親、猿飛佐助じゃ…この血痕を辿って、奴を追ってはくれぬか?幸景殿には隠れてもらっておるが、少し心配じゃ…洞窟の奥へ行き、奴を捕えこちらに連れて、きてくれんかの…?』
「師匠、私は今日まで心の底から人を憎んだ事など一度もありませんでした。弥生と二人、いかなる時でもです。しかし、今日初めて人を憎く思い、殺意を覚えました。たとえその相手が父であってもです。師匠の仇は我々が必ずとって参ります…だから、だから、まだ死なないでください…俺達にはまだまだ、師匠が必要なのです…。」
『そうですよ、才蔵師匠…!こんな所業をするような父など私にはおりませぬ。今も昔も、貴方が師匠であり父であると思っております…こんな所で死んでしまうなんて、弥生は絶対に許しませぬ!』
左京と姫様が佐助に接触するのは危険という判断からこの場に残り小太郎殿と共に才蔵師匠の手当てをお願いし、俺と弥生の二人で洞窟の中へと向かうことにした。
『弥助兄さん…私は…どうして良いかわかりませぬ…父親は死んでいると納得していたのに、あの日父親の話を聞いて…しかも父親が、私を育ててくれた国の滅亡に加担していた首謀者の一人…私は一体どんな感情で向き合えばいいのでしょうか…』
俺が小太郎殿より初めてその話を聞いた時の感情が思い出される。そして、どのような感情を持ち合わせていればいいのかという答えは未だに出ていない…
洞窟内に続く血痕の痕は小太郎殿の酒蔵のところで止まり、中に人の気配を感じた。
『…来たようだな、大きくなったお主達に会うのは初めてか…、弥助と弥生よ…別に今更父親づらするつもりもない故、そう固まらずともよい…』
どうやら、才蔵師匠同様に佐助も深い傷を負い瀕死の状態のように見受けられる。薄暗い酒蔵の壁にもたれて、話し始めた佐助の肩は上下に揺れ息をするのも苦しそうであった。
「貴様を父だと呼ぶつもりは微塵にもない。俺たちの父は才蔵師匠のみ、長々と話すつもりもない故、素直にこちらに来てもらおうか?今の貴様では相手にもならぬ。」
『ふふ、さすがは…我が血を引く…呪われた子。お主達の、母親を殺めたのは…拙者、まさかあの時の、我が子に自分の命を奪われることになろうとは…人生とは…面白いものだな…さっさと殺せ!』
母親を殺めたという言葉を聞き頭に血が昇った俺は無意識のうちに三日月を手に取り、佐助の首に刃を突きつけていた。
『や、弥助兄さん待って!!今殺してしまっては母上のことも何も聞けない、ここまできたら私は母上のことを知りたい…』
弥生の叫びが聞こえ、手を緩めた。
佐助の首筋からは新しい血が一筋流れ始めた。
『弥助よ…見事に三日月を、使いこなしているようだな、流石は猿飛だけでなく霧隠の血も引く忍びよ…完璧な状態で戦いたかった…』
切られたというのに、笑みを浮かべ嬉しそうに微笑んでいる佐助と言う男に寒気を覚えた。俺たちはこんな奴の血を引いているのか…
『うっ、うううぅ…や、弥助兄さん…弥生は弥生はどうしたらいいのでしょうか…』
『弥生殿…貴方は何も悪いことはしておりませぬ、弥助殿も同様です。全ては闇に捕らわれたこの男の所業というだけの事。仏様は全てを見ておられます故、大丈夫、心を落ち着けなさい。』
城側の通路から現れた幸景殿。
悟りを開いたお方の言葉は重みがあり、俺と弥生は自然と落ち着きを取り戻す事ができた。
『ま、まさか…ほ、本当に城主、が…?あ、有り得ない!!…あの時、拙者は右京に殺された城主の脈をみたのだ…』
胸を抑えながら、はぁはぁと息をしている佐助、相当に驚いている様子だ。
『…貴殿の中には、母上の亡霊が住み着いているように見受けられる…私が抑えて差し上げましょうか?』
『や、や、やめろ!近寄る…な……』
佐助はその場で意識を失ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる